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第二十九話
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何故この世界に呼ばれたのか、自分の身に何が起こっているのかをウェインから聞かされた華火は、不安にその瞳を揺らしていた。
そんな華火を心配するウェインは、ただ、華火の華奢な体を抱きしめたのだ。
触れ合った場所から伝わるウェインの温かさに華火は自然と安心感を覚える。
安心感を覚えるのと同時に、ウェインからの触れ合いが治療目的だったことを知った華火は、心の隅でそれを残念に思うのだ。
腕の中で大人しく抱きしめられている華火を可愛いと思うのと同時に、華火が自分の元からいなくなってしまうかもしれないことを覚悟したウェインは、非常に大切な話を切り出していた。
「ウラーギサナヒーソヘチーク。アヅンーニサナハニジアドメトツ」
そう言ったウェインは、出来るだけ感情を出さないようにと心の中で自分に言い聞かせながら口を開いた。
「アヅンーッタクチマグオフオフセアキニアケソノトモウハナビ」
「えっ?」
「アヘディアケソノトム、ウオラドトクリエッタモウィレアコニミカグンイズーヤユコザク」
「いや……嫌です……。離れたくないです。わたし、うぇいんさんが好きなんです。離れたくなんてないです!」
ウェインの口から、元の世界に戻るべきだと言われた気がした華火は、必死に頭を振って離れたくないと縋りついていた。
そんな華火に対して、何かを堪えるように表情を硬くしたウェインが言うのだ。
「イーソヘテアグンークコユ。アディリコディチアホヌレアクタグオハムセアコウィミク。アヅンイーソヘディアニソチソヨヲトクラモドチノコケドゥオジンアコニコッチ。アラカヅ、イーソヘチサドウェアトケテアグンークコユ」
ウェインの言葉に華火は、イヤイヤと頭を振って、声を震わせた。
「嫌です。わたしは、ここに残ります。うぇいんさんの傍に居させてください!」
瞳を潤ませた華火の訴えをウェインは、嬉しく思いながらそれを表には出さず、冷静さを装って、小さな子供に言い聞かせるように言うのだ。
「アホトクイオツロコニノコク、アドトクイオツレツソウェテブソネディアケソノトム。ンイズーヤユコザク、アヅンーノトクイオツレツソウェテブサチウジカギミケダマミ。オソカラカヅ、アヅンイーソヘチスンアドゥテキヌオィアナギアクオケデウアテアグンークコユ」
ウェインが、華火のことを思ってそう言ってくれていることは理解していたが、心がそれを否定していた。
泣いてウェインを困らせたかった訳ではないのに、どうしても涙を止めることができなかった。
華火は、唇を噛んで嗚咽を堪えるが、どうしても止めることができなかった。
ウェインは、泣きじゃくる華火を今すぐ抱きしめて慰めたかったが、ぐっと手を握りしめて心とは反対の言葉を口にしたのだ。
「イアナヒロムツルシエチホウィトミコニミク。イーソヘテアグンークコヨディチウオマガヅ。エディアケシアナラカヲミナン、アギトミクレソィネロアチソゴホウィミク…………。ウレクミナユソギハギトミコノス……、オチアネリソマクオジンアクリエチカラキトミコナユスンーク。エッチソウオジンアクイオタディクソウィミカゲロ、アキアニアヘテラルジキヒヌオジンアコネロ。アヅンイーソヘテアグンークコユ」
辛そうにそう言葉を吐き出すウェインを前にして、華火は心が引き裂かれそうだった。
(わたしは、わたし自身の意思でウェインさんを好きなのであって、それ以外の感情なんて知らない!! 保護してもらったからとかそんなの関係なくウェインさんが好きなの!! この身持ちは、幻なんかじゃない!! わたしの心がウェインさんを好きで、ウェインさんを欲しているの!!)
心の中がぐちゃぐちゃで、言葉に出すことができない華火は、泣きじゃくりながら嗚咽することしかできなかった。
そんな華火を心配するウェインは、ただ、華火の華奢な体を抱きしめたのだ。
触れ合った場所から伝わるウェインの温かさに華火は自然と安心感を覚える。
安心感を覚えるのと同時に、ウェインからの触れ合いが治療目的だったことを知った華火は、心の隅でそれを残念に思うのだ。
腕の中で大人しく抱きしめられている華火を可愛いと思うのと同時に、華火が自分の元からいなくなってしまうかもしれないことを覚悟したウェインは、非常に大切な話を切り出していた。
「ウラーギサナヒーソヘチーク。アヅンーニサナハニジアドメトツ」
そう言ったウェインは、出来るだけ感情を出さないようにと心の中で自分に言い聞かせながら口を開いた。
「アヅンーッタクチマグオフオフセアキニアケソノトモウハナビ」
「えっ?」
「アヘディアケソノトム、ウオラドトクリエッタモウィレアコニミカグンイズーヤユコザク」
「いや……嫌です……。離れたくないです。わたし、うぇいんさんが好きなんです。離れたくなんてないです!」
ウェインの口から、元の世界に戻るべきだと言われた気がした華火は、必死に頭を振って離れたくないと縋りついていた。
そんな華火に対して、何かを堪えるように表情を硬くしたウェインが言うのだ。
「イーソヘテアグンークコユ。アディリコディチアホヌレアクタグオハムセアコウィミク。アヅンイーソヘディアニソチソヨヲトクラモドチノコケドゥオジンアコニコッチ。アラカヅ、イーソヘチサドウェアトケテアグンークコユ」
ウェインの言葉に華火は、イヤイヤと頭を振って、声を震わせた。
「嫌です。わたしは、ここに残ります。うぇいんさんの傍に居させてください!」
瞳を潤ませた華火の訴えをウェインは、嬉しく思いながらそれを表には出さず、冷静さを装って、小さな子供に言い聞かせるように言うのだ。
「アホトクイオツロコニノコク、アドトクイオツレツソウェテブソネディアケソノトム。ンイズーヤユコザク、アヅンーノトクイオツレツソウェテブサチウジカギミケダマミ。オソカラカヅ、アヅンイーソヘチスンアドゥテキヌオィアナギアクオケデウアテアグンークコユ」
ウェインが、華火のことを思ってそう言ってくれていることは理解していたが、心がそれを否定していた。
泣いてウェインを困らせたかった訳ではないのに、どうしても涙を止めることができなかった。
華火は、唇を噛んで嗚咽を堪えるが、どうしても止めることができなかった。
ウェインは、泣きじゃくる華火を今すぐ抱きしめて慰めたかったが、ぐっと手を握りしめて心とは反対の言葉を口にしたのだ。
「イアナヒロムツルシエチホウィトミコニミク。イーソヘテアグンークコヨディチウオマガヅ。エディアケシアナラカヲミナン、アギトミクレソィネロアチソゴホウィミク…………。ウレクミナユソギハギトミコノス……、オチアネリソマクオジンアクリエチカラキトミコナユスンーク。エッチソウオジンアクイオタディクソウィミカゲロ、アキアニアヘテラルジキヒヌオジンアコネロ。アヅンイーソヘテアグンークコユ」
辛そうにそう言葉を吐き出すウェインを前にして、華火は心が引き裂かれそうだった。
(わたしは、わたし自身の意思でウェインさんを好きなのであって、それ以外の感情なんて知らない!! 保護してもらったからとかそんなの関係なくウェインさんが好きなの!! この身持ちは、幻なんかじゃない!! わたしの心がウェインさんを好きで、ウェインさんを欲しているの!!)
心の中がぐちゃぐちゃで、言葉に出すことができない華火は、泣きじゃくりながら嗚咽することしかできなかった。
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