My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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11章

1.緩やかな依存。

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身体がが熱くて‥苦しい‥

私は暗闇を逃げていた。
夢の中なのかなんなのかなんてどうでもいい。


背後から雨の音や銃声‥そして声がする。

憎悪に満ちたあの声。


『おねぇちゃんの人殺し。』

『俺は君を愛してた。でも、今は違う。』


ああ‥!!どんなに必死に逃げても、
耳を塞いでも、
泣き叫んでも、

声は消えない。

何度も繰り返す声はどんどん大きくなる。

暗闇で目を閉じうずくまる。
声が聞こえない様に。
震える身体を抑える様に。


「もうやめて‥もう‥やめて‥」


それでも、声が消える事はない。
傷が癒えることもない。

心臓が、心が、潰れてしまいそうだ。
痛い苦しい‥もう嫌だ‥

なんでこんなことに‥?

両親も、失って‥
彼らまで居なくなったら‥私は壊れてしまう‥


助けて‥助けて‥誰でもいいから‥
苦しいのは嫌‥
もう‥誰も失いたくない‥


助けて‥!助けて!助けて!!


「‥っ!!」


‥そこで目が覚めた。

部屋には暗闇などはなく、
朝日が顔をのぞかせていた。

身体が凄くだるい‥ 
下腹部に違和感がある‥
頭も重くてクラクラする。


「グレン‥ジェシー‥」


二人のことが頭から離れない‥

言いようのない不安が、押し寄せてくる。
眼から涙が溢れそうになる‥


「…………」


その時ふと、手に触れる温もりに気がついた。
彼の視線にも。


「アイリーン先生‥?」

 
彼はスルリと私の濡れたほおを撫でる。
ジョザイアは私の手を握ったまま、
ベットの縁で眠っていたらしい。


「全然起きないから心配したよ‥
お腹、痛かったりしない‥?熱は引いた?」


彼はボサッとなった前髪もそのままに
心配そうに私を見つめる。

その視線が、私の心を溶かしてくれる。

‥ああ。そうよね‥。
私には彼がいる‥‥
誰よりも私の幸せを考えてくれる人が‥

私は微笑んで、
彼の手を柔らかく包む様に握り返す。


「ありがとう‥大丈夫よ。」


「ほんとう?よかった‥」


彼はホッとした様に
ベットの横に置かれた椅子に座った。

私は彼の手を離したくなくて握ったまま、
彼を見つめていた。

そうしていると、
悲痛の波がスッと消えていく。


彼が、
私の壊れそうな心を支えてくれている。



「あの‥ジョザイア‥
私‥夢を見たの‥。あの雨の夜の夢‥
グレンは、私に『消えてくれ』って言った‥
『愛していない』と言った‥

また‥本当にやり直せるのかしら‥
また‥私は幸せになれるのかしら‥」


グレンのあの憎々しげな
眼差しが胸に突き刺さり、目が熱くなる。


すると、優しく頭をなでられた。


「大丈夫だよ!
あれは先生が犯人だと思ったからでしょ?
犯人捜しは順調だし、
きっとグレンくんもわかってくれるよ。

僕が先生を幸せにしてあげる!」


ジョザイアは不自然な程ニッコリと笑った。
けれど、
その笑顔に
私の不安は、消し飛んでいった。


「そうよね!きっと大丈夫‥!
グレンもきっとまた、私を愛してくれるわ!
きっと‥!そう‥」


私は優しくて、
誰より大事な友人に軽くハグをした。


「ありがとう‥ジョザイア
私‥貴方がいなかったらきっと壊れてた‥」


ああ‥彼だけはいつでも、私の味方だ‥

彼は私を抱きしめ返し、耳元で呟く。


「うん‥
必ず僕がアイリーンを幸せにしてあげる‥ 


‥ね」


そんな彼の言葉の含みなど気にせずに
私は、グレンとの日々を信じた。

信じなければ‥あんなにも酷い苦痛を
味あわずに済んだのに。


「私、ジョザイアに助けてもらってばかりね。

何かお礼がしたいわ!

私にできることは少ないけど‥
何かないかしら‥?」





ジョザイアは銀色の眼を細めて、
私の頭を撫でた。
とても優しくて心地いい。


「ふふっお礼なんていいのに‥。
でも、そう言ってもらえるなら‥
いい考えがあるよ。


こっちきて!」


「ひゃあっ!」


ジョザイアはヒョイと私を抱き上げると、
部屋を出て、足早に廊下を歩く。
体に触れる、彼の腕が胸がとても暖かい。


「じょ‥ジョザイアっ‥あの‥どこに‥?」


そうたずねると、
ジョザイアは花が咲くように笑った。
小さな頃みたいに。


「‥僕らの楽園だよ。15年前の。」


そして、中庭に続く、

ステンドグラスの
あしらわれた大きなドアが開き、

気持ちの良い、朝の風がほおを掠めた。




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