My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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12章

2.⚠︎護るべきヒト《グレン視点》

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部屋に彼女の悲鳴と嬌声が響いていた。
機械から発せられるその声は

俺の心を引き裂いて、抉り、握り潰した。

驚愕と絶望の入り混じった様な感情が
内臓を掻き乱す。


目が身体が‥全てが熱い‥


自責や後悔、罪悪感が
ドロドロとしたコンクリートのように
喉の奥まで流れ込んでくる。



「そんな‥アイリーン‥俺は‥俺は‥君を‥」


気づくのにはもう遅過ぎた。
いや、気付かないフリをしていた‥


俺は‥彼女を‥


護ってやるべきだった‥
 


奴は俺の顎をナイフの側面で持ち上げ、

目を覗き込み、
ニタニタと嗤い、問いかけた。


「ねぇ‥グレンくんは
なんでアイリーンを護ってあげなかったの?

彼女は誰も殺してない、
君を裏切った訳でもない。




ただ、君に助けを求めていたのに。」



「………」




俺は何も言うことができなかった。


もう償うことすらできない。


なぜあの時‥俺は‥俺は助けなかった‥?


自分自身を殺したい衝動に駆られていく。
脳が蝕まれていく。 


罪悪感が眼からドロリと溢れた。




テレビの中の彼女は犯されながら、
手脚の鎖をジャラつかせて、泣き叫ぶ。


『いやっ‥ぁぁあっ‥あっぁぁあっ‥!!
助けて‥!助けて‥!!


グレン‥っ‥助け‥て‥グレンっ‥グレン‥』


永遠と俺の名前を‥叫んでいた。


‥ずっと彼女は俺に助けを求めていたのに‥
俺は‥俺は‥


彼女を、裏切った‥

彼女を、見殺しにした‥


‥‥彼女の声が遠くなっていく気がした。
機械音が鳴り響く部屋で
俺は呟くように言う。




「‥殺してくれ‥」





これは奴への懇願だった‥

彼女の悲鳴が耳から離れない。
もう‥終わりにしたい‥彼女に逢いたい‥


手を杭で貫かれるよりも
もっと酷い激痛が‥
苦悩が俺を襲っていた。



ジョザイアは俺の胸にナイフを滑らせ嗤った。



「よかったねグレンくん
僕は最初から、君を嬲り殺すつもりだった。

今まで‥殺さないでおいたのは、
君を苦しめるためだし、


僕は君が大っ嫌いだからね‥」



そう言いながらナイフの切っ先を
俺の腹に突きつけ、

勢いよく突き刺した。

深く‥深く‥

熱い液体が吹き出し、
俺は獣の様な嗚咽を漏らす。



「‥ぐぁあああっっっ!!!!あっぐっ‥う‥」


喘ぐ俺を前に奴は笑みを浮かべた。


「‥グレンくん。知ってる?
ここを刺すとね、
胃液が君の内臓を溶かしていくんだ‥

よく拷問で使う手。殺してもいい時だけだけど。

あと‥足の指を潰したいな、
神経がいっぱい通ってるんだ。あとは‥あとは‥

まぁ‥色々しよう。
もう少し遊んだら殺してあげようね。」



ジョザイアは、薄暗くなった部屋で
俺を嘲笑い、拷問した。
何時間か、何十時間かわからない。


だが、俺は不思議と
この男を憎いとは思わなかった。
不当な苦しみだと思わなかった。


あの日、涙を堪えて、
愛してると伝えてくれた彼女の笑顔が
眼に浮かんでは消える。


俺は彼女を裏切った‥信じてやれなかった


見殺しにした‥



その報いだ‥



そんなことを考えていると‥
首元にナイフが当てられた。


「‥殺して‥くれるのか‥」


「うん。殺してあげる。」


血塗れの顔で奴は微笑む。
まるで子供のような笑顔だった。


眼を閉じると、
意識の遠くで小さく雨音が聞こえる
‥あの日と同じように‥


「早く‥殺して‥くれ‥
‥彼女‥に‥逢いたい‥」


言葉は途切れ、ゴボゴポと肺から血が溢れる。
ヒューッヒューと自分の息遣いが聞こえる。
痛いのか痛くないのかすらももうわからない。


死んだら彼女に会えるだろうか‥?
もし会えるのなら‥彼女に‥謝りたい‥。


彼女は
許してくれるだろうか‥?



いや、‥許されなくても構わない‥




俺が眼を閉じると、
ナイフが首に触れた。
ヒヤリとした感触が心地良い‥


ああ‥俺は死ぬ。彼女に逢いに行ける。



そう想った瞬間。刃が止まった。


そして、ジョザイアの明るい声がした。


「あ、そうだ!グレンくんに
最期に一ついうことがあったんだ!」


「‥?」


‥声を出す力は出なかった。
なんだと言うのだろうか‥今更‥。


「あのね!アイリーンの話なんだけど


彼女、まだ!」



「っ‥‥!!!!?」



どういう事だ!?
あの死体は彼女では無かった‥?!
まだ無事なのか!?彼女はどこに!?

アイリーン‥!!アイリーン‥ !!



ジョザイアは驚愕する俺を気に留めず
俺の顎をナイフの腹で持ち上げる。


ジョザイアは銀色の眼を細めながら嗤った。
嘲笑うかのように、勝利を確信したように。



「心配しないでいいよ。グレンくん。

アイリーンは僕と結婚するんだ。

すっごく大切にするし、
幸せにしてあげるから安心してね。


さっきの映像みたいに

閉じ込めて、鎖をつけて、

毎日犯して可愛がってあげる‥」



「っっ‥‥‥‥‥!!!!!!」



その言葉に

今まで失せていた憎悪や怒りが
まるで爆破するかのように押し寄せてくる。

動かなくなった筈の手が杭を握り締める。


俺がここで殺されたら彼女は‥
一生、奴に監禁され毎日の様に強姦される‥!!

もう彼女にもうあんな思いはさせない‥!!

この男に渡してたまるか‥!!
もう選択を誤ったりはしない‥!!


彼女を‥彼女を護らなければっ‥!!!

今度こそ‥!!


俺は力を振り絞り怒号を発する。
叫ぶ度に口から血が跳ねボタボタと零れ落ちる。


「‥ふざけるな‥っ!!
彼女に‥指一本でも触れてみろ!!!

俺が許しはしない‥!!

死んででも‥お前を殺してやる‥!!!」


磔になった腕を必死に動かし、

杭を無理矢理引き抜こうとした、
肉が裂けブチブチという音と激痛が駆ける。

だが構わない。

今度こそ‥今度こそ‥っ!!
アイリーンを‥


「‥ぐっぁぁっ抜けろっ!!頼むっ‥!
奴を殺してやるっ!!」


「殺す?『殺して欲しい』って
言ってなかったっけ?」


俺の願いとは裏腹に杭は抜けない。
ただ無情に俺の傷は拡がり血を噴き出す。



「はぁっ‥!ぐあぁっ‥ぅっ‥はぁ‥っ!!」



「じゃあね。バイバイ、



グレンくん。」




俺を嘲笑うかのように
ナイフが振り下ろされる。


どんなに足掻いても‥杭は抜けなかった。

彼女を護れない‥‥また‥俺は護れないのか‥?!
‥彼女はまた‥奴に‥


目が熱く、燃えるようだった‥
杭を打たれた腕より血の噴き出す身体より
折られた骨より、心が傷む‥



‥ごめんよ‥アイリーン‥

ほんとうに‥すまない‥君を護れなかった‥




ナイフが俺の首に突き刺さるその瞬間‥




ーーピンポーン







‥‥インターフォンがなった。




振り下ろされたナイフはピタリと止まり




血塗れの部屋に沈黙が流れた。



「………」



奴は、ナイフを持ったまま、
ゆっくりと玄関へと歩いていく。


その後ろ姿を
俺は見ていることしかできなかった。






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