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ヒロセ、スラちゃんの後をつける

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 「お兄さ~ん、起きてくださいよ」
 「う~~~ん。もうちょっと。もうちょっとだけ」
 「そんなこと言ってると、朝食終わっちゃいますよ」
 「えっ」
 
 定宿の看板少女のミーアちゃんのモーニングヴォイスで起きるのが俺の最近の日課になっている。
 止まり木亭は普通の宿屋だけど、結構人気がある。看板少女ミーアちゃんの目当てに泊まっている客も多いんだろうな。

 だって、モーニングヴォイスで少女が起こしてくれるサービスなんてめったにないからな。

 俺はいつものごとく止まり木亭のごく普通の朝食を食べてぶらぶらと街を歩く。

 ふところも暖かくなったし、賃貸用の物件でも買ってみるかな……。もちろん、ボロ家を買って直すことにして。。。

 そんなことを考えて歩いていると、なんかふにっとしたぷにっとしたスライムっぽい生き物が裏道に入っていくのが見えた。

 誰も気にしてないから、野良犬みたいなものなのかもしれない。

 野良スライムがいるなんて、やっぱりここは異世界なんだな。

 初めて見たスライムに俺は興味をそそられてしまった。ふにふにぷにぷにと裏道を進んでいるスライムのあとを俺はつけてみることにした。

 ◇

 ふにふにぷにぷにと歩く野良犬ならぬ野良スライムをつけていくと、一軒のボロアパートに入っていくのが見えた。

 2階建てで1ルームの部屋が1階に4つ、2階に4つある、そんなボロアパート。屋根や壁をみると風雨を防げるのかな?と心配するようなボロさだ。

 「あ~~~、スラちゃんやっと帰ってきた。なかなか、帰ってこないから迷子になったとおもったんだよ~」
 なんか、ちっこい声がアパートの庭から聞こえてきた。虫の鳴くような声だ。

 俺は興味しんしんで門からこっそりと庭をのぞいてみた。するとそこには、ふにふにぷにぷにとジャンプしているスライムと、パタパタとそのまわりを飛び回っている一匹の妖精?がいた。

 野良スライム改めスラちゃんのまわりを飛んでいる妖精?は、手のひらに乗りそうなほど小さい。きれいな銀髪の髪を腰まで伸ばしている。背中からは髪を押し分けて2枚の羽根が生えている。女の子のようだ。

 ふむ。スライムと戯れるちみっこ妖精か。。いい。
 
 「誰なの~」
 おっと、門からこっそりのぞいていたのがちみっこ妖精にばれてしまったようだ。

 「俺だ。このボロアパートの新しい大家だ」
 俺はスラちゃんとちみっこ妖精の前に躍り出た。不審者扱いは嫌だから、新しい大家だなんて言ったけど、すぐ嘘だとばれるよな。

 「ええ~~~。新しい大家さん決まったの~~~?」
 「スラ~~~。スラっ、スラっ、スラ」

 スラちゃんはふにふにぷにぷにと、ちみっこ妖精はパタパタとうれしそうに俺のまわりをまわり始めた。おや? この反応はどういうことだ?

 「ちょっと待って。新しい大家とは言ったが、実は購入前に下見に来ただけなんだ」
 「なんだよ~~~。また、下見~」
 「スラー↷」
 俺が下見だというと、目に見えて2匹はしょんぼりとした表情になった。

 「どうしたんだ? 大家決まらないと大変なのか?」
 「そうだよ~。前の大家さん死んじゃって、このアパート息子さんが継いだよ~」

 「なんだ。息子が大家継いだんなら問題ないだろう」
 大家がいないなら問題かとも思ったが、そうではなかったらしい。
 
 「問題大ありだよー。その息子さんが遠いところに住んでるから、このアパート売りたがっているんだよー。けど、ボロくてなかなか売れないから、不動産屋に売るかもって。不動産屋に売ったら、このアパート壊して新しい立派なアパート建てるかも。そうなったら、家賃高くなって私たち追い出されるかもだよー」

 「ふむ。」
 これはチャンスかもしれない。その息子から不動産屋よりちょっと高い価格で買い取ってやる。目指せ、不労所得生活。
 
  
 

   
 
 
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