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第十六話 幼馴染がわたしの旦那様になりました
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シャロンのお腹が膨らんだころ、時刻はすっかり遅い時間になってしまっていた。
気が付いた時には、窓の外が暗くなり、月が出ていることを知ったシャロンは慌てて屋敷を出て行こうとした。
「大変! もうこんな時間? 急いで宿を探さないと!!」
そう言って、あたふたとするシャロンを抱きしめたアイザックは、表情を曇らせる。
「シャロンは、俺の妻になるんだろう? それなら、今日からここで暮らせばいい」
アイザックの言葉に、シャロンはとんでもないと首を振る。
それに納得がいかないアイザックは、何故だとシャロンに詰め寄るのだ。
「だって、アイザックは、お姉様と離婚したばかりで、すぐに結婚だなんて……。立場的に体面が悪いんじゃ……。急ぐ必要はないわ。結婚はいちね―――」
「問題ない。俺の体面など、どうにでもなる。だから、君は気にしなくていい。それに、アッサム子爵には、すでに手紙を送っている」
「え?」
いつの間にそんなことをしていたのかと、シャロンは目を丸くする。
何度も瞬きを繰り返すシャロンの額にキスをしたアイザックは、目元を緩めて言うのだ。
「大丈夫。君の家には、ある程度の資金と、信用の置ける会計士を送っているから、今後アッサム子爵が金で困ることは無くなるだろう。本当はもっと早くこうすればよかったんだが、子爵は新しい使用人を入れたがらなくてな。だが、ようやく受け入れてくれて良かったよ」
そんなことを言っていたが、実際にはシャロンが眠っている間に、部下を子爵の下に使いに出して、多少強引な話し合いの結果受け入れさせたとも言えたが、シャロンには敢えて詳しく説明はしなかった。
駄目な父と兄を見限るつもりで荷物をまとめていたシャロンではあったが、多少は残してきた二人を心配していたため、アイザックの手配には素直にお礼をいうことにしたのだ。
「そうなんだ。アイザック、いろいろとありがとう」
「いいんだ。そう言う訳で、今日から君はここで暮らすんだ」
「うん。アイザック、これからよろしくね」
「ああ」
こうして、長い間拗れていたシャロンとアイザックは、無事に仲直りをすることができたのだった。
翌日、シャロンは顔見知りの多いセイロン伯爵家使用人たちに、やけにニコニコとした表情で迎えられることとなる。
それには、シャロンは居心地の悪い思いをすることになったが、実際には使用人たちは、アイザックの長年の拗らせた初恋が叶い、アイザックを内心ニヨニヨと見つめていたのがにじみ出ていただけだった。
そして、その日の夕食時、シャロンは何気ない会話の中で恥ずかしい思いをすることとなり、アイザックと仲直り後すぐに喧嘩をすることとなるのだ。
セイロン伯爵家の料理長はとても腕のいい男だった。
シャロンは、出された食事を大変気に入り、始終笑顔で食事を終えたのだ。
そして、食後の紅茶を飲みながら、こう言ったのだ。
「ふうぅ。とても美味しかったわ。あっ、そうだ。リクエストしたらそれを出してもらえるのかしら?」
シャロンのお願いならば、どんな物でも出す用意があったアイザックは、笑顔で頷く。
それを見たシャロンは、にっこりと微笑んで言うのだ。
「やったぁ。それなら、明日のおやつにラパァヴを食べたいな?」
シャロンのその言葉を聞いたアイザックは、紅茶を噴き出し、傍に控えていた給仕は顔を真っ赤に染め、執事に至っては、表情が固まってしまっていた。
周囲の反応がおかしいことに気が付いたシャロンは首を傾げてアイザックに問いかける。
「あれ? わたし、なにか変なこと言った?」
不思議そうな表情をするシャロンに、傍に控えていたメイドがそそそっと進み出て、小さな声で耳打ちして何がおかしかったのかを説明する。
メイドの説明を聞いた瞬間、シャロンは顔を真っ赤にさせて捨て台詞とともに逃げ出していた。
「あああああアイザックのぉぉ…………、ばかーーーーー!! なんで教えてくれなかったのよ!! ううっぅ……、わーーーーーー!!!」
メイドがシャロンに説明した内容は……。
「お嬢様、ラパァヴは、一般的に初夜の後、夫となる者が妻になる者に用意するお菓子でございます。また、そう言ったことを自分から言い出せない妻のための隠れた隠語にもなっておりまして「ラパァヴを食べたい」という言葉は、妻から、夫に向けて、「抱いて欲しいです」という意味を含むんです……」
アイザックは、ラパァヴの存在を知らないシャロンにそのことを説明し忘れていたことを思い出し、慌ててシャロンの後を追いかけるのだ。
「シャロン、ごめん。説明し忘れていた……」
「し、知らない。もう知らないんだから!!」
「でも、俺は大歓迎だよ?」
「なっ!! むうぅぅ……。アイザックのバカ、えっち、恥知らず!!」
「うん。えっちで恥知らずでごめん。でも、そんな俺でもシャロンは、好きだろ?」
「知らない知らない!」
痴話げんかしつつも、最後にはお互いに顔を寄せあい微笑みあうのだ。
拗れていた間を埋めるように、二人は喧嘩しつつも仲のいい夫婦となり、末永く幸せに暮らすのだった。
『大嫌いな幼馴染(バツイチ)と結婚することになりました』 おわり
気が付いた時には、窓の外が暗くなり、月が出ていることを知ったシャロンは慌てて屋敷を出て行こうとした。
「大変! もうこんな時間? 急いで宿を探さないと!!」
そう言って、あたふたとするシャロンを抱きしめたアイザックは、表情を曇らせる。
「シャロンは、俺の妻になるんだろう? それなら、今日からここで暮らせばいい」
アイザックの言葉に、シャロンはとんでもないと首を振る。
それに納得がいかないアイザックは、何故だとシャロンに詰め寄るのだ。
「だって、アイザックは、お姉様と離婚したばかりで、すぐに結婚だなんて……。立場的に体面が悪いんじゃ……。急ぐ必要はないわ。結婚はいちね―――」
「問題ない。俺の体面など、どうにでもなる。だから、君は気にしなくていい。それに、アッサム子爵には、すでに手紙を送っている」
「え?」
いつの間にそんなことをしていたのかと、シャロンは目を丸くする。
何度も瞬きを繰り返すシャロンの額にキスをしたアイザックは、目元を緩めて言うのだ。
「大丈夫。君の家には、ある程度の資金と、信用の置ける会計士を送っているから、今後アッサム子爵が金で困ることは無くなるだろう。本当はもっと早くこうすればよかったんだが、子爵は新しい使用人を入れたがらなくてな。だが、ようやく受け入れてくれて良かったよ」
そんなことを言っていたが、実際にはシャロンが眠っている間に、部下を子爵の下に使いに出して、多少強引な話し合いの結果受け入れさせたとも言えたが、シャロンには敢えて詳しく説明はしなかった。
駄目な父と兄を見限るつもりで荷物をまとめていたシャロンではあったが、多少は残してきた二人を心配していたため、アイザックの手配には素直にお礼をいうことにしたのだ。
「そうなんだ。アイザック、いろいろとありがとう」
「いいんだ。そう言う訳で、今日から君はここで暮らすんだ」
「うん。アイザック、これからよろしくね」
「ああ」
こうして、長い間拗れていたシャロンとアイザックは、無事に仲直りをすることができたのだった。
翌日、シャロンは顔見知りの多いセイロン伯爵家使用人たちに、やけにニコニコとした表情で迎えられることとなる。
それには、シャロンは居心地の悪い思いをすることになったが、実際には使用人たちは、アイザックの長年の拗らせた初恋が叶い、アイザックを内心ニヨニヨと見つめていたのがにじみ出ていただけだった。
そして、その日の夕食時、シャロンは何気ない会話の中で恥ずかしい思いをすることとなり、アイザックと仲直り後すぐに喧嘩をすることとなるのだ。
セイロン伯爵家の料理長はとても腕のいい男だった。
シャロンは、出された食事を大変気に入り、始終笑顔で食事を終えたのだ。
そして、食後の紅茶を飲みながら、こう言ったのだ。
「ふうぅ。とても美味しかったわ。あっ、そうだ。リクエストしたらそれを出してもらえるのかしら?」
シャロンのお願いならば、どんな物でも出す用意があったアイザックは、笑顔で頷く。
それを見たシャロンは、にっこりと微笑んで言うのだ。
「やったぁ。それなら、明日のおやつにラパァヴを食べたいな?」
シャロンのその言葉を聞いたアイザックは、紅茶を噴き出し、傍に控えていた給仕は顔を真っ赤に染め、執事に至っては、表情が固まってしまっていた。
周囲の反応がおかしいことに気が付いたシャロンは首を傾げてアイザックに問いかける。
「あれ? わたし、なにか変なこと言った?」
不思議そうな表情をするシャロンに、傍に控えていたメイドがそそそっと進み出て、小さな声で耳打ちして何がおかしかったのかを説明する。
メイドの説明を聞いた瞬間、シャロンは顔を真っ赤にさせて捨て台詞とともに逃げ出していた。
「あああああアイザックのぉぉ…………、ばかーーーーー!! なんで教えてくれなかったのよ!! ううっぅ……、わーーーーーー!!!」
メイドがシャロンに説明した内容は……。
「お嬢様、ラパァヴは、一般的に初夜の後、夫となる者が妻になる者に用意するお菓子でございます。また、そう言ったことを自分から言い出せない妻のための隠れた隠語にもなっておりまして「ラパァヴを食べたい」という言葉は、妻から、夫に向けて、「抱いて欲しいです」という意味を含むんです……」
アイザックは、ラパァヴの存在を知らないシャロンにそのことを説明し忘れていたことを思い出し、慌ててシャロンの後を追いかけるのだ。
「シャロン、ごめん。説明し忘れていた……」
「し、知らない。もう知らないんだから!!」
「でも、俺は大歓迎だよ?」
「なっ!! むうぅぅ……。アイザックのバカ、えっち、恥知らず!!」
「うん。えっちで恥知らずでごめん。でも、そんな俺でもシャロンは、好きだろ?」
「知らない知らない!」
痴話げんかしつつも、最後にはお互いに顔を寄せあい微笑みあうのだ。
拗れていた間を埋めるように、二人は喧嘩しつつも仲のいい夫婦となり、末永く幸せに暮らすのだった。
『大嫌いな幼馴染(バツイチ)と結婚することになりました』 おわり
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