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転校生
一緒に帰ろう
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あれから2ヶ月。
彼は相変わらず学校中どこに行くにも
ついてきてベタベタ身体中触ってくるし
襲われるかと思う様な勢いで毎日毎日、迫ってくる。しかも、最近は自称友人どころか恋みたいな素振りで凄く怖い…。
私は免色くんと一緒にいるのが嫌で
帰りだけでも彼と被らない様にした。
しかし彼は毎日毎日、朝から6時限目まで
ずーーーーーーーーーーーっっっと、
ずーーーーーーーーーーーっっっと。
私にベッタリで
もうノイローゼになりそうだった。
精神が擦り切れて行くのをひしひしと感じる。もはや限界だ…。
だから放課後になったら一刻も早く
彼から離れたかった。
けれど…それは叶わない。
どう帰っても、何時に帰っても、
彼がいつも校門に先回りしているのだ。
裏門から帰っても…いる。
限界まで学校に隠れて
夜の10時頃に帰っても…いる。
授業終わりに、誰よりも早く
教室を飛び出して
猛ダッシュで門へ向かっても
すでに門の前で待っている。
同じクラスで同じ時間に授業は終わったはずなのに息を切らしている様子も走った様子もない。
なんでそんなことができるの?
意味がわからない。
物理的にもそんなことできないんじゃ…??
もしかして人間じゃないとか…?
…いやいや、そっちのほうがあり得ない。
幽霊が転校してくるわけはないし、
幽霊はお弁当だって作らない…と思う。
今日は絶対に一人で帰れるよう、
靴をバックに入れておいて
女子トイレの窓から帰ることにした。
これならきっと免色くんも
気がつかないはずだ。
「はぁ…本当になんなの…あの人…」
悪態とため息をつきながら
靴を履き替え、窓の外を覗く。
窓の外は校舎裏に繋がっていて
その校舎裏には雑木林があり雑草が生い茂り
濁った緑色の小さな池が見えた。
その奥はちょっとした崖になっているが
飛び降りた所で崖側には落ちないだろう。
「うん!少し高いけど大丈夫そう。」
私は上履きを入れた鞄を抱き抱えると
窓に足を掛けて勢いよく飛び降りた。
スカートがふわりと舞い上がり
地面がせまる。
けれど不思議なことに…飛び降りたはずが
地面に足がつかなかった。
そして、羽みたいにフワリと何かに
受け止められた様な感覚…
「…??え?」
不思議に思って目の前を見ると…
見慣れた不気味な笑顔が此方を見ていた。
「マコちゃん。一緒にかえろ」
「うあぁ!!???えっ?!えっ…」
私は免色くんに腰を抱えられるようにして
受け止められていたのだ。
驚きのあまり私は鞄を落し、
彼の肩を掴んだ。顔から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
「なんで…いるの?」
「マコちゃんと一緒に帰りたくて。」
彼はそう言って微笑み、
私の腰をギュッと抱きお腹に頬擦りをした。
彼の指がスカート越しに食い込んでくるのがわかる。
「ひっ…」
……答えになってない…
私は声を震わせながらもう一度聞いた。
「なんで…校舎裏にいるの…?
どうして私がここから帰るって…」
「それよりマコちゃん。
この窓、結構高いよ?
僕が受け止めてなきゃ怪我してた…。
気をつけてね?」
またもや質問の答えは得られない。
免色くんはゆっくりと私を下ろしたが、
恐怖で立つことが出来ず
そのまま地面にへたり込んだ。
なんなの…?本当にどうして??
私をつけてたとしても…
トイレの入り口から校舎裏に回るには
校舎全体を大回りして来なきゃいけない。
ホームルームが終わってからの
この一瞬で校舎裏に回るなんて絶対に不可能なはず。
完全におかしい…怖い…怖い…彼が怖い。
薄暗い校舎裏で
へたり込んだまま彼を見上げる。
免色くんはいつも通りにニコニコしたまま
私の鞄を拾い上げた。
「…さ、マコちゃん一緒に帰ろ?」
そう言って屈み、手を差し伸べてくる。
その様子ですら怖いし
気持ち悪くてたまらない。
私は震えながら地面に生えた草を握りしめる。
「………」
「マコちゃん…?」
無言の私を不思議に思ったのか
彼は私の顔を覗き込み
頬に手を触れようとする。
「ひっ…やめて!!」
その時、私の心は限界に達し、
精神の中の何かが弾けて
彼の手を『バチンッッ』と
強く払い、叩き落とした。
「触らないでよっっ!!!」
「え…っ」
彼は私の鞄を落として狼狽える。
けれどそんな事は
今の私にとってどうでも良かった。
彼に対する怒りと恐怖だけが
沸々と湧き上がっていた。
私は声を振るわせ、涙を堪えながら
堰を切ったように叫ぶ。
「なんなの!!!?何なのよ…!!!?
なんの嫌がらせ!?
どこに行っても付き纏ってきて!!
ベタベタベタベタ触ってくるし!!
友達とも仲良くするなとか束縛して!!
あなたは私の友達ですら無いくせに!!
なんのつもりなの!?
仲良くしたいんだか、
嫌がらせしたいんだか、知らないけど
キモい!!ほんと最悪!!大っっ嫌い!!!
もう私に関わらないでっ!!」
免色くんは
顔を真っ青にして固まった。
「ぁ…えっとマコちゃ…あの…
ごめんなさい…そんなつもりじゃ…
やだ…やだよ…ごめんなさい…
嫌わないで…?直すから…怒らないで…」
そう言いながら泣きそうな顔をして
オロオロと私に近づく。
それすら私には恐ろしい。
「やめて!!来ないで!!」
私は近づいてくる免色くんを
強く押し退けた。
「ぅあっ…!」
免色くんは押されたその拍子に
バランスを崩して…
背後にあった崖に頭から落ちた。
「ぁ…」
ベキベキと枝の折れる音…。
そして…
崖の下からゴキっと鈍い音が聞こえた。
「あっぁっ…!!?うそ…免色くん!!?」
崖と言っても1.2メートルくらいの
低い物だったが大怪我をさせるには
十分過ぎる高さだ。
私は慌てて 雑草を掻き分け、
崖を見下ろした。
「…あの!!…大丈…」
免色くんは崖の下に呆然と座っていた。
生きてはいる。
しかし彼の頭からはドロドロと血が流れ出て、脚はあらぬ方向へと曲がり
赤黒く腫れている。
それは酷く痛々しい。
「…ぁ」
彼はなにかを確認する様に、
変な方向に折れた脚を撫でる。
そして…失望した様な顔をしながら
私を見上げ呟いた。
「…僕…マコちゃんに…乱暴された…?」
彼の悲痛な表情に
後悔と自責の念がどっと胸に押し寄せた。
…こんな事をするつもりじゃ…
「…ぁ…違う……えっと……ぁ…
あの…免色くん…その…その…っ!!」
私はどうしていいかわからず
その場を逃げる様に走り去ってしまった。
校舎裏の林を抜けて
学校の門を出て帰るまでの間、
何度も私は振り返ったが
彼がまた、一緒に帰ろうと
迫ってくることはなかった。
彼は相変わらず学校中どこに行くにも
ついてきてベタベタ身体中触ってくるし
襲われるかと思う様な勢いで毎日毎日、迫ってくる。しかも、最近は自称友人どころか恋みたいな素振りで凄く怖い…。
私は免色くんと一緒にいるのが嫌で
帰りだけでも彼と被らない様にした。
しかし彼は毎日毎日、朝から6時限目まで
ずーーーーーーーーーーーっっっと、
ずーーーーーーーーーーーっっっと。
私にベッタリで
もうノイローゼになりそうだった。
精神が擦り切れて行くのをひしひしと感じる。もはや限界だ…。
だから放課後になったら一刻も早く
彼から離れたかった。
けれど…それは叶わない。
どう帰っても、何時に帰っても、
彼がいつも校門に先回りしているのだ。
裏門から帰っても…いる。
限界まで学校に隠れて
夜の10時頃に帰っても…いる。
授業終わりに、誰よりも早く
教室を飛び出して
猛ダッシュで門へ向かっても
すでに門の前で待っている。
同じクラスで同じ時間に授業は終わったはずなのに息を切らしている様子も走った様子もない。
なんでそんなことができるの?
意味がわからない。
物理的にもそんなことできないんじゃ…??
もしかして人間じゃないとか…?
…いやいや、そっちのほうがあり得ない。
幽霊が転校してくるわけはないし、
幽霊はお弁当だって作らない…と思う。
今日は絶対に一人で帰れるよう、
靴をバックに入れておいて
女子トイレの窓から帰ることにした。
これならきっと免色くんも
気がつかないはずだ。
「はぁ…本当になんなの…あの人…」
悪態とため息をつきながら
靴を履き替え、窓の外を覗く。
窓の外は校舎裏に繋がっていて
その校舎裏には雑木林があり雑草が生い茂り
濁った緑色の小さな池が見えた。
その奥はちょっとした崖になっているが
飛び降りた所で崖側には落ちないだろう。
「うん!少し高いけど大丈夫そう。」
私は上履きを入れた鞄を抱き抱えると
窓に足を掛けて勢いよく飛び降りた。
スカートがふわりと舞い上がり
地面がせまる。
けれど不思議なことに…飛び降りたはずが
地面に足がつかなかった。
そして、羽みたいにフワリと何かに
受け止められた様な感覚…
「…??え?」
不思議に思って目の前を見ると…
見慣れた不気味な笑顔が此方を見ていた。
「マコちゃん。一緒にかえろ」
「うあぁ!!???えっ?!えっ…」
私は免色くんに腰を抱えられるようにして
受け止められていたのだ。
驚きのあまり私は鞄を落し、
彼の肩を掴んだ。顔から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
「なんで…いるの?」
「マコちゃんと一緒に帰りたくて。」
彼はそう言って微笑み、
私の腰をギュッと抱きお腹に頬擦りをした。
彼の指がスカート越しに食い込んでくるのがわかる。
「ひっ…」
……答えになってない…
私は声を震わせながらもう一度聞いた。
「なんで…校舎裏にいるの…?
どうして私がここから帰るって…」
「それよりマコちゃん。
この窓、結構高いよ?
僕が受け止めてなきゃ怪我してた…。
気をつけてね?」
またもや質問の答えは得られない。
免色くんはゆっくりと私を下ろしたが、
恐怖で立つことが出来ず
そのまま地面にへたり込んだ。
なんなの…?本当にどうして??
私をつけてたとしても…
トイレの入り口から校舎裏に回るには
校舎全体を大回りして来なきゃいけない。
ホームルームが終わってからの
この一瞬で校舎裏に回るなんて絶対に不可能なはず。
完全におかしい…怖い…怖い…彼が怖い。
薄暗い校舎裏で
へたり込んだまま彼を見上げる。
免色くんはいつも通りにニコニコしたまま
私の鞄を拾い上げた。
「…さ、マコちゃん一緒に帰ろ?」
そう言って屈み、手を差し伸べてくる。
その様子ですら怖いし
気持ち悪くてたまらない。
私は震えながら地面に生えた草を握りしめる。
「………」
「マコちゃん…?」
無言の私を不思議に思ったのか
彼は私の顔を覗き込み
頬に手を触れようとする。
「ひっ…やめて!!」
その時、私の心は限界に達し、
精神の中の何かが弾けて
彼の手を『バチンッッ』と
強く払い、叩き落とした。
「触らないでよっっ!!!」
「え…っ」
彼は私の鞄を落として狼狽える。
けれどそんな事は
今の私にとってどうでも良かった。
彼に対する怒りと恐怖だけが
沸々と湧き上がっていた。
私は声を振るわせ、涙を堪えながら
堰を切ったように叫ぶ。
「なんなの!!!?何なのよ…!!!?
なんの嫌がらせ!?
どこに行っても付き纏ってきて!!
ベタベタベタベタ触ってくるし!!
友達とも仲良くするなとか束縛して!!
あなたは私の友達ですら無いくせに!!
なんのつもりなの!?
仲良くしたいんだか、
嫌がらせしたいんだか、知らないけど
キモい!!ほんと最悪!!大っっ嫌い!!!
もう私に関わらないでっ!!」
免色くんは
顔を真っ青にして固まった。
「ぁ…えっとマコちゃ…あの…
ごめんなさい…そんなつもりじゃ…
やだ…やだよ…ごめんなさい…
嫌わないで…?直すから…怒らないで…」
そう言いながら泣きそうな顔をして
オロオロと私に近づく。
それすら私には恐ろしい。
「やめて!!来ないで!!」
私は近づいてくる免色くんを
強く押し退けた。
「ぅあっ…!」
免色くんは押されたその拍子に
バランスを崩して…
背後にあった崖に頭から落ちた。
「ぁ…」
ベキベキと枝の折れる音…。
そして…
崖の下からゴキっと鈍い音が聞こえた。
「あっぁっ…!!?うそ…免色くん!!?」
崖と言っても1.2メートルくらいの
低い物だったが大怪我をさせるには
十分過ぎる高さだ。
私は慌てて 雑草を掻き分け、
崖を見下ろした。
「…あの!!…大丈…」
免色くんは崖の下に呆然と座っていた。
生きてはいる。
しかし彼の頭からはドロドロと血が流れ出て、脚はあらぬ方向へと曲がり
赤黒く腫れている。
それは酷く痛々しい。
「…ぁ」
彼はなにかを確認する様に、
変な方向に折れた脚を撫でる。
そして…失望した様な顔をしながら
私を見上げ呟いた。
「…僕…マコちゃんに…乱暴された…?」
彼の悲痛な表情に
後悔と自責の念がどっと胸に押し寄せた。
…こんな事をするつもりじゃ…
「…ぁ…違う……えっと……ぁ…
あの…免色くん…その…その…っ!!」
私はどうしていいかわからず
その場を逃げる様に走り去ってしまった。
校舎裏の林を抜けて
学校の門を出て帰るまでの間、
何度も私は振り返ったが
彼がまた、一緒に帰ろうと
迫ってくることはなかった。
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