異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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6章  アイとユウキは……『世界を救う、はずだ』

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『履き違える、思いと、重い』

※  必読ではありません 主人公が作中(自分的に)都合よく  ※
※ リコレクト解説するので飛ばして先に読み進んでも大丈夫です ※


 レッドは蹲っていた。
 頭を抱える。すでに確定した『事実』を前に立ち上がれずに居た。

 密かに描いていた計画が崩れていく。余りにもあっけなく、想定外の展開が開けて呆然としている。
 密かに危惧していた最悪な未来が、あっさりと目の前にある事にすっかり頭を抱えていた。
 人は常に最悪な事を考えてしまうものだ。
 一つ誰にも洩らす事の出来ない後ろめたい望みを持ち、その為に思い巡らせて来た計画。
 それが齎す『終焉』を目指して順調に進んでいたというのに。

 全て覆された。あいつの所為で、全てが無に帰した、台無しだ。
 元の軌道に戻せない程に計画が、崩れ去っていく。

 その失敗を想像しなかった訳ではない。この結果が恐らく最悪だという予測は立てた。
 だが、なまじ最悪な場合として認識してしまったばっかりに。

 その後をレッドは考えていなかった。



「うにゃぁあぁ……どうしてこういう時ばっかりぃいぃ」
 隣ではドラゴンが首を天に掲げてさっきから喚いていて――その度に、空に炎の柱が吹き上がる。
 涙は出ない、感情の昂ぶりで炎の竜が漏らすのは……制御できない炎の吐息か。頭を天に向けるのはその所為だろう。さっきから本人の意思とは関係なく口から炎が漏れ出るので、不用意に何かを燃やさない為にもアインは天を仰いでいる。
 空気の焼ける匂いが漂っていた。

 コトリ音を立て、ナッツが小さな石を白いガーデンテーブルに置く。

 タトラメルツ領主の館、中庭。

 魔王の城から逃げ出したと言ってもまだまだ目と鼻の先だ。こんなすぐ近くに居て安全なのかと思うかもしれない。
 だが、安全なのだ。
 古き伝統的な町並みを残すタトラメルツのすぐ近くにある、魔王の城。
 だが魔王達はそこから出る事は無いだろう。
 約束された生贄を一人、その場に残して来た。来てしまった。

 そうしなければそれが魔王の城と危惧しながらも、その傍らにある日常を、変える事の出来ないタトラメルツという町が消える。
 余りにも卑劣な、魔王という名に恥じないその取引は……成立してしまったのだ。

 そしてその取引に応じなければいけなかった者達は、一人欠けてしまった事実を今だ上手く飲み込めない。

 逃げ帰ってきた。言い逃れはしない。逃げて来た。
 戦略上必要な事とは言え、あまりにも一方的な相手の、要求通りに逃げて来てしまった。 

 ナッツは真っ白いテーブルの上で、光を集めてまぶしい光を反射する水晶石を睨んでいた。この石を自分に預けた理由、それがまさかこういう意味に繋がっていたとは……何の注意も向かなかった自分を恨めしく思い、僅かに反射して写る自分自身をにらんでいる。もう少し突っ込んでなぜ自分に預けるのか、理由を聞けばよかった……ナッツは憂いの篭もった溜め息を漏らす。
 そう、あの結界が使えればと確かに思ったのに、それがすぐ隣にある事にも気が付かなかった。
 出来ればワイズから返してもらおうとさえ考えていたというのに、その思惑さえ事実は軽々しく追い越していった。アイツが緑の巨人ワイズと接触した事の意味をもう少し、疑って掛かればよかったのに……。
 何度反芻しても過去だ。
 ナッツは目をきつく閉じる。

「なぜ言わなかったのです」
 無感情にカオスが言った言葉に、ナッツはやや苛立った声で答えていた。
 カオスが何を差して聞いて来ているのかナッツには分かる。カオスが何を探していたのか、ヤトでさえ気が付いたのだ。第二軍師であるナッツが理解していないハズはない。
「ランドール達がいた、すでにコレを預かってる事は言えない」
 これ、とは。
 今ナッツによってテーブルに置かれた小さな石だ。無色透明な結晶体、大陸座ナーイアストから預けられた謎の石の事である。
「どうして……」
「事情があるんです」
 ナッツはなんとかそれで、この場の問答を終わらせたかった。さっきからレッドは役に立たない、一言も喋らずただ俯いている。
「これがあれば……魔王を倒せたというのに」
「倒せる?それは、どうやって」
 苛立ちは頂点に達し、ナッツはカオスを凝視して挑むような口調をしてしまった。
「理を正す力がある、この世界を維持する大陸座としての力、世界保全の力が」
「……デバイス、ツール……?」
 アベルが小さく呟いた。
「……何?」
 カオスが聞き返すと、慌ててアベルは首を横に振った。
「つまりそれって、れ……ッ魔王を、」
 アベルはレッドフラグと言いかけて慌てて言い直す。
「あの明らかに存在が間違ってる魔王の連中を、正せるって事?」
 カオスはローブに隠れた顔をアベルに向ける。
「なぜ、魔王の存在が『間違っている』と思う?」
「え?」
「直感?遠東方人にはそのような直観力が備わるものだろうか……否……」
 カオスはなにやらぶつぶつ呟き、テーブルに置かれた石に手をかざす。手をゆっくり近づけていって……唐突に引っ込めた。そして小さく呟く。
「しかし、私の理論もそれに近い」
「じゃぁテメェこそなんで魔王の連中が、理にかなってねぇって分かったよ」
 テリーの言葉に、カオスは一瞬間を置いて答えた。
「……お前達がそれを説明出来ない様に、私もそれに答える言葉は持ち合わせない」
「まさか……メージン?」
 マツナギの呟きに一同顔を上げた。
 直観力、その点で優れた能力を発揮するのは誰であろう、精霊使いの力を持つマツナギだ。
「……事情を分かっているなら、もしかして」
「違うんですよ」
 酷く苛立った言葉にマツナギは驚いて口を閉ざした。

 今まで黙っていたレッドがふらりと立ち上がる。

「彼には彼なりの理屈があって、あの魔王の存在を『敵』と感じるのです。そう……はっきりと『敵』だと認識する。そうではありませんか?」
「……」
 カオスは黙った。レッドはゆっくりテーブルに歩み寄り、その途中カオスの隣を通って囁いた。
「安心ください?……バラすつもりはありません」
 レッドは微笑して無表情なカオスと一瞬瞳を交わす。
「なる程……分かってきました。僕らの『敵』とやらの正体が」
「ホントか?」
 レッドはナーイアストの石を拾い上げ、にっこり笑ってテリーの言葉に頷いた。

 もしこの場にヤトが居たなら、その笑みは怪しいだの黒いだの、散々いぶかしんだ事だろう。

 冗談にしろマジメにしろ、ヤトなら必ずそのように軽口を叩いた事だろう。
 だが今は、齎される希望に繋がるであろう言葉をただひたすらに、信じる事しか彼らには出来なかったのだ。

 一人欠けてしまった。ヤトは、居ない。

 それがあれば対抗できるという、カオスの提案にレッドは漸く立ち直ったのだと、一同思った事だろう。
 その、浮かべる自信に満ちた笑みに騙されて。疑う事は罪であるように、望み在る未来を描く事は心地の良い事だった。
 暗い、ネガティブな想像をする事は悪い事だ。
 まるでそうする事で、本当にそんな未来が訪れてしまいそうだと感じている。
 レッドは石をじっと見つめて微笑んだ。ヤトならば間違いなく、黒い笑顔と呼んだだろう表情で。
「私が必ず……助けて差し上げますから」

 もう少しだけ『時』があれば。

 誰かしら、レッドの僅かな奇行に気がついて彼の言葉に少しだけの疑問を持っただろう。
 だが『時』は無常にも襲い来る。全ての望みを絶つ様に。


 レッドが立ち直ったことを機に、そして隠されていた石が示された事でようやく一同は前向きな作戦を練る事に立ち上がった。
 このまま逃げ続ける事は出来ない、許されない。
 例えそれが許された最善の道でも、希望がある内は足掻く。
 たった数パーセントでも可能性が残されているならそちらを選ぶ。ヒットポイントがたった1しか無くっても、戦闘不能でなければまだ戦える。

 1とゼロの間には些細だ。それは、1と2の間にある差と同数であるのに、時に1とゼロはまるでイエスとノー、右と左、時に相容れない隔たりである様に錯覚する。
 致命的なダメージに打ちひしがれているのに、まだ戦うと立ち上がる。
 それは愛ではなく、勇気でもない。
 その根底に流れる根本的な意志の強さを、愛や勇気だと綺麗に並べ立てる事を彼らはしない。

  
 *** *** ***


 カオスは炎を上げ始めた町を領主の館屋上から見下ろして冷たい視線で『敵』を呪った。
「……お前はいつもそうだ……ただ只管に世界に不平等をばら撒く」
 町が破裂して、破壊音が後から続く。バキバキと、黒い影が波打って屋根が割れて、レンガや瓦が花びらの様に舞い散る。
「だから、我々は戦うように命じられた」
 吹き付けてくる破壊の衝撃と、焦げ臭い風にマントを舞わせてカオスは静かに小さく、感情無く呟いた。
「過去に続き、お前の齎す未来をも奪い取る為に」



「何だってんだ!畜生……ッ!タトラメルツに手ぇ出さねぇって話はドコいきやがったんだ!」
 狭い路地を逃げ惑う人々の波に飲まれ、思うように前へ進めない中テリーが喚いた。
「魔王の連中の話なんか真に受けたって無駄って事でしょ?」
 アベルが悔しそうに唇を噛み、なんとか民家の屋根に上がりこんだ。
 同じように身軽に屋根へ避難したマツナギからロープを渡されて、アベルはそれをテリー目掛けて投げ渡す。アベルは持っている瞬発的な怪力でテリーを屋根上に引き上げた。
「悪い、」
「急ぐわよ」
 すでに空の上には自らの羽で飛ぶナッツ、アイン、それから飛行魔法を行使したレッドが居る。
 視界の奥で建物が崩れ落ち、もうもうと煙が上がっていた。

 約束は早くも違えられた。
 突然、こちらが今後の方針を話し合っている間に状況が変わったのだ。
 一人『生贄』の如く置き去られた者によって、タトラメルツの安全は保障されていたはずだったが、何故か覆ったと見えてタトラメルツが、魔王側から攻撃を受けている状況に変わったのだ。
 何故か?それを知る為にも行かなければ行けない。
 突然齎された町の破壊は、後は『その時』を図るのみだと思っていた彼らの背を急げと押す。
 タトラメルツの古い町並みが煙に飲み込まれていく現場に向けて、5人と1匹は急いだ。
 狭い路地のお陰で屋根の上を飛び移って移動するのに苦労はしない。
「しかし、何だよあれ?ナッツ、あれって怪物でも暴れてんのか?」
「いや……それらしい影は見えないけど……でも、黒い縄みたいなものがちらちら……」
「縄?鞭?……」
「それにしたって桁外れな破壊行動です。気をつけましょう、何か居るのは間違いありません」
 どこか白々しくレッドが言った事には、一同気が付く事は無い。彼がすでに、何らかの『予測』が付いているなどとは誰も気づく事は出来なかった。
「お前ら、俺に構わず先に行け、西方人の俺にあわせてんな」
「うん、ごめん……じゃぁ先に行くわ」
 テリーの言葉にアベルの移動速度が上がる。
「じゃぁあたしも先に」
 その次にマツナギが素早く屋根を跳び越えていった。
 格闘センスは高くとも、肉体技能や移動能力で言えば魔種であるアベルやマツナギには遠く及ばないテリーだ。ナッツも大きくはばたいて加速する。レッドの飛行魔法も同じくナッツの後を追いかけていく。
 小さな羽音だけが残り、テリーは首をそちらに回した。
「……アイン、」
「あたしはあんなに早く飛べないわ、テリーと一緒に行く」
「ああ、急ぐぞ!」
「……ごめんなさいで、許してくれる?」
「ああ?」
 テリーが怪訝な顔で聞き返して……そして、タトラメルツに着いた時に起こした騒動で互いに、絶交宣言に近い事をやったのを思い出した。
「今はそんなのにこだわってる場合じゃねぇだろ」
 テリーは親指で自分の肩を差した。
「乗りな」
 実は、アインは羽はついているものの……常に空を飛んでいるドラゴンではない。実は空を飛びつづける事自体は苦手だったりするのである。
「うう~ごめんなさい、ありがとぅ~」




「誰がこの事態を想像したよ?」
 武装して戻ってきたギルが、篭手を調整しながら苦笑する。
「私が予想出来なければ誰もその先など見れはせんよ」
 大破された古城に散らばる石に腰掛け、煙草を燻らせているナドゥが低く答える。
「ま、いいぜ。ちったぁ楽しめそうだしな」
 大きな剣を背負い込み、ギルが前に出る。その背中に無感情な声が言った。
「悪いな」
 無感情である事が、更に愁傷に聞こえてギルは悪態をつく。
「けッ、似合ねぇ事ばっかしてんじゃねぇ。さっきっからお前俺に謝ってばっかりじゃねぇか」
「……正直に悪かったと思っていて、それを言葉にして何が悪い?」
 ギルが苦笑気味に振り返った。
「よし、それでいい。お前が悪く思うのは勝手だ、俺は俺で勝手に楽しむ。俺とお前はそれだけの関係だ、そうだろ?」
「……その、通り」
 ナドゥは煙草を口から離して目を地面に向けた。紫色の煙が吐き出されていく。

 その煙の向かう空は、もうもうと吹き上がる塵と煙に曇る。遠く聞こえてくる破壊の音を無心に聞き逃してナドゥは煙草を深く肺に吸い込んで再び、吐き出した。




 時間稼ぎをしろと言われ、命がけの鬼ごっこをするはめになっていた。インティは物理防御を高めて相手の一撃を何とか逸らす。逸れた相手の一撃が再び新しい町の区画を粉々に破壊した。

 いくらなんでも、流石にアレはボクでも『滅ぶ』

 直感的に理解できるその事実に、しかしインティはどうしてもしっくり来ていない、感情的に言えば気に入らなかった。求めているのは、アレでは無い……そういう感覚も同じく直感的に在ってその方が『望み』より強く働きかけている。
 逃げ送れた人々があちこちに散乱していた。見えている部分でこの数であるなら、何も知らずに破壊された瓦礫に押しつぶされた被害者はもっと多いに違いない。
「どーせ天災として片付けられちゃうんだよねー」
 インティは身軽に飛び回り、タトラメルツの町の外側をなぞるように移動する。
 時間稼ぎと、鬼ごっこと。町の破壊を命じられて全部一緒にやる事にした結果だ。自分の手を汚すのが嫌だという訳ではなくて、彼の場合単純に自分でやるのが面倒だと思っているだけだった。

 どうせなら楽しまなければ人生は損だ。例えそれが歪んだ『人生』だとしても。

 少し自虐気味に自分を笑って、インティは再び追いかけてくる手をするりと避ける。新しい区画が再び破壊されていった。
「そうだ、僕、君と一緒に遊びたかったし仲良くなりたかった。君は鬼で僕は逃げる役だから手は取り合えないけど……とりあえずこの関係性でガマンするよ」
 怒りが込められたように、地を這って迫ってくるものが手当たり次第に破壊を続ける。ふいと逃げていくだけの人の流れに逆らって、こちらに向かってくる気配を感じてインティはそちらに視線を投げた。
「……遅いなぁギル……僕はあっちの時間稼ぎは頼まれてないんだけど」
 でも、遭遇させてはならないと『言われていない』。なら放置しておいて良いのかな……と、インティは静かに姿を隠した。とはいえきっと連中はどんなに姿を偽り隠してみたって不思議と、お前はそこだ、お前は魔王だと指差すのだろうけれど……。
 その不思議な……在る意味迷惑な能力。

 彼らは何故か僕らの頭上を見ている。

 何故なのかはインティにも良く分からない。だが……何故かそこで魔王か、そうでないかを彼らは認識するようなのだ。だがそれは絶対と言うわけではなく、割と抜けた所がある事はカルケードで様子見をしてインティは知った。ならば少しの間は、姿を瓦礫の中に隠してしまえば見つからないだろう。

 しばらくして屋根伝いにやってきた二人は……もうもうと土ぼこりの舞う中、今もボロボロと崩れていく居住区をあっけに取られて見ている。
「何、これ……」
 アベルは呆然と、破壊し尽くされた区画の状態に立ち止まる。マツナギも険しい顔で辺りを見回した。すぐにその頭上に、有翼族のナッツとレッドがやって来た。静かに屋根の上に着地する。
「本体は……ここじゃない、もっと向こうだよ」
 ナッツが指差すとすぐにマツナギは弓矢を構えた。アベルは吹きつけた風か、それとも殺気なのか、背筋が凍りつく様な気に当てられて一瞬足が竦む。ゆっくりと腰の剣を引き抜いて構えた。
 この経験はこれで二度目だ。だから……同じ相手に二度と同じ屈辱は味わうまいと思っている。それくらい、一度目の屈辱を与えてきた相手……ギルの事を意識している。それを警戒していてもう一度同じ、恐れて身体が逃げようとする反応するとはどういう事か。
「……ギルじゃない?」
 音も無く、土煙の中から静かに伸びてくる影。細長い蔦がしゅるしゅると伸びてくる。気がつくとそれはどんどん枝分かれして、あちこちの破壊された建物の影から這い出して来てはこちらに伸びてくる。
 伸びる途中互いに絡み合い、太く収束され、それがうねるたびに小破壊が起きて建物が崩れていった。
 まるで……ブラックホールか、あるいは底なし沼に静かに飲み込まれて行くように奥では、破壊が続けられているに違いない。黒い影の渦に飲み込まれ、瓦礫の山が沈んで行くのが砂埃舞う景色の向こうにぼんやりと見えるのだ。
「こっちに……来る?」
 それらの『破壊』が一歩、こっちに歩を進めたのを感じる。はるか遠くにいるのに、数センチ距離が縮まっただけで空気が違う。
 マツナギの構える弓矢の先が震えだした。
「だめだ……」

 動けない。

 ナッツもレッドも、二人の背後で控えていたが今や全く口を利けない状況で固まっていた。
 動いたら『破壊される』という無差別な殺気にあてられて、呼吸さえ今にも止められそうに息を呑む。瞬間的に蔓が延び、襲い掛かって来たのにも無反応だった。
 反応する事すら出来なかった。音も無く、影のように実体が無い、平面に描かれた絵のようなものが幾筋も視界を遮り突き出される。
 だが不思議にも、それらは全て彼ら4人に触れることなく背後に通り抜けた。
「ヤだなぁ、もしかして鬼さん、僕しか眼中にないの?」
 ようやくレッドが振り返る、空中の、空間には何も存在しないはずだったが筋の様に何かが走るように弾け、それが伸びきった先に赤い旗を立てた少年が逃げ回っているのが見えた。
「インティ!」
 レッドが防御魔法を働かせたのと、虚無の空間が物質破壊を行ったのはほぼ同時だった。あたりの建物が崩壊し、それらに巻き込まれる。
「この黒いものに触れない方がいいのか?」
 ナッツはザワザワと迫り来る蔦模様に顔が引きつりつつ叫んだ。
「もう逃げられないわよ……ッ!」
 アベルが目を瞑る、ざわりと……気配だけの風を感じた。
「避けた?」
 マツナギが信じられないようにあたりを見回す。平面をなぞるように進む黒い影が、まるで触れられないように自分達を避けていったのだ。
「何……だ、これは?」
「……」
 レッドがしゃがみ込み、ゆっくり黒い影に手を伸ばしてみる。するとまるで蟻の群れが接触を拒むように、影はざわりと退避して触れる事を拒絶する。その様子を無言で見守った3人は、レッドが突然立ち上がって駆け出したのを見送りそうになって慌てて声を掛けた。
「レッド!」
「どこに行くんだい!?」
 前へ駆け出す、足の着地する所を影が避ける。
「行くんですよ、」
「だ……大丈夫なのか、これ?」
「大丈夫ではありません」
 レッドはそう言って顔をそむけ、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「だから、どうにかしなければ」
 アベルも前に足を運ぼうとした。しかし……運んだはずの足は動いてはいなかった。
「……なん……で、」
 マツナギも同じくである、前に行こうと思う意志はあるのに足が動こうとしない。
 小刻みに身体が震える、周りを取り囲むこの、おぞましい存在に畏怖した心以外の、自分の全てが、これ以上『あれ』に近づきたくないと主張していた。
「どうしてアイツは行けるのに……ッ!」
 アベルはガタガタと震える足を抑えた。涙が出そうになる。どうして、何が悲しくて何に心が昂ぶっているのか分からずに悔しくなって拳を振り上げた。剣を握っている右手を、自分の意思に反して動かない足に向かって振り下ろす。
「止めろッ!」
 強い制止の声にアベルがその動作を止めた。握り締める剣を、自分の震えて動かない足に突き刺そうとしているのを止める。声から遅れてナッツがアベルの背後から抱きついて行動を止めた。
「……動けないのは僕も同じだ。でも、今こうやって一瞬だけど前に出る事が出来たね」
「ナッツ……」
「レッドを突き動かしている原動力もこれと同じ、なのかもしれないな」
「どういう……事?」
「この明らかに、誰とも無く吹き付けられている破壊衝動、」
 周りではぐずぐずと岩が砂になり、柱にひびが入って崩れ落ちる。ざらざらと耳障りな音が響くたびに、ゆっくりと不気味に闇色の影となって破壊の蔦が伸びていく。
「……冷静に聞いて、二人とも」
 アベルの背後に抱きついたまま、もう今はそこから動けなくなってしまったナッツが小さく囁いた。
「レッドが何を考えているのか、僕の予想を冷静に聞くんだ」
 思わずアベルは目を閉じる。マツナギが唇を噛み締める。ナッツは目を閉じて……言いにくそうに口を開いた。
「……これ、多分ヤトだ」



 インティが逃げ惑う後を、黒い紐のようモノがのたうちながらついて行く。そしてその背後で起こる破壊の様を見やって……テリーは思わず足を止めていた。
「なんだありゃぁ……」
「……テリー、あっち」
 アインがテリーの肩の上でインティが逃げる破壊が続く現場ではなく、そこから離れた方を指差した。
「あっちに本体が居るみたい」
 明らかに方向が違う。アインが羽で差す方は確かに、最初に破壊が起こりはじめた現場……丁度、魔王本拠地が置かれていた廃墟地区がある。とはいえ、今はもう何かが燃えているらしい、煙が上がるのが見えるだけで静かですらあった。

『本体』

 テリーはその言い方に奇妙な感じがしてアインを横目で窺った。
「どうしてあっちに『本体』が居るって分かる?」
「……そりゃ、あたしは匂いで色々分かるし……」
 テリーは目を細めた。
「匂いでそれが『本体』って分かる奴って意味か?」
 遠まわしに込められた意味を悟り、アインは首を竦めて金色の目を閉じてしまった。感情を表す事の出来ない竜の顔、アインはしばらく無言でどうやったらこの『苦悩』を伝える事ができるのか悩んで、小さく溜め息を漏らした。
「……嫌」
「嫌じゃわからんだろう、はっきり言え」
「嫌よぉ……」
 テリーは、示された方向へ転換して再び屋根の上を走り出す。
「俺はそんなにバカじゃねぇ、大体奴等が取るだろう展開くらい読めるんだぞ?」
「嫌なものは嫌なんだもの……ッ!」
 もし彼女がドラゴンじゃないのなら、きっと涙を溜めて……いや、きっと涙を流して状況を嘆いたであろう。残念ながらアインは今ドラゴンで、ドラゴンには表情はなくて涙腺も無くて……だから、泣くという表現が出来ない。鳴く事は出来ても、それは泣く事とは違う。
 泣く事を表現する事にはならないのだ。
 だから、ドラゴンの彼女には表情等で悲しみを表現する事が出来ていない。
「泣くな、アイン」
 しかし、彼女が泣いているのをテリーは知っていた。
「泣くには早いぜ、別に奴が死んだ訳じゃぁねぇんだしな」
「で、でもぉ……」
 屋根を蹴り、次の屋根に着地する。テリーは前を見据えて近付くにつれて強烈に感じる殺気をびりびりと肌に感じながら言葉を続けた。
「死なないと約束して、奴はまだちゃんと生きている。奴はちゃんと俺らとの約束を守ってるじゃねぇか」
 テリーは自分の右腕を前に差し出し、ちらりとアインに目配せする。
「道は全部ふさがった訳じゃねぇ、必ず効くとも保証は無ぇが……俺は奴の為に血を流す事を厭わないぜ」
「テリー……」
 小さくドラゴンが炎を吐く。しゃくりあげるようにして、もう少しだけ吐く。
「あたしも……それは、あたしも同じ!」
「うし、奴に出来て俺らに出来ねぇはずが無いんだからな……急ぐぞ!」
 テリーが再び屋根を蹴る、着地して斜めの屋根を駆けあがり段差のある所を次々と渡っていく。下の曲がりくねった道を行くよりは遥かに直線的で、目的地へ向かうのには適している移動手段だったが、まさかこんな泥棒の様な移動をする羽目になるとはよもや思わなかったなと、そんな事を思いながら屋根の瓦を蹴り上げる。
 と、突然目指す地点で爆発が起こった。テリーは一瞬足を止め、慌てて身を翻して屋根を横方向へ移動した。素早く隣のレンガ造りの建物に渡り、さらにその向こうの木製建築物に渡って長い屋根を駆け抜ける。
 見る間に爆風が広がり……今さっき自分が居た場所を飲み込んで破壊していった。
「何……ッ?」
「誰か、来た」
 アインが目を細めて低く呟く。テリーはその気配に歯を食いしばる。知っている気配、知っている殺気だ。
「ギルか……!」
 それでももう、今は足を止めたりしない。
 テリーはもしかすると、自分を狙ったのかもしれない一撃に恐れを抱く事なく、今しがた破壊の衝撃が通った道に降りた。
 空間をえぐり取る様に、破壊の一撃が今、ここを通り抜けて行って……大きな瓦礫が撤去された道が出来ている。道を辿れば間違い無く『奴ら』に行き着くだろう。
 人があちこちで逃げ惑っている……悲鳴、嗚咽、それらがまるで一つの意思であるように唸りを上げている。この瓦礫の下に押しつぶされた人が居るのも明白だった。だが、このまま『奴ら』を放置すれば更なる被害者を増やすだけだ。唇を噛み、今出来たばかりの破壊の足跡をテリーは蹴り上げた。
 その足元に、誰かの屍を踏みつけていたとしても。今はそれに迷っているヒマではない。顔を顰めてテリーは顔を上げた。


 待っていてくれ。


 闇の上を駆け抜ける。ぞわぞわと揺れる闇の森を、全てを拒絶するように吹き付けてくる狂わしい殺意を、拒絶の空気を吸い込んで毒される事なくレッドは足を運ぶ。
 闇は避ける。それを汚してはいけないと知っている様に、慌ててレッドの足元に正常な空間を作る。そこを蹴り上げてレッドは前へ進んだ。肉体技能に秀でていない彼の息はすでに切れ切れで、時たまに息を整えるようにして休憩を挟みながら前へ進む。
 魔法を使って移動すればいい、そういう意識も働くのだがなぜかその考えを振り払う。
 自分の肉体に痛みを与え、そして同じ苦しみを共有したいと望んでしまう。影が自分を避けていく、それをずっと、いつまでも間違いない事だと確認していたかった。
 影が自分を認識しているという事だ。まだ、『彼』にはそれが出来ている。出来なくなって破壊に巻き込まれるならそれはそれで良いと思っていた。
 崩れ行く壁に手を掛ける。壁をのたうつ影が慌ててレッドの手を避けていく。手を伸ばし足を運んでも逃げていく……闇。

 こんなに濃厚に辺りを取り囲んでおきながら触れられる事を拒み、追いかけても追いかけても逃げる。

 レッドは手を伸ばした。その影を掴もうとしてもどうしても届かない。その都度に顔を歪め、再び走り出す。破壊音が新たに聞こえてくる。砂の混じった風が吹き抜け咄嗟にレッドは顔を覆った。紫色のマントが翻り、風にもろとも吹き飛ばされそうになるのを耐えた。
「!?」
 殺気が収束する。ぞろぞろと、闇が逆流を始める。
「そら、もう一発!」
 違った破壊の衝撃が弾け飛び、襲い掛かってくるのにレッドは成す術も無く立ちすくんでいた。だが……その破壊の衝撃を吸い込むようにして闇は濃くなり、物凄い勢いで逆流して持ち主へ集い始めた。
「……お、」
 晴れた視界の中に、もう一人生きている人間を見つけてギルは正直に驚いた。肩に担いだ剣を軽く持ち上げ、今しがた放った一撃を『相手』が、受け流さなかった理由を理解する。
「なんだお前……割と意識あったりするのか?」
 レッドは自分の目の前に、たった数メートル先に、ずっと手を伸ばしていたものがある事をようやく意識する。肩で息をするように丸めた背中が露になっていて、その背中を這い回る黒い蔦に目を奪われた。
「……ヤト?」
 右手に、見慣れない剣を持ち、左肩から腕まで無秩序に覆い隠す鎧はただの金属片の寄せ集めにしか見えない。
 彼は振り返らなかった。ただ、静かに肩で息をしている。

 苦しいのだろうか?喘ぎ声は聞こえないのに、まるで立っているのでやっとだというように痛々しく感じられる背中。そこをまたムカデが這うように蔦模様が這い回っている。
 倒れこむように、レッドは一歩前へ踏み出していた。
「おいおい、下がってろよ。殺しちまうぜ?」
 ギルが剣を構えながら……恐らくレッドに向けて言ったのだろう。だがレッドはギルの事は見ていなかった。
「やはり……やはり、こうなるだろうと思っていました」
 更に一歩前に踏み出し、レッドは手を伸ばした。
「何故貴方はいつも、僕が予測する最悪の未来を自らで齎す」
 さらにもう一歩前へ踏み出した時、レッドはついにその影を踏む。しかし途端に蔦を思わせる影がレッドを絡み取り、掴みあげ、空中に弾き飛ばした。

 激しい拒絶、抗う事も出来ずに崩れかけた壁に叩きつけられていた。頭をしたたかに打ち付けて一瞬気を失い、起き上がった時には再び致命的な距離が横たわっている。
「……どうして……ッ!」
 破壊を生むだけの戦いが始まっていた。剣が交わるたびに二人の周りが衝撃で弾け飛んで砂になり塵になり消えうせる。ギルの巨大な剣を、青白い金属の塊を思わせる剣で受け止める『男』は……ほんの数時間前までこの世界を救う側だった。

 今はそうではない、きっと違う。

 この目の前の破壊に、彼の者が世界を救うとは誰も思わないだろうし信じられないだろう。
 レッドは項垂れ、強く打ち付けた頭を抑えてなんとか立ち上がって……懐から静かにナーイアストの石を取り出した。険しい顔で破壊の吹き荒れる目の前を睨みつけた。
「唯一の懸念はそれだ、」
 声に驚いて振り返った先、腕を組んだ白衣の男が立っていて二人の破壊者の戦いを真っ直ぐに見ている。
「やはり持っていたな……君達なら必ず我々の所へ、それを持って来るだろうと思っていた」
 レッドは黙り込み、男の意味する言葉を考えた。魔導師である彼は、安易に相手に意味を尋ねたりしない。まずは自らで考えてあらゆる可能性を探り見る。
「……魔王、貴方達はなぜ魔王などと名乗るのです?」
「言ったと思ったがね。私はそんなものとは無関係だと」
「しかし貴方達の事を……世界がそう呼ぶ」
 ナドゥが無表情を止めた。そして故意にではない素直な笑みを浮かべて、レッドを振り返る。
「そうだな、世界は我々をそう呼ぶのだろう」
 レッドの言葉を認めた上でナドゥは続けた。
「だから連中も悪ふざけが過ぎて……自ら魔王を名乗る。私はそう言うユーモアは好きではない。だからそうだと私は名乗るつもりは無い。肩書きとは自らが名乗るものではなく、それを世界の中に見出す第三者が定める」
「それは、方位神の説話ですね」
 レッドは苦い顔で僅かに顎を引いた。そして今や確信した事実を聞くべく顔を上げる。
「……貴方は、世界を破壊するのは『大陸座』の方だと思っているのですか」
「ふッ……流石は高位をまとう者よ、そこまで考えをまとめていたとは正直に関心するな」
 ナドゥは苦笑して、その言葉を否定はしなかった。そして邪悪な手を伸ばす。
「……ならば、君こそ何故、そこにいる」

 レッドは伸ばされた手を凝視した。その意味を考える。
 そして、その手の伸ばされた先を考えてみた。

「……僕にどうしろと」
「言葉にしてもらいたいのか?」
 ナドゥは目を細め、差し出した手を少し開いた。

 この手からは、きっと逃れられない。この手が嘯く希望から目をそらす事が出来ない。
 それは予測ではなく直感。予測を超えた、超自然的な、もっと原始的な理論でしか動かす事の出来ない物事。それを理論にはめ込んで、解明して、言葉にする為に切開してずたずたに切り刻んでみてもきっと正しい事は一つも見当たらない。残されるのは無残にバラされた被写体のみだろう。

 レッドは強く目を閉じる。目を閉じて、そしてその暗闇の中で先を見る。出来るだけ先の未来を予測する。

 そして、常に最悪な答えを弾きだす者を出し抜く為に、もっと最悪な未来を用意して待ち構えよう。
 目を開けた。彼が邪悪だと形容する微笑みを湛えて。

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