My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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3章

1.婚約者とモンブラン

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空に闇がさし日の沈む頃
やっと私は目を覚ました。
朦朧とする目にはうっすらと
白い天井が映る。

あれ‥?私、なんで寝てるんだろう?
ジョザイアにシチューを作ってもらってそれで‥

「うあああ!!」

わた‥私、ジョザイアにあれやこれを‥ 
どうしよう?!グレンに何て言えば!?

「ん?」

でも、何かおかしい。
ベットは汚れていないし、
私の衣服も髪も綺麗に整っている。

‥もしかして夢‥?とか‥
だと嬉しいけど、それはそれでへこむ。

確かにジョザイアは
格好良い青年になったけど、
患者にそんな風な感情は湧かない‥

何より、
彼は弟とか甥っ子みたいなものだし‥
そもそも彼があんなことするかしら?

でも‥全く経験のない私にあんな夢‥

もんもんと考えをめぐらせていると、
ベットの脇にあるメモが目に入ってきた。


《せんせいへ、

せんせいつかれたみたいで
よくねていたので、かえるね。
またくるよ。

ついしん、
いえのかぎはかけておいたので
あんしんしてね》

この子供みたいな鏡文字の混じったメモは、間違いなくジョザイアだろう。
彼は字を書くのは苦手だ。

‥疲れてたって‥どっちで!?

仕事?もしくはあの‥あの行為の話?

仕事であってほしい‥
頭がぼんやりして夢だったのか
現実だったのかわからない‥


今度、彼に会ったら聞いてみよう‥
そう考えていると




『ピーンポーン』




ふいにインターフォンが響く。
私は階段を駆け下り、玄関を開けると、

グレンがいた。

彼はここまで急いで来たらしく
息を切らしている。


「さっき‥やっと仕事が‥終わって‥‥はぁ‥アイリーン‥具合は?」

「ふふふっもう!
そんなに急がなくていいのに。
ひとまず上がって休んだら?」

「ああ、そうさせてもらうよ‥」


グレンを家に迎えて、
私はキッチンの来客用のカップに
コーヒーを注ぐ。

「半分ミルクで砂糖が2つっと」

彼は甘党だ。職場では
ブラックコーヒーを飲もうと
毎日挑戦して、毎日失敗している。

それはまるで大人びたがる少年みたいで
なんだか可愛い。

グレンはリビングのソファーに腰掛けていたのでソファー前のローテーブルに
甘くなったコーヒーをコトッと置く。


「ありがとう、アイリーン」


彼は軽くお礼を言うと品良くコーヒーを飲む

「顔色ずいぶん良くなったな。
安心したよ。」

「今日は色々、思い出さずに済んだから
ちょっと気分はいいの。それに‥」

そこまで言って私は言い淀む、

なんとなく‥
ジョザイアのことは言えなかった。 


「それに‥?」

「‥なんでもないわ‥今日は
やることがあったから気が紛れたの。」

長い付き合いの彼に私は初めて嘘をついた。
けれどグレンは柔らかな笑顔を向けて、

「そうなんだ。それは良かったよ、
安心した。」

と、何も追及せずに柔らかく微笑んだ。
その笑顔に良心が痛む。

「あの‥グレン明日は私、
仕事に行きたいんだけどいいかしら」

「えっ!もういいのか?
1日しか休んでないじゃないか」

「うん、そうなんだけど。
やっぱり何かしてた方がいいみたい」

グレンは少し眉を顰め、首に手をやった。

「うーん‥そうか…
君がそう言うならそうしよう‥でも、
絶対に無理はしないように。」


グレンは私の頭にポンと手を乗せる、
その手は暖かくて大きくてとても心地いい。
私は頭の上にあったグレンの手をとって
ニヤッと笑った。


「あなたって、心配性ね。
そんなに私が好きなの?」


半分冗談、半分意地悪でそう聞いてみると、
グレンは手を握り返して
誠実に、けれどスマートに返す。

「ああ、もちろん好きだ。
君が思ってるよりもずっと、
俺は君の事を愛してると思うよ?」

その答えがとっても
嬉しくて、恥ずかしくって、
私は笑みを隠しきれない。


「ふふふっ私もよ。」


私がそう笑うと彼はしばらくこちらを見て
急に真剣な表情をする。
何か考えてるみたいな悩むような表情。


「‥?どうしたの?」
 

そう聞くとグレンはグッと近づいて
真っ直ぐ私の眼を見て聞く。


「来週の日曜の夜‥空いてるか?」

「え、ええ、空いてるけど‥
どうしたの?急に‥」

「いや、あの‥
前から行ってみたかったレストランがあって
そこに行こうかと思ってるんだ。」

「へえ!いいわね!行きましょう!」

色々な事があったから
グレンと食事するのは久しぶりだ。
私も少しはしゃいでしまう。


「ドレスコードがあるから、
服は行く日までに、俺が用意しとくよ」

「え、ドレスコードがあるようなお店なの?
もっと庶民的なところで良いのに。」

「そう言う訳には‥‥じゃない。
その店、モンブランが美味しいらしくて‥
アイリーンはモンブラン好きだろ?

元気出るかと思ってさ」

「そのお店、モンブラン美味しいの?!
最高じゃない!
私モンブラン大好き!
グレンのことと同じくらい好きよ!」

私はつい大声を出して乗り出してしまう。

「はははっ!おいおい…
俺と同じくらいなのか?」

グレンはクスクス笑いながら、
ホッとしたような、幼い子供を見守るような
暖かい目で私のことを見ていた。


「なっなによ!
モンブランなんて絶対美味しいんだから、
はしゃいだっていいでしょ!」


「ははは、ごめんごめん、
アイリーンが元気になったみたいで良かったよ。来週、楽しみにしててくれ。」


「ええ!楽しみにしてるわ!」


ああ彼と居ると辛いことも何もかも
少しの間忘れていられる。
笑っていられる。

私は彼を愛してるから。

でも、

このつかの間の幸せの中でも
私の胸の奥にあるモヤモヤとした暗雲が消えることはなかった。



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