記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

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第一部 第五章

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 翌日、街にある二か所の教会を見に行ったレイラとギルベルトだったが、特別何かあるという感じはしなかった。
 一つ目に入った協会は、魔術式の気配さえないものだった。
 二つ目に入った協会は、微かにだが、魔術の気配はしていた。しかし、本当に微かなもので、あの指が関係しているような魔術式には思えなかったのだ。
 それでも、主祭壇の方から感じる魔術式が確かにあったのだ。
 それが気になったレイラは、ギルベルトに提案していた。
 
「少し気になる。日が落ちてから忍び込んで、術式を確かめよう」

「分かった……。でも、無理は禁物だから」

「うん。分かってるよ」

 そんなやり取りをした二人は、一度宿に戻って、仮眠をとっていた。
 日が落ちてから起きだして、屋台で買っていたバゲットサンドを食べながら、出かける準備をする。
 すっかり静まり返っている教会に忍び込んだ二人は、息を潜めて礼拝堂に向かっていた。
 中に入ろうとした時、ギルベルトが先に異変に気が付く。
 
「姉さん。中に誰かいる」

「うん」

 声を潜めて会話する二人だったが、少しだけ開いていた扉から微かに聞こえるすすり泣くような声に視線を合わせる。
 何かを言っているが、擦れていて、泣いているような声しか届いてこない。
 視線を合わせることで、何も言わなくても中に入ることを相談した二人は、慎重に気配と音を殺して中に踏み入る。
 
 月明かりに照らされて、ステンドグラスの輝きで主祭壇が煌めいていた。
 少し幻想的な風景に視線を向けた時だった。
 煌めくような主祭壇の奥に人影が見えたのだ。
 陣内にある主祭壇側に一人、いや、二人の人物が何かをしているのが見えたのだ。
 薄暗い闇の中、ステンドグラスの光に映し出された光景にギルベルトは驚き、慌てて腕の中のレイラをぎゅっと抱きしめて、その耳と視界を塞いでいた。
 突然のことにレイラは、「ギル? どうしたんだ?」と、心細そうな声を出す。
 それでも、ギルベルトは、いま目の前で行われているものをレイラに見聞きさせてくなかったのだ。
 音を遮断されているレイラに伝わるように、何でもないと笑みを浮かべて、静かにするようにと、唇に指を当てて見せる。
 レイラは、何かあると考えて、大人しく頷く。
 それを見たギルベルトは、目の前で行われている行為に再び視線を向けていた。
 
 主祭壇では、司祭と思われる男が若い神父と思われる男を俯せに押し倒して、後ろから神父に肉棒を突き挿している場面だった。
 
 司祭は、神父の口を後ろから押さえていたが、押さえきれない喘ぎ声が漏れ聞こえていたのだ。
 時折、唇を合わせていることから、同意の上での行為なのだとギルベルトには理解できていた。
 
 ギルベルトは、すすり泣く声の正体が聖堂で密かに体を重ねる司祭と神父だったことを知り、頭が痛くなっていた。
 そして、微かに感じた魔術式の利用方法が、快楽を強める類のものだったことにだ。

 事の真相をレイラにどう説明しようかと。
 そんなことを考えつつ、もうここには要はないとそっとその場を後にする。
 外に出たギルベルトは、レイラになんと言って説明すべきがと悩んでいると、レイラが声を上げたのだ。
 
「あっ……。教会の裏手にある墓地で、微かにマナの動きがある」

 そう言われたギルベルトも微かにマナの動きを感じた。足早に墓地に向かうと、昼間には無かったはずの魔術式が展開していたのだ。
 しかし、その魔術式は、薄桃色に輝くオーラに包まれていたのだ。
 そして、澱んだマナもまた、薄桃色に輝くオーラに抑え込まれるように揺らめいていたのだ。
 
「このピンク色って……? でも、このピンクのオーラが澱んだマナを抑え込んでいるみたいだね。何だろうこれ?」

「まさか……」

「えっ? ギルは、心当たりがあるの?」

「ああ……」

 ギルベルトは、聖堂の中で行われていた行為が関係していることになんとなく気が付く。
 それでも、レイラに向かって、「さっき、聖堂の中で司祭と神父がセックスしていた。多分それが関係しているんだろう」などと、言えるわけがなかったのだ。
 どうしようかと、ギルベルトが悩んでいるうちに、レイラは手を伸ばしてその薄桃色のオーラに触れていた。
 
 その瞬間、レイラは指先から流れてくる痺れるような快楽に声を上げてしまっていた。
 
「あっ、ああぁん! はぁはぁ……はぁんっ!」

 神父が感じていた体の奥を司祭の太い肉棒で抉られて、頭がおかしくなりそうなくらいの激しい快楽が流れ込んできたのだ。
 ちょうど、神父が激しく突かれてイったところだったのだろう。
 訳も分からずに、レイラは共感するように意識が飛んでしまっていた。
 
 ギルベルトは、突然腕の中のレイラが艶っぽい喘ぎ声をだしたと思ったら、全身を朱に染めて気を失ってしまい、驚く。
 しかし、レイラの喘ぐ姿から、薄桃色のオーラが聖堂の中で行われていた行為のエクスタシーが何らかの形で具現化したものだと理解もしたのだ。
 
 ただ、思わぬところでレイラの艶やかな反応を見てしまったことで、ギルベルトは、動揺してしまっていた。
 腕の中のレイラをそういう対象として触れたいと、ほんの僅かでも思ってしまったことにだ。

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