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第一部 第六章
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セリナの温泉鼻血事件の後、彼女のレイラとギルベルトを見る眼つきが変わっていた。
それまでは、飢えた獣のようにギルベルトを見ていたところのあったセリナだったが、それ以来レイラとギルベルトの二人一緒の所をにやにやとした表情で見るようになっていたのだ。
そして、ギルベルトがレイラを抱っこしたり、甘やかしたりすると、親指を立ててにやにやと邪悪な笑みを浮かべるのだ。
以前とは違うセリナのそんな行動に寒気を感じるギルベルトだったが、それが長く続くことはなかったのだ。
温泉の有名な街を離れた後に訪れた街で、セリナを待っていた者がいたのだ。
それは、ダイン侯爵家の者だった。
その者は、セリナをずっと探していたようで、出会い頭に言い放ったのだ。
「お嬢様!! やっと見つけましたよ!! もう、縁談から逃げられませんからね! お相手の方も随分とお嬢様をお待ちなのですから、観念してくださいませ!」
「い、嫌ですわ!! 私、生きがいを見つけたの! レイラ様とギルベルト様が結ばれて、人目も憚らず、野戦を繰り広げてしまうような場面に出くわすまで離れませんわよ!!」
「お嬢様は、何を意味が分からないことを言っているんです!! いいから、行きますよ!」
「いやよ!! 私、偶然、お二人がそういうことをいたしている場面に出会うまで―――」
「お黙りください!! それよりも、急ぎダイン侯爵領に戻りますからね。そう言う訳で、今までお嬢様がご迷惑をお掛けいたしました。それでは」
そう言って、暴れるセリナを強引に馬車に乗せてしまうのだ。
しかし、セリナは、馬車の窓から顔を出して、必死に言うのだ。
「レイラ様~。また、絶対にお会いしましょう!! ギルベルト様!! 私、お二人のこと応援しておりますから!!」
そう言って、嵐のように去っていくセリナを見送るレイラとギルベルトは、呆気に取られていたのだ。
何を応援されているのか分からずに、二人して首を傾げつつも、レイラは馬車に向かって手を振る。
「セリナさん……、行っちゃったね。また…会えるといいね」
「俺は、もう会わなくてもいい。うるさいのが居なくなって清々する」
悪態を吐くギルベルトの手を握ったレイラは、眉を寄せてギルベルトを見上げる。
「もう……、本当は寂しいくせに」
「いや、誤解だから」
「ふふ。セリナさん、楽しい人だったね」
「うるさいだけだ」
そう言いつつも、セリナのことを旅の仲間だと少しは思い始めていたギルベルトは、一抹の寂しさを微かに表に出したのだ。
そんな、ギルベルトの表情を見たレイラは、胸がチクリと痛んだ。
胸を押さえて、その痛みに頭を傾げるレイラだったが、お腹がすいたのかなぁ? と考えて、そのことを深く追求することはなかったのだ。
こうして、賑やかだった三人旅は終わり、元の二人旅へと戻って行ったのだった。
それまでは、飢えた獣のようにギルベルトを見ていたところのあったセリナだったが、それ以来レイラとギルベルトの二人一緒の所をにやにやとした表情で見るようになっていたのだ。
そして、ギルベルトがレイラを抱っこしたり、甘やかしたりすると、親指を立ててにやにやと邪悪な笑みを浮かべるのだ。
以前とは違うセリナのそんな行動に寒気を感じるギルベルトだったが、それが長く続くことはなかったのだ。
温泉の有名な街を離れた後に訪れた街で、セリナを待っていた者がいたのだ。
それは、ダイン侯爵家の者だった。
その者は、セリナをずっと探していたようで、出会い頭に言い放ったのだ。
「お嬢様!! やっと見つけましたよ!! もう、縁談から逃げられませんからね! お相手の方も随分とお嬢様をお待ちなのですから、観念してくださいませ!」
「い、嫌ですわ!! 私、生きがいを見つけたの! レイラ様とギルベルト様が結ばれて、人目も憚らず、野戦を繰り広げてしまうような場面に出くわすまで離れませんわよ!!」
「お嬢様は、何を意味が分からないことを言っているんです!! いいから、行きますよ!」
「いやよ!! 私、偶然、お二人がそういうことをいたしている場面に出会うまで―――」
「お黙りください!! それよりも、急ぎダイン侯爵領に戻りますからね。そう言う訳で、今までお嬢様がご迷惑をお掛けいたしました。それでは」
そう言って、暴れるセリナを強引に馬車に乗せてしまうのだ。
しかし、セリナは、馬車の窓から顔を出して、必死に言うのだ。
「レイラ様~。また、絶対にお会いしましょう!! ギルベルト様!! 私、お二人のこと応援しておりますから!!」
そう言って、嵐のように去っていくセリナを見送るレイラとギルベルトは、呆気に取られていたのだ。
何を応援されているのか分からずに、二人して首を傾げつつも、レイラは馬車に向かって手を振る。
「セリナさん……、行っちゃったね。また…会えるといいね」
「俺は、もう会わなくてもいい。うるさいのが居なくなって清々する」
悪態を吐くギルベルトの手を握ったレイラは、眉を寄せてギルベルトを見上げる。
「もう……、本当は寂しいくせに」
「いや、誤解だから」
「ふふ。セリナさん、楽しい人だったね」
「うるさいだけだ」
そう言いつつも、セリナのことを旅の仲間だと少しは思い始めていたギルベルトは、一抹の寂しさを微かに表に出したのだ。
そんな、ギルベルトの表情を見たレイラは、胸がチクリと痛んだ。
胸を押さえて、その痛みに頭を傾げるレイラだったが、お腹がすいたのかなぁ? と考えて、そのことを深く追求することはなかったのだ。
こうして、賑やかだった三人旅は終わり、元の二人旅へと戻って行ったのだった。
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