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第一部 第六章
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三本目の指を回収してから数週間が過ぎていたが、次の指の手掛かりはなかなか掴めないでいた。
旅をする間、ギルベルトは、レイラが気になって仕方なかったのだ。
レイラによく似た見た目の、可愛らしい少女。恐らく、レイラとは別人だが、何故か彼女の記憶を持っている、謎の存在。
見た目はレイラでも、その中身は、優しくて、可愛くて、素直で、歌が上手くて、可愛い。
レイラではない誰か、そう思っていてもレイラを手放したくないと思い始めているギルベルトは、そのことをレイラに追及することはしなかった。
その日も、レイラのためだと言って、遠慮しようとするレイラの足をマッサージするギルベルト。
白く、カモシカのような、すらりとした足をマッサージしていると、他の場所も触れたい欲望に駆られる。
俯せで、安心したように目を瞑るレイラの、柔らかそうな小さな尻を揉んでしまいたいと、そんな邪なことを考える。
だが、そんなことをして怖がらせて、嫌われるなんてギルベルトには出来なかった。
そんな、日々が続いていたある日、泊まっていた宿屋の部屋に現れた女性によって、ギルベルトとレイラの関係は変わっていくのだ。
夕食後、部屋で休んでいると、部屋のドアが激しく叩かれたのだ。
無視しようとしていたギルベルトだったが、眉を寄せるレイラを見て、迷惑な音の主をすぐに排除しようと考えたのだ。
扉にギルベルトが近づくと、外から何かを怒鳴りつけるような声がもれ聞こえてきたのだ。
眉間にしわを寄せながら、ギルベルトが扉を開けると、そこには金髪碧眼の女性がいたのだ。
ギルベルトは、どこかで見たようなと思いながらも、立ち去るように言おうとしたが、その前に目の前の女性がギルベルトの襟首を掴んで言ったのだ。
「ようやく見つけましたわよ! 私の婚約者様!!」
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったギルベルトは、冷たい視線で言うのだ。
「誰だお前は? 人違いだ。さっさとこの場を立ち去れ。迷惑だ」
そう言って、女性の手を振り払う。
しかし、女性は嬉しそうに頬を赤らめて言うのだ。
「はぁ~ん。ギルベルト様、すきぃ~。その塩対応が堪らないですわ。私、いつでも準備は万端ですのよ! さあさあ! ここで、私の処女を惨たらしく散らしてくださいませ!!」
「は? おま! 変態か!!」
「くぅ~。ギルベルト様、言葉のナイフが研ぎ澄まされておりますのね。サイコーですわ」
何を言っても喜んでしまう、目の前の女性に引きつつも、記憶に何か引っ掛かるものがあったギルベルトは、嫌そうな顔を隠そうともせずに、女性の顔を見つめた。
そして、思い出すのだ。
その女性、セリナ・ダイン侯爵令嬢が、かつて自分の婚約者だった女性だったと。
しかし、記憶の中のセリナはこんな性格だったのかと首を傾げる。
「セリナ嬢……。俺たちの婚約はすでに解消されている。俺とあなたには何の関係もない。と言うか、迷惑でしかない。さっさと帰ってくれ」
「んまぁ!! 私、貴方と結ばれることだけを思って、ここまで追いかけてきましたのに!! それに、私を貰ってくれると言ったではないですか!!」
そう言って、引こうとしないセリナにため息を吐きつつもギルベルトは言うのだ。
「婚約者として仕方なくの発言だ。忘れろ」
「んまぁ!! 私を弄んだのですのね? 酷いですわ」
そんなやり取りをしていると、レイラがよろよろとしながら入口に歩いてきた、困ったように言うのだ。
「えっと……。とりあえず、中に入ってもらったら? そうじゃないと他のお客さんの迷惑に……」
「姉さん! 危ないから」
ギルベルトは、ふらつくレイラを抱き上げて、セリナを完全に無視して中に戻ってく。それに対して、興奮した様子のセリナが勝手に部屋に入ってきて言うのだ。
「くふふ。ギルベルトのツンは最高ですわ。そのうち、私の魅力でデレさせてみますわ……。それにしても……。あの美少女……。どこかで見た覚えが? あっあーーーーー!! レイラ様?! でも、お亡くなりになったはずじゃ……」
部屋の一口で百面相をするセリナに向かって、面倒そうにギルベルトは、言うのだ。
「うるさい。黙れ」
「はいですわ!」
邪険にされているのに、何故か嬉しそうに返事をするセリナを見て、レイラは思うのだ。
なんか面白そうな人が現れたと。
旅をする間、ギルベルトは、レイラが気になって仕方なかったのだ。
レイラによく似た見た目の、可愛らしい少女。恐らく、レイラとは別人だが、何故か彼女の記憶を持っている、謎の存在。
見た目はレイラでも、その中身は、優しくて、可愛くて、素直で、歌が上手くて、可愛い。
レイラではない誰か、そう思っていてもレイラを手放したくないと思い始めているギルベルトは、そのことをレイラに追及することはしなかった。
その日も、レイラのためだと言って、遠慮しようとするレイラの足をマッサージするギルベルト。
白く、カモシカのような、すらりとした足をマッサージしていると、他の場所も触れたい欲望に駆られる。
俯せで、安心したように目を瞑るレイラの、柔らかそうな小さな尻を揉んでしまいたいと、そんな邪なことを考える。
だが、そんなことをして怖がらせて、嫌われるなんてギルベルトには出来なかった。
そんな、日々が続いていたある日、泊まっていた宿屋の部屋に現れた女性によって、ギルベルトとレイラの関係は変わっていくのだ。
夕食後、部屋で休んでいると、部屋のドアが激しく叩かれたのだ。
無視しようとしていたギルベルトだったが、眉を寄せるレイラを見て、迷惑な音の主をすぐに排除しようと考えたのだ。
扉にギルベルトが近づくと、外から何かを怒鳴りつけるような声がもれ聞こえてきたのだ。
眉間にしわを寄せながら、ギルベルトが扉を開けると、そこには金髪碧眼の女性がいたのだ。
ギルベルトは、どこかで見たようなと思いながらも、立ち去るように言おうとしたが、その前に目の前の女性がギルベルトの襟首を掴んで言ったのだ。
「ようやく見つけましたわよ! 私の婚約者様!!」
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったギルベルトは、冷たい視線で言うのだ。
「誰だお前は? 人違いだ。さっさとこの場を立ち去れ。迷惑だ」
そう言って、女性の手を振り払う。
しかし、女性は嬉しそうに頬を赤らめて言うのだ。
「はぁ~ん。ギルベルト様、すきぃ~。その塩対応が堪らないですわ。私、いつでも準備は万端ですのよ! さあさあ! ここで、私の処女を惨たらしく散らしてくださいませ!!」
「は? おま! 変態か!!」
「くぅ~。ギルベルト様、言葉のナイフが研ぎ澄まされておりますのね。サイコーですわ」
何を言っても喜んでしまう、目の前の女性に引きつつも、記憶に何か引っ掛かるものがあったギルベルトは、嫌そうな顔を隠そうともせずに、女性の顔を見つめた。
そして、思い出すのだ。
その女性、セリナ・ダイン侯爵令嬢が、かつて自分の婚約者だった女性だったと。
しかし、記憶の中のセリナはこんな性格だったのかと首を傾げる。
「セリナ嬢……。俺たちの婚約はすでに解消されている。俺とあなたには何の関係もない。と言うか、迷惑でしかない。さっさと帰ってくれ」
「んまぁ!! 私、貴方と結ばれることだけを思って、ここまで追いかけてきましたのに!! それに、私を貰ってくれると言ったではないですか!!」
そう言って、引こうとしないセリナにため息を吐きつつもギルベルトは言うのだ。
「婚約者として仕方なくの発言だ。忘れろ」
「んまぁ!! 私を弄んだのですのね? 酷いですわ」
そんなやり取りをしていると、レイラがよろよろとしながら入口に歩いてきた、困ったように言うのだ。
「えっと……。とりあえず、中に入ってもらったら? そうじゃないと他のお客さんの迷惑に……」
「姉さん! 危ないから」
ギルベルトは、ふらつくレイラを抱き上げて、セリナを完全に無視して中に戻ってく。それに対して、興奮した様子のセリナが勝手に部屋に入ってきて言うのだ。
「くふふ。ギルベルトのツンは最高ですわ。そのうち、私の魅力でデレさせてみますわ……。それにしても……。あの美少女……。どこかで見た覚えが? あっあーーーーー!! レイラ様?! でも、お亡くなりになったはずじゃ……」
部屋の一口で百面相をするセリナに向かって、面倒そうにギルベルトは、言うのだ。
「うるさい。黙れ」
「はいですわ!」
邪険にされているのに、何故か嬉しそうに返事をするセリナを見て、レイラは思うのだ。
なんか面白そうな人が現れたと。
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