My Dr -貴女は僕の全てになった、だから貴女から僕以外の全てを奪おう

創作屋 鬼聴

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一章

4.癇癪と執着

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13時45分 

カウンセリング室の重い扉を押した。
その大きな鉄の塊はギイイイと
悲鳴のような唸りをあげて私を部屋へと招く。


部屋の壁は打ちっぱなしのコンクリートに
隙間なく薄汚れた白いクッションが
貼り付けられていてヒンヤリとした重い空気が漂っている。

室内にはカウンセラー用の椅子が一つと
拘束台。棺桶の様な鉄製の檻の中に
縛り付けるようなタイプだ。

その拘束台の中にジョザイアがいた。


「先生!やっぱり来てくれた!!!
もっとこっちに来て!きて!!はやく!!」


ジョザイアは私を見つけるやいなや
拘束台をガシャガシャと揺らし話しかけてきた。彼は私と話すときはいつでも笑っている。

「今行くから、あまり揺らさないの!
倒れちゃうでしょ!良い子にして!」


ついつい昔の癖で
彼を子供のように注意してしまう。
しかし彼は気にならない様だ。

「アイリーン先生!来てくれて嬉しい!
僕、先生のこと好き!先生は?ねぇねえ!」

本当に彼は子供のときから変わらない。
少し微笑ましいくらいだ。


「はいはい、ひとまずプロフィールの確認をしますから‥」


彼をあしらおうと、そう続けると

ガンッッッと

柵を叩く大きな音がした。
肩がビクッと震え目を見開いて彼を見る。

頭突きで柵を殴りつけたのか
額から血を流しながらこちらを見る。

「え…」

…ほんの少しの静寂。

彼は私を睨んでいた。



そして彼がゆっくりと口を開く。



「ねぇアイリーン、
僕が好きかどうか聞いたのに‥

僕のこと今無視した?
僕が人殺しだと思ってるの?
僕が嫌い??」



彼のいつもの笑顔は消し飛び、
今にもこちらに殴り掛かってきそうな、
私の首を掻き切ってきそうな、
常軌を逸した形相をしている。
私はそれに身震いした。 


「あ‥ぁあ‥ごめんなさい、違うのよ。
無視したわけじゃないの。疑ってもないわ」


怖気付いちゃいけない。
子供の頃と同じ、ただの癇癪なんだから。
彼は拘束されてる‥危険はない。


「だ‥大丈夫よ、ジョザイア。
先生はあなたの事が好きよ。
だから…落ち着いて?」


それを聞くとジョザイアは一瞬だけ、
心底安心した様な、満足した様な顔をして、
またいつもの笑顔に戻る。

よかった‥早速患者にストレスを
与えてしまうなんてカウンセラー失格だわ。
慎重になろう。

私は仕切りなおすように座り直し
彼を見ると、彼は泣いていた。


表情こそは変わらないものの、
ポロポロと涙だけが彼の銀色の瞳から溢れていた。


「!?!‥じっジョザイア?!大丈夫?!」


私はすぐさま彼に駆け寄り顔を覗き込む。
ああ、なんという失態だろう。
彼の不安定さ、現状彼にかかっている
ストレスを甘く見ていた。

無実なのにこんな状況なのだ、
泣いてしまうのも無理はない。

私は柵の隙間から手を差し伸べ、
そっと彼の頬に触れて涙を拭った。
そして彼の肩に手を回し、
あやすように背を叩く。

彼は驚いたようで少しの間、固まっていた。

一息、置いてからジョザイアは薄く笑った。


「先生って優しいね。
でも拘束具をつけられてるような人に
不用意に近づいちゃダメだよ…?

僕は本当に人殺しで、
先生を近づかせて殺すために
嘘泣きをしたのかもしれない。」 

「だ‥だって私、心配で…!」


確かに完全に不用意だった。
ここではカウンセラーが患者に
害を加えられた、なんてよくある話なのに。

でも彼の眼を見ると
何もせずにはいられなくなってしまう。
どうにか彼を支えてあげたくなる。

彼の幼い頃を知っているから…
親心みたいなのがあって…

「ああもう…
いつもならこんな事はないのに!!」


ーーーーー


先生はそう言って
小さく頭を抱えて溜息をついた。

やっぱり僕は先生にとって特別なんだ…!!
そう思うと自然と笑みが溢れる。


貴女がそんな風に優しいから
僕みたいなのに気に入られちゃうんだよ‥

なんで僕が無実だって言っただけで
それを信じちゃうんだろう。
僕のこと信用しすぎだよね。嬉しいけど。


アイリーンは本当に優しくて、純粋で
単純で操りやすくて可愛い❤︎

試しに泣いてみてよかった。

彼女の暖かくてスベスベした指が
僕の頬に触れて涙を掬ってくれた。

背伸びしながら、
僕の背中を優しくたたいてくれた。

貴女はいつも僕を受け入れてくれる!!!
もっと彼女に触れたい。

そこまでしてくれると思ってなかったから、
嬉しくて心臓が破裂するかと思った!


今すぐ、この拘束具を引きちぎって、
その場で貴女を押し倒して、
滅茶苦茶にしてしまおうかとも思った。


ああ、彼女の全てを僕のモノにしたい。


僕はアイリーンが好き、
アイリーンも僕が好き。
だけどそれだけじゃ足りない。

もっともっと僕のモノにしたい。


そのためのなら僕は手段を選ばない。
 
























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