大好きな第三王子の命を救うため全てを捨てた元侯爵令嬢。実は溺愛されていたことに逃げ出した後に全力で気付かされました。

バナナマヨネーズ

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35 エピローグ

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「君に下す罰は、あの夜をやり直すことだ。そして、俺の傍に居て、幸せに暮らすこと。君の娘なら、他の男? いや、女? との間の子どもでもジュリアのこと、愛おしいと思えるから、俺の家族になることが俺からアストレイアに下す罰だ」

 全く罰になっていない沙汰にアストレイア頭を激しく振っていた。
 
「駄目です。全然罰になってないです!」

「何故だ?」

「だって……。都合がいい夢見たいです。ぼくは殿下のことお慕いしているんですよ? 寝込みを襲うほど殿下を愛している危険人物を傍に置くなんていけません!」

「問題ない。俺は、アストレイアのことが好きだからな。俺は、アストレイアとエッチなことをするのは大歓迎だ。だからいつでも襲ってくれて構わない」

「なっ……」

「ははっ! そうだ、今からでもいいぞ?」

「えっ?」

「あの夜のやり直しだ。いいだろう? 俺がどんな風にアストレイアに触れて、アストレイアがどんなふうに乱れたのか知りたい」

 どこまでも甘い声でそう囁いたヴィラジュリオの行動は早かった。
 アストレイアをソファーに優しく押し倒し、触れるだけのキスを繰り返す。
 ただし、唇を避けるようにだ。
 意識がない状態とはいえ、四年前にヴィラジュリオに抱かれたアストレイアは、それだけで体の奥が熱くなってしまう。
 
「殿下……」

「くすっ。かわいい。アストレイアの可愛い唇に触れてもいいか?」

 どう答えていいのか分からないアストレイアだったが、どこまでも甘く、そして愛おし気に見つめられては無理だった。
 これ以上ヴィラジュリオを好きだと思う気持ちを抑えられなかった。
 トロトロに甘く溶かされる理性。
 もう気持ちを抑えていられないアストレイアは、頷くことでヴィラジュリオのキスをねだっていた。
 
「かわいい。アストレイア。好きだ。ちゅっ」

「でんかぁ……。すき、すきです……」

 激しく口づけを交わす間、アストレイアもヴィラジュリオもお互いに好きだという気持ちを溢れさせ、何度もその言葉を口に出していた。
 
 
 
 
 
 陽が昇るまで激しくも甘い触れ合いをしていた二人は、ジュリアに見られては大変だと慌てて身支度を整えていた。
 
 いつもの時間に起きたジュリアがリビングに向かうと、昨日の夜見た時よりも距離が近いアストレイアとヴィラジュリオに気が付き、嬉しそうに言ったのだ。そのことに二人は、顔を見合わせて親バカを発揮させていた。
 
「ママ、おはようぅ……。あれ? わぁ~、なかよしだね! だって、わたちのママとパパだからね! わたちはわかっていたわ。だって、わたちはママとパパのあいのけっちょう。そのあかち!」

「ふふ。そうだね。ジュリアこそが、ぼくとラス様の愛の証だったね」

「ああ、そうだな。俺とアストレイアの愛の力で生まれた愛しい子だ」

 愛し合うさなか、ヴィラジュリオはジュリアの出生について聞かされていたのだ。
 ヴィラジュリオの魔力から奇跡的に生まれた子供がジュリアなのだと。
 
 その後、ヴィラジュリオと暮らすためにダンジョン都市から王都に移り住むアストレイアは、ラファ侯爵の墓前に立っていた。
 
 二年前にこの世を去ったことは新聞で知っていたが、墓前に立つ気はなかったアストレイアがここに立っているのには理由があった。
 
 それは、アストレイアの死亡届が出されておらず、アスタヴァイオンの死亡届が受理されていたことを知らされたのだ。
 
「どうしてですか? ラファ侯爵は、ぼくをアスタヴァイオンとして扱っていたじゃないですか? なのに……。あなたが死んでしまった以上知る由もないですが……。ですが、ぼくの戸籍が生きていたことには感謝します。そのお陰でラス様とジュリアと正式に家族として認められたのですから……。もうここには二度ときません。さようなら……」




 その後、王位継承権を破棄したヴィラジュリオは、家臣として王太子に仕えることとなった。
 様々な功績を立てたヴィラジュリオは、エイス公爵家を継ぐこととなる。
 突然現れた、ラファ侯爵家の令嬢と、令嬢との間に生まれた娘に最初のころは沢山の噂話がささやかれていたが、幸せそうにするアストレイアたちを見た者たちはその噂が全くのでたらめなのだと気が付く。
 
 人目も気にせずに妻と娘を溺愛する姿を見た者は、ヴィラジュリオを見てこう言うのだ。
 
「理想の旦那様」

 と。
 かつて悲運の王子と呼ばれていた王子と、その王子を慕い、全てを捧げた令嬢は互いの叶わないはずの初恋を叶え、末永く幸せに暮らしたのだった。
 


『大好きな第三王子の命を救うため全てを捨てた元侯爵令嬢。実は溺愛されていたことに逃げ出した後に全力で気付かされました。』 おわり
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