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第三話 戦勝パーティー
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アンリエットが15歳の時、隣国との戦争が終結した。
自国に被害はなく、まるで他人事のような戦争だったと、貴族たちは挙って言っていた。
戦後処理も終わり、国では華やかな戦勝パーティーが開かれることになった。
王宮の広間に、沢山の貴族が呼ばれていた。
アンリエットも、父と母と姉と共に参加していた。
その日は、国の英雄とも言える将軍、ガウェイン・トードリア公爵も参加していた。
ガウェインは普段、華やかなパーティーを嫌がりほとんど参加しなかったが、今回は戦勝パーティーということで、渋々参加していたのだ。
ガウェインは、凍てつくような青い瞳で会場を興味なさそうに眺めていた。
その日は、祭典用の軍服に身を包んでいた。服の上からでも分かるほどの圧倒的な筋肉と頭一つ飛び抜けた長身も相まって、近寄りがたい雰囲気を周囲に放っていた。
整った顔と短く切られた金髪と日に焼けた肌は、一人の男として魅力的ではあったが、溢れ出る威圧感のせいで普段は、ガウェインに積極的に近付こうとする者は少なかった。
しかし、その日は違ったのだ。
ガウェインは、今年25歳になるが、未だに婚約者が居なかったのだ。
そんなおいしい優良物件に、食いつかない貴族はいなかった。
未婚の娘を持つ貴族たちは、自分の娘を婚約者にと、ガウェインにすり寄っていた。
普段から、婚約話を持ちかけられては、興味ないと断っていたガウェインも、数の多さに辟易していた。
繰り返しされる、くだらない婚約話と娘の自慢話に飽きてきたガウェインは、心を無にしてやり過ごしていた。
一方、会場についたアンリエットは、家族と別れて一人、料理が置かれた一角に陣取っていた。
その日は、パーティーの準備だと、使用人たちが忙しくしていたため、必要な分の食事を摂取できていなかったのだ。
ドレスを着て、馬車に揺られて会場に着くまでに、少しだけドレスが緩くなってきていたことにアンリエットは、焦っていたのだ。
焦りから、会場に着いてすぐに料理コーナーに向かっていたとしても仕方がないと言えよう。
しかし、アンリエットの事情を知らない他の貴族たちは、そんなアンリエットを嘲笑っていた。
「あらあら、こんなところでも餌漁り?」
「くすくす。家畜が紛れ込んでいるわよ」
「まぁ!なんてはしたない子なのかしら!!」
そんな、アンリエットをあざ笑う声を無視して、死なないための食事を開始した。
お皿に大量のお肉を乗せたアンリエットは、優雅にそして、スピーディーに食べ進めていった。
何往復かした頃、緩くなっていたドレスがぴったりになっていたことにアンリエットは、安堵の息を吐いていた。
必要な分の量は食べ終えたので、後はゆっくりと料理を味わうことにした。
最初の頃は、元々食が細かったこともあり、食べては吐いてを繰り返していた。
現在は、その努力の甲斐あって吐かないで料理を詰め込むことが出来るようになっていた。
そして、必要な分を食べ居終わったら、美味しいものを作ってくれた料理人に感謝の気持ちを込めて、料理を味わうようにしていた。
アンリエットは、ゆっくりと味わうように料理を堪能しながら会場を眺めていた。
いつも以上に、綺羅びやかな貴族たち。
特に、年頃の令嬢達のドレスの華やかさに目が行った。
(可愛いドレス……。わたしも、あのご令嬢みたいに薄桃色のドレスとか、薄い空色のドレスを着てみたいなぁ。はぁ、でも無理ね。薄い色のドレスだとわたしに合わないのよね。でも、痩せることなんて絶対にできない。死にたくないもん。だから、ドレスは見るだけ……。うん。見るだけで十分よ)
そんなことを考えていると、いつの間にか会場が騒がしくなっていた。
耳を澄ますと、悲鳴も聞こえて来たことに、アンリエットは首を傾げていた。
会場内を眺めていると、騒ぎの中心が分かった。
顔を手で覆った、男性が膝を付いているのがアンリエットの目に入った。
自国に被害はなく、まるで他人事のような戦争だったと、貴族たちは挙って言っていた。
戦後処理も終わり、国では華やかな戦勝パーティーが開かれることになった。
王宮の広間に、沢山の貴族が呼ばれていた。
アンリエットも、父と母と姉と共に参加していた。
その日は、国の英雄とも言える将軍、ガウェイン・トードリア公爵も参加していた。
ガウェインは普段、華やかなパーティーを嫌がりほとんど参加しなかったが、今回は戦勝パーティーということで、渋々参加していたのだ。
ガウェインは、凍てつくような青い瞳で会場を興味なさそうに眺めていた。
その日は、祭典用の軍服に身を包んでいた。服の上からでも分かるほどの圧倒的な筋肉と頭一つ飛び抜けた長身も相まって、近寄りがたい雰囲気を周囲に放っていた。
整った顔と短く切られた金髪と日に焼けた肌は、一人の男として魅力的ではあったが、溢れ出る威圧感のせいで普段は、ガウェインに積極的に近付こうとする者は少なかった。
しかし、その日は違ったのだ。
ガウェインは、今年25歳になるが、未だに婚約者が居なかったのだ。
そんなおいしい優良物件に、食いつかない貴族はいなかった。
未婚の娘を持つ貴族たちは、自分の娘を婚約者にと、ガウェインにすり寄っていた。
普段から、婚約話を持ちかけられては、興味ないと断っていたガウェインも、数の多さに辟易していた。
繰り返しされる、くだらない婚約話と娘の自慢話に飽きてきたガウェインは、心を無にしてやり過ごしていた。
一方、会場についたアンリエットは、家族と別れて一人、料理が置かれた一角に陣取っていた。
その日は、パーティーの準備だと、使用人たちが忙しくしていたため、必要な分の食事を摂取できていなかったのだ。
ドレスを着て、馬車に揺られて会場に着くまでに、少しだけドレスが緩くなってきていたことにアンリエットは、焦っていたのだ。
焦りから、会場に着いてすぐに料理コーナーに向かっていたとしても仕方がないと言えよう。
しかし、アンリエットの事情を知らない他の貴族たちは、そんなアンリエットを嘲笑っていた。
「あらあら、こんなところでも餌漁り?」
「くすくす。家畜が紛れ込んでいるわよ」
「まぁ!なんてはしたない子なのかしら!!」
そんな、アンリエットをあざ笑う声を無視して、死なないための食事を開始した。
お皿に大量のお肉を乗せたアンリエットは、優雅にそして、スピーディーに食べ進めていった。
何往復かした頃、緩くなっていたドレスがぴったりになっていたことにアンリエットは、安堵の息を吐いていた。
必要な分の量は食べ終えたので、後はゆっくりと料理を味わうことにした。
最初の頃は、元々食が細かったこともあり、食べては吐いてを繰り返していた。
現在は、その努力の甲斐あって吐かないで料理を詰め込むことが出来るようになっていた。
そして、必要な分を食べ居終わったら、美味しいものを作ってくれた料理人に感謝の気持ちを込めて、料理を味わうようにしていた。
アンリエットは、ゆっくりと味わうように料理を堪能しながら会場を眺めていた。
いつも以上に、綺羅びやかな貴族たち。
特に、年頃の令嬢達のドレスの華やかさに目が行った。
(可愛いドレス……。わたしも、あのご令嬢みたいに薄桃色のドレスとか、薄い空色のドレスを着てみたいなぁ。はぁ、でも無理ね。薄い色のドレスだとわたしに合わないのよね。でも、痩せることなんて絶対にできない。死にたくないもん。だから、ドレスは見るだけ……。うん。見るだけで十分よ)
そんなことを考えていると、いつの間にか会場が騒がしくなっていた。
耳を澄ますと、悲鳴も聞こえて来たことに、アンリエットは首を傾げていた。
会場内を眺めていると、騒ぎの中心が分かった。
顔を手で覆った、男性が膝を付いているのがアンリエットの目に入った。
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