記憶喪失中の美少年は、眼帯青年を甘やかしたい!

バナナマヨネーズ

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第一部 第二章

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 その後、気を失っていた女性は、生命力を奪っていた術式が瓦解したことで、何とか助かったのだ。
 レイラを腕に抱いて、意識を失っていた女性を肩に担いだ姿のギルベルトを見た、女性の夫は最初は驚いていたが、妻の命が無事だったことを何度もギルベルトとレイラにお礼を言ったのだ。
 ただ、生命力を大量に吸われたことで、完全に元のように元気になるまでは数か月、長くて数年は療養が必要そうだった。
 それでも、夫婦は笑顔でレイラたちに命を救ってくれてありがとうと揃って何度も頭を下げたのだ。
 
 そして、宿屋の主人も夫婦の無事を心から喜んだのだ。
 ギルベルトは、今回の件は昔の魔術師が関係していることだけを伝え、危険だからこれ以上知ろうとするなと釘を刺したのだ。
 宿屋の主人と夫婦は魔術師が関係していると聞いて顔を青くしてギルベルトの忠告に頷いたのだ。
 
 
 翌日、予定よりも早いがこの街を出ることにしたレイラとギルベルトは、改めて昨夜の場所に向かっていた。
 昨夜は、女性の安全を優先して、後始末を完全に済ませることができていなかったのだ。
 ギルベルトが展開していた簡易の結界を解いた二人は、魔術核のあった木の根元を確認して眉をしかめる。
 
 その場所には、数百人は超えるだろう遺体があったのだ。
 送り火と呼ばれる、死者を弔うことに使われる術式を使って、ギルベルトは犠牲となった女性の遺体を燃やして灰にした。
 しかし、すべての遺体を燃やした後、さらに奥から複雑な、それでいて古い術式が施されている棺が姿を現したのだ。
 
 ギルベルトは、その術式を難なく破棄して、棺を開けた。
 中に入っていたのは、防腐処理をされた女性の遺体だった。
 その女性は、とても美しく、ただ眠っているだけに見えたのだ。
 レイラは、女性の遺体に触れて事件の真相を確かめようとしたが、ギルベルトの言葉でレイラは真相を確かめないことに決めたのだ。
 その時ギルベルトは、心底嫌そうな表情で言ったのだ。
 
「ご丁寧に、防腐処理まで施して、封印の術式を掛けた棺に入っていた遺体だ。碌な理由じゃない。やるだけ無駄だよ。見る価値もない」

 そう言われたレイラもなんとなくそんな気がした。
 ただ、棺に施された術式と魔術核を使った術式では、様式がかけ離れていて、それぞれ別の人物が仕組んだことなのが容易に見て取れたのだ。
 
 恐らくだが、元々あった棺の術式で出来た場を利用する形で今回の魔術核を使った術式が組まれたのだろうと。
 
 レイラは予感がしていた。
 この先、きっとこの術式を組んだ人物の痕跡を追うことになりそうだと。
 そう考えたレイラは、ギルベルトに今回回収した、左手の人差し指を再封印し持ち歩くことにしたのだ。
 ギルベルトは、最初は嫌な顔をしていたが、レイラのお願いに最終的にしぶしぶ頷き、魔空間の奥深くに指をしまい込んだのだった。
 
 こうして、後始末を付けた二人は、次の街に向かった馬を進めたのだった。
 
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