記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
20 / 28
第一部 第五章

2

しおりを挟む
 翌日、街にある二か所の教会を見に行ったレイラとギルベルトだったが、特別何かあるという感じはしなかった。
 一つ目に入った協会は、魔術式の気配さえないものだった。
 二つ目に入った協会は、微かにだが、魔術の気配はしていた。しかし、本当に微かなもので、あの指が関係しているような魔術式には思えなかったのだ。
 それでも、主祭壇の方から感じる魔術式が確かにあったのだ。
 それが気になったレイラは、ギルベルトに提案していた。
 
「少し気になる。日が落ちてから忍び込んで、術式を確かめよう」

「分かった……。でも、無理は禁物だから」

「うん。分かってるよ」

 そんなやり取りをした二人は、一度宿に戻って、仮眠をとっていた。
 日が落ちてから起きだして、屋台で買っていたバゲットサンドを食べながら、出かける準備をする。
 すっかり静まり返っている教会に忍び込んだ二人は、息を潜めて礼拝堂に向かっていた。
 中に入ろうとした時、ギルベルトが先に異変に気が付く。
 
「姉さん。中に誰かいる」

「うん」

 声を潜めて会話する二人だったが、少しだけ開いていた扉から微かに聞こえるすすり泣くような声に視線を合わせる。
 何かを言っているが、擦れていて、泣いているような声しか届いてこない。
 視線を合わせることで、何も言わなくても中に入ることを相談した二人は、慎重に気配と音を殺して中に踏み入る。
 
 月明かりに照らされて、ステンドグラスの輝きで主祭壇が煌めいていた。
 少し幻想的な風景に視線を向けた時だった。
 煌めくような主祭壇の奥に人影が見えたのだ。
 陣内にある主祭壇側に一人、いや、二人の人物が何かをしているのが見えたのだ。
 薄暗い闇の中、ステンドグラスの光に映し出された光景にギルベルトは驚き、慌てて腕の中のレイラをぎゅっと抱きしめて、その耳と視界を塞いでいた。
 突然のことにレイラは、「ギル? どうしたんだ?」と、心細そうな声を出す。
 それでも、ギルベルトは、いま目の前で行われているものをレイラに見聞きさせてくなかったのだ。
 音を遮断されているレイラに伝わるように、何でもないと笑みを浮かべて、静かにするようにと、唇に指を当てて見せる。
 レイラは、何かあると考えて、大人しく頷く。
 それを見たギルベルトは、目の前で行われている行為に再び視線を向けていた。
 
 主祭壇では、司祭と思われる男が若い神父と思われる男を俯せに押し倒して、後ろから神父に肉棒を突き挿している場面だった。
 
 司祭は、神父の口を後ろから押さえていたが、押さえきれない喘ぎ声が漏れ聞こえていたのだ。
 時折、唇を合わせていることから、同意の上での行為なのだとギルベルトには理解できていた。
 
 ギルベルトは、すすり泣く声の正体が聖堂で密かに体を重ねる司祭と神父だったことを知り、頭が痛くなっていた。
 そして、微かに感じた魔術式の利用方法が、快楽を強める類のものだったことにだ。

 事の真相をレイラにどう説明しようかと。
 そんなことを考えつつ、もうここには要はないとそっとその場を後にする。
 外に出たギルベルトは、レイラになんと言って説明すべきがと悩んでいると、レイラが声を上げたのだ。
 
「あっ……。教会の裏手にある墓地で、微かにマナの動きがある」

 そう言われたギルベルトも微かにマナの動きを感じた。足早に墓地に向かうと、昼間には無かったはずの魔術式が展開していたのだ。
 しかし、その魔術式は、薄桃色に輝くオーラに包まれていたのだ。
 そして、澱んだマナもまた、薄桃色に輝くオーラに抑え込まれるように揺らめいていたのだ。
 
「このピンク色って……? でも、このピンクのオーラが澱んだマナを抑え込んでいるみたいだね。何だろうこれ?」

「まさか……」

「えっ? ギルは、心当たりがあるの?」

「ああ……」

 ギルベルトは、聖堂の中で行われていた行為が関係していることになんとなく気が付く。
 それでも、レイラに向かって、「さっき、聖堂の中で司祭と神父がセックスしていた。多分それが関係しているんだろう」などと、言えるわけがなかったのだ。
 どうしようかと、ギルベルトが悩んでいるうちに、レイラは手を伸ばしてその薄桃色のオーラに触れていた。
 
 その瞬間、レイラは指先から流れてくる痺れるような快楽に声を上げてしまっていた。
 
「あっ、ああぁん! はぁはぁ……はぁんっ!」

 神父が感じていた体の奥を司祭の太い肉棒で抉られて、頭がおかしくなりそうなくらいの激しい快楽が流れ込んできたのだ。
 ちょうど、神父が激しく突かれてイったところだったのだろう。
 訳も分からずに、レイラは共感するように意識が飛んでしまっていた。
 
 ギルベルトは、突然腕の中のレイラが艶っぽい喘ぎ声をだしたと思ったら、全身を朱に染めて気を失ってしまい、驚く。
 しかし、レイラの喘ぐ姿から、薄桃色のオーラが聖堂の中で行われていた行為のエクスタシーが何らかの形で具現化したものだと理解もしたのだ。
 
 ただ、思わぬところでレイラの艶やかな反応を見てしまったことで、ギルベルトは、動揺してしまっていた。
 腕の中のレイラをそういう対象として触れたいと、ほんの僅かでも思ってしまったことにだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

必然ラヴァーズ

須藤慎弥
BL
ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから熱烈求愛され、付き合う事になった卑屈ネガティブ男子高校生・葉璃(ハル)。 トップアイドルと新人アイドルの恋は前途多難…!? ※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線 ※いやんなシーンにはタイトルに「※」 ※表紙について。前半は町田様より頂きましたファンアート、後半より眠様(@nemu_chan1110)作のものに変更予定です♡ありがとうございます!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

炎よ永遠に

朝顔
BL
叔父の頼みを受けて、俺は世界有数の金持ちや、高貴な家柄の子息が集うウェストオーディン国の寄宿学校に途中入学することになる。 一族の名誉のために託された使命は、天国と呼ばれる特別に区切られた場所に入ること。そして、神と呼ばれる選ばれた人間から寵愛を受けることだった。 愛を知らず過去の傷に苦しめられながら生きる俺は、同じく愛を知らない男と出会う。 体を繋げることで、お互いの孤独を埋め合うように求め合うが、二人の行き着く先とは……。 西洋の現代に近いですが、架空設定。 日本以外の設定はゆるいです。 過去はシリアスですが、進行形は主人公が愛に目覚めて再生していくお話を目指しています。 重複投稿。

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

はじまりの恋

葉月めいこ
BL
生徒×教師/僕らの出逢いはきっと必然だった。 あの日くれた好きという言葉 それがすべてのはじまりだった 好きになるのに理由も時間もいらない 僕たちのはじまりとそれから 高校教師の西岡佐樹は 生徒の藤堂優哉に告白をされる。 突然のことに驚き戸惑う佐樹だが 藤堂の真っ直ぐな想いに 少しずつ心を動かされていく。 どうしてこんなに 彼のことが気になるのだろう。 いままでになかった想いが胸に広がる。 これは二人の出会いと日常 それからを描く純愛ストーリー 優しさばかりではない、切なく苦しい困難がたくさん待ち受けています。 二人は二人の選んだ道を信じて前に進んでいく。 ※作中にて視点変更されるシーンが多々あります。 ※素敵な表紙、挿絵イラストは朔羽ゆきさんに描いていただきました。 ※挿絵「想い03」「邂逅10」「邂逅12」「夏日13」「夏日48」「別離01」「別離34」「始まり06」

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処理中です...