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おまけ
前日談 鏡の向こうから愛を込めて 免色目線
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僕は羨ましかった。
僕は寂しかった。
「僕は…僕は…」
とある秋の夜、僕は殺されて
鏡の中に閉じ込められた。
気がついたら反転した旧校舎にいて…
真っ赤な夕陽に照らされたその校舎を
僕はずっとずっと彷徨っていた。
怖かった。悲しかった。
どこにいるのかわからなくて、
どうしていいのかわからなくて。
唯一外が見える大鏡に字を書いた。
僕に気づいて欲しかった。
生きている時も死んでからも…
それからしばらく経って僕はこの世界にも慣れた。そして、とある時間帯だけ鏡が外に繋がる事を知った。
その時間にだけ、人に取り憑ける事も
その時間にだけ、人が殺せることも。
アイツらを殺して回った時に学んだ。
その時間帯は9時48分、
僕が殺された時間だった。
けれど、だからってなんで鏡が繋がるのか…
力が増すのか…理由は全くわからない。
でもそのおかげで復讐は終わった。
僕を殺した奴らへの復讐が。
復讐が終わったら成仏でもして
ここから解放されるんだと
思っていたんだけれど…
違った。
多分、僕の未練は復讐じゃなかったんだ。
この鏡の中の世界はその為にあるんじゃなかったんだ。…じゃあなんだろう?
「僕の…未練…望み…?」
鏡の前で頭を抱えて考える。
鏡に映る僕の表情はいつも通り冴えない。
とにかく浮かぶ願い事を口にしてみることにした。
「…そうだなぁ…あ!
…"普通の学校生活が送ってみたい"…かな…
誰も僕を疎んだりしなくて、
物も隠されなくて、殴られたりもしなくて…
服を脱がされたりしないし…
便器の水も飲まなくてよくて…
…優しい友達がいる…
!!……友達か!!あぁ…いいなぁ…友達…」
僕は生まれて死ぬまで友達がいた事がなかった。僕は頑張ったんだけど、いつも何故か避けられてばかりで『友達』は僕の憧れだった。
「"友達が欲しい"!うん!これだ…!
友達を作ろう!!」
友達を作ると決めてからは、
その時間帯に人が来るまで
僕は鏡の前で待つ事にした。
毎夜、天文学部の人達が通ったけれど
彼らは帰るのが早くて憑いていくことは
おろか話しかける事すらできない。
憑いていければ「お友達になって」って
沢山伝えられるのに…
僕にできるのはボンヤリと彼らを眺める事だけ。彼らはみんな仲が良くて…平和に学園生活を送っている…凄く羨ましかった。
胸がズキズキするくらいに…。
その中の一人がチラッとこちらをみる。
ポニーテールに白いリボンをつけた
優しそうな女の子だ。
「.あ…」
思わず声が出る。彼女と目が合った気がした。そんなわけ無いのに。
それから彼女が通る度、
僕の目は彼女を追った。
彼女はちょっと気が弱くて
いつも天文学部の連中に振り回されてる。
でも、「大丈夫」って優しく笑って
いつも周りに気を遣ってた。
そんな彼女に親近感が湧いたのかも知れないし…僕のこともあんな風に受け入れてくれるかも…なんて無意識に思ったのかな?
とにかく僕は彼女をずっとずっと
見つめてた。鏡越しにずっと……。
気がつくと、何度も何度も
彼女と仲良くなる妄想をしてた。
「ふふっ…彼女が友達だったらなぁ…
『おはよ……今日も白いリボンが似合ってて
凄く可愛いよ……』
『ふふふっありがと貞夫くん!
そう言う貞夫くんには
寝癖がついてるよ!直してあげるね!』
なんて…えへへ…っ
…あっそうだ…」
みんなは彼女を『マコ』とか『泉』って呼んでた。僕はなんて呼ぼうかな?
「泉さん?マコ…マコさん…?
ううん…マコちゃんがいいなぁ…」
呼び方なんて考えても意味ないのに…
溜息を吐きながら
鏡にもたれて冷たい鏡面に触れる。
こんなに近くにいるのに
声をかけることも、触れることもできない。
「はぁぁ…君と…友達になりたいなぁ…」
そんな事を悶々と
考えながら日々は過ぎていった。
そして、あの日もいつも通り
鏡の内側でうずくまって
彼女を待っていた。
夜になってやっと
"マコちゃん"が白いリボンを揺らし
鏡の前を通り過ぎる。
復讐を終えてしまった僕には
それが唯一の楽しみだった。
「…今日もかわいいなぁ…」
僕は鏡に張り付いて、
つま先から頭までじっくりと彼女を眺める。
はぁ…僕が生きていて…
彼女と同じクラスだったらどんなに幸せだろう?
同じクラスで…隣の席で…マコちゃんは
…僕に笑いかけてくれる。
その素敵な笑顔を見て
彼女の事が好きになった僕は
サッカー部をやめて天文学部に入るんだ。
天文学部に入ったらマコちゃんを困らせてる
白髪メガネを部から追っ払って、
二人だけで星を眺めたい。
お昼も毎日一緒に食べて…
登下校もずっと一緒。
夏の下校ではアイスを買って半分こするんだ。かき氷を買って一緒に食べるのもいい…
縁日とか花火を見るのも良いなぁ。
それでたまに…彼女の家とか
僕の家でも遊んで…
親友になって……デートもして…
…もっと仲良くなって…
僕らは…付き合い始める…
「そんな日が来たら…❤︎はぁぁ…❤︎」
熱くなった頬を両手で冷やしながら
そんな妄想していると時間はあっという間。
もう夜の9時をまわっていた。
「あれ?…マコちゃん…
帰ってないのかな…??」
いつもなら8時半には天文学部は帰っている。けど今夜はまだ鏡の前を通っていない。
つまり、旧校舎に残っている…。
…そして
もう少しすれば、僕は鏡の外に出れる…!!
「"マコちゃんに…会える"………!!」
僕の胸はドクリと高鳴って歓喜で溢れる。
早くマコちゃんに伝えたい…!!
『友達になって』って!!!
僕は寂しかった。
「僕は…僕は…」
とある秋の夜、僕は殺されて
鏡の中に閉じ込められた。
気がついたら反転した旧校舎にいて…
真っ赤な夕陽に照らされたその校舎を
僕はずっとずっと彷徨っていた。
怖かった。悲しかった。
どこにいるのかわからなくて、
どうしていいのかわからなくて。
唯一外が見える大鏡に字を書いた。
僕に気づいて欲しかった。
生きている時も死んでからも…
それからしばらく経って僕はこの世界にも慣れた。そして、とある時間帯だけ鏡が外に繋がる事を知った。
その時間にだけ、人に取り憑ける事も
その時間にだけ、人が殺せることも。
アイツらを殺して回った時に学んだ。
その時間帯は9時48分、
僕が殺された時間だった。
けれど、だからってなんで鏡が繋がるのか…
力が増すのか…理由は全くわからない。
でもそのおかげで復讐は終わった。
僕を殺した奴らへの復讐が。
復讐が終わったら成仏でもして
ここから解放されるんだと
思っていたんだけれど…
違った。
多分、僕の未練は復讐じゃなかったんだ。
この鏡の中の世界はその為にあるんじゃなかったんだ。…じゃあなんだろう?
「僕の…未練…望み…?」
鏡の前で頭を抱えて考える。
鏡に映る僕の表情はいつも通り冴えない。
とにかく浮かぶ願い事を口にしてみることにした。
「…そうだなぁ…あ!
…"普通の学校生活が送ってみたい"…かな…
誰も僕を疎んだりしなくて、
物も隠されなくて、殴られたりもしなくて…
服を脱がされたりしないし…
便器の水も飲まなくてよくて…
…優しい友達がいる…
!!……友達か!!あぁ…いいなぁ…友達…」
僕は生まれて死ぬまで友達がいた事がなかった。僕は頑張ったんだけど、いつも何故か避けられてばかりで『友達』は僕の憧れだった。
「"友達が欲しい"!うん!これだ…!
友達を作ろう!!」
友達を作ると決めてからは、
その時間帯に人が来るまで
僕は鏡の前で待つ事にした。
毎夜、天文学部の人達が通ったけれど
彼らは帰るのが早くて憑いていくことは
おろか話しかける事すらできない。
憑いていければ「お友達になって」って
沢山伝えられるのに…
僕にできるのはボンヤリと彼らを眺める事だけ。彼らはみんな仲が良くて…平和に学園生活を送っている…凄く羨ましかった。
胸がズキズキするくらいに…。
その中の一人がチラッとこちらをみる。
ポニーテールに白いリボンをつけた
優しそうな女の子だ。
「.あ…」
思わず声が出る。彼女と目が合った気がした。そんなわけ無いのに。
それから彼女が通る度、
僕の目は彼女を追った。
彼女はちょっと気が弱くて
いつも天文学部の連中に振り回されてる。
でも、「大丈夫」って優しく笑って
いつも周りに気を遣ってた。
そんな彼女に親近感が湧いたのかも知れないし…僕のこともあんな風に受け入れてくれるかも…なんて無意識に思ったのかな?
とにかく僕は彼女をずっとずっと
見つめてた。鏡越しにずっと……。
気がつくと、何度も何度も
彼女と仲良くなる妄想をしてた。
「ふふっ…彼女が友達だったらなぁ…
『おはよ……今日も白いリボンが似合ってて
凄く可愛いよ……』
『ふふふっありがと貞夫くん!
そう言う貞夫くんには
寝癖がついてるよ!直してあげるね!』
なんて…えへへ…っ
…あっそうだ…」
みんなは彼女を『マコ』とか『泉』って呼んでた。僕はなんて呼ぼうかな?
「泉さん?マコ…マコさん…?
ううん…マコちゃんがいいなぁ…」
呼び方なんて考えても意味ないのに…
溜息を吐きながら
鏡にもたれて冷たい鏡面に触れる。
こんなに近くにいるのに
声をかけることも、触れることもできない。
「はぁぁ…君と…友達になりたいなぁ…」
そんな事を悶々と
考えながら日々は過ぎていった。
そして、あの日もいつも通り
鏡の内側でうずくまって
彼女を待っていた。
夜になってやっと
"マコちゃん"が白いリボンを揺らし
鏡の前を通り過ぎる。
復讐を終えてしまった僕には
それが唯一の楽しみだった。
「…今日もかわいいなぁ…」
僕は鏡に張り付いて、
つま先から頭までじっくりと彼女を眺める。
はぁ…僕が生きていて…
彼女と同じクラスだったらどんなに幸せだろう?
同じクラスで…隣の席で…マコちゃんは
…僕に笑いかけてくれる。
その素敵な笑顔を見て
彼女の事が好きになった僕は
サッカー部をやめて天文学部に入るんだ。
天文学部に入ったらマコちゃんを困らせてる
白髪メガネを部から追っ払って、
二人だけで星を眺めたい。
お昼も毎日一緒に食べて…
登下校もずっと一緒。
夏の下校ではアイスを買って半分こするんだ。かき氷を買って一緒に食べるのもいい…
縁日とか花火を見るのも良いなぁ。
それでたまに…彼女の家とか
僕の家でも遊んで…
親友になって……デートもして…
…もっと仲良くなって…
僕らは…付き合い始める…
「そんな日が来たら…❤︎はぁぁ…❤︎」
熱くなった頬を両手で冷やしながら
そんな妄想していると時間はあっという間。
もう夜の9時をまわっていた。
「あれ?…マコちゃん…
帰ってないのかな…??」
いつもなら8時半には天文学部は帰っている。けど今夜はまだ鏡の前を通っていない。
つまり、旧校舎に残っている…。
…そして
もう少しすれば、僕は鏡の外に出れる…!!
「"マコちゃんに…会える"………!!」
僕の胸はドクリと高鳴って歓喜で溢れる。
早くマコちゃんに伝えたい…!!
『友達になって』って!!!
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