15 / 16
第十五話 幼馴染を貰ってあげようと思います
しおりを挟む
何度目かの行為の後、意識を失ってしまっていたシャロンに腕枕をしながら、アイザックは、複雑な思いを抱いていた。
本来ならば、シェリーとの離婚後、すぐにでもシャロンの下に訪れるつもりだったのだ。
大輪のバラの花束を持って、今までの愚かな行いを反省し、仲直りをしたのちに結婚の申し込みをするつもりだった。
その時に、シェリーの頼みで偽装結婚していたことも明かして、本当に好きなのはシャロンなのだと言うつもりだった。
十年前の出来事が死ぬほど恥ずかしくて、逃げていたことも素直に言おうと思っていたのだ。
それなのに、昨日の晩にシャロンの縁談話を聞いたアイザックは、考える前に屋敷を飛び出してしまっていた。
今思えば、これでよかったのだと思えるような気もしていた。
もし、計画通りに動いたとして、アイザックが途中でヘタレな自分を発揮しなかったとも言えなくもないのだ。
だから、勢いに任せてぶちまけたことがある意味功を奏したと、開き直ったともいえるアイザックは、腕の中のシャロンのふわふわの髪を梳きながら深く息を吐く。
「ごめんな。シャロンが可愛すぎて、やりすぎてしまった……。だが、怒られても今回は何があっても逃げないからな。それに、シャロンも俺のこと好きだって知ったことだし、これからは……。ふふふ、もう遠慮はしないからな。覚悟しろよ、可愛いシャロ」
アイザックがひとり、そんなことをにやにやとしながら呟いているとシャロンのお腹がきゅーっとなっていた。
その可愛らしい音を聞いたアイザックは、眉を寄せる。
「シャロン、本当にすまない……。起きたら、何か食べような」
そう言って、シャロンを抱きしめていると、腕の中のシャロンが身じろいだ。
「ふぁぁ~~。お腹すいたぁ」
「くす。おはよう」
「うん……。あっなっ……。あああああアイザック!! っつ!!!」
起きてすぐ目の前にいるアイザックに驚いたシャロンは、体を起こそうとして、下半身に走る違和感に目を丸くする。そして、腰に走る痛みに言葉を詰まらせたのだ。
「アイザック……。いろいろなところが変な感じするし、体が痛い……。お腹すいた……」
「ごめん……」
しゅんとするアイザックを見たシャロンは、ぷっと小さく噴き出して、アイザックの黒い髪をわしゃわしゃと両手で掻き乱した。
髪をぼさぼさにされたアイザックは、呆然とした後に、ふにゃりと力ない表情になってしまう。
「うん。もうしないでって言っても無理なのはわかってるから、これで許す。ふふん。髪がぼさぼさでかっこ……悪くないわね。髪が乱れても格好いいわ。これじゃお仕置にならないじゃない!!」
そう言って、ぷくっと頬を膨らませたシャロン。
しかし、アイザックの蛮行を許してくれるシャロンの懐の深さにアイザックは、一つの可能性に気が付き愕然とすることとなる。
もしかすると、あの時避けることをしなければ、もっと早くシャロンと結婚出来ていた可能性だ。
寝込みを襲われた事実をオブラートに包んで当時のシャロンに説明していればなどと過去を悔やんだのだ。
シャロンは、あまり物事を深く考えない楽観的な性格をしている。だからこそ、今回アイザックの暴走から始まった行為を許してくれたうえ、再びアイザックに心を開いたのだ。
過ぎたことを言っても仕方ないが、当時恥ずかしがらずにシャロンの傍に居続けることができたのならば、もっと早く二人は結ばれていただろう。
そんな、可能性に気が付いたアイザックは、ただ項垂れたのだった。
それでも、過去がどうでも、今シャロンと居られるという事実が重要だと頭を切り替えたアイザックは、用意していた飲み物と食事を運ぶためベッドから立ち上がった。
テーブルに事前に用意していた紅茶とハチミツが生地に浸み込むほどたっぷりと掛かったお菓子を乗せたトレイを持ってベッドに戻る。
お腹を空かせていたシャロンは、用意されていた紅茶とお菓子を美味しそうに頬張る。
シャロンは、拳ほどの大きさのお菓子を両手で持って小さな口に運ぶ。
一口食べれば、口の中に広がるハチミツの甘さとナッツの香ばしい食感にシャロンは瞳を輝かせる。
ペロリと指先に付いていたハチミツを舐めとったシャロンは、瞳を輝かせてアイザックに言うのだ。
「なにこれ、甘くて美味しい!」
「よかった。もっとあるから、好きなだけ食べてくれていい」
「うん! アイザック、このお菓子はなんて言うの?」
「これは、ラパァヴという菓子だ」
「ふーん。初めて食べたけど美味しい。わたし、これ、すごく好きかも」
「そうか、また用意するな」
「うん!」
嬉しそうに微笑むシャロンを優しく撫でたアイザックは、まだ皿に残っていたラパァヴを摘んでシャロンに食べさせるのだ。
シャロンもアイザックから差し出されるラパァヴを夢中になって食べる。
お腹がいっぱいになったシャロンは、思い出したように満面の笑みでアイザックに言うのだ。
「アイザック。仕方ないから、貴方をわたしの旦那様に貰ってあげるわ。感謝しなさい。よろしく旦那様?」
天気の話でもするかのような気軽さでそう言ったシャロンのその言葉に、アイザックは、蕩けるような甘い笑みを浮かべてこう答えたのだ。
「ああ。これから末永くよろしくな、俺の可愛いお嫁様」
本来ならば、シェリーとの離婚後、すぐにでもシャロンの下に訪れるつもりだったのだ。
大輪のバラの花束を持って、今までの愚かな行いを反省し、仲直りをしたのちに結婚の申し込みをするつもりだった。
その時に、シェリーの頼みで偽装結婚していたことも明かして、本当に好きなのはシャロンなのだと言うつもりだった。
十年前の出来事が死ぬほど恥ずかしくて、逃げていたことも素直に言おうと思っていたのだ。
それなのに、昨日の晩にシャロンの縁談話を聞いたアイザックは、考える前に屋敷を飛び出してしまっていた。
今思えば、これでよかったのだと思えるような気もしていた。
もし、計画通りに動いたとして、アイザックが途中でヘタレな自分を発揮しなかったとも言えなくもないのだ。
だから、勢いに任せてぶちまけたことがある意味功を奏したと、開き直ったともいえるアイザックは、腕の中のシャロンのふわふわの髪を梳きながら深く息を吐く。
「ごめんな。シャロンが可愛すぎて、やりすぎてしまった……。だが、怒られても今回は何があっても逃げないからな。それに、シャロンも俺のこと好きだって知ったことだし、これからは……。ふふふ、もう遠慮はしないからな。覚悟しろよ、可愛いシャロ」
アイザックがひとり、そんなことをにやにやとしながら呟いているとシャロンのお腹がきゅーっとなっていた。
その可愛らしい音を聞いたアイザックは、眉を寄せる。
「シャロン、本当にすまない……。起きたら、何か食べような」
そう言って、シャロンを抱きしめていると、腕の中のシャロンが身じろいだ。
「ふぁぁ~~。お腹すいたぁ」
「くす。おはよう」
「うん……。あっなっ……。あああああアイザック!! っつ!!!」
起きてすぐ目の前にいるアイザックに驚いたシャロンは、体を起こそうとして、下半身に走る違和感に目を丸くする。そして、腰に走る痛みに言葉を詰まらせたのだ。
「アイザック……。いろいろなところが変な感じするし、体が痛い……。お腹すいた……」
「ごめん……」
しゅんとするアイザックを見たシャロンは、ぷっと小さく噴き出して、アイザックの黒い髪をわしゃわしゃと両手で掻き乱した。
髪をぼさぼさにされたアイザックは、呆然とした後に、ふにゃりと力ない表情になってしまう。
「うん。もうしないでって言っても無理なのはわかってるから、これで許す。ふふん。髪がぼさぼさでかっこ……悪くないわね。髪が乱れても格好いいわ。これじゃお仕置にならないじゃない!!」
そう言って、ぷくっと頬を膨らませたシャロン。
しかし、アイザックの蛮行を許してくれるシャロンの懐の深さにアイザックは、一つの可能性に気が付き愕然とすることとなる。
もしかすると、あの時避けることをしなければ、もっと早くシャロンと結婚出来ていた可能性だ。
寝込みを襲われた事実をオブラートに包んで当時のシャロンに説明していればなどと過去を悔やんだのだ。
シャロンは、あまり物事を深く考えない楽観的な性格をしている。だからこそ、今回アイザックの暴走から始まった行為を許してくれたうえ、再びアイザックに心を開いたのだ。
過ぎたことを言っても仕方ないが、当時恥ずかしがらずにシャロンの傍に居続けることができたのならば、もっと早く二人は結ばれていただろう。
そんな、可能性に気が付いたアイザックは、ただ項垂れたのだった。
それでも、過去がどうでも、今シャロンと居られるという事実が重要だと頭を切り替えたアイザックは、用意していた飲み物と食事を運ぶためベッドから立ち上がった。
テーブルに事前に用意していた紅茶とハチミツが生地に浸み込むほどたっぷりと掛かったお菓子を乗せたトレイを持ってベッドに戻る。
お腹を空かせていたシャロンは、用意されていた紅茶とお菓子を美味しそうに頬張る。
シャロンは、拳ほどの大きさのお菓子を両手で持って小さな口に運ぶ。
一口食べれば、口の中に広がるハチミツの甘さとナッツの香ばしい食感にシャロンは瞳を輝かせる。
ペロリと指先に付いていたハチミツを舐めとったシャロンは、瞳を輝かせてアイザックに言うのだ。
「なにこれ、甘くて美味しい!」
「よかった。もっとあるから、好きなだけ食べてくれていい」
「うん! アイザック、このお菓子はなんて言うの?」
「これは、ラパァヴという菓子だ」
「ふーん。初めて食べたけど美味しい。わたし、これ、すごく好きかも」
「そうか、また用意するな」
「うん!」
嬉しそうに微笑むシャロンを優しく撫でたアイザックは、まだ皿に残っていたラパァヴを摘んでシャロンに食べさせるのだ。
シャロンもアイザックから差し出されるラパァヴを夢中になって食べる。
お腹がいっぱいになったシャロンは、思い出したように満面の笑みでアイザックに言うのだ。
「アイザック。仕方ないから、貴方をわたしの旦那様に貰ってあげるわ。感謝しなさい。よろしく旦那様?」
天気の話でもするかのような気軽さでそう言ったシャロンのその言葉に、アイザックは、蕩けるような甘い笑みを浮かべてこう答えたのだ。
「ああ。これから末永くよろしくな、俺の可愛いお嫁様」
11
お気に入りに追加
2,194
あなたにおすすめの小説
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
騎士団長の幼なじみ
入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。
あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。
ある日、マールに縁談が来て……。
歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。
散りきらない愛に抱かれて
泉野ジュール
恋愛
傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。
「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」
不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。
ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。
国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない
迷い人
恋愛
20歳になっても未だ婚約者どころか恋人すらいない国王ダリオ。
「陛下は、同性しか愛せないのでは?」
そんな噂が世間に広がるが、王宮にいる全ての人間、貴族と呼ばれる人間達は真実を知っていた。
ダリオが、幼馴染で、学友で、秘書で、護衛どころか暗殺までしちゃう、自称お姉ちゃんな公爵令嬢ヨナのことが幼い頃から好きだと言うことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる