4 / 7
一章 再会
3.不思議な人
しおりを挟む
床にぶっ倒れながら思う。
"え、なんで…??"
俺は出てきてからも
何人も救った。
失敗なんか今まで、無かったのに
ただ、単純にすっ転んだ。
「いっって…」
目の前のガラスケースに突っ込んで
首をざっくりやってしまったらしい。
腕と脚にもガラスが突き刺さっている。
あーあ、あたりが血まみれだ。
俺は大きく溜息をついた。
…今日、彼女を救うのは無理だな。
てか、謝らないと。
「すみません…本田さん…
お店、壊しちゃって…」
本田さんの顔を見ると、
彼女は真っ青になっていた。
「っ…」
??…どうしたんだろう?
鋏はさっき転んだ拍子に
どっか飛んでいったし、
殺そうとしたのは分からなかったはず…
…怒ってるんだろうか…?
…たぶん、そうだよな。
迷惑かけたんだし当たり前だ。
俺はギュッと目を瞑った。
きっと顔面に目がけて
拳が降ってくる…
何度も、何度も、何度も。
でも俺が悪いから仕方ない。
怖いけれど仕方ない。仕方ない事だ。
身体は大きくなっても
未だにこういう状況になると
震えてしまう。
…怖い。怖くて仕方がない。
「…すみません。本当にすみません…」
そう身を屈めながら謝っていると、
本田さんは俺の肩を掴んでまたもや
大きな声で言う。
その言葉は全くの予想外。
「だ…大丈夫?!!!?
謝らなくていいよ!!!?
じっとして?!
えっと…早く手当しないと!
いや…救急車?!!ひとまず血止めよっか!!」
「え…?」
本田さんはオロオロと泣きそうな顔をしながら、
小さい手で俺の首元の傷を抑える。
その意味が全く俺にはわからなかった。
「…?俺、迷惑かけましたよ??
なんで殴ったりしないんですか…???」
俺の発言に彼女は目を丸くする。
「え…なんで!!?殴らないよ??!
何の恨みもないのに!!
それより、怪我を何とかしないと!」
彼女は心底驚いた様にそう答えた。
「…??」
俺は首を傾げる。
さっぱり意味がわからない。
なんで怒らないんだろう?
なんで暴力を振るわないんだろう?
そんなのはおかしい。
普通じゃない。
頭の中が疑問符でいっぱいになる。
「ああ!首動かさないで。血が…」
本田さんは血まみれになってしまった
手でエプロンのポケットから
ハンカチを取り出して俺の首に当てる。
水色の白熊柄だ。
「…えっ…?は、ハンカチ汚れますよ?
俺、大丈夫ですから…」
「大丈夫じゃ無いよ!!
手当てしないと!!」
このくらいの怪我なら
よくしてたし…問題ないのに。
てか、床も凄い汚してしまった…
掃除しないと…。
「…大丈夫ですよ。
ひとまず、ここの掃除をして、
それから帰ってなんとかするんで」
俺がそう言うと本田さんは
眉を顰めて、勢いよく立ち上がる。
その表情を見ると
今回は間違いなく怒ってる…
??…どうして??
「掃除なんかしなくていいから!!
あと、そのまま返すわけないでしょ!
首を押さえて、じっとしてて!!」
「…は、はい」
呆気に取られて俺は答える。
「……」
少しして、息を切らした彼女が
大きな箱を持って戻ってきた。
中から包帯や脱脂綿、消毒液を出し
まごつきながらも止血してくれた。
「うわ…ガラス刺さっちゃってる…
コレ…抜いた方がいいよね…?
やっぱり…救急車を…」
「大丈夫ですよ、適当に抜いてくれれば。」
「そ…そう?痛かったら言ってね」
「はい…」
本田さんは、慣れない手つきで…
でも丁寧に手当をしてくれた。
俺はそれをじっと見ている。
突き刺さったガラスが一つ一つ
抜かれてく、一つ抜くたび彼女は
チラチラと俺の顔を心配そうに窺う。
怪我はいっぱいしてきたけれど
手当して貰ったのは初めてだった。
「……」
手当が終わったのか彼女は俺の顔を
じっと覗き込む。
その表情は、なんだか不思議そうだ。
「…ニコニコしてどうしたの??」
「え!!?…!?
俺…笑ってました???」
「うん、凄い嬉しそう??
痛みがちょっと引いたのかな?」
「………あぁ…
たぶん、そうです。
全然痛くない気がします。
本田さんのおかげで…」
俺がそう言うと
本田さんはニッコリ笑って
「よかった。」
とだけ言って救急箱を戻しに行った。
小さな足音が花屋の中こだまする。
「……」
俺はその小さくなってく後ろ姿を
ぼーっと見つめた。
そして、
包帯の巻かれてた手に目をやると
その視界は何故か、少し滲む。
「…本田さん…」
花々に囲まれ、
明るい照明に照らされた、
彼女のほっとした様な微笑みが
いつまでも、いつまでも、
俺の心に焼き付いていた。
"え、なんで…??"
俺は出てきてからも
何人も救った。
失敗なんか今まで、無かったのに
ただ、単純にすっ転んだ。
「いっって…」
目の前のガラスケースに突っ込んで
首をざっくりやってしまったらしい。
腕と脚にもガラスが突き刺さっている。
あーあ、あたりが血まみれだ。
俺は大きく溜息をついた。
…今日、彼女を救うのは無理だな。
てか、謝らないと。
「すみません…本田さん…
お店、壊しちゃって…」
本田さんの顔を見ると、
彼女は真っ青になっていた。
「っ…」
??…どうしたんだろう?
鋏はさっき転んだ拍子に
どっか飛んでいったし、
殺そうとしたのは分からなかったはず…
…怒ってるんだろうか…?
…たぶん、そうだよな。
迷惑かけたんだし当たり前だ。
俺はギュッと目を瞑った。
きっと顔面に目がけて
拳が降ってくる…
何度も、何度も、何度も。
でも俺が悪いから仕方ない。
怖いけれど仕方ない。仕方ない事だ。
身体は大きくなっても
未だにこういう状況になると
震えてしまう。
…怖い。怖くて仕方がない。
「…すみません。本当にすみません…」
そう身を屈めながら謝っていると、
本田さんは俺の肩を掴んでまたもや
大きな声で言う。
その言葉は全くの予想外。
「だ…大丈夫?!!!?
謝らなくていいよ!!!?
じっとして?!
えっと…早く手当しないと!
いや…救急車?!!ひとまず血止めよっか!!」
「え…?」
本田さんはオロオロと泣きそうな顔をしながら、
小さい手で俺の首元の傷を抑える。
その意味が全く俺にはわからなかった。
「…?俺、迷惑かけましたよ??
なんで殴ったりしないんですか…???」
俺の発言に彼女は目を丸くする。
「え…なんで!!?殴らないよ??!
何の恨みもないのに!!
それより、怪我を何とかしないと!」
彼女は心底驚いた様にそう答えた。
「…??」
俺は首を傾げる。
さっぱり意味がわからない。
なんで怒らないんだろう?
なんで暴力を振るわないんだろう?
そんなのはおかしい。
普通じゃない。
頭の中が疑問符でいっぱいになる。
「ああ!首動かさないで。血が…」
本田さんは血まみれになってしまった
手でエプロンのポケットから
ハンカチを取り出して俺の首に当てる。
水色の白熊柄だ。
「…えっ…?は、ハンカチ汚れますよ?
俺、大丈夫ですから…」
「大丈夫じゃ無いよ!!
手当てしないと!!」
このくらいの怪我なら
よくしてたし…問題ないのに。
てか、床も凄い汚してしまった…
掃除しないと…。
「…大丈夫ですよ。
ひとまず、ここの掃除をして、
それから帰ってなんとかするんで」
俺がそう言うと本田さんは
眉を顰めて、勢いよく立ち上がる。
その表情を見ると
今回は間違いなく怒ってる…
??…どうして??
「掃除なんかしなくていいから!!
あと、そのまま返すわけないでしょ!
首を押さえて、じっとしてて!!」
「…は、はい」
呆気に取られて俺は答える。
「……」
少しして、息を切らした彼女が
大きな箱を持って戻ってきた。
中から包帯や脱脂綿、消毒液を出し
まごつきながらも止血してくれた。
「うわ…ガラス刺さっちゃってる…
コレ…抜いた方がいいよね…?
やっぱり…救急車を…」
「大丈夫ですよ、適当に抜いてくれれば。」
「そ…そう?痛かったら言ってね」
「はい…」
本田さんは、慣れない手つきで…
でも丁寧に手当をしてくれた。
俺はそれをじっと見ている。
突き刺さったガラスが一つ一つ
抜かれてく、一つ抜くたび彼女は
チラチラと俺の顔を心配そうに窺う。
怪我はいっぱいしてきたけれど
手当して貰ったのは初めてだった。
「……」
手当が終わったのか彼女は俺の顔を
じっと覗き込む。
その表情は、なんだか不思議そうだ。
「…ニコニコしてどうしたの??」
「え!!?…!?
俺…笑ってました???」
「うん、凄い嬉しそう??
痛みがちょっと引いたのかな?」
「………あぁ…
たぶん、そうです。
全然痛くない気がします。
本田さんのおかげで…」
俺がそう言うと
本田さんはニッコリ笑って
「よかった。」
とだけ言って救急箱を戻しに行った。
小さな足音が花屋の中こだまする。
「……」
俺はその小さくなってく後ろ姿を
ぼーっと見つめた。
そして、
包帯の巻かれてた手に目をやると
その視界は何故か、少し滲む。
「…本田さん…」
花々に囲まれ、
明るい照明に照らされた、
彼女のほっとした様な微笑みが
いつまでも、いつまでも、
俺の心に焼き付いていた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる