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おまけ
前日談 2年前、放課後の友人達
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夕暮れの校舎に
電子的なチャイム音が鳴り響く。
僕は生徒達の耳障りな騒めきの間を
通り抜け、旧校舎に向かっていた。
夕陽の照らす校庭を
踵の潰れた革靴で走り抜ける。
走った振動で楽器用のケースが
痛いくらいに背を叩き、
ピアスがジャラジャラ音を立てる。
旧門前に着くと
立ち入り禁止と書かれた看板を倒して
ボロいローブをくぐり抜ける。
そして、
いつも通りに旧校舎に入り込んだ。
旧校舎はもう12年間使われておらず
部屋の隅という隅に蜘蛛の巣が張っていて
床はそこら中穴だらけ。
その穴から真っ赤な夕陽が
木漏れ日みたいに廊下に差し込んでいた。
その様子は気味が悪くも幻想的だ。
床に散らばるガラスの破片を
パキパキと踏み割り、階段を上がっていく。
階段の木も腐りかけていてカビまみれ
踏むたびメキメキ音を立てる。
しかもなんか校舎全体がちょっと臭いし
信じられないくらいボロい。
けど、
この場所こそが僕達のオアシスだった。
階段を上がり切ると
まだ声変わりすらしていなそうな
か細く高い、男の声がする。
「ぁ…っあ!みーくん!来てくれたの…?」
僕をみーくんと呼んだ男子生徒は
踊り場にある古い大鏡の中から
手を振り笑いかけて来る。
僕は鏡の前に鞄を放って
その上に胡座をかき、それに答えた。
「まぁ…"明日も来る"って
言っておいたと思うけど。」
別に鏡の中の自分に
話しかけてるわけじゃ無い。
彼は八咫神学園の七不思議、
"大鏡のメンシキ"なのだ。
生前の名前は"免色 貞夫"。
僕は貞夫くんと呼んでいる。
貞夫くんは背が低くて
ブッカブカの学ランを着た真っ黒で
ボサボサなセミロングヘアが特徴の
スーパー根暗男子だ。
僕と彼は良く似ている。
「…来てくれてありがとう…みーくん…
…僕とまたお話ししてくれるの?」
「別に…礼とかいらないから…
貞夫くんとダベるの好きだし。」
貞夫くんは僕の言葉を聞いて
さらに笑顔になった。
まぁ…もっとも、それはただの感想だ。
なぜかと言えば、
貞夫くんの顔は上半分が抉られたみたいに
ごっそりと無くなっていて、しかも血塗れ。
ショットガンで撃たれて死にましたって
いわれたら納得してしまうような
見た目だから。
なので、表情はよく見えないのだが…
俺にはわかる。
死が僕達を別っていようが、
友達は友達だ。
「みーくん!今日はなんの話しようか?」
貞夫くんはしゃがんで
無いはずの眼を合わせてくる。
「んー…そうだね…
あ、僕さ最近ギター始めたから
ちょっと聞いてよ。」
「えっ…ギター?凄いね!僕聴きたい!」
貞夫くんは血塗れの断面から出た
脳のカケラ?をプルプル揺らしてはしゃいだ。
旧校舎に響くヘタクソなギターの音色と
たわいの無い雑談。
僕と彼の間には舞い上がった砂埃が
夕陽に照らされて煌めいていた。
電子的なチャイム音が鳴り響く。
僕は生徒達の耳障りな騒めきの間を
通り抜け、旧校舎に向かっていた。
夕陽の照らす校庭を
踵の潰れた革靴で走り抜ける。
走った振動で楽器用のケースが
痛いくらいに背を叩き、
ピアスがジャラジャラ音を立てる。
旧門前に着くと
立ち入り禁止と書かれた看板を倒して
ボロいローブをくぐり抜ける。
そして、
いつも通りに旧校舎に入り込んだ。
旧校舎はもう12年間使われておらず
部屋の隅という隅に蜘蛛の巣が張っていて
床はそこら中穴だらけ。
その穴から真っ赤な夕陽が
木漏れ日みたいに廊下に差し込んでいた。
その様子は気味が悪くも幻想的だ。
床に散らばるガラスの破片を
パキパキと踏み割り、階段を上がっていく。
階段の木も腐りかけていてカビまみれ
踏むたびメキメキ音を立てる。
しかもなんか校舎全体がちょっと臭いし
信じられないくらいボロい。
けど、
この場所こそが僕達のオアシスだった。
階段を上がり切ると
まだ声変わりすらしていなそうな
か細く高い、男の声がする。
「ぁ…っあ!みーくん!来てくれたの…?」
僕をみーくんと呼んだ男子生徒は
踊り場にある古い大鏡の中から
手を振り笑いかけて来る。
僕は鏡の前に鞄を放って
その上に胡座をかき、それに答えた。
「まぁ…"明日も来る"って
言っておいたと思うけど。」
別に鏡の中の自分に
話しかけてるわけじゃ無い。
彼は八咫神学園の七不思議、
"大鏡のメンシキ"なのだ。
生前の名前は"免色 貞夫"。
僕は貞夫くんと呼んでいる。
貞夫くんは背が低くて
ブッカブカの学ランを着た真っ黒で
ボサボサなセミロングヘアが特徴の
スーパー根暗男子だ。
僕と彼は良く似ている。
「…来てくれてありがとう…みーくん…
…僕とまたお話ししてくれるの?」
「別に…礼とかいらないから…
貞夫くんとダベるの好きだし。」
貞夫くんは僕の言葉を聞いて
さらに笑顔になった。
まぁ…もっとも、それはただの感想だ。
なぜかと言えば、
貞夫くんの顔は上半分が抉られたみたいに
ごっそりと無くなっていて、しかも血塗れ。
ショットガンで撃たれて死にましたって
いわれたら納得してしまうような
見た目だから。
なので、表情はよく見えないのだが…
俺にはわかる。
死が僕達を別っていようが、
友達は友達だ。
「みーくん!今日はなんの話しようか?」
貞夫くんはしゃがんで
無いはずの眼を合わせてくる。
「んー…そうだね…
あ、僕さ最近ギター始めたから
ちょっと聞いてよ。」
「えっ…ギター?凄いね!僕聴きたい!」
貞夫くんは血塗れの断面から出た
脳のカケラ?をプルプル揺らしてはしゃいだ。
旧校舎に響くヘタクソなギターの音色と
たわいの無い雑談。
僕と彼の間には舞い上がった砂埃が
夕陽に照らされて煌めいていた。
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