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夜のプール
保健室の健康優良男子 祈目線
しおりを挟む俺は泉を保健室のベットに寝かせた後、
棚を漁ってタオルを発見する事ができた。
びしょ濡れの彼女を
拭いてやらないといけない…
けれど
高校3年生の思春期まっさかり、
健康優良男子である俺は…
眠る泉を見つめたまま
立ちつくしていた。
「これはいいのか……?いやでも…
…拭いてやらないと
風邪とか引くかもしれないし…。」
泉はスースー寝息を立てて
びしょ濡れのままベットに横たわり
時々、みじろぎしている…
スカートがかなり際どい位置まで
捲れていたので、太腿が隠れるように
スカートをそっと戻した。
「…………てか下着…」
…やっぱ考えるのはやめよう。
もういっそ無になって拭いてしまうか…
そんな考えが頭をよぎる。
「いや!やっぱりダメだよな!!?
女子の体拭くのってセーフじゃないよな!?
いや、触らなければいいのか!!?
こう…!!コーラをこぼした時みたいにタオルをいっぱいかけて…」
そうやって
俺がタオルを持ったままアワアワしていると幸運な事に泉が目を覚ました。
「…?先輩…」
「あ、泉よかったぁ!!
ほらタオル使ってくれ!!!」
俺は胸を撫で下ろし彼女にタオルを渡した。
「??…あ、ありがとうございます…」
泉はポカンとしながら
俺からタオルを受け取りわしゃわしゃ
全身を拭いた。
泉はまだボーッとしている
何があったんだろうか…
「制服は乾きそうにないな。
俺のジャージ貸すよ。
あっ!まだ着てないやつだからな!
汚くないから!安心してくれ。」
俺がそう言うと泉はクスッと笑った。
「…いいんですか?助かります。
すごく寒くて。」
「そっか。じゃあ暖房つけておくから、
カーテン閉めて着替えな」
「飯島」と刺繍の入った学校指定のジャージを泉に渡しベットに備え付けられているカーテンを閉めた。
カーテンの向こうから
ごそごそと布擦れの音が聞こえる。
夜の校内は静まり返りその音だけが響く。
…免色の足音はしない。
「あの…先輩。」
「ん?どうかしたのか?」
するとカーテンが開いて
ブカブカのジャージを着た泉が
俺の学ランの袖を引いた。
ベットにヘタリと座った彼女の姿が
やけに小さく弱々しく見える。
「先輩。…助けてくれて
ありがとうございます。」
彼女は不安そうなまま笑う。
それがとても痛ましく感じられて
俺は泉の濡れた頭を撫でた。
「礼なんかいらないよ。
きっと俺のせいだ…」
俺はさっき免色貞夫に
追われたことを話し、泉からは今まで免色にされた事やプールであったことを聞いた。
「…これから…
どうしたらいいんですかね…。
免色くん…
…段々エスカレートしてる気がして…」
泉はベットの淵に座り俯く。
彼女の声は震えていて
今にも泣き出してしまいそうだった。
「……私…殺されちゃうんですか?」
その一言にずきりと胸が痛む。
「…だ…大丈夫!大丈夫だ!!泉!
俺は可愛い後輩を殺させたりしない!!
…大丈夫だ。」
俺はしゃがみ込んで
彼女の涙を手で拭った。
無責任な事を言ってるのはわかってる。
気休めでしかない。
でも、まだ手はある筈だ。
…そうだ。
「…俺は今から山奥の実家の書庫まで行って
免色について調べる。
泉はひとまず、家に帰っておいてくれ。」
肝試しの時に持ってきた新聞は
実家の書庫にあったものだ。
まだ何か情報があるかもしれない。
「もし明日、アイツが学校にいても
無視しろ。アレには絶対に関わっちゃダメだ。いいな。」
そう忠告をすると泉は小さく頷いた。
「今日も早く校舎を離れた方がいい。
帰ろう。」
俺は彼女の手を引いた。
ドアをガラリと開けて左右の廊下を確認する。…誰もいない。真っ暗な廊下を通り抜け、玄関を出る。
そのまま校門まで走っていくと、
自転車を二人乗りして俺達は逃げる様に帰った。
その間、
免色に遭遇する事はなかったが
じっとりと殺気に満ちた視線が
俺達の背を刺していた。
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