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本編
007 エゼクの傷
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ジェシカの思いも寄らないカミングアウトを聞いてしまった日の夜。
いつものように、夜の散歩に出掛けたエゼクだったが、自分の心に素直に従うジェシカを羨ましく思いながら、いつもの公園に足を向けていた。
公園に着くと、ローグトリアムが既にシートを広げて星を見ている姿が目に入った。
月明かりに照らされたローグトリアムは、儚く脆い印象があったが、話してみると、のんびり屋で恥ずかしがり屋の一面を知ることとなった。
いつも、星の話や読んだ本の話をして、静かな夜を過ごす二人は、次第にお互いを大切に思うようになってきていた。
いつだったが、恥ずかしそうにローグトリアムは言ったのだ。
「エゼクさん……。私のことは、リアムって呼んでください……。そう呼んでくれると嬉しいです……」
月明かりでも分かるくらい頬を赤く染めてそう言うローグトリアムは、可愛い以外の何者でもなかった。
エゼクは、一瞬喉を鳴らしてから、ローグトリアムの願いを聞き入れていた。
「ああ。それでは、これからリアムって呼ばせてもらうよ」
「はい。嬉しいです」
そんな事があってから、二人の距離は一層近づいて行ったのだった。
その日は、ローグトリアムが夜食としてサンドイッチを用意してくれていたのだが、顔の傷をローグトリアムに見られたくなかったエゼクは、食欲が無いという理由をつけてそれを断ったのだ。
「エゼクさん、大丈夫ですか?もしかしてお疲れですか?それでしたら、私に付き合わずに早く帰って寝てください」
そう言って、ローグトリアムに心配されてしまったのだ。
心配そうにエゼクを見るローグトリアムに嘘を吐き通す事ができなくなったエゼクは、弱々しく真実を語ったのだ。
「すまない……。実は、顔に大きく醜い怪我を負っていて、君に見られてくなかったんだ。きっと、この傷を見たら君は俺を怖がるから……」
そう言って、顔を伏せるエゼクに、ローグトリアムは怒ったように言ったのだ。
「わ、私はエゼクさんのこと怖がったりしません!!見くびらないでください!!」
ローグトリアムは、そう言って頬を膨らませたのだ。
そして、少年にしては細くしなやかな指先で、エゼクが着けていた面頬に触れたのだ。
暗がりで見つめ合う内に、エゼクは、ローグトリアムならいつかのアンリエットのように受け入れてくれると思えるようになっていた。
眉を寄せながらも、エゼクは面頬の留め具に手を掛けてそれを外した。
面頬の外れたエゼクの顔は、新しい皮膚に覆われて爛れは無くなっていたが、依然として唇から頬にかけての肉が抉れた状態に変わりはなかった。
「この傷は、二年前の戦争で負ったんだ。酷い傷だろう?」
そう言って、久しぶりにガウェインとアンリエット以外の人の目に顔の傷を晒していた。
その傷を見たローグトリアムは、一瞬目を見開いた後に、恐る恐るその傷に触れて言ったのだ。
「い、痛くないですか?」
「いや、もう痛みはないな」
「聞いてもいいですか……?」
痛ましそうにしながらも、優しくエゼクの傷を撫でるローグトリアムの言いたいことが分かったエゼクは、言ったのだ。
「つまらない話だぞ?」
「いいえ、それでも聞きたいです。貴方の負った傷がどんな物だったのかを……」
いつものように、夜の散歩に出掛けたエゼクだったが、自分の心に素直に従うジェシカを羨ましく思いながら、いつもの公園に足を向けていた。
公園に着くと、ローグトリアムが既にシートを広げて星を見ている姿が目に入った。
月明かりに照らされたローグトリアムは、儚く脆い印象があったが、話してみると、のんびり屋で恥ずかしがり屋の一面を知ることとなった。
いつも、星の話や読んだ本の話をして、静かな夜を過ごす二人は、次第にお互いを大切に思うようになってきていた。
いつだったが、恥ずかしそうにローグトリアムは言ったのだ。
「エゼクさん……。私のことは、リアムって呼んでください……。そう呼んでくれると嬉しいです……」
月明かりでも分かるくらい頬を赤く染めてそう言うローグトリアムは、可愛い以外の何者でもなかった。
エゼクは、一瞬喉を鳴らしてから、ローグトリアムの願いを聞き入れていた。
「ああ。それでは、これからリアムって呼ばせてもらうよ」
「はい。嬉しいです」
そんな事があってから、二人の距離は一層近づいて行ったのだった。
その日は、ローグトリアムが夜食としてサンドイッチを用意してくれていたのだが、顔の傷をローグトリアムに見られたくなかったエゼクは、食欲が無いという理由をつけてそれを断ったのだ。
「エゼクさん、大丈夫ですか?もしかしてお疲れですか?それでしたら、私に付き合わずに早く帰って寝てください」
そう言って、ローグトリアムに心配されてしまったのだ。
心配そうにエゼクを見るローグトリアムに嘘を吐き通す事ができなくなったエゼクは、弱々しく真実を語ったのだ。
「すまない……。実は、顔に大きく醜い怪我を負っていて、君に見られてくなかったんだ。きっと、この傷を見たら君は俺を怖がるから……」
そう言って、顔を伏せるエゼクに、ローグトリアムは怒ったように言ったのだ。
「わ、私はエゼクさんのこと怖がったりしません!!見くびらないでください!!」
ローグトリアムは、そう言って頬を膨らませたのだ。
そして、少年にしては細くしなやかな指先で、エゼクが着けていた面頬に触れたのだ。
暗がりで見つめ合う内に、エゼクは、ローグトリアムならいつかのアンリエットのように受け入れてくれると思えるようになっていた。
眉を寄せながらも、エゼクは面頬の留め具に手を掛けてそれを外した。
面頬の外れたエゼクの顔は、新しい皮膚に覆われて爛れは無くなっていたが、依然として唇から頬にかけての肉が抉れた状態に変わりはなかった。
「この傷は、二年前の戦争で負ったんだ。酷い傷だろう?」
そう言って、久しぶりにガウェインとアンリエット以外の人の目に顔の傷を晒していた。
その傷を見たローグトリアムは、一瞬目を見開いた後に、恐る恐るその傷に触れて言ったのだ。
「い、痛くないですか?」
「いや、もう痛みはないな」
「聞いてもいいですか……?」
痛ましそうにしながらも、優しくエゼクの傷を撫でるローグトリアムの言いたいことが分かったエゼクは、言ったのだ。
「つまらない話だぞ?」
「いいえ、それでも聞きたいです。貴方の負った傷がどんな物だったのかを……」
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