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ヒロセと、スラちゃん救出作戦4

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 「アニキ―、もうのめないよー、すぴー、すぴー」

 「っくよー、だらしねーなー。うへへ。おねーちゃん」

 俺たちの目の前では、いかにも下っ端ぽい二人組が寝転がって寝言を言っている。酔っぱらって寝ているようだ。

 あのあと、タマの魔法で誘拐犯を追跡したところ、街はずれのこぎたない小屋にたどり着いた。こちらは戦力もそろっているので、ドアをぶち破って室内に侵入したところ、この状態だったわけだ。

 「ヒロセー、スラちゃんいないねー」

 ちみっこ妖精が悲しそうな顔で聞いてくる。

 もしかしてスラちゃんいるかもと思って突入したけど、いなかった。俺たちもそーとー残念だけど、スラちゃんと一番付き合いの長いちみっこ妖精にはかなりこたえているようだ。

 「そうだな。もしかしたら、こいつらは誘拐しただけで主犯は別のやつかもしれないな」

 「ほかに犯人がいるってことー?」

 「そうだな。。でも、どうするかなー」

 そうだ。。誘拐犯のアジトにスラちゃんがいないということは、別に依頼をしたやつがいるかもしれない。

 でも、どうやってそいつの居場所を聞き出せばいいんだろう?

 「起こして、ボコるですわー。ボコったら白状するですわー」

 ……、シアが相当物騒なことをいっている。魔族はやっぱり戦闘民族なのだろうか?

 「うむ。シアよ、ボコるのもいいが、ちとわしに考えがある。みんな寄るのじゃー」

 いい考えがあるといい、こっちこいとタマが俺たちを手招きする。

 さすが、幼女エルフだてに……はかさねてないな。俺たちはタマに近づいた。

 「ごにょ、ごにょ」

 「「え? ごにょ、ごにょ?」」

 「そうじゃ。ごにょ、ごにょ」

 なるほど、それなら、あるいは。。

 俺たちはタマの方針に賛成した。多少、手荒になるかもしれないけど、スラちゃんのためだ。こんなやつらの一人や二人。

 ◇

 「ほら、起きろ」
 
 バシャン。

 誘拐犯をひもで縛ったあと、俺はやつらに水をかけていった。気絶した人間を起こすのによく水をかけるけど、これで起きるのだろうか?

 「「つ、つめてー。何しやがる!!」」

 あ、起きた。誘拐犯は仲良く同時に起きた。こいつらはこれから自分がどうなるのか分かってないようだな。かわいそうに。

 「何しやがるはこっちのセリフだ。お前らスラちゃんをどこにやった?」

 「お、おまえは……」

 「え? アニキ誰なんで?」

 ふむ。どうやら、こっちのアニキと言われたやつはある程度の情報は与えられているようだ。せめるならこいつか?

 「スラちゃんをどこにやった? すぐに吐けばボコられないですむぞ」

 「ふん。俺たちをボコってはかせようったってそうはいかねーからな」

 「そうだ。そうだー。アニキの言うとおりだ。俺たちはぜってー何もしゃべらないぞー」

 「そうか。いいんだな? ほんとーにいいんだな? かなりやばいぞ」

 俺はかなりやばいぞーと脅しをかける。俺もあんなことはやりたくない。できれば、ここでげろってくれないかな。

 「……、アニキー」

 おや? こっちはもう折れるのか?

 「おい。はいたらどうなるか分かってるだろうな?」

 「へい。ブルブル」

 子分のほうは折れそうだったのにアニキにそういわれると、ブルブルと震えだした。

 なんだ? もしかして背後にいるのは相当な闇黒卿なのか?

 やはり、あの手段を使うしかないのか?

 俺は一瞬悩んだが、決断した。

 「タマ、やってくれ」

 「分かったのじゃー」

 タマは魔力の追跡魔法を使った時のように、杖を取り出して、

 「秘儀『超敏感魔法』なのじゃー」

 ◇

 俺たちは誘拐犯が持っていた情報を引き出すことができた。

 奴らが言うには、ニアの街を統治する貴族様のご令嬢が今回の主犯らしい。

 曰く、俺が建てたあのぴかぴか超級マンションが自分の城よりも立派だったので、そーとーな嫉妬心を持ってしまったらしい。。

 ……、くだらなすぎる。そんなくだらない嫉妬心でスラちゃんを誘拐するとは。。

 なんてやつなんだ。

 ニアの街はかなり過ごしやすかったから、そんな奴がいるとは夢にも思わなかったぞ。

 まあ、そんなことはいい。主犯は分かったんだ。これで、やっとスラちゃんを救出できるぞ。

 「みんな、いくぞー 」

 「「お~~~」」 

 バタン。
 
 俺たちがドアを閉めて出ていった後のボロ小屋には、超敏感魔法にかかり死ぬ以上のくすぐり攻撃を受けた誘拐犯だけが残された。
  
 死ぬ以上のくすぐり攻撃がどんなものだったかは、俺には聞かないでほしい。
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