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おまけ

鏡の中の夏の思い出2  夏祭り

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かき氷を食べた後、
私は底にクッションが敷き詰められた
買い物カートに乗せられたまま、
鏡の中の奇妙な街の中を
免色くんに押されて進む。

街は相変わらず静まり返っていて
真っ赤な夕日がさしていた。
鏡の中に連れ去られてかなり経つ気が
するけどここはいつも夕方だ。

「…ねぇ、免色くん。
これどこに向かってるの?」

ポツリと彼に聞いてみる。すると背後から
明るく弾む様な免色くんの声がした。


「えへへ~!良い質問だね!今日は…
二人で夏祭りデートするんだよ❤︎!!」


「え??夏祭り??…鏡の中で??」

この世界で免色くん以外の人間を見たことは無いし、街も機能してる様には見えない。

こんな奇妙な異空間で夏祭りが
開催されるなんてとても思えない。
でも免色くんは当然の様に話を進める。

「でね!僕、マコちゃんに
浴衣を選んであるんだ!取りに行こ!

マコちゃんが彼女になったら
着てもらいたいなぁ~って
ずっと前から思ってたやつがあるんだ!!」


そう言って駅ビルに入っていくと、
免色くんは私の乗ったカートを押しながら、慣れた足取りで服屋や化粧品店の間を
通り抜けていく。

ビルの中は暗くてまるで閉店後みたいだった。所々にマネキンが立っていて少し不気味だ。

奥にエレベーターがあってそれに乗り込んだ。こんな場所なのにエレベーターは正常に作動している。人もいないし電気も付いていない。なのに、エレベーターは動くし祭りはあるらしい。本当にこの空間は彼と同じくらい歪だ。

そんな事を考えながら、
免色くんの機嫌の良さそうな横顔を見ているとエレベーターが停止した。

『ピンポーン お待たせいたしました。』と
古臭いアナウンスが電子音と共に静かなビルに鳴り響いて、ドアが開く。

ドアが開くと免色くんはトタトタと
私の乗ったカートを押しながら走っていき、
止まったかと思うと私をカートから抱き上げた。

「マコちゃん!お…お着替えしようね。
そこの更衣室に僕の選んだ浴衣を
置いてあるんだぁ❤︎」

免色くんは私を抱き抱えたまま歩き出す。

「…」

怪我で歩けないから仕方がないけど、抱き抱えられていると太腿や脇腹に彼の指が食い込んで凄く恥ずかしい。

彼はそれがわかっているのかわかっていないのか抱き抱えた私の身体を時折ぎゅっと自分の身体に押し付けてくる。

「よいしょ、はい到着~。」

私は小さなボックス型の更衣室の床に降ろされた。免色くんは体を離すと更衣室の角に置いてあった浴衣を手に取って広げた。

「マコちゃん…!みてみて!
これが僕の選んだ浴衣~❤︎カワイイ…よね!
絶対マコちゃんに似合うと思うんだぁ…❤︎」

免色くんは浴衣を持ったまま楽しそうにくるくる回る。浴衣は白地にパステルカラーの
オレンジや黄色、黄緑で書かれた
大きな向日葵柄の浴衣だった。
帯はえんじ色で凄く可愛らしい。

私がそれに見惚れていると免色くんが
床に手をついてぐっと顔を寄せてくる。

「ね!可愛いでしょ?!…君好み?」

「…うん。まぁ。」

私が小さく頷くと彼は嬉しそうに笑った。

「でしょでしょ!?気に入ってくれると思ってたんだ…❤︎じゃお着替えしようね!」
 
そう言って彼は容赦なく私の膝に跨り
シャツのボタンに手を掛ける。

「えっぁっ…!?自分で着替えれるよ!?
怪我してるのは脚だけだし…」

「やだなぁ❤︎マコちゃん恥ずかしがってるの?…もっと恥ずかしい事も僕にいっぱいされてるのに?」

その一言に、ここ数日の彼に蹂躙された日々がフラッシュバックする。顔が一気に熱くなって心臓が締め付けられる。

「それは…免色くんが無理矢理…っ…」

「だって…マコちゃん"ヤダヤダ"しながら
無理矢理えっちされるの大好きでしょ?
昨日もいっぱい濡れてたよ?」

「そっそれは身体の防衛本能みたいなもので…!」

顔がどんどん熱くなって、薄らいでいた彼への恐怖がじわりと胸に広がるのを感じる。

そんな私の表情を見てか、免色くんの目はとろりと湿度を帯びてくる。

「あっ、もしかしてマコちゃん…❤︎
ここでシたい❤︎?今日もお祭りじゃなくてここで何十時間もぐちゃぐちゃになるまで
えっちした方がいい…?」

そう尋ねながら彼は身体をくっつけてきて
シャツの上から私の下腹部を撫でてくる。
私の身体は恐怖でビクンっと跳ねた。
声がうまく出なくって
私は激しく首を横に振る。

「…ふふっそうだよね。マコちゃんも
えっちばっかりじゃ無くて
今日はデートしたいよね?

お…お着替えも僕に任せてくれるよね?」

免色くんは下腹部を撫でていた手を上に撫で上げ私の首に触れ、またボタンを外した。
たぶん…断ったらまた…そう思うと着替えさせられるくらいなんともない様に思えた。

「うん…」

私が小さく頷くと彼は一つづつボタンを外し
私のシャツを脱がせ、スカートのホックを
外して降ろさせた。

「…マコちゃんって凄くキレイだよね…
柔らかくて美味しそう…
ドキドキしちゃう…」

彼は少し顔を赤くして、マジマジと下着姿の私を眺める。息も少し荒くてドロリとした視線に恐怖が滲む。でも、

大人しくしなきゃ…。

じゃないとまた襲われる。デートだけで済むなら全然そっちの方が良い。

「……そ…そう…ありがと…。
あの、寒いし早く浴衣着たいな…。」

「えっ、!あっそうだよね!?寒いよね!
ごめん今着せるね!!」

免色くんは大慌てで私を座らせたまま浴衣に袖を通させた。不思議なもので彼は人を監禁したり…襲ったりするのにそういう所の良心はあるみたい。不気味だけれど、それには少し助けられている。

帯を巻いた後、彼は首を傾げたり「あれ?」とかぶつぶつ言いながら帯を結んでいく。

それを聞きながら私は天文学部のみんなと
夏祭りに行った時の事を思い出していた。
祈先輩が私の帯を直そうと頑張ってくれたけど凄く苦戦して…上手くいかなくて
結局、副部長が直してくれたっけ。

「よし!できた…!見てマコちゃん!
上手に出来た…!」

後ろから跳ねる様な免色くんの声がして、
私は思い出からすぐに引き剥がされる。
目の前の鏡を見ると免色くんが後ろで小さな鏡を持っていて綺麗に結ばれた帯を見せてくる。

「どう…?上手に出来てるでしょ!
マコちゃんが来る前に練習しておいたんだ~!…どうどう?気に入った?」

「…うん。ありがと。」

私が形だけのお礼を言うと免色くんは
輝かんばかりににっこり笑った。

「どういたしまして! 
さぁ!お祭り行こ!」

そして私をひょいっと抱き上げて
そのままエレベーターに向かう。 

「えっ!?抱っこして行くの?!
わ…私重いよ…?…あの…
多分…60キロ以上ある…無理じゃない??」

「えっ?全然大丈夫だよ!
それに神社には階段あるからカートは無理。
あと抱っこしてれば…身体いっぱいくっつけられる…❤︎」

「ぅん…そっか…」

免色くんは私を抱いたまま、
簡単にエレベーターのボタンを押す。
…幽霊って力持ちなのかな…

落ちない様に免色くんの肩に腕を回すと
彼はちょっとだけ顔を赤くして
機嫌良く鼻歌を歌い始める。

「ふんふ~ん♪今日はマコちゃんと
お祭りデート…❤︎嬉しいなぁ❤︎」

…にしても、こんな鏡の中?で本当に
お祭りなんてあるんだろうか…?
ちょっと怖いな…

そんなことを考えながら顔を上げると
エレベーターの電光掲示板の
数がどんどん下がる。それに合わせて
薄らと祭囃子が聞こえてきた。

「えっ…」

さっきまで絶対聞こえてなかったのに…
回が下がるごとに祭囃子は大きくなる。
チーンと停止音が聞こえてエレベーターは止まる。


「えへへお祭りデートぉ❤︎楽しみだね!
マコちゃん!」


大きく響く祭囃子の中、
私達はエレベーターを降りた。
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