My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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12章

1.⚠︎苦痛の為に《ジョザイア視点》

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リビングは真っ赤に染まっていた。

窓から見える陽は沈みかけ、
今にも雨が降り出しそうな
真っ黒な雲の隙間からは不気味な光が漏れて、
室内に真っ黒い影が伸びる。


「うん!綺麗に蝶々ができたね!
これで先生も喜んでくれるはず!」


僕は蝶のように磔にされた彼を
舐めるように見つめ、笑った。


血塗れの杭は手を貫いて、
肉を裂き、骨が手の甲を突き破っている。

杭で壁に固定された傷はミリミリと音を立てて
拡がり、徐々に手を裂いていく。
苦痛に彼の顔が歪み、嗚咽を漏らす。


「‥う‥ぐっ‥」


埃っぽいフローリングの溝に
グレンの血が伝っていく。
その様子はとても美しかった。


「あぁ、グレンくん。
今、僕は凄く穏やかでいい気分だ‥君はどう?

ふふっまぁ聞かなくても解るけどね。」


蝶のように磔になった彼を眺めながら
僕はソファーに勢いよく座って、鼻歌を歌う。
そして、ゆっくりとナイフを研ぎ始めた。


もう誰にも僕とアイリーンの邪魔はさせない。


グレンさえいなくなれば、
彼女もきっと僕の愛を受け入れてくれる。

僕の望む形の愛情を、
たっぷりと注いでくれるに違いない。

僕がこんなに彼女を愛してるんだから
アイリーンだって僕を愛さなきゃいけない。
当然のことだよね。


「僕の可愛いアイリーン‥待っててね。
邪魔者を消してすぐに君のもとに帰るから‥」



グレンは手に走る激痛を堪えながら、
僕を睨む。


顔には大量の汗が流れ
それが血と混ざり、顎から垂れる。



「‥彼女は‥お前が殺したんだろ‥
‥一体なんの為に‥俺を‥」


「え?」


一瞬
僕はキョトンとして、彼を見た。 
でも、すぐに理解した。

ああ、
そうか贈り物を警察に渡さなかったのか‥
予想通りだね。


アレはジェシカなんだけど‥


でも、いいこと思いついた‥

こう言えばもっともっと苦痛を与えられる!

僕のアイリーンに手を出した罰だ‥
思わず僕の口の端が上がる。



「うん、そうだね。彼女は死んだ。


君が死なせた。」



僕がそう口にすると
グレンは飛びかかるように怒号を発する。

身体の中の血液全てが頭に登っていったみたいに
顔が真っ赤に染まった。


「ふざけるな!‥お前が‥!お前が‥
アイリーンを殺したんじゃないか‥!!」


彼が不愉快になればなるほど
僕の気持ちは高揚する。
いい気味だ、いい気味だ。


僕はグレンを無視して
開きかけの冷蔵庫を覗いた。
"アレ"を使ったらもっと彼を壊せる。


「やっぱりあった‥なんでここに入れてるの?
食べる気だったの?」


僕は、クスクス嗤いながら
冷蔵庫から黒い袋を取り出す。



「僕がアイリーンを
殺したなんて人聞き悪いよ。

あの日グレンくんがアイリーンを
助けなかったから



…こうなったんでしょ?」



そう言って、
血と臓物を、床にぶちまけ、
それを踏み躙った。

グチャリという音とともに

赤黒い血が靴に跳ねる。

ジェシカの血が。



「あの日君が助けていれば、

アイリーンは、こうはならなかった。

グレンくんの所為だよ、
なんで助けなかったの?
なんで護ってあげなかったの?」


そう聞くと同時にグレンは絶叫する。
目を見開き、失意とも後悔とも取れる表情で
涙を流した。


「う‥うあああっっっ!!!!
煩い‥!!うるさい!
俺のせいじゃ‥俺はっ‥‥」


僕は臓物を踏みにじりながら
彼を壊しに掛かる。


「あはっ!責任逃れもいい加減にしたら?
グレンくん。」


ナイフを取り出し、急所を外しながら
何度も抉るように突き刺した。
でも、まだ足りない。


グレンが僕に与えた苦しみに比べれば‥


頭の中に大事そうに
婚約指輪を
見つめるアイリーンの姿が浮かんでくる。

脳が溶けてくみたいな感覚がした。
怒りと悲しみの中間。
真っ黒でドロドロしてて熱い。

頭の中で幼い日の僕が泣き叫んでいる。

僕は思い切りグレンにナイフを突き立てた。
急所を外して、何度も何度も。


どうして僕のこと忘れちゃったの?!

なんで、僕のこと見てくれないの?!

いっぱい蝶々を贈っても、なんで、
僕のところに帰ってきてくれないの?!


全部、全部‥

『あいつ』のせいだ。



‥もっと苦しめないと‥



「あっ‥がっ‥」


彼の腹から噴き出る血の
熱を手元で感じながら

僕は彼の顔を見て、どうして彼女が
この男を好きだったのか、考えた‥。


考えても答えは出ない。
僕の心にあるのは憎しみだけ。



僕はこの15年‥
彼女のためだけに生きてきたのに‥

いつも彼女のためだけに動いたのに‥
アイリーンは僕を見てくれない。

なのに‥
グレンは彼女を裏切ってもなお‥愛されてる‥


そんなの間違ってるよ‥


アイリーンは僕のことだけ‥
愛するべきなのに‥


そんなことを考えていると‥
泣いてしまいそうな気分だった。


この男にありとあらゆる苦痛を味合わせたい。


僕とアイリーンの仲を引き裂いた男に。
許さない‥許さない‥許さない。


僕は臓物を拾い上げ、グレンに見せつけて
人形遊びをする子供のように彼に言う。



「『グレン、
なんで助けてくれなかったの?
酷いわ!あなたの所為で私、死んじゃった!』」



「やめろ‥やめろ‥やめてくれ!!」


グレンは必死に首を振り
半狂乱の中叫ぶ。



「そんなものもう見たくない‥見たくない‥
見たくない‥!!」


「グレンくん、
僕は『なんで』ってきいてるんだけど?」



彼は大声をあげた。


「あ‥あ‥ぁ‥うるさい‥!!
仕方なかったんだ!

アイリーンは‥アイリーンは‥

大勢の人を殺した‥!!
俺を裏切っていた‥!!

信じる方が馬鹿げてる‥!!

俺は彼女を助けるべきではなかった‥!!
俺のしたことは‥正しかったんだ‥‥!!」


もはや彼は自分の心を守るので
一杯だった。
自分に言い聞かせるように
彼は血を吐きながら必死に叫んでいた。


目から血の混じった涙を流し、
その瞳の焦点はもう合ってはいない。


それが
可笑しくて可笑しくてたまらなかった。

僕は笑いを堪えながら、
USBを備え付けのテレビに挿した。

これは彼へのトドメになるだろうな。



「グレンくん、
アイリーンは僕の共犯者じゃない。
君を裏切ってもいない。

ほら、よく見て。」



「…?」


僕はグレンの顎を持って、
テレビを見る様に固定する。 


テレビが、部屋を映し出した。
画面の端に映る日付は一ヶ月前。
丁度事件のあった頃。

彼女は檻のようなベットに入れられ、
手脚を鎖で拘束されている。

僕にとっては可愛らしい
いつもの光景だ。

テレビの中で、檻の扉が開く音がした。
アイリーンの身体がビクリと震えて、
彼女は泣き叫ぶ。


『いやぁっ!!やめて‥やめて‥!!』


そして、檻の中に入ってきた僕に
組み敷かれ


泣き叫びながら‥僕に犯された。



それをグレンは目を見開き観ていた。


「‥‥‥‥」


失望とも、怒りとも、悲しみとも取れる表情。
充血した眼からは血の混じった涙がつーっと
ほおを伝い床に落ちた。


「‥‥ぁ‥あぁ‥俺は‥俺は‥‥‥‥」


彼の心がグシャリと潰されていくのが
目に見えてわかった。


最高の気分だ。


もう気が済んだし、
もうこの男には死んでもらおう。


僕とアイリーンの素晴らしい将来の為に。
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