上 下
4 / 41

初めての修理

しおりを挟む
 「ここが市場じゃ~」
 「おお!」
 
 市場は熱気に満ちていた。
 あちこちに露店がならんでいて、お客と店員の白熱したやりとりがいろんなところから聞こえる。

 まずは軍資金をつくるために日本から持ってきたものを売ろうと思う。スーツに靴、カバン、財布、ハンカチ、ペン、手帳、ノート、スマホ、腕時計。こんなところか。

 スーツと靴は使うし、スマホもな……。腕時計なら売れるかも。
 
 「どうしたのじゃ?」
 「いや、金がないからこれでも売ろうと思って」
 俺は腕につけていた腕時計をタマに見せた。

 「おお、お~~~。これは時計か? こんなにコン
パクトで精巧な時計初めてみたのじゃ。くれくれくれ。いや、買うのじゃー。いくらなのじゃ?」

 「いくらって言われても」

 「この商売上手め。よし分かった。もってけドロボー」

 そういってタマはずしりと重たいきんちゃく袋を俺に投げよこしてきた。
 袋を開けるとそこには金貨がどっさりとつまっていた。

 タマは腕時計を手にもって眺めながら、にやにやとしている。

 ≪ピロリーん。100万マネーを手に入れた≫
 
 ◇
 
 近くにあった露店をのぞいてみる。つぼやブレスレッド、そのほかにカバン、剣や盾などの武器や防具も並べていあるようだ。どれも古びているから中古品なのだろう。

 よし、鑑定を使って価値あるものを見つけよう。
 鑑定!

 【名前】 ただのツボ
 【内容】 ニアの街特産のつぼ。ちょっと古びている

 【名前】 壊れかけのカバン
 【内容】 新人のカバン職人が作ったカバン。とってがとれかけている

 【名前】 錆びた剣
 【内容】 さびたなまくらの剣

 ……

 ……

 ……

 う~~ん、ろくなものがないな。やっぱり、鑑定で掘り出し物を見つけて儲けよう大作戦はなかなかうまくいかないな。

 ≪ピロリーん。スキル鑑定のレベルが2にあがりました≫
 おっ、鑑定のレベルがあがった。

 と、そのときひとつの指輪に目がとまった。真っ赤な宝石がついている指輪でちょっとくすんでいるような感じだ。 

 【名前】 壊れた耐火の指輪Lv3
 【内容】 ひびが入っていて効果が半減している耐火の指輪。いつ壊れるか分からない。炎の魔石があれば修理可能。

 おお、これはもしかして掘り出し物では? 
 
 「店員さん、これいくら?」
 「これはひびが入っているから10万マネーになります」

 おや? 10万マネーか。。。妥当なのか? いつ壊れるか分からないことを含んでの値段なのだろうか? タマのほうを見ると首をふるふるとふっている。なるほど、魔法使いの彼女はこういうものには目利きがあるはずだ。

 ということは。
 
 「10万マネー? でも、こんなの誰が買うんだ?」
 「どういうことです?」
 「だって、いつ壊れるか分からないものに命なんてあずけられるか?」
 「うっ。では、5万でどうです?」
 「う~~~ん」
 「で、では3万でどうです」
 「あと、ひと声」
 「2、2万で……」
 「よし、買った」

 俺はタマからもらったきんちゃくから金貨を2枚店員に手渡して、店をあとにした。

 「いやー、いい買い物をした」
 「そうかの~。わしはいつ壊れるか分からんものを装備したくはないの~」
 「いやこれは直して売ろうと思っている」
 
 ひび割れた状態で10万だったんだ。
 これをリペアで修理して売れば、数十万マネーにはなるんじゃないだろうか。
 
 俺はそんなことを考えてニマニマしていたら、
 
 「なおしてじゃと? 壊れかけの石がついてる魔道具なんてどうやってなおすんじゃ? 直す方法なんてないじゃずなんじゃが」
 
 「それが直せるんだよ。俺のスキルリペアで」

 「なんじゃと。それが本当なら、なんて便利な……」
 タマがかわいいお目目をこれでもかと見開き驚いている。やっぱり、俺のスキルはけっこうレアなようだ。

 「でも、なんか炎の魔石がいるらしいんだが」
 「炎の魔石? そんなものは魔道具やとか魔石屋とか、そんなところにごろごろしているぞ。わしもこのとおりもっておるし」

 タマはがさごそとローブのポケットをあさり始めた。これでもない、あれでもないとポケットの中をさがしている。そんなに容量のあるポケットには見えないが。

 「ほれ。さっそくリペアを見せるのじゃ」
 見つけた魔石をこっとにぽいっと投げよこしてくる。
 そんな扱いなのか、炎の魔石。

 俺は右手に耐火の指輪を左手に炎の魔石を持った。

 「リペア!!」
 スキルリペアを唱えると左手に持った炎の魔石が消えて、耐火の指輪が輝きだした。数秒のあと輝きが収まり、そこには

 「「おおー」」
 
 真っ赤できれいな宝石のついた耐火の指輪がたんじょうしていた。

 ◇

 「まいどありー」

 リペアで修理した耐火の魔石を俺は露店の魔道具屋で売った。基本こっちの世界は交渉してから売買をするようで、何回か交渉したら買取価格がけっこうあがった。

 「けっこう金になったな」
 「そうじゃな。けっこうレベルの高い魔道具じゃったからな。それが新品にちかくなったのじゃ。あの値段はだとうじゃろうな」

 「よ~~~し。タマ、今日はおれのおごりでのみにいこうぜ!! タマには世話になったしな」
 「ほう、殊勝なこころがけじゃな。それでこそ、ゴブリンから救ったかいがあっとというものじゃ。わハハハハハ」


 ≪ピロリーん。100万マネーを手に入れた≫
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒
ファンタジー
不運な事故により、23歳で亡くなってしまった会社員の八笠 美明。 目覚めると見知らぬ人達が美明を取り囲んでいて… (まさか……転生…?!) 魔法や剣が存在する異世界へと転生してしまっていた美明。 魔法が使える事にわくわくしながらも、王女としての義務もあり── 王女として生まれ変わった美明―リアラ・フィールアが、前世の知識を活かして活躍する『転生ファンタジー』──

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

処理中です...