My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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12章

4.全てを知ったとしても。

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私は雷雨の中チャイムを鳴らした。
機械的でよく通る音が小さく響く。


「‥‥いないなんて事、ないはずなんだけど‥」


そう呟いた時、家の中から
ギシリとフローリングの軋む音がした。


「……!」


ギシッ‥ギシッ‥と
その音はゆっくりと近づいてくる。

ドアに、はめ込まれた磨りガラスから
ぼんやりと黒い人影が見えた。

それがドアの前に立つと、
カチャリという音と共にドアノブがゆっくり傾き、


ドアが少し開いた。


けれど、人が出てくる様子がない‥


「………?」


私は恐る恐るその中を覗きこむ、
中は暗闇で包まれ、ほとんど何も見えない。


そう思った瞬間、


「うああっ!?」


ドアの隙間から手が伸び、
私の手首を掴んで家の中に引きずり込んだ。


私が中に入るとすぐにドアが
バタン!!と大きな音を立てて閉められる。

そのまま片手に思い切り首を掴まれ
そのドアに叩きつけられた。


「‥っぁ!!!?」


暗くて何も見えない。

感じるのはギリギリと首に食い込む
大きな手の感触だけ。

半ばパニックになりながら、声を上げる。


「ひっ‥あっ‥助け‥」


「!?」


目の前の人物は何かに驚いたように
私から手を離した。


「?!‥あっアイリーン?!」


その声は聞き馴染みのあるものだった。
ジョザイアの声。


「ごめんね‥!大丈夫‥?
まさか、アイリーンだと思わなくって‥
ほんとにごめんね‥怪我してない?」


いつも通りの優しい声だった。
彼は私の首元に優しく手を触れた。


「ゲホッ‥ええ、大丈夫よ。」


窓から差し込む光で薄っすらと彼の姿がみえる。
彼は腰を抜かした私を抱き上げるように
立たせた。


「‥アイリーン‥なんでここに‥
僕は大人しくしててって言ったよ?」


表情は見えないけれど、
彼の声色から安堵と一緒に

少し怪訝な様子が伺えた。


「あの‥ごめんなさい‥

また‥私が見ていないところで
誰かがいなくなってしまう気がして‥
一人でいられなかった‥」


もう考えたくないのに、あの日の
血に塗れた情景が目に浮かんで滲んでゆく。

あの日のむせかえる様な血の匂いさえ感じられる。

声が勝手に震えてしまう‥


「私は‥

もう誰も失いたくない‥




私を一人にしないで‥ジョザイア‥」




そう懇願するように彼の胸に手を当て
そのまま彼の服を握りしめた。


「‥‥」


彼は黙ったまま私の首筋から撫で上げるように
ほおに触れて涙をすくった。

私が顔を上げると
彼は幸せそうに微笑んでいた。


「…アイリーン‥僕がいなくて辛かったんだね‥
すごく嬉しい‥
もう大丈夫だよ。これからはずっと一緒‥」



そう言って私を抱きしめて、頭を撫でた。
私は体を寄せて、彼を抱き返した。


この暗闇の中で彼と私の体温が
溶けあっていくような気がした。


外からは、雨や遠くに落ちる雷の音がする。
ずっと彼とこうして抱き合って居たかった。




「‥?」


ふと、彼の身体が少し濡れている事に気がついた。

彼がグレンの家に入った時は
雨なんて降ってなかったはずなのに‥?

もう、心は安らいだはずなのに
酷い血の匂いが消えないのは‥?



どうして‥?



そう考えているとカチャッと背後から音がした。


そっと振り向くとジョザイアが私を抱いたまま
玄関の鍵をかけている。

ドアについた内鍵、チェーン、南京錠、
全てを確実に。


「じ‥ジョザイア?何してるの??‥え?」


困惑する私をよそに彼は暗闇の中で薄く笑う。


「ねぇ‥アイリーン。気がついてる?」


「?‥な‥なにに?」


外の雷雨は酷さを増し、ガタガタと窓を鳴らす。
まるで、私を逃すまいとするかのように。


「‥‥」


彼は私の方へと
にじり寄り、背にドアが触れた。

そして、私の手を強く握り、ほおを手で包んだ。
その手は濡れていて熱い。



ジョザイアは私を愛おしそうに見つめ、
手の力を強める。



「アイリーンはもう‥僕無しじゃ生きられない。


僕からは離れられない。

僕からは逃げられない。

僕を愛さずには生きていけない。




たとえ‥全てを知ったとしても」




その瞬間、耳をつんざくような雷が落ち、
光が窓から差し込んだ。



その時やっと‥彼の姿がはっきりと見えた




彼の‥血に塗れた手や‥


‥その笑顔が。








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