19 / 28
第一部 第五章
1
しおりを挟む
泉の効果なのか、レイラは短時間であれば自身の足で歩けるようになっていった。
しかし、ギルベルトは、なんだかんだと理由を付けて、未だにレイラのことを抱っこして歩くことを止めていなかったのだ。
そんな二人が次に訪れていたのは、不思議な噂話を聞いてたどり着いた街だった。
その街には、毎夜不思議な鳴き声が聞こえるという教会があったのだ。
街に着いた二人は、さっそく聞き込み調査をすることにしたのだが、街の人たちはそのことについて口を割らなかったのだ。
というか、そもそもその噂話を知らない様子だったのだ。
聞き込みのため立ち寄ったパン屋の店先で、チョココロネを美味しそうに食べながら、女性店員に話を聞いていたレイラは首を傾げた。
「おかしいなぁ? 隣の街では、結構噂になっていたのに」
「そうだな……。姉さん……、口元についてる」
「お、おう……。ここか?」
「もう、こっちですよ」
「ありがとう」
女性店員は、店の軒先にあるベンチに座ったギルベルトのさらに膝に座らされているレイラが、チョコレートクリームをギルベルトに拭き取られている姿に目が離せなくなっていた。
そして、ギルベルトが指先で拭ったチョコレートクリームを舐める姿に目を爛々とさせていたのだ。
レイラは、まったく気が付いていなかったが、ギルベルトはその視線に気が付いていたが、まったく気にせずに、レイラを構い倒していたのだ。
パンを食べ終わったレイラは、にっこりと微笑んで話をしてくれた女性店員にお礼を言う。
「ありがとう。それと、パン、美味しかったよ」
「っ! いいえ、こちらこそ、良いものが見られて……。い…いえ、何でもないです」
そう言った女性店員は、慌てるように店の中に入っていったのだ。
レイラは、女性店員を視線で見送った後に、ギルベルトを見て言うのだ。
「う~ん。とりあえず、いったん宿に戻って状況整理でもしようか?」
「そうだな」
特に収穫のないままではあったが、宿に戻ることにした二人だった。
宿に戻ったギルベルトは、レイラを抱っこしたままベッドに座って、これからのことについて話を進める。
「街の外では噂が広がっているのに、内側では全くその話を聞かないというのは……。何かありそうだな」
「うん。仕方ないから、街にある教会を回って、おかしなところがないか探すしかないな……。私が自分で歩ければいいんだけど……」
「いや、姉さんは、俺が抱いて運ぶから、何も心配しなくても大丈夫だ」
「でも……、ほら、歩く練習も少しはしないと、な?」
レイラがそう言うと、眉をピクリと動かしたギルベルトは、不機嫌そうに言うのだ。
「無理に練習しなくても……」
「でもさ、あの泉に入ってから少しは、足が動くようになったし、練習すれば歩けるようになりそうだしさ?」
「はぁ……。なら、そのためにも、今日も足のマッサージをしようか?」
「えっ? あっ、今日は……」
視線を泳がせたレイラは、焦ったような口調で逃げ腰になるが、それを逃がすギルベルトではなかった。
「駄目だ。ほら、準備するから、横になって?」
「うぅぅ~~」
ギルベルトにそう言われたレイラは、渋々ズボンを脱いで横になるのだ。
いつからだろうか、ギルベルトが言い出して行いようになった行為だった。
俯せに横になったレイラの白く細い足に、マッサージ用の香りのいいオイルを垂らしたギルベルトは、ゆっくりとレイラの足を揉んでいくのだ。
「っあん。そこぉ……、いいぉ」
「ああ、ここ、凝ってるな……。ちょっと力入れるぞ」
「あっ! 痛たた!」
「悪い……」
「ぎるぅ、いたいよぉ」
ぐっと押された内腿が痛くて、涙目で振り返り訴えるレイラだったが、頬を薄く染めて瞳を潤めるその姿にギルベルトは、ごくりと喉を上下させていた。
すべすべな素足を撫でるように触るギルベルトは、深呼吸を繰り返す。
最初は、レイラのことを考えての行動だったはずが、気が付けばレイラにただ触れたくて、やっている行為になりつつあったのだ。
それでも、レイラに嫌われたくないギルベルトは、決して足以外の場所に触れることはなかったのだ。
そしてその日も、腕の中の小さなレイラから香る、甘い匂いになかなか眠れないギルベルトと、ギルベルトの腕の中で胸がドキドキとしてしまうレイラの夜は更けていったのだった。
しかし、ギルベルトは、なんだかんだと理由を付けて、未だにレイラのことを抱っこして歩くことを止めていなかったのだ。
そんな二人が次に訪れていたのは、不思議な噂話を聞いてたどり着いた街だった。
その街には、毎夜不思議な鳴き声が聞こえるという教会があったのだ。
街に着いた二人は、さっそく聞き込み調査をすることにしたのだが、街の人たちはそのことについて口を割らなかったのだ。
というか、そもそもその噂話を知らない様子だったのだ。
聞き込みのため立ち寄ったパン屋の店先で、チョココロネを美味しそうに食べながら、女性店員に話を聞いていたレイラは首を傾げた。
「おかしいなぁ? 隣の街では、結構噂になっていたのに」
「そうだな……。姉さん……、口元についてる」
「お、おう……。ここか?」
「もう、こっちですよ」
「ありがとう」
女性店員は、店の軒先にあるベンチに座ったギルベルトのさらに膝に座らされているレイラが、チョコレートクリームをギルベルトに拭き取られている姿に目が離せなくなっていた。
そして、ギルベルトが指先で拭ったチョコレートクリームを舐める姿に目を爛々とさせていたのだ。
レイラは、まったく気が付いていなかったが、ギルベルトはその視線に気が付いていたが、まったく気にせずに、レイラを構い倒していたのだ。
パンを食べ終わったレイラは、にっこりと微笑んで話をしてくれた女性店員にお礼を言う。
「ありがとう。それと、パン、美味しかったよ」
「っ! いいえ、こちらこそ、良いものが見られて……。い…いえ、何でもないです」
そう言った女性店員は、慌てるように店の中に入っていったのだ。
レイラは、女性店員を視線で見送った後に、ギルベルトを見て言うのだ。
「う~ん。とりあえず、いったん宿に戻って状況整理でもしようか?」
「そうだな」
特に収穫のないままではあったが、宿に戻ることにした二人だった。
宿に戻ったギルベルトは、レイラを抱っこしたままベッドに座って、これからのことについて話を進める。
「街の外では噂が広がっているのに、内側では全くその話を聞かないというのは……。何かありそうだな」
「うん。仕方ないから、街にある教会を回って、おかしなところがないか探すしかないな……。私が自分で歩ければいいんだけど……」
「いや、姉さんは、俺が抱いて運ぶから、何も心配しなくても大丈夫だ」
「でも……、ほら、歩く練習も少しはしないと、な?」
レイラがそう言うと、眉をピクリと動かしたギルベルトは、不機嫌そうに言うのだ。
「無理に練習しなくても……」
「でもさ、あの泉に入ってから少しは、足が動くようになったし、練習すれば歩けるようになりそうだしさ?」
「はぁ……。なら、そのためにも、今日も足のマッサージをしようか?」
「えっ? あっ、今日は……」
視線を泳がせたレイラは、焦ったような口調で逃げ腰になるが、それを逃がすギルベルトではなかった。
「駄目だ。ほら、準備するから、横になって?」
「うぅぅ~~」
ギルベルトにそう言われたレイラは、渋々ズボンを脱いで横になるのだ。
いつからだろうか、ギルベルトが言い出して行いようになった行為だった。
俯せに横になったレイラの白く細い足に、マッサージ用の香りのいいオイルを垂らしたギルベルトは、ゆっくりとレイラの足を揉んでいくのだ。
「っあん。そこぉ……、いいぉ」
「ああ、ここ、凝ってるな……。ちょっと力入れるぞ」
「あっ! 痛たた!」
「悪い……」
「ぎるぅ、いたいよぉ」
ぐっと押された内腿が痛くて、涙目で振り返り訴えるレイラだったが、頬を薄く染めて瞳を潤めるその姿にギルベルトは、ごくりと喉を上下させていた。
すべすべな素足を撫でるように触るギルベルトは、深呼吸を繰り返す。
最初は、レイラのことを考えての行動だったはずが、気が付けばレイラにただ触れたくて、やっている行為になりつつあったのだ。
それでも、レイラに嫌われたくないギルベルトは、決して足以外の場所に触れることはなかったのだ。
そしてその日も、腕の中の小さなレイラから香る、甘い匂いになかなか眠れないギルベルトと、ギルベルトの腕の中で胸がドキドキとしてしまうレイラの夜は更けていったのだった。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる