My.fiancée-君が泣き叫んだとしても、もう一度、君の手をとりたい-

プロローグ

俺の恋人。

俺は彼女を愛してた。本当に。
ハイスクールの時
初めて会ったその瞬間から。

俺がアメフトの試合をしていて、
観客席で彼女が観てた。
彼女だけが輝いて見えたあの日。

優しく、柔らかい笑顔。
翠色の瞳が、フワフワとした黒髪が
美しくていつも、見惚れてた。

まぁ…それはスクール中の男達も
一緒だったと思うけど。

彼女と付き合うって決まった時には
天にも登る思いだった。

頬を染めて小さく頷く彼女を見て　
絶対に幸せにしようと思った。


ずっと、
俺のそばで笑っていて欲しかった…



なのに。



どうしてこうなったんだ？


どうして…


俺は血溜まりの中倒れている。
彼女に刺された傷が痛む。　

酷く…酷く…痛む。
痛みはどんどん増していく。



「アイリーン…」



事の発端は何だった…？

彼女の家族が殺されたことか？

彼女が殺人犯だと
ニュースになったことか？


『俺が彼女を
信じられなかったこと…？』


…違う。


違う…違う！！
俺のせいじゃない…。
あいつが現れてからだ…。

ジョザイア・マクベイン…

死んでも許してたまるか…
アイリーンは俺の婚約者だ。


今も、これからだって…


俺はアイツと戦う…
もう一度、
彼女をこの腕に抱くために。

彼女を正気に戻して、
アイツから引き剥がして、
もう一度
プロポーズするんだ。


『二度とこの手を離さない』と、
『二度と君を裏切りはしない』と、

あの日みたいに、
緊張で手を震わせながら
プロポーズをするんだ…


あぁ…目が熱い、苦しい。
涙と雨で視界がにじむ。


きっと…彼女はまた『喜んで！』っていってくれるよな…
彼女は俺を許してくれるよな…



『彼女だけが俺の運命の人だ…』



雨の音に混じって、人の足音がした。
誰だかはわからない。

このまま…死ぬわけにはいかない。


足音の主は白衣の男だった。


俺の顔を覗いて
ニヤニヤしながら話している
朦朧とする俺には何を話しているのか
わからなかったが


「…助けてやろうか？」


それだけは聞こえた。

俺は男の白衣を掴み答える。


そこで意識は途絶えた。


あぁ…必ず…俺は彼女を、
取り戻してみせる…

どんな手を使ってでも…