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2章
2.⚠︎苦痛は、愛のために
しおりを挟む今日、ジョザイアの出所が認められた。
彼の犯行手口で人が殺される事件が、
収容中に起こったからだ。
警察側でいろいろ論議した結果、
物的証拠はなく状況証拠しかない為
犯人はジョザイアだと断定し辛い状況であり
可能性だけで未成年を監獄に仮収容することは倫理的にできないと言う判断らしい。
…つまる事、無実だ。
グレンはそれを聞いて
苦々しい顔をしていた。しかし、
曲がりなりにもジョザイアが犯人じゃないとわかってもらえて私は嬉しかった。
でも私はそれを喜ぶ余裕はない。
だって…
殺されたのは私の両親だったから。
あの日ジェシーの合格祝いのために
実家に帰るとあのごく普通の暖かい家庭の
面影はなくなっていた。
慣れ親しんだ実家の玄関の扉を開くと
強烈な生臭さが鼻をつき、
地獄の様な光景が目の前に広がった。
『ジェシーおめでとう』の文字が書いてある
フラッグは血と臓物に汚れ、
お祝いのケーキは床にぐしゃりと落ち、
そのクリームが大量の血の中に
ドロドロと溶け混んでいた。
そして、壁には
私の 両親だった何かが‥
磔になっていた。
まるで蝶の標本の様に。
血を流し、内臓をぶちまけたそれの顔は
恐怖と痛みで歪んで‥歪んで‥‥ぁ
「‥‥ぁぁあっ!‥
ああああああああっっっ!!!!!!!!ああああああああああああああああああああぁああああぁああああぁああああああああああああぁあああああああぁああああああああああああぁああああぁああああああああああああぁああああっ‥!!!!!!!!
どうして‥!!!?どうして‥!!」
どうしてあんな善良な人たちが
殺されなきゃいけないの!!?
なんでこんな酷いことができるの‥?!!!?なんで!?なんで…なんで…
呼吸がどんどん浅くなる。
ヒューヒューと音を立て、肩で呼吸する‥
息を吸うたび鼻をつく様な血の匂いが
私の脳内を掻き混ぜる‥。
バクバクと脈打つ心臓が苦しい‥
全身を虫が這いずり回るような感覚‥
冷たい汗がだらだらと私をつたって床に落ちる‥もう‥耐えられない。
私はその場で嘔吐し、気絶した。
‥…
「先生?アイリーン先生!」
ジョザイアの声で我に帰る。
そうだ、カウンセリングの最中だった。
私と彼の最後のカウンセリング。
「先生‥すごく顔色悪いけど‥大丈夫?」
ジョザイアは拘束を外されていて
優しく私の肩に触れていた。
「‥あ、大丈夫よ。
ごめんね、考えごとしてたの」
あれからろくに寝れてない。
でも今はカウンセラーとして
彼の釈放を喜ばないと。
「釈放おめでとう、
よかったわ…あなたが無実なの
わかってもらえて。
…明日にはここを出れるからね」
私は無理矢理に微笑んで見せると
彼も笑顔を見せた。
元気づけようとしてくれているのか
ジョザイアはいつも以上に明るい。
「あ、ねぇねぇ!先生!!
僕がここを出たら、僕の家にきてよ!
話したいことがまだまだあるんだ!
もっともっと二人きりで遊びたいなぁ!!」
「うん。そうね、
今度お邪魔させていただくわ。
じゃあまたね。ジョザイア。」
彼との会話を軽く済ませて、
カウンセリング室を出る。
不意に深いため息をついた。
両親の最期の姿が目に
焼き付いて離れなかった。
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