記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

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第一部 第三章

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 呪いの屋敷の魔術式を壊した後、二人は数日間町に留まっていた。
 あの後、レイラが熱を出してしまって動くことができなかったのだ。
 翌日には熱は下がっていたが、レイラを心配したギルベルトが出発を遅らせたのだ。
 体調が万全になったと判断したレイラは、ギルベルトにあることをお願いしていた。
 
「ギル……。指が関わっている魔術式だけど……」

 レイラがそう言うと、ギルベルトは分かっているとでもいう様に頷いたのだ。
 
「ああ。このまま放置はできない。きっと残りの指がどこかにあるはずなんだ。俺たちで解決しよう」

「うん。ありがとう……。このまま放置していれば、良くないことが起こりそうな気がするから、ギルがそう言ってくれて嬉しい」

「いや、これは魔術師の俺が解決すべき問題だからな。俺の方こそ、付き合わせて―――」

「違うよ。今は力は失ってるけど、私だって魔術師だよ。だから、これは私たちの問題ね」

 レイラがそう言うと、ギルベルトは眉を寄せて困ったような表情をしながらもレイラの言葉に頷くのだった。
 
 ギルベルトは、記憶の殆どを失っているレイラを見て、過去を思い出す。
 今のレイラは、昔のレイラと別人のように思うことが数多くあったのだ。
 昔のレイラであれば、ギルベルトの意見なんて聞かないで、自分の思うとおりに行動していたはずなのだ。
 
 孤児だった自分を引き取り、「あんたには、魔術師の才能がある!」と言って、幼いギルベルトに無茶な訓練ばかり科した鬼そのもののレイラ。
 
 
 昔のことを思い出していたギルベルトだったが、大事なのは過去ではなく、今自分の傍に居てくれるレイラなのだと思い、考えるのを止めていた。
 
「姉さん。次は、どこに行こうか? そういえば、怪我によく効く聖なる泉の噂を聞いたんだけど、そこの泉に浸かれば姉さんの足も良くなるかもしれい」

 重くなりつつあった空気を換えるようにギルベルトは、にこりと笑みを浮かべて提案する。
 レイラも、ギルベルトの気持ちを汲んで、笑顔を見せて頷いていた。
 
「いいね。まぁ、私のこれは、怪我じゃないけど、聖なる泉ってのには興味はあるかな?」

「よし、じゃあ、明日にでも出発しよう。それじゃ、最後に蒸しパンを買って、食べ納めとしようか?」

「うん!」

 こうして、旅の目的と、次の行き先を決めた二人は、美味しい蒸しパンに舌鼓を打つのだった。

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