記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
27 / 28
第一部 第七章

1

しおりを挟む
 次の指の手掛かりが掴めずにいたギルベルトは、ハンターギルドで情報収集をすることにしたのだ。
 ある街のハンターギルドに立ち寄った時、ギルベルトに声をかける男がいた。
 
「よお。久しぶりだな、ギルベルト」

 そう言って、話しかけてきたのは、ガスパー・キャリーと言うガタイのいい、スキンヘッドで碧眼の男だった。
 ガスパーに声を掛けられたギルベルトは、楽しそうな笑みを浮かべるのだ。
 
「ガスパー、久しぶりだな」

 そう言って、お互いに肩を組んで再会を喜ぶのだ。
 それを横で見ていたレイラは、なんとなく面白くなかった。
 ギルベルトの笑顔の殆どを独占していたのに、それをガスパーに取られてしまったような気がしたのだ。
 なんとなく寂しくなってしまった、レイラは横に立っているギルベルトにぎゅっと抱き着いていた。
 レイラから抱き着かれることが嬉しかったギルベルトは、甘い笑みを浮かべてレイラを抱きしめる。
 
「ごめん。ガスパーは、俺がいた孤児院で一緒だった、昔馴染みだ。ハンターになってから、再会したんだよ」

 そう、ギルベルトに説明されたレイラは、カッと顔が熱くなるのが分かった。
 
「ごめん……。なんか、ギルが私以外と仲良くしてるの……、寂しくて」

 耳まで真っ赤にしてそう言うレイラが可愛くて、ギルベルトは、頬をすり合わせるように抱きしめていた。
 
「俺も、姉さんだけだよ。こんな、ハゲよりも姉さんの方が大事だ」

「ギル……」

「姉さん……」

 そう言って、見つめ合う二人に咳払いをしたガスパーが、呆れたように言うのだ。
 
「うん。なんか、ごめん。だけど、いちゃつくのは他の場所で頼むよ……。それと、俺のこの頭はハゲじゃない!! 剃ってんの!! おしゃれスキンヘッドなの!! ハゲじゃないの!!」

 ガミガミとギルベルトに文句を言うガスパーを面倒そうに見た後、確かに可愛いレイラの顔を他の奴に見せるのも嫌だと考えたギルベルトは、素直に場所を変えることにしたのだ。
 
 そんなギルベルトにガスパーは、付いてきたのだ。
 眉をピクリと動かしたギルベルトは、素気無く言うのだ。
 
「付いてくるな」

「まあまあ、お前に見せたいものがあるんだよ。なあ、最近変な噂話を追いかけているハンターって、お前だろう?」

 レイラを抱き上げて、速足で歩くギルベルトの後方から、そう言って付いてくるガスパーのその言葉に、ギルベルトは振り向いていた。
 
「やっぱりな。眼帯のイケメンって、話だから、お前じゃないかと思ってたんだよ。ふふ。これ……」

 なにやら、ドヤ顔をするガスパーは、そう言って、懐から何かを取り出して見せたのだ。
 それを目にしたギルベルトは、あっという間に距離を詰めてガスパーにきつい視線で問いただすのだ。
 
「お前、どこでそれを手に入れた?」

「まあまあ、詳しい話は、そこの飯屋で飯でも食いながらな?」

 そう言われたギルベルトは、黙って頷いた後、レイラに小さく言うのだ。
 
「奴は、信用できるから大丈夫だとは思うが……」

「うん。ギルの友達なら大丈夫。信じるよ」

「友達……。まぁ、悪友だけどな?」

「ふふ。友達に変わりないよ」

 そう言って微笑むレイラは、ギルベルトの頭をよいよしと撫でるのだ。撫でられるギルベルトは、目を細めて、嬉しそうにそれを受け入れる。
 そんな、二人を呆れたように見ていたガスパーは、呟くのだ。
 
「おうおう……。ギルベルトの奴、そうとうあの嬢ちゃんのこと好きなんだな。見てるこっちが恥ずかしくなる」

 そして、三人で入った食堂の一番奥の席に座ってすぐに、ギルベルトはきつい視線をガスパーに向けて言うのだ。
 
「改めて聞く。お前のそれ、どこで手に入れた?」

 そう言われたガスパーが、懐から取り出したものは、レイラとギルベルトが追っている封印布だったのだ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

処理中です...