記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

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第一部 第五章

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 レイラが気を失っていたのは、ほんの僅かの間だった。
 意識を取り戻したレイラは、体の奥に感じる熱に首を傾げつつも、ギルベルトに状況の確認をしていた。
 
「ごめん。気を失ってた……。あのオーラに触れたら、体が熱くなって、意識が保てなかったんだ。私が気を失っている間に何か変化はあった?」

「いや。だが、分かったことがある」

「うん。教えて」

「姉さんが気を失っている間に分かったことだけど、あの薄桃色のオーラが澱んだマナを抑え込んでいたみたいだ。聖堂の中である……儀式のようなものが行われていて、その儀式で発生した力で抑え込んでいたみたいなんだ。だから今は、マナの澱みが一時的にだけど解消している」

 そう言われて、レイラが薄桃色のオーラがあった場所を見ると、確かにマナの流れは落ち着いていた。

「分かった。それじゃ、核になっている指を探さないと……って、多分あそこだよね?」

 そう言って、レイラが示した場所は、薄桃色のオーラがあった場所だった。
 現在は、マナの澱みがないため、封印布の入った箱はすぐに発見することができた。
 ギルベルトが慣れた手つきで箱から封印布を取り出して、躊躇いながらもレイラにそれを渡す。
 レイラは、封印布を受け取って、何のためらいもなくそれの記憶を読んでいく。
 
 
 それは、指の持ち主が誰かの結婚式を見つめている場面だった。
 レイラが目を凝らすと、新郎は最初の指の記憶で見た、指の持ち主の兄だった。
 そして、兄の隣にいるのは、柔らかい笑みを浮かべる可愛らしい女性だった。
 それを見つめている指の持ち主の心は、ナイフで刺されるような痛みを感じていた。
 共感しているレイラにもその、「好き」「幸せになって」「捨てないで」「愛してる」という、複雑な思いが胸を占めていた。
 
 愛する人が、自分以外の人と結ばれる場面。だけど、それを笑顔で見ていなければならない。
 レイラは、思っていた。
 人を好きになるってこんなにも苦しいことなのかと。
 
 そんなことを考えている間に、結婚式は終わっていた。
 そして、レイラの意識も体に戻っていたのだ。
 
 意識が戻ってもぼんやりとするレイラを心配するギルベルトは、優しい声で言うのだ。
 
「姉さん、大丈夫? 辛かったら言って」

 その優しい声が嬉しくて、レイラは微笑みを浮かべる。
 
「大丈夫。大丈夫だから」

 とりあえず、この場を立ち去ることにしたギルベルトに横抱きにされながら、レイラはさっきまで見ていた内容を話していた。
 
「そうか……。結ばれない恋に悩むか……」

「うん」

 それ以上話すこともなく、二人は宿屋に戻っていた。
 
 指にかかわる魔術式を解いた二人は、数日留まったのちに、次の街へと旅立っていた。
 しかし、二人が事件を解決した後も、夜な夜なすすり泣くような声がやむことはなかったのだった。
 
 
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