53 / 123
お店編
53 彼女を守ると誓ったのに……
しおりを挟む
シズが売り出したシャワーヘッドは、瞬く間に王都に広がった。
だが、買いに来る人を思って、日々寝る間も惜しんで作業を続けるシズが心配で仕方なかった。
何度、無理はするなと言っても「これくらい大丈夫です」と言って、頑張り続けてしまうのだ。
無理やり寝かしつけても、いつの間にか起き出して作業しているシズに何度説教したことか。
彼女は、それでも自分が蒔いた種だと言って頑張り続けていた。
本当は、彼女に付きっきりでそれを諌めたいところだが、最近変な男に後を付けられていることもあり、シズのことを考えると迂闊に彼女に行くことが躊躇われた。
その他にも、最近シズの家の近くで不審な行動を取る男が目撃されていたため、騎士団で警戒中だったことも重なっていた。
俺が変な男に、周囲を嗅ぎ回られるようになったのは、数日前からだった。
初めは、気配を消して俺の様子を窺っていたようだが、一昨日からは俺の後を付け回すようになっていた。シズに迷惑をかけることを考えると彼女に会いに行くのを躊躇ってしまっていた。
シズの家に行く時は、不審な男を撒くために回り道をしているくらいだ。
その日も、いつも以上に時間を掛けてシズの家にたどり着いた。
彼女は、どんなに疲れていても俺とアークのために温かく迎えてくれたのだ。
だけど、その日は違っていた。
家のチャイムを鳴らしてもシズが出てくる気配がなかった。
まさか中で倒れているのではないかと、渡されていた合鍵で中に入っていった。
すると、リビングで丸くなって眠る彼女の姿があった。
目の下には隈ができていて、起こすのは忍びないと思った俺は、彼女を抱いて二階の部屋に向かっていた。
シズを抱き上げて、ゆっくりと彼女の部屋に歩いていると、彼女がなにか寝言を言ったのだ。
駄目だと思いつつも、つい彼女の寝言に耳を傾けていた。
「……、いや……。ちかこちゃん……、やめて……。たすけて……」
悪い夢でも見ているようで、目尻には涙が浮かんでいた。
起こしてあげたい気持ちはあったが、疲れている彼女を起こしていいものか悩んでいると、彼女の口から初めて聞く名前があった。
「かっちゃん……」
誰なのか分からないが、その名前を聞いた時、俺の心の中に黒い感情が広がった気がした。
シズは、その知らない誰かに助けを求めたいたように俺には思えたからだ。
俺は、無意識に眠っているシズを抱きしめていた。
そっと、優しく。
腕の中に閉じ込めて、彼女を守るように。
「シズ、俺がいる。俺が側に居るから。だから、安心してくれ。俺が、シズを守るから」
何度もそう言って、シズを抱きしめていた。
眠っている女性に対して、こんな事してはいけないと思っていても自分を止めることが出来なかった。
いつの間にか、腕の中で眠るシズは安らかな寝息を立てていた。
彼女の寝顔を見つめながら、俺は強く誓った。
「シズを守るよ。絶対に、守るから」
そう誓った後、俺はそっと部屋を抜け出した。
リビングに戻ると、アークがソファーに座っていた。
「ああ、アークも来てたのか」
「はい。シズ……、大丈夫ではないですね……。それに、最近この辺りを荒らす輩の行動が活発化しているみたいで……」
「絶対に犯人を捕まえる」
「はい」
俺とアークはしっかりと戸締まりをした上でシズの家を後にした。
だけど、このことを俺は後悔することになった。
守ると誓ったのに……。俺は……。
だが、買いに来る人を思って、日々寝る間も惜しんで作業を続けるシズが心配で仕方なかった。
何度、無理はするなと言っても「これくらい大丈夫です」と言って、頑張り続けてしまうのだ。
無理やり寝かしつけても、いつの間にか起き出して作業しているシズに何度説教したことか。
彼女は、それでも自分が蒔いた種だと言って頑張り続けていた。
本当は、彼女に付きっきりでそれを諌めたいところだが、最近変な男に後を付けられていることもあり、シズのことを考えると迂闊に彼女に行くことが躊躇われた。
その他にも、最近シズの家の近くで不審な行動を取る男が目撃されていたため、騎士団で警戒中だったことも重なっていた。
俺が変な男に、周囲を嗅ぎ回られるようになったのは、数日前からだった。
初めは、気配を消して俺の様子を窺っていたようだが、一昨日からは俺の後を付け回すようになっていた。シズに迷惑をかけることを考えると彼女に会いに行くのを躊躇ってしまっていた。
シズの家に行く時は、不審な男を撒くために回り道をしているくらいだ。
その日も、いつも以上に時間を掛けてシズの家にたどり着いた。
彼女は、どんなに疲れていても俺とアークのために温かく迎えてくれたのだ。
だけど、その日は違っていた。
家のチャイムを鳴らしてもシズが出てくる気配がなかった。
まさか中で倒れているのではないかと、渡されていた合鍵で中に入っていった。
すると、リビングで丸くなって眠る彼女の姿があった。
目の下には隈ができていて、起こすのは忍びないと思った俺は、彼女を抱いて二階の部屋に向かっていた。
シズを抱き上げて、ゆっくりと彼女の部屋に歩いていると、彼女がなにか寝言を言ったのだ。
駄目だと思いつつも、つい彼女の寝言に耳を傾けていた。
「……、いや……。ちかこちゃん……、やめて……。たすけて……」
悪い夢でも見ているようで、目尻には涙が浮かんでいた。
起こしてあげたい気持ちはあったが、疲れている彼女を起こしていいものか悩んでいると、彼女の口から初めて聞く名前があった。
「かっちゃん……」
誰なのか分からないが、その名前を聞いた時、俺の心の中に黒い感情が広がった気がした。
シズは、その知らない誰かに助けを求めたいたように俺には思えたからだ。
俺は、無意識に眠っているシズを抱きしめていた。
そっと、優しく。
腕の中に閉じ込めて、彼女を守るように。
「シズ、俺がいる。俺が側に居るから。だから、安心してくれ。俺が、シズを守るから」
何度もそう言って、シズを抱きしめていた。
眠っている女性に対して、こんな事してはいけないと思っていても自分を止めることが出来なかった。
いつの間にか、腕の中で眠るシズは安らかな寝息を立てていた。
彼女の寝顔を見つめながら、俺は強く誓った。
「シズを守るよ。絶対に、守るから」
そう誓った後、俺はそっと部屋を抜け出した。
リビングに戻ると、アークがソファーに座っていた。
「ああ、アークも来てたのか」
「はい。シズ……、大丈夫ではないですね……。それに、最近この辺りを荒らす輩の行動が活発化しているみたいで……」
「絶対に犯人を捕まえる」
「はい」
俺とアークはしっかりと戸締まりをした上でシズの家を後にした。
だけど、このことを俺は後悔することになった。
守ると誓ったのに……。俺は……。
147
あなたにおすすめの小説
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる