大好きな第三王子の命を救うため全てを捨てた元侯爵令嬢。実は溺愛されていたことに逃げ出した後に全力で気付かされました。

バナナマヨネーズ

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 ジュトレイゼの言った通り、ヴィラジュリオは一時間程度で目を覚ましていた。
 ヴィラジュリオは、目が覚めた時にアストレイアたちがベッドを囲むようにして見つめていたことに苦笑いをする。
 少し擦れた声ではあったが、はっきりとした口調で言うのだ。
 
「悪いな。心配かけたみたいだ。もう大丈夫だ」

 ヴィラジュリオの言葉に、アストレイアたちはただ、無事でよかったと声を掛ける。
 
「ところで……、シュナイデン? もしかしなくても……」

 一通り無事を喜び合った後のことだった。
 ヴィラジュリオが一段と低い声でそう言ったのは。
 声を掛けられたシュナイデンは、心当たりがありすぎて冷や汗を大量に流しながらも弁解の言葉を口にするが、すべてが余計な一言のオンパレードだと気が付かない。
 
「いや、これはですね。殿下の身を案じて、頭のいいアスタヴァイオンの力を借りようと……。でも、殿下が女性に拒否反応を起こす体質ってことは、なんて言うか、そう不可抗力で、話の流れで……。ね? そう言うこともあるって言うか……。ごめんなさい…………。っひ!!」

 最後の方は尻すぼみになりながらも謝罪の言葉を口にしたシュナイデンが下げた頭を元に戻した時、すさまじく冷たい視線のヴィラジュリオと目が合ったのだ。
 シュナイデンは、小さく飛び上がり、慌てて自分よりも小さなアストレイアの後ろに隠れるのだ。
 そして、アストレイアを盾にするように言い訳を口にするも、すべてが逆効果だった。
 
「仕方ないじゃないですか!! 殿下の一番の友人のアスタヴァイオンが知らないなんて思っても見なかったんです!! 俺でも知っている殿下の体のことを、アスタヴァイオンが知らないなんてことないだろうって思うじゃないですか!!」

 シュナイデンの言葉に、ヴィラジュリオは胸を押さえながらも口を開く。
 
「くっ……。確かにな……。だが、ヴィオにはあまり格好悪いところを知られたくなかったというか……。っち! この脳筋が!!」

 ぶつぶつとそう言いながら、最後に大きな声でシュナイデンを脳筋と罵ったヴィラジュリオは、ベッドから降りて大股で歩き出す。
 そして、べりっと音がしそうな勢いで、シュナイデンからアストレイアを引きはがして自分の腕の中に閉じ込めてしまう。
 
「ふん。いつまで俺のヴィオに抱き着いているんだ。はぁ……。悪いな。心配かけた。それと、体のこと言ってなかったのは、別にヴィオに思うところがあったとかそう言うあれではない……。ただ、そうなった原因がちょっと……な」

 そう言ったヴィラジュリオは、しょんぼりと眉を寄せてしまう。
 そんな弱々しいヴィラジュリオの姿に胸がドキリとしてしまうアストレイアは、慌てたように口を開く。

「だ……大丈夫です。殿下が話したくないことを無理やり聞きだしたりしません。女性に対して拒絶反応を起こしてしまうことだって、言いふらしたりしません」

「あっ……、いや、そう言うことではなくてだな……」

「えっ?」

「はぁ……。うん。大丈夫。分かってる。俺が……。いや、何でもない。そうだな、ちょっと昔のことだが聞いてくれ」

 そう言ったヴィラジュリオは、アストレイアを抱きしめた状態で小さな声で昔のことを語って聞かせたのだ。
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