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第五十五話
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普段は、フィルターが掛ったように聞こえていた音がクリアに聞こえてくる状態に気が付いた華火は、榛色の瞳を何度も瞬いて見せた。
そんな華火の髪を一房手に取り、愛おし気に口付けたウェインがさらに驚くべきことを口にしたのだ。
「ハナビの言うことがはっきりと聞こえる。理由は分からないが、ハナビの言葉が分かるようになっている。ハナビも俺の言葉が分かるのだろう?」
そう言われた華火は、確かにその通りだと首を縦に振っていた。
ただ、キスをしたためにそうなのかもしれないと、そう考えたウェインは、呼び鈴でマリアを呼び出していた。
丁寧な仕草で部屋に入ってきたマリアは、華火を見てにこりと微笑んで言ったのだ。
「ハナビお嬢様、お帰りなさいませ」
華火の耳に、そうはっきりとマリアの声は聞こえていたのだ。
超能力で言葉を理解するための制約もない状態でだ。
そのことに華火は瞳を潤ませて、呟く。
「わかる……。マリアの言葉が分かる……。わたし、この世界の言葉が分かる……」
華火のとても小さな呟きが確かに聞こえたウェインは、華火を抱きしめ、マリアは華火の元に駆け寄りその手を握っていた。
突然言葉が分かるようになった理由をこの時の華火は理解していなかったが、後に気が付くのだ。
自分が本当の意味でこの世界を受け入れたことを。
そして、自分を守るために無意識に心に張ったバリアの存在が、華火を守ろうとした結果がマイナスの方向に作用していたことにだ。
恭子と、元の世界と決別をすることで、この世界を完全に受け入れた華火は無意識に張っていた心のバリアを解いたことで、言葉の壁を乗り越えることができたのだろうと、華火は考えるも、それが本当にそうなのかは分からなかった。
そう話す華火に、ウェインはあっけらかんとした様子で、とんでもなく簡単に言うのだ。
「愛のなせる業だ。理由なんて後からついてくるものだ。そう、例えば、君が俺を思う気持ちと、俺が君を思う気持ちが奇跡を起こしたんだ。素敵な考えだろう?」
そう言って、片目を瞑るウェインの意外とおちゃめな一面に華火は思うのだ。
確かに、理由なんて大した問題ではないかもしれないと、今ある事実が重要なのだと。
それなら、愛の奇跡という方が確かにしっくり来たのだ。
「はい。そうですね。愛のパワーは偉大です。だから、これからもわたしはウェインさんを愛し続けますね」
予想をはるかに超える華火の可愛らしい返答にウェインは、ぎゅっとその細い体を抱きしめていた。
「ああ、そうだな。俺も華火を愛し続けるよ」
その後、華火の戸籍を正式に用意したウェインの行動は早かった。
結婚式の準備はもちろん、新婚旅行のための休暇申請、新婚旅行先の手配など、いつの間に整えたのかという速さで通常は早くても半年がかかる準備を一月で終わらせていたのだ。
マリアの協力もあり、華火のウエディングドレスはとても素晴らしい仕上がりとなった。
異世界から召喚され、最初こそ不安に思う日々に押しつぶされそうになっていた華火だったが、この世界に来られてよかったと心から思うのだ。
愛おしい人と出会うために、この世界に来ることはきっと運命づけられていたのだと。
白を基調にした軍服のような衣装に身を包むウェインの横に並び、異世界の神の前で愛を誓う華火。
司教の声に促され、ウェインと向き合うと、純白のベール越しにでも彼の格好良さにキュンキュンと胸が締め付けられる思いだった。
そんな華火のベールをあげつつウェインは、甘い声で言うのだ。
「ハナビ……。可愛い。俺のお嫁さん」
そう言って、司教が誓いの口付けを口に出す前に華火の小さな唇を奪うのだ。
驚きはしたものの、華火もそれを受け入れ可愛らしくウェインの唇を啄む。
そんな二人に司教は困ったような、それでいて優しい笑みを浮かべて誰にともなく言うのだ。
お二人に祝福をと。
『わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。』 おわり
そんな華火の髪を一房手に取り、愛おし気に口付けたウェインがさらに驚くべきことを口にしたのだ。
「ハナビの言うことがはっきりと聞こえる。理由は分からないが、ハナビの言葉が分かるようになっている。ハナビも俺の言葉が分かるのだろう?」
そう言われた華火は、確かにその通りだと首を縦に振っていた。
ただ、キスをしたためにそうなのかもしれないと、そう考えたウェインは、呼び鈴でマリアを呼び出していた。
丁寧な仕草で部屋に入ってきたマリアは、華火を見てにこりと微笑んで言ったのだ。
「ハナビお嬢様、お帰りなさいませ」
華火の耳に、そうはっきりとマリアの声は聞こえていたのだ。
超能力で言葉を理解するための制約もない状態でだ。
そのことに華火は瞳を潤ませて、呟く。
「わかる……。マリアの言葉が分かる……。わたし、この世界の言葉が分かる……」
華火のとても小さな呟きが確かに聞こえたウェインは、華火を抱きしめ、マリアは華火の元に駆け寄りその手を握っていた。
突然言葉が分かるようになった理由をこの時の華火は理解していなかったが、後に気が付くのだ。
自分が本当の意味でこの世界を受け入れたことを。
そして、自分を守るために無意識に心に張ったバリアの存在が、華火を守ろうとした結果がマイナスの方向に作用していたことにだ。
恭子と、元の世界と決別をすることで、この世界を完全に受け入れた華火は無意識に張っていた心のバリアを解いたことで、言葉の壁を乗り越えることができたのだろうと、華火は考えるも、それが本当にそうなのかは分からなかった。
そう話す華火に、ウェインはあっけらかんとした様子で、とんでもなく簡単に言うのだ。
「愛のなせる業だ。理由なんて後からついてくるものだ。そう、例えば、君が俺を思う気持ちと、俺が君を思う気持ちが奇跡を起こしたんだ。素敵な考えだろう?」
そう言って、片目を瞑るウェインの意外とおちゃめな一面に華火は思うのだ。
確かに、理由なんて大した問題ではないかもしれないと、今ある事実が重要なのだと。
それなら、愛の奇跡という方が確かにしっくり来たのだ。
「はい。そうですね。愛のパワーは偉大です。だから、これからもわたしはウェインさんを愛し続けますね」
予想をはるかに超える華火の可愛らしい返答にウェインは、ぎゅっとその細い体を抱きしめていた。
「ああ、そうだな。俺も華火を愛し続けるよ」
その後、華火の戸籍を正式に用意したウェインの行動は早かった。
結婚式の準備はもちろん、新婚旅行のための休暇申請、新婚旅行先の手配など、いつの間に整えたのかという速さで通常は早くても半年がかかる準備を一月で終わらせていたのだ。
マリアの協力もあり、華火のウエディングドレスはとても素晴らしい仕上がりとなった。
異世界から召喚され、最初こそ不安に思う日々に押しつぶされそうになっていた華火だったが、この世界に来られてよかったと心から思うのだ。
愛おしい人と出会うために、この世界に来ることはきっと運命づけられていたのだと。
白を基調にした軍服のような衣装に身を包むウェインの横に並び、異世界の神の前で愛を誓う華火。
司教の声に促され、ウェインと向き合うと、純白のベール越しにでも彼の格好良さにキュンキュンと胸が締め付けられる思いだった。
そんな華火のベールをあげつつウェインは、甘い声で言うのだ。
「ハナビ……。可愛い。俺のお嫁さん」
そう言って、司教が誓いの口付けを口に出す前に華火の小さな唇を奪うのだ。
驚きはしたものの、華火もそれを受け入れ可愛らしくウェインの唇を啄む。
そんな二人に司教は困ったような、それでいて優しい笑みを浮かべて誰にともなく言うのだ。
お二人に祝福をと。
『わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。』 おわり
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