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第四十六話
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酷い吐き気と寒さでウェインが目を覚ました時、そこは見覚えのある場所だった。
ぼうっとしながら、自分が何故自室で寝ているのかという疑問が頭を過ったが、何も思い出せなかった。
ぼんやりとしていると、部屋の外から言い争う声が聞こえてきて、その言い争う内容が耳に届いたウェインは、何か大切なものを失ったような喪失感に心が引き裂かれそうな思いがして、ベッドから飛び降りていた。
しかし、手足が言うことを聞かず、無様にもベッドから転がり落ちてしまう。
ドサリという音が聞こえたのか、扉の外で言い争う声が止んでいた。
ウェインの自室の扉を乱暴に開けたマリアは、叫ぶように床に転がるウェインに言葉を叩きつけていた。
「閣下!! どうして、どうしてなんですか!!」
「やめろマリア! ウェイン先輩にだって、どうしようもないことがある」
「うるさい!! 馬鹿!! 知ってる。分かってる。これはハナビお嬢様が望んだことだって……。でも、でも!! あああああああああ!!」
そう言って、あのマリアが床に座り込んで声を上げて泣いたのだ。
「俺は……。そうだ、空石を……瘴気……、爆心地で……」
一つ一つ思い出すように呟いたウェインは、床に倒れ伏したまま、最後に聞こえた確かな声を思い出していた。
「そうだ……、あの時、幻のハナビが俺に待っていてと、必ず戻ると……。ハナビ、ハナビは? 俺はどうしてここに?!」
頭を抱えるようにしてそう口にしたウェインに向かって、マリアは心を抉るような事実を突きつけた。
「ハナビお嬢様は……、閣下の代わりに爆心地に……。私は、お嬢様を止められなかった! うわあああああ!!!」
そう言って、マリアは床を拳で何度も殴りつけた。
「ハナビがいない? 俺の代わりに……? まさか、あれは本物のハナビだったのか? そんな!! あれから、どのくらい俺は寝ていた!」
取り乱すウェインの問いに、ランジヤが憔悴しきった様子で答えた。
「二日です……。先輩が突然屋敷に現れてから、二日ほど経ってます……。それと……瘴気が徐々に薄くなっているという報告が各地で上がっています……」
「そんな……。そうだ、迎えに行かなければ……」
そう言ったウェインは、力の入らない体を無理やり動かしてふらふらと立ち上がる。
そんなウェインをランジヤは、羽交い絞めにして引き留めていた。
「無理です。そんな体で! 無理をすれば、死にます。ハナビ嬢のことは、捜索隊が……。いえ、俺が探しだします! だから、先輩は今は体を休めてください」
「駄目だ! ハナビを迎えにいかな―――」
抵抗するウェインに当て身をして気を失わせたランジヤは、辛そうな表情でウェインをベッドに寝かせたのだ。
「すみません。でも……。マリア、先輩を頼みます」
「駄目よ! 私が行くから、あんたが閣下の側にいなさい!」
涙でぐちゃぐちゃの顔をあげたマリアがそう言うも、ランジヤは、頭を横に振ってマリアの言葉を拒否した。
「駄目だよ。マリアは、閣下とジンさんの側にいてあげて。私は大丈夫だから」
「駄目ったら駄目! あんたは私の言うことを聞いて大人しくしていなさい!」
ランジヤはしゃがみ込んで、マリアを抱き寄せて思いを込めて言うのだ。
「ごめん。でも、これだけは駄目。大切な人を危険だと分かっているところには行かせられない。だから、マリアはここにいて。私は、大丈夫。ほら、私って今までマリアとの約束を破ったことないでしょ? ね? だから、私を信じて待っていて。お願い」
縋るような瞳でランジヤにお願いをされたマリアは、心がぐちゃぐちゃで何も言い返すことが出来なかった。
ただ、ランジヤの服をぎゅっと握ってその胸に顔を埋めて泣くことしかできなかったのだ。
最終的には、瞼を腫らしたマリアに見送られて、ランジヤは走り出していた。
そして、単身馬を走らせたランジヤは、国境に来てその様子に目を丸くさせたのだ。
「なんだよこれ……」
ぼうっとしながら、自分が何故自室で寝ているのかという疑問が頭を過ったが、何も思い出せなかった。
ぼんやりとしていると、部屋の外から言い争う声が聞こえてきて、その言い争う内容が耳に届いたウェインは、何か大切なものを失ったような喪失感に心が引き裂かれそうな思いがして、ベッドから飛び降りていた。
しかし、手足が言うことを聞かず、無様にもベッドから転がり落ちてしまう。
ドサリという音が聞こえたのか、扉の外で言い争う声が止んでいた。
ウェインの自室の扉を乱暴に開けたマリアは、叫ぶように床に転がるウェインに言葉を叩きつけていた。
「閣下!! どうして、どうしてなんですか!!」
「やめろマリア! ウェイン先輩にだって、どうしようもないことがある」
「うるさい!! 馬鹿!! 知ってる。分かってる。これはハナビお嬢様が望んだことだって……。でも、でも!! あああああああああ!!」
そう言って、あのマリアが床に座り込んで声を上げて泣いたのだ。
「俺は……。そうだ、空石を……瘴気……、爆心地で……」
一つ一つ思い出すように呟いたウェインは、床に倒れ伏したまま、最後に聞こえた確かな声を思い出していた。
「そうだ……、あの時、幻のハナビが俺に待っていてと、必ず戻ると……。ハナビ、ハナビは? 俺はどうしてここに?!」
頭を抱えるようにしてそう口にしたウェインに向かって、マリアは心を抉るような事実を突きつけた。
「ハナビお嬢様は……、閣下の代わりに爆心地に……。私は、お嬢様を止められなかった! うわあああああ!!!」
そう言って、マリアは床を拳で何度も殴りつけた。
「ハナビがいない? 俺の代わりに……? まさか、あれは本物のハナビだったのか? そんな!! あれから、どのくらい俺は寝ていた!」
取り乱すウェインの問いに、ランジヤが憔悴しきった様子で答えた。
「二日です……。先輩が突然屋敷に現れてから、二日ほど経ってます……。それと……瘴気が徐々に薄くなっているという報告が各地で上がっています……」
「そんな……。そうだ、迎えに行かなければ……」
そう言ったウェインは、力の入らない体を無理やり動かしてふらふらと立ち上がる。
そんなウェインをランジヤは、羽交い絞めにして引き留めていた。
「無理です。そんな体で! 無理をすれば、死にます。ハナビ嬢のことは、捜索隊が……。いえ、俺が探しだします! だから、先輩は今は体を休めてください」
「駄目だ! ハナビを迎えにいかな―――」
抵抗するウェインに当て身をして気を失わせたランジヤは、辛そうな表情でウェインをベッドに寝かせたのだ。
「すみません。でも……。マリア、先輩を頼みます」
「駄目よ! 私が行くから、あんたが閣下の側にいなさい!」
涙でぐちゃぐちゃの顔をあげたマリアがそう言うも、ランジヤは、頭を横に振ってマリアの言葉を拒否した。
「駄目だよ。マリアは、閣下とジンさんの側にいてあげて。私は大丈夫だから」
「駄目ったら駄目! あんたは私の言うことを聞いて大人しくしていなさい!」
ランジヤはしゃがみ込んで、マリアを抱き寄せて思いを込めて言うのだ。
「ごめん。でも、これだけは駄目。大切な人を危険だと分かっているところには行かせられない。だから、マリアはここにいて。私は、大丈夫。ほら、私って今までマリアとの約束を破ったことないでしょ? ね? だから、私を信じて待っていて。お願い」
縋るような瞳でランジヤにお願いをされたマリアは、心がぐちゃぐちゃで何も言い返すことが出来なかった。
ただ、ランジヤの服をぎゅっと握ってその胸に顔を埋めて泣くことしかできなかったのだ。
最終的には、瞼を腫らしたマリアに見送られて、ランジヤは走り出していた。
そして、単身馬を走らせたランジヤは、国境に来てその様子に目を丸くさせたのだ。
「なんだよこれ……」
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