記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

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第一部 第三章

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 そこにいたのは、一人の若い女性だった。
 その女性はウエディングドレスを身に纏い、新郎の訪れを待っているようだった。
 現れた新郎は、無表情に花嫁の手を掴んで部屋を後にする。
 
 その後、すぐに場面が切り替わる。
 花嫁はベッドに座って、両手で顔を覆ってさめざめと泣いていた。
 意識を集中させると、花嫁は擦れる声で繰り返し言うのだ。
 
「ああ、旦那様……。いくら契約結婚だとしても、あんまりです。初夜に私ではなく、別の人の元に行ってしまうなんて……」

 肩を震わせて泣いている花嫁が哀れで、レイラはどうにかして慰めてあげたかったが、所詮レイラは傍観者でしかないのだと思い知らされるだけだった。
 
 そして、またしても場面は変わっていた。
 ウエディングドレスを着ていた時とは別人のような、あの女性がいたのだ。
 ゲッソリと窶れた女性は、地味なドレスに身を包み落ち窪んた、泥のように濁った瞳で虚空を見つめていたのだ。
 そして、唇を噛んで恨み言を口にする。
 
「許さない……。あの人も、あの人の愛人も、本邸の使用人たちも……。みんな私を騙して、こんな所に閉じ込めて……。絶対に許さない」

 そう言って、唇から血が流れるのも構わずに、きつく唇を噛み締めるのだ。
 
 それを見て、レイラはなんとなく状況を察していた。
 女性は、恐らく低位貴族の娘なのだろう。
 何らかの理由で、結婚後は、顧みられず、夫は愛人と暮らしているのだろうと。
 そして、ここにこの女性の味方は誰一人おらず、一人心を絶望に染めているのだろうと。
 
 レイラが女性を見ていると、またしても場面が変わっていた。
 眉間にしわを寄せて、憎しみの籠った瞳で窓のを見ている女性の視線の先を追ったレイラは目を見開くことになった。
 そこには、女性の夫であるはずの領主が、庭園の草むらの中で使用人であるはずの下男と口づけを交わしているというシーンだったのだ。
 怒りに震える女性は、ガラガラに擦れたしわがれた声で言うのだ。
 
「あんな男に夫を奪われた私を、みんなが嘲笑ってる……。もう耐えられない……。耐えられないのよ!」

 そう言った女性の瞳は冷たい氷のようだと、レイラには思えてならなかった。
 女性はその日の夜、領主を呼び出していた。
 レイラは、どうするのかとハラハラと見守っていると、女性は隠し持っていたナイフで領主を脅して、ロープで縛り上げたのだ。
 猿轡をされた領主は、混乱しながらも、異常事態が起きたのだと分かっていたが、手足を縛られてどうしようもなったのだ。
 そうしているうちに、領主の愛人である下男も現れたのだ。
 そして、女性は下男が慎重に部屋に入ってきたところを、ナイフで刺したのだ。
 下男は、太ももを刺された痛みで絶叫をあげる。
 それを見た領主は、猿轡をされているにもかかわらず、それと分かるほどの咆哮をあげていた。
 しかし、女性はそれをちらりと見ただけで、下男の髪を掴んで、ずるずると領主の前に引きずったのだ。
 女性のどこにそんな力があったのだろうか。しかし、非力に見える女性は、痛みに涙を零す下男を無理やり引きずった後に、領主の前でその下男に馬乗りになって、何度も腹を刺したのだ。
 そして、暗い瞳で寒々しく笑った女は、下男のズボンと下着を一気に下してこういったのだ。
 
「私には、どちらが抱かれているのか判断できないので、お二人のペニスを切り捨てますね。ああ、安心してください。切り捨てた後の物は、お互いのアナルに突き刺して挿しあげますわ」

 そう言って、唇を裂けた三日月の如く不気味に笑うのだ。
 そして、女性は宣言通り、まずは下男の性器をゆっくりと切り落としたのだ。
 切り落とした物は、ぶるぶると震えて失禁していた領主の尻の穴にずぶりと躊躇なく突き刺すのだ。
 領主は、尻穴に入ってきた異物に情けなくも女のような悲鳴を上げる。
 それを見下した女性は、今度は領主の性器を切り落とす番だと言って、領主の性器もゆっくりと時間をかけて切り落としたのだ。
 その時には、下男は虫の息だった。それでも、女性は領主の切り落とした性器を下男の尻穴に突き刺したのだ。
 それでも怒り収まらない女性は、領主と下男を何度も何度も、ナイフで突き刺し、息の根を止めたのだった。
 レイラは、女性の鬼のような表情に息をのんだ。
 女は、そのまま幽鬼のような足取りでふらふらと別邸を出て行ったのだ。
 恐らくだが、本邸の使用人も殺すのだろうとレイラには想像できた。
 この場所から離れられないレイラには、女性がこと後どうなったのかは分からなかったが、恐らく自ら命を絶ったのだろうと想像ができた。
 レイラには分からなかった。女性の気持ちも、領主の気持ちも、下男の気持ちも。
 だから、死んでしまったすべての人を偲んで涙を流すことしかできなかった。
 ボロボロと、よくわからない感情のまま涙を流していたレイラは、遠くから聞こえてくる、自分を呼ぶ声に身を委ねるようにして、意識を上昇させていた。
 
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