My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

文字の大きさ
上 下
44 / 84
7章

3、疑念《グレン目線》

しおりを挟む
アイリーンが失踪して、数日が経った。

未だに彼女は見つからず、ジェシーとの会話でも
進展はなかった。

俺も、ジョザイア・マクベインのことを調べたり、
家の周辺で、聞き込みをしたが何も痕跡がない。

俺は今日も、すっかり荒れてしまった自室で
指輪を眺め、頭を抱える。


「…アイリーン‥」


そう呟いていると、
電話が掛かってきた。

画面には、ジェシカ・タウンゼントの文字。

ジェシーだ。
あの日、アイリーンの家で別れて以来
初めての連絡だった。


『あ、もしもし‥グレンさん。
話したいことがあるんだけど、今いい?
おねぇちゃんの家で待ってから‥きて。』


「ああ、わかった。すぐ行くよ」


ジェシーの声のトーンは、随分と重く、
不安を煽ってくる‥

とにかく、急いでアイリーンの家に向かう。
   
彼女と俺の家は近く、
歩きで行っても
俺の到着にそんなに時間はかからなかった。



玄関に着くと、リビングにジェシーが
立ち尽くしているのが見えた。


「…ジェシー‥?」


「グレンさん、早かったね‥
まぁ、外で話そうか‥
現場維持しなきゃだし‥。」


ジェシーは仕事帰りなのか、スーツで、
茶色いA4サイズの封筒を持っている。

彼女は俺の横を通り、玄関を出る。

そして俺らは低い一階の
玄関まえのバルコニーで話し始める。


「あのね。グレンさん、端的に言うと、
おねぇちゃんは無事だと思う。」


「本当か?!
よかった‥
なんでわかったんだ?そんなこと」


俺は安堵にため息をつく。


「わかった‥って、わけじゃないけど‥
大丈夫‥だと思う。

あのさ‥覚えてる?」


ジェシーは脱色されたブロンズの髪を
耳にかけ、口ごもる。


「…覚えてるって‥何を?」


「"先生みて!"だよ。人をミンチにしたり、
手脚をもいだり、磔にする猟奇殺人‥」


「ああ‥覚えてるさ‥
君たちの両親も‥"それ"にやられたって‥」


「うん‥そうなの。
で、その犯人ってまだ捕まってなくってさ‥
未だに犠牲者が出てるんだ‥


だから‥おねぇちゃんは、大丈夫。」



彼女が何を言いたいのか
さっぱりわからなかった。 


だが、その事件の犯人と、
アイリーンを攫ったのは
俺の考えによれば、

ジョザイア・マクベインだ。

俺の推理は正しかったのか‥?
彼女もその関連に気が付いた‥?



「その‥殺人とアイリーンの失踪‥
何か関係があるのか?」



俺がそうカマをかけると、

彼女は泣き出しそうな顔をする。


「ジェシー‥?」


俺が彼女の顔を覗くと、
ジェシーは下唇を噛んで、
グシャリと手に持った封筒を
握りしめる。


そして重々しく、こう言うのだ。



「関係ある‥

だって‥‥っだって‥



猟奇殺人の犯人は




アイリーン・タウンゼントだから‥」




そう言って、俺の胸にその茶色い封筒を
押し付けるように渡してきた。


「‥え‥?」


俺は固まり、その茶封筒を床に落とす。


予想外すぎる‥一言だった。



「‥そ‥そんなわけないだろ‥?
ジェシー落ち着いて考えてくれ‥

それじゃあ、
アイリーンは
自分の両親も殺したって言うのか‥?」



俺はジェシーの肩を両手で持って、
揺すり抗議する。

アイリーンがそんなことするはずない‥
‥あり得ない‥
ジェシーは俺から顔を逸らしたまま、
口を開く。


「それ見て‥。」


指さしたのは、先ほどの茶封筒だ。

俺はそれを拾い上げ中を開く。
中身は、一連の殺人事件の捜査資料だった。

ジェシーは顔を抑えて、話す。


「書いてあるでしょ?
事件現場からアイリーン・タウンゼントの
毛髪が見つかったって、

あの人には、すべての犯行において、
アリバイがないって」


もうジェシーは、
アイリーンが犯人だと決めてかかっているらしい。
その目には憎いような悲しいような
そんな光が宿っている。



「ご両親の件はどうなる?
犯行時刻には君といたんだろ?」


「犯行時刻が遅れるように細工がしてあった‥
そんなの外部の人間だったら必要ない‥

それが必要なのは、あの人だけ、

あいつが‥
あいつが殺したんだ‥ママも、親父も‥!」



ジェシーの息が荒くなる。
冷静さを欠いて、怒りのみが彼女を覆う。
俺も動揺が隠せない‥


「ジェシー落ち着いて‥まだ、これなら‥
偶然かもしれない‥。
アイリーンが
そんなことする人じゃないのは知ってるだろ?」


「知ってるよ‥そんなの!!
おねぇちゃんは、
優しくて、綺麗で、私の自慢だった‥
信じたいよ‥でも、もうダメなんだ‥!

決定的な証拠が出たんだ‥!


アイリーンの指紋のついた凶器が!!」



その一言に俺は目を見開く。
声が一瞬、出なかった。
アイリーンが‥まさか、
‥あり得ない‥!あり得ない‥



「なっ‥‥!!?でっでも、
アイリーンはジョザイア・マクベインに
攫われて‥」


「はっ‥攫われたわけ無いじゃん‥
おねーちゃんは、何人も殺した、人殺しだもん‥」


ジェシーは自嘲するような笑みを浮かべ、
フラフラと泣きながら、俺を睨む。

彼女の行くあての無い、怒りが、悲しみが
こちらにぶつけられる。


「きっと‥あいつを利用してるんだよ‥
ジョザイア‥だっけ?
あいつ一回その容疑で捕まってるもん‥

あ、
案外、共犯かもねぇ‥!!」


「ジ‥ジェシー‥落ち着いて‥」


ジェシーは俺の制止も聞かず
胸ぐらを掴み、
大声でまくし立てるように話しつづける。


「そうだよ!きっと‥そうなんだ‥!!
二人で殺しを愉しんで‥
ランデブー中なんじゃない?!!

ランデブー前に家で一発ヤッてさぁ!

きっとアイリーンおねーちゃんは、
グレンさんより、
ジョザイアを選んだんだんじゃない!?」


「…おい‥何言って‥」


「そうだよ!そうだよ!
まじウケる!!

あの日、婚姻届け出すんだったんでしょ?!
アイリーンおねーちゃんはグレンさんと
結婚すんの嫌だったんだぁ!!

ね、そうでしょ!??
カワイソーなグレンさぁん!!

グレンさんがぁ、
『アイリーン早く帰ってきてぇ!』って
してる間もぉ、

二人は仲良ーく、
ズコバコやってんじゃねぇ?!!??!」



彼女は下品なジェスチャーを交えて、
俺に怒りをぶつけてくる。

彼女自身が悪いわけではない‥
‥彼女は精神的に参ってしまっただけ、

‥だが、俺も、もう限界だった。


「いい加減にしろ‥っ!!」


俺はそう叫んで、
ジェシーの胸ぐらを掴みあげ、
地面に投げつける。


しばらくの沈黙が流れる。


‥ジェシーが口を開いた。
ジェシーは少し冷静になってくれたらしく、
困ったような泣きそうな顔になる。


「‥あ、グレンさん‥ご、ごめん‥
あんなこと言う‥つもりじゃ‥」



「いや、こちらこそ乱暴な真似をして
すまない‥立てるか‥?」


‥俺はジェシーを助け起こして、
その場を後にする。

俺の頭の中には
ジェシーの言葉がこびりついて離れなかった。


『きっとアイリーンおねーちゃんは、
グレンさんより、
ジョザイアを選んだんだんじゃない!?』


アイリーンの首についた噛み跡が、
彼女の家の床を濡らした液が、
脳裏に浮かぶ。

それに、彼女の指紋のついた‥凶器‥


「‥大丈夫‥大丈夫だ。
きっとアイリーンは
俺の助けを待ってる‥
俺だけは彼女を信じないと‥」



自分に言い聞かせるように俺はそう呟いた。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...