わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
74 / 111
翻訳版

第十八話

しおりを挟む
 その時華火は、見てはいけないものを見てしまったような気がしつつも、目が離せずにいた。
 火照る顔を両手で押さえながら、じっと目撃してしまった光景を見つめ続けていたのだ。
 
(きゃう~~。どうしよう……。はっ!! きゃーきゃー!! マリアったら、マリアったら~。あっ、あっ、ああああ。あらあら! まあまあ!!)

 華火は、視線の先の光景に心の中で黄色い声を上げるのだ。
 そんな華火の視線の先にあった光景とは、背の高い木を背にした庭師のジンにたいして、マリアが壁ドンならぬ、木ドンをしている場面だった。
 
 何故華火が、マリアの木ドンを目撃することになったのかというと、それは本当に偶然だったのだ。
 
 その日、新しい花の苗を植えるのを手伝っていた華火は、少し休憩するつもりが、ぽかぽか陽気でついつい居眠りをしてしまっていたのだ。
 木陰ですやすやと眠ってしまっていた華火が目を覚ました時、少し離れた場所にある木の下にいるジンとマリアが見えたのだ。
 目覚めたばかりの華火が、ぼんやりとマリアとジンの様子を見ていると、突然マリアがジンを木に追い詰めたのだ。
 そして、ジンの背中が木にぶつかったのと同時に、マリアは左手で木を突いたのだ。
 マリアの左腕がちょうど顔を隠してしまっていて、彼女がどんな顔をしているのかは華火からは見えなかったが、きっと頬を染めているのだろうと華火は想像していた。
 
(やっぱり、そうなんだ。マリア、ジンさんと一緒にいるとき、すごく緊張してたし、やっぱり彼のことが好きなんだわ!! そうよね、マリアは情熱的なところがある気がしていたし、彼女から告白っていうこともあり得るかも! きっと、「ジンさん、貴方のことが好きです」「マリア君……、俺も……」「ジンさん!!」なんて感じで、きっとうまくいくわよね。ふふふ)

 そんなことを想像しつつ、頬を染めながら見つめていると、二人の話声が聞こえてきたのだ。
 
『師匠! 私のハナビお嬢様にあまりべたべたしないでください! いくら師匠でもぶっ殺したくなってしまします!』

『はぁ……。バカを言うな。ハナビに手を出すわけないだろうが』

『はあぁ?! あんなに可愛らしいハナビお嬢様に手を出さないなんて、それでも×××付いてんですか? いえ、それは関係ないですね。×××がない私でも常に理性がグラつく可愛さなので、師匠は人じゃないですね。はい、虫ですね、虫』

『お前は、本当にバカなんだな……。お前の頭の中は、脳じゃなく筋肉がみっしり詰まっているとしか思えない発言だな。そして、仮にも女なんだから、×××ゆーな……』

『バカとは何ですか! バカっていう方がバカなんですよ! 師匠のバーカ!! それに、脳ミソが筋肉な訳ないじゃないですか。バカなんですか? って、私、仮じゃなくて、本当に女ですから!』

『ぐぅっ……。やめろ、お前のその力で胸を打たれると肋骨が……』

『なっ!! そんな訳ないでしょうが!!』

『ぐぅっ!!』

『ちょっ!! 師匠!! か弱いフリはやめてください!!』

『…………』

 華火には二人の会話は分からなかったが、話の途中、マリアがジンの胸をポカポカと可愛らしく叩く姿に、華火の想像は膨らむのだ。
 
(きゃ~~。もしかして、二人ってもうすでにお付き合いしているの? それで、痴話喧嘩的な? きゃ~きゃ~。ふふ、二人は恋人同士なんだね……、恋人かぁ……)

 マリアとジンの楽しげな姿を見た華火は、恋人という言葉を胸の中で呟いていた。
 そう呟いた華火は、ふとウェインの優しい微笑みを思い出す。すると、華火の胸は、ぎゅっと締め付けられたのだ。
 何故か急に胸が苦しくなった華火は、自分の胸に手を当てながら、無性にウェインに会いたいと思った時だった。

『ハナビ嬢、ただいま』

 ウェインの優しい声が聞こえてきたのと同時に、その温もりに華火は包まれていた。
 背後から抱きしめられてしまった華火は、前に回されたウェインの手に自分の手を重ねる。そして、キュッと握りしめてから、背後のウェインを振り返りつつ笑顔を見せていた。
 
「うぇいんさん、おかえりなさい」

 華火の笑顔を見たウェインは、眩しそうに目を細めてから、華火のこめかみにチュッとキスをしていた。
 
 キスをされた華火は、ぼっと、一瞬で体温を上昇させてしまっていた。
 そんな華火を可愛いらしいと思ったウェインは、太陽さえも霞んでしまいそうな、とても眩しい笑顔を見せていた。
 
 ウェインの見せる眩しいほどの笑顔に、華火は胸が痛いほど高鳴っていた。
 そして、自然とその言葉が華火の口を衝いて出たのだ。
 
「すき……」

 その言葉が口から飛び出たとたん、華火は自覚したのだ。
 
(そっか……、わたし、ウェインさんのことが好きなんだ……。すき……、好き…………!!!!)

 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス
恋愛
 家庭にも学校にも居場所がない女子高生の花梨は、ある日夢で男の子に出会う。  その日から毎晩夢で男の子と会うが、時間のペースが違うようで1ヶ月で立派な青年に?  ある日、龍の娘として治癒の力と共に、成長した青年がいる世界へ行くことに! 「ヴィラ(青年)に会いたいけど、会いに行ったら龍の娘としての責任が!なんなら言葉もわからない!」  混乱しながらも花梨が龍の娘とした覚悟を決めて、進んでいくお話。 ※こちらの作品は2007年自サイトにて連載、完結した小説です。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します

大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。 「私あなたみたいな男性好みじゃないの」 「僕から逃げられると思っているの?」 そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。 すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。 これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない! 「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」 嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。 私は命を守るため。 彼は偽物の妻を得るため。 お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。 「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」 アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。 転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!? ハッピーエンド保証します。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。 つきましては和平の為の政略結婚に移ります。 冷酷と呼ばれる第一王子。 脳筋マッチョの第二王子。 要領良しな腹黒第三王子。 選ぶのは三人の難ありな王子様方。 宝石と貴金属が有名なパルス国。 騎士と聖女がいるシェスタ国。 緑が多く農業盛んなセラフィム国。 それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。 戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。 ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。 現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。 基本甘々です。 同名キャラにて、様々な作品を書いています。 作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。 全員ではないですが、イメージイラストあります。 皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*) カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m 小説家になろうさん、ネオページさんでも掲載中。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...