77 / 362
5章 際会と再会と再開 『破壊された世界へ』
書の8前半 足りない欠片 『満会一致で秘密な出来事』
しおりを挟む
◆書の8前半■ 足りない欠片 missing ring
「大体、竜と人間てどうやって『やる』のかしら?」
「……っておい、」
遠慮ないなぁ彼女。俺はアインの意識が真っ先にお子様立ち入り禁止区域に突入したのに正直、赤面してしまう。そういうのは本来、俺が言うべき下セリフであるような気がするのだがどうよ?
「残念、あたし人間には戻れないし」
「コッチの世界だと竜種って別に、神聖動物でも何でもないしな。ただの種族だし……ん?戻れない?」
俺は遅れて反応する。
「戻れないって、何だ?」
「ああ……ほら、あたしはサイバー種だから。竜としては十歳だけど、与えられた知性は別だもの。元は人間だったみたいよ、覚えていない事だけど」
「覚えてないって、思い出せないって事か?ログが壊れてて……」
アインは長い首を横に揺らす。
「違うの、そういうのじゃなくて。サイバー種ってどういうものなのかヤトは知ってる?」
俺は素早くリコレクトしてみた。だが、適切な知識は降りてこない。知らないようだと首を振ってアインに説明を求めてみる。
「分かりやすく言えば転生術みたいなものなのよ。死んだら生き返れないでしょ?この世界ファンタジーだけどそればっかりは出来ないのよね。死は消滅だから……精々がんばって消滅を免れても死霊止まりでしょ?絶対に生物として『生き返る』事は出来ない。とすると、この理を覆そうとした人達っていうのは結構いるらしいのよね。ほんと、どこの世界でも居るものね~。で……その末に死んだ人の情報を生物に融合させて復活させるっていう、強引な方法が出来ちゃったみたいなのよ」
俺は田舎者だからな。そんな事が可能だとは知らなかった。
しかしそれでも転生術は生き返りではない。サイバー種に転生する事が死をまぬがれる方法であるなら、実際もっと有名であって死を免れる方法として、具体的な作法を探す奴らは多い様に思う。
それ位『死』というのは、命あって終わりある生物にとって興味深い現象だろうからな。
「でもこれが、色々とリスクのある問題だったりしてね。まぁ死んで消滅の所を強引に生かすっていうんだもの、当たり前よね。諸々の過程で結局の所色々なものが失われてしまうのよ。姿かたち、記憶、能力。受け皿にも問題があるわ。知性なんてものを融合させるには、融合する相手より勝っていないと呑まれてしまったり拒絶されてしまったりする。だから、サイバー種は魔種や動物のあまり知性の高くない種類が多いって訳。それから……あとは知性の育たない子供のうちに、とかね」
ほら、やっぱり。致命的な欠点がある。実際そんなもんだよな。都合のいい話ってのは大概大穴が開いてるもんだぜ。……この世界において、ドラゴンは特別な魔物ではない。ある意味特別視した歴史はあるけれど、ぶっちゃけて最強で強い訳でも無い。何か特殊な能力が備わる生物という訳でも無い。
強い魔物や便利な特性を持つ魔物なら他にもっと居る。
だが、数多くの種類や亜種などが存在する、このドラゴンという分類であるが……一つ決まった特徴があったりする。そして、その特徴こそがドラゴンを特別扱いした過去の歴史の理由だろうな。
竜種には寿命が無い。
というか、寿命で死ぬ竜は多分いない。いやもしかすると、あんまりにも長寿過ぎて寿命がいくつなのか誰も、ドラゴンさえ知らない状態なのかもしれない。
しかして本末転倒な事に、そもそもドラゴンの寿命が無いという事に拍車を掛けたのは、そんな不死生物の乱獲にあったりするのでは?
討ち取られて死ぬのだ、ドラゴンというのは。それまでは死なないと云われる、どこまでも生きる。お陰で長生きした竜は知性を持つ場合があると云うな。動物と違って魔種は変異が突発的だから、何かきっかけがあると容易く元在った規格を越える。
そうやって事態や環境に柔軟に対応できるのが魔種=魔物の最大特徴でもある訳だし。
よって、ウチのチビドラゴンがそのサイズに見合った年齢、即ち十歳前後であるのにしっかり言語を喋るのは世界設定的におかしい。そのおかしさを突破してしまう方法が、知能を他から獲得するサイバーという種族にあるって寸法だ。
キャラクターメイキングの時に、特別に強力に作れるように大量の経験値を与えられたというのに、アインはそれをこの希少な種族を選ぶ事に殆ど費やした。
面倒な理由。
そうだ……サイバーは本来、一度キャラクターをロストしなければ選ぶ事が出来ない種族なのである。
俺は、リコレクトじゃなくて普通に思い出した。ロストしたキャラクターの知性を、ある高い『ランク条件』を満たした場合にのみサイバーという『転生』が許されるのである。勿論だからと云ってこれが強力と云う訳ではない。死んだものは基本的には甦らないのだから、当然これにはかなりのリスクが付随する。
アインの言うように、知性の在る生物にはサイバー転生は出来ない。するとすれば子供を選ばないといけない。折角次のキャラクターに転生させても、子供から育成を始めなければいけないのだ。
俺の、一番最初にアインを見た時に発した『それ育成面倒だろう』という第一ツッコミはこれに由来するのだな。
「ヘンな仕組みよね。でもあたし、ドラゴンの前はどんな人だったのか何も覚えてないのよ?記憶を何一つ留める事が出来ないのに、どうしてサイバーなんて種族が成り立つのかしらね」
アインが少し悲しそうに呟いたのに、悪いんだが俺は素で突っ込みを入れさせてもらおう。
「って、お前がドラフェチだからそーいう設定を選んだんだろう?ドラゴンをやりたかったからお前はその、面倒な設定を選んだんだろうが。今更ドラゴン嫌だとか言うのか?それは自業自得だろ?」
「……そうなんだけど。ふぅ。やっぱり重いのよ、実際やってみるとあたしはただ単に好きでドラゴンを選んだ訳だけど、本当はそこに至るまでの積み重なりが在る」
ああ……そうか。テリーが公族出だったり、ナッツが元神の代理だったり、俺が天涯孤独だったり……そういう経験値の上昇による『背景の重さ』が、アインにとってはアンニュイなわけだな。
何も思い出せないのに、自分の存在を考えるだけで割とただ事じゃないんだ……と。そういう思考にたどりついてしまう。明言はしないが何か、憂鬱な理由でも思い出してしまったのかもしれない。
「……レッドやマツナギにも……やっぱり何か重い設定がぶら下がってるんだよな」
「……うん、多分ね。ヤトはどうなの?」
「俺は……」
苦笑しながら、俺は床に座り込んでいる所立ち上がった。
「良く分かんねぇな。重いのか軽いのか……」
「…………」
アインは首を回し、俺を見上げた。
「よかった」
小さく彼女が呟いた言葉を聞きとめる。
「……何がだ?」
「ううん……大した事じゃないの」
アインは大きな丸い目を細めて首を軽く振った。
「無事再会できて良かった……って」
「いやまて、まだ全員じゃないんだぞ?そこらへん分かってるよな」
アインは当然よ、とベッドの上に飛び乗った。
「マツナギとレッドがまだなんでしょ」
「そうだ、分かってるならいいけど、しかし……何でお前無事に合流出来たんだ?」
後に思い出す事だが、俺は現時点メージンから説明されたログ・CCの許可をまだ、誰からも貰ってないのだ。よって、エントランスで覗き見ていた事情は思い出せていないのである。
そこん所、見事にすっぱ抜けてる訳。
「みんなが探しに来てくれたの。あたし、森の中でフツーのドラゴンになってたみたい」
アインは小さな手の所まで首を下ろして頭を掻いた。手がちっさいから頭まで届かんのな。しかも構造上手を上に上げられんから、代わりに首を下ろすのな……。
だから、その仕草が可愛くてたまらんのだッ。
「鳥とかネズミとか追っ掛けてね、それを食べてたみたいなんだけど。おかしいのよ?あんなにカンタンに捕食できたのに今は全然、捕まえられないんだもん!」
……お前、それで庭の小鳥と追いかけっこしてたのかよ。
「何か、人間の食い物より小鳥バリバリ喰らった方が美味いとか」
味覚が違うというのは良くある話だ。案外虫は美味とか言い出すかもしれん。
「まさか、お刺身もいいけどおしょうゆは必須だわ。塩コショウが効いてる香草焼きの方が美味しいに決まってるじゃない!」
濃い味付けに舌が肥えちまっただけじゃねぇのかそれは。キャット又はドッグフードみたいな、ドラゴンフードとかいうカリカリでも売ってねぇもんか。あったらあったでこいつ絶対、こんなの食べ物じゃないとか拒否するに違いないけど。ドラゴンの癖に人間と同じもの喰うし。……サイズ的にお子様ランチで十分みたいだけど。
「森って……よくちっこいお前を見つけられたよな?」
「カオス君がそこらへん、取り計らってくれたのよ。探査魔法を使ったみたい」
「……それがまず理解できんなぁ、あいつはタトラメルツ領主の片腕だろう?どうして俺達の面倒見るような事してんだ?」
「ええと、それはね……うーんと……」
アインは小さな腕を組み、言葉を捜してしばらく唸った後に長い首を上げた。
「カオス君はね、協力者だから」
「そりゃ、領主が魔王討伐願ってるんだから、奴は領主に傅く以上は俺達に協力してくれるだろ?俺達の目的が『打倒魔王』なんだし」
アインはそうじゃないと首を軽く横に振った。その仕草が一々可愛いんだよお前!と、俺はテンションが上がってしまいそうだったので慌ててそっぽを向いてしまった。
「……あたしはさ、割と匂いで世界を認識できちゃう訳でしょ」
と、そんな俺の不穏な動作を見ていないようでアインは、小さな声で呟いた。
「……何?」
「目に見えない部分でさ、色々余計な事が分かってしまう事がある。ちょっとだけ認識してる世界が違うのね。でもね、確信が無いの。ただちょっとおかしいなと疑問を感じてしまうだけ。隠して隠されているのなら、それは第三者がむやみやたらに暴いてはいけない事じゃないかなって……そう思うとね。何とも言えなくなっちゃうの」
例えば、北方シーミリオン国の女王の事情。
アインは最初から、彼女らが醸し出す矛盾の理由を察知していたのだろう。だがあえて、それを誰にも語らずにいた。放置して場を混乱させたかった訳ではない。
アインは今言った様な気配りで口を閉ざしてしまったのだ。
黙って傍観して、鼻の下を伸ばしている俺をニヤニヤ見ていたかった、それだけじゃぁなかったのだ。
……いや、そいう悪意も働いている様な気もするが。
「……カオスは、あれは何だってんだよ。アレか?まさかまた女だとか言うなよな?」
アインは匂いでオスメス分からしい。だがそのネタはもういい、勘弁してくれ。ユーステルの件で散々打ちのめされてますから。
「秘密って守れる方?」
「多分」
「えー、多分?」
アインが半目になって首を引いた。
「話すつもりが無いならそもそも話しを振るなよな、」
「しかたないなぁ……でも絶対、本人には言わないでね」
「ナッツにはいいのか?」
早速ナッツには相談する気満々な俺ですが。アインが益々怪しい目でそんな俺を非難がましく見る。
あ、はい……秘密守る気無いのかって視線デスカ。
「だって、俺やお前が抱えていてもどうしようもない問題だろ?そういう所はちゃんと軍師に説明すべきだ」
「う、結構それって正論」
アインは怯んで翼で身を隠す。そして唐突に彼女は言った。
「……カオス君はね、人間じゃないわよ」
「じゃぁ魔物か?」
「あ、間違った。生物じゃないわよ」
「……」
生物じゃないって何だ。
何か?アレか?あとは……アンドロイドだとか言うんじゃあるまいな?
「具体的にはじゃぁ、何だよ」
「……領主さんは魔王討伐を『渇望』したの。カオス君はそれを叶える存在なのよ」
「……ああ、」
その言い回しでピンと来た。リコレクトする。ソイツの話はレッドから聞いていた筈だ。
カオスは、『悪魔』だって言いたいのか。
それは本来、言葉にしてはいけない事だと俺も後に『教えられた』。
アインはそれを守ってその言葉を避けたんだな。レッドあたりは堂々とその単語を言い放つが、信神深い連中はやはり言葉に出すのを躊躇う。
それが誰かといえば、天使教の連中だな。ナッツとテリーだ。悪魔の話が出たのは確か、大陸座ナーイアストと話をした時だったな。レッドが突然話し出したんだ。
一方通行の『トビラ』を潜ってくるもの、それは元来この世界において『悪魔』を意味する、とか何とか。
そんな世界であるのに、なぜ高松さん達開発者はこの世界を構築するプログラムソフトの事を『トビラ』と名づけたのであろう?とか。奴だけ拘ったっけな。
まぁ悪魔って言ってもアッチの世界では空想や比喩の産物だし、コッチみたいな仮想世界においては定義がまちまちになる訳だが。
悪魔ってのは……コッチの世界においても居ないとされる存在。言葉にしてはいけないと云うのは、認識してはいけないと云う意味に近い。何故なら、認識すると悪魔に魅入られるからだ。悪魔というのは、それを望む意志などによっておのずと近付いてくるものである、と言う風に俺はナッツから教えれた様だ。だからレッドみたいに簡単にその名前を口に出すな、と密かに注意されていたりする。
「……?いやでも、けど……なぁ?」
存在しないと言われる存在なのに、カオスが悪魔?こんなにバッチリ目の前に存在するのに悪魔って、どうやってソレだと区別するんだよお前は。
やっぱり悪魔臭いとか、匂い判断だってのか?
そんな俺の疑問を知ったようにアインは首を回す。
「……生物の匂いがしないの。ずっと彼は何だろうって密かに考えていたのよね。事情を考えるにそういう結論をあたしは出してみたわ。もし当たっているなら……多分、レッドも彼の正体には気が付いていたかもしれない」
「奴が?何で」
「魔導師は一番悪魔と縁を結びやすいのよ?知らない?ナッツが前に話していたじゃない」
むぅ?そうだっけ?リコレクトしたが俺はその辺りは上手く思い出さなかった。思い出すコマンドは万能ではない。知能レベルによっては上手く思い出せない=記憶に残せないというのは在る。
アインは炎の混じった溜め息を漏らした。
「とにかく、そう言う訳で彼は領主の願いを叶えなきゃいけない事になるんじゃない?領主の意志はどうでもいいの。彼にとって問題なのは多分、領主の望みのお陰で『こちら』に来れた、そしてその為に叶えなきゃいけない願いをさっさと成就したい。きっとそんな所よ」
悪魔ってのは、元来この世界に居るもんじゃないんだな。『トビラ』を潜ってコッチに来る。
コッチの世界に許されてる存在じゃない。立場は俺達と似て……ぶっちゃけて異世界の存在なのだ。
しかも連中は自力で『トビラ』を開けられない。必ずコッチの人間から開けてもらわないといけないんだとか。なもんであるからして、悪魔的に『トビラ』を開いた人間に対して願い事を叶えてやらなきゃいけない~的な契約を交わす事が多いらしい。
「じゃ、俺達はカオスから魔王討伐するだろうって、かなり見込まれてるって事か?ばっちり敗退したのにな」
「ナーイアストの石を持ってたのを評価してくれたんだと思うわ」
俺は思い出す。
その石を、魔王の城に挑む前にナッツに預けた事を。
てゆーかちょっと待て。その石はカオスには見せていないし、知らせていなかったはずではないのか?
「……そういや、石は?」
だが俺は、その疑問より先に大切な石の行方が気になって座り込んでいた所立ち上がった。
「あ、ヤト!」
「ナーッツ、水のクリ○タルどうしたよー?」
などと際どいセリフを吐きつつ俺は扉を開ける。するとその先はダイニングルームになっていて、すでに起きて新聞らしいものを読んでいたナッツは驚いて顔を上げた。
いつもなら軽く『朝はまず、おはようだろう?』とか説教される気がするのだが……いやまて、それはコッチのナッツと言うよりアッチのナッツだな。
それはともかく。
「……ついに来たか」
俺の第一声に対してナッツはやや苦い顔で何かを呟いた。俺にはその、言葉がよく聞き取れなかったので聞き直す。
「何?」
「いや、まず朝はおはよう、だろ」
俺はナッツの時間差攻撃にちょっとずっこける。
「ボケんなよ、わかるだろ、アレだよ。俺が預けた石。それは憶えてるだろ?」
「ああ……あれね。うん。…………ごめん、無くした」
ナッツはなぜか……しごくマジメな顔で答えたので……俺は、一瞬突っ込みを忘れて呆ける事となった。
な、無くした?無くした?
よりによって捨てるなんてとんでもない重要アイテムを……ナクシタ?
「嘘だろ?」
「いや、悪い。記憶に無くって僕も何時突っ込まれるかと冷や冷やしていたんだけど。言い訳したって仕方が無いし。素直にぶっちゃけるけど……ごめん、無くしてしまったんだ」
「大体、竜と人間てどうやって『やる』のかしら?」
「……っておい、」
遠慮ないなぁ彼女。俺はアインの意識が真っ先にお子様立ち入り禁止区域に突入したのに正直、赤面してしまう。そういうのは本来、俺が言うべき下セリフであるような気がするのだがどうよ?
「残念、あたし人間には戻れないし」
「コッチの世界だと竜種って別に、神聖動物でも何でもないしな。ただの種族だし……ん?戻れない?」
俺は遅れて反応する。
「戻れないって、何だ?」
「ああ……ほら、あたしはサイバー種だから。竜としては十歳だけど、与えられた知性は別だもの。元は人間だったみたいよ、覚えていない事だけど」
「覚えてないって、思い出せないって事か?ログが壊れてて……」
アインは長い首を横に揺らす。
「違うの、そういうのじゃなくて。サイバー種ってどういうものなのかヤトは知ってる?」
俺は素早くリコレクトしてみた。だが、適切な知識は降りてこない。知らないようだと首を振ってアインに説明を求めてみる。
「分かりやすく言えば転生術みたいなものなのよ。死んだら生き返れないでしょ?この世界ファンタジーだけどそればっかりは出来ないのよね。死は消滅だから……精々がんばって消滅を免れても死霊止まりでしょ?絶対に生物として『生き返る』事は出来ない。とすると、この理を覆そうとした人達っていうのは結構いるらしいのよね。ほんと、どこの世界でも居るものね~。で……その末に死んだ人の情報を生物に融合させて復活させるっていう、強引な方法が出来ちゃったみたいなのよ」
俺は田舎者だからな。そんな事が可能だとは知らなかった。
しかしそれでも転生術は生き返りではない。サイバー種に転生する事が死をまぬがれる方法であるなら、実際もっと有名であって死を免れる方法として、具体的な作法を探す奴らは多い様に思う。
それ位『死』というのは、命あって終わりある生物にとって興味深い現象だろうからな。
「でもこれが、色々とリスクのある問題だったりしてね。まぁ死んで消滅の所を強引に生かすっていうんだもの、当たり前よね。諸々の過程で結局の所色々なものが失われてしまうのよ。姿かたち、記憶、能力。受け皿にも問題があるわ。知性なんてものを融合させるには、融合する相手より勝っていないと呑まれてしまったり拒絶されてしまったりする。だから、サイバー種は魔種や動物のあまり知性の高くない種類が多いって訳。それから……あとは知性の育たない子供のうちに、とかね」
ほら、やっぱり。致命的な欠点がある。実際そんなもんだよな。都合のいい話ってのは大概大穴が開いてるもんだぜ。……この世界において、ドラゴンは特別な魔物ではない。ある意味特別視した歴史はあるけれど、ぶっちゃけて最強で強い訳でも無い。何か特殊な能力が備わる生物という訳でも無い。
強い魔物や便利な特性を持つ魔物なら他にもっと居る。
だが、数多くの種類や亜種などが存在する、このドラゴンという分類であるが……一つ決まった特徴があったりする。そして、その特徴こそがドラゴンを特別扱いした過去の歴史の理由だろうな。
竜種には寿命が無い。
というか、寿命で死ぬ竜は多分いない。いやもしかすると、あんまりにも長寿過ぎて寿命がいくつなのか誰も、ドラゴンさえ知らない状態なのかもしれない。
しかして本末転倒な事に、そもそもドラゴンの寿命が無いという事に拍車を掛けたのは、そんな不死生物の乱獲にあったりするのでは?
討ち取られて死ぬのだ、ドラゴンというのは。それまでは死なないと云われる、どこまでも生きる。お陰で長生きした竜は知性を持つ場合があると云うな。動物と違って魔種は変異が突発的だから、何かきっかけがあると容易く元在った規格を越える。
そうやって事態や環境に柔軟に対応できるのが魔種=魔物の最大特徴でもある訳だし。
よって、ウチのチビドラゴンがそのサイズに見合った年齢、即ち十歳前後であるのにしっかり言語を喋るのは世界設定的におかしい。そのおかしさを突破してしまう方法が、知能を他から獲得するサイバーという種族にあるって寸法だ。
キャラクターメイキングの時に、特別に強力に作れるように大量の経験値を与えられたというのに、アインはそれをこの希少な種族を選ぶ事に殆ど費やした。
面倒な理由。
そうだ……サイバーは本来、一度キャラクターをロストしなければ選ぶ事が出来ない種族なのである。
俺は、リコレクトじゃなくて普通に思い出した。ロストしたキャラクターの知性を、ある高い『ランク条件』を満たした場合にのみサイバーという『転生』が許されるのである。勿論だからと云ってこれが強力と云う訳ではない。死んだものは基本的には甦らないのだから、当然これにはかなりのリスクが付随する。
アインの言うように、知性の在る生物にはサイバー転生は出来ない。するとすれば子供を選ばないといけない。折角次のキャラクターに転生させても、子供から育成を始めなければいけないのだ。
俺の、一番最初にアインを見た時に発した『それ育成面倒だろう』という第一ツッコミはこれに由来するのだな。
「ヘンな仕組みよね。でもあたし、ドラゴンの前はどんな人だったのか何も覚えてないのよ?記憶を何一つ留める事が出来ないのに、どうしてサイバーなんて種族が成り立つのかしらね」
アインが少し悲しそうに呟いたのに、悪いんだが俺は素で突っ込みを入れさせてもらおう。
「って、お前がドラフェチだからそーいう設定を選んだんだろう?ドラゴンをやりたかったからお前はその、面倒な設定を選んだんだろうが。今更ドラゴン嫌だとか言うのか?それは自業自得だろ?」
「……そうなんだけど。ふぅ。やっぱり重いのよ、実際やってみるとあたしはただ単に好きでドラゴンを選んだ訳だけど、本当はそこに至るまでの積み重なりが在る」
ああ……そうか。テリーが公族出だったり、ナッツが元神の代理だったり、俺が天涯孤独だったり……そういう経験値の上昇による『背景の重さ』が、アインにとってはアンニュイなわけだな。
何も思い出せないのに、自分の存在を考えるだけで割とただ事じゃないんだ……と。そういう思考にたどりついてしまう。明言はしないが何か、憂鬱な理由でも思い出してしまったのかもしれない。
「……レッドやマツナギにも……やっぱり何か重い設定がぶら下がってるんだよな」
「……うん、多分ね。ヤトはどうなの?」
「俺は……」
苦笑しながら、俺は床に座り込んでいる所立ち上がった。
「良く分かんねぇな。重いのか軽いのか……」
「…………」
アインは首を回し、俺を見上げた。
「よかった」
小さく彼女が呟いた言葉を聞きとめる。
「……何がだ?」
「ううん……大した事じゃないの」
アインは大きな丸い目を細めて首を軽く振った。
「無事再会できて良かった……って」
「いやまて、まだ全員じゃないんだぞ?そこらへん分かってるよな」
アインは当然よ、とベッドの上に飛び乗った。
「マツナギとレッドがまだなんでしょ」
「そうだ、分かってるならいいけど、しかし……何でお前無事に合流出来たんだ?」
後に思い出す事だが、俺は現時点メージンから説明されたログ・CCの許可をまだ、誰からも貰ってないのだ。よって、エントランスで覗き見ていた事情は思い出せていないのである。
そこん所、見事にすっぱ抜けてる訳。
「みんなが探しに来てくれたの。あたし、森の中でフツーのドラゴンになってたみたい」
アインは小さな手の所まで首を下ろして頭を掻いた。手がちっさいから頭まで届かんのな。しかも構造上手を上に上げられんから、代わりに首を下ろすのな……。
だから、その仕草が可愛くてたまらんのだッ。
「鳥とかネズミとか追っ掛けてね、それを食べてたみたいなんだけど。おかしいのよ?あんなにカンタンに捕食できたのに今は全然、捕まえられないんだもん!」
……お前、それで庭の小鳥と追いかけっこしてたのかよ。
「何か、人間の食い物より小鳥バリバリ喰らった方が美味いとか」
味覚が違うというのは良くある話だ。案外虫は美味とか言い出すかもしれん。
「まさか、お刺身もいいけどおしょうゆは必須だわ。塩コショウが効いてる香草焼きの方が美味しいに決まってるじゃない!」
濃い味付けに舌が肥えちまっただけじゃねぇのかそれは。キャット又はドッグフードみたいな、ドラゴンフードとかいうカリカリでも売ってねぇもんか。あったらあったでこいつ絶対、こんなの食べ物じゃないとか拒否するに違いないけど。ドラゴンの癖に人間と同じもの喰うし。……サイズ的にお子様ランチで十分みたいだけど。
「森って……よくちっこいお前を見つけられたよな?」
「カオス君がそこらへん、取り計らってくれたのよ。探査魔法を使ったみたい」
「……それがまず理解できんなぁ、あいつはタトラメルツ領主の片腕だろう?どうして俺達の面倒見るような事してんだ?」
「ええと、それはね……うーんと……」
アインは小さな腕を組み、言葉を捜してしばらく唸った後に長い首を上げた。
「カオス君はね、協力者だから」
「そりゃ、領主が魔王討伐願ってるんだから、奴は領主に傅く以上は俺達に協力してくれるだろ?俺達の目的が『打倒魔王』なんだし」
アインはそうじゃないと首を軽く横に振った。その仕草が一々可愛いんだよお前!と、俺はテンションが上がってしまいそうだったので慌ててそっぽを向いてしまった。
「……あたしはさ、割と匂いで世界を認識できちゃう訳でしょ」
と、そんな俺の不穏な動作を見ていないようでアインは、小さな声で呟いた。
「……何?」
「目に見えない部分でさ、色々余計な事が分かってしまう事がある。ちょっとだけ認識してる世界が違うのね。でもね、確信が無いの。ただちょっとおかしいなと疑問を感じてしまうだけ。隠して隠されているのなら、それは第三者がむやみやたらに暴いてはいけない事じゃないかなって……そう思うとね。何とも言えなくなっちゃうの」
例えば、北方シーミリオン国の女王の事情。
アインは最初から、彼女らが醸し出す矛盾の理由を察知していたのだろう。だがあえて、それを誰にも語らずにいた。放置して場を混乱させたかった訳ではない。
アインは今言った様な気配りで口を閉ざしてしまったのだ。
黙って傍観して、鼻の下を伸ばしている俺をニヤニヤ見ていたかった、それだけじゃぁなかったのだ。
……いや、そいう悪意も働いている様な気もするが。
「……カオスは、あれは何だってんだよ。アレか?まさかまた女だとか言うなよな?」
アインは匂いでオスメス分からしい。だがそのネタはもういい、勘弁してくれ。ユーステルの件で散々打ちのめされてますから。
「秘密って守れる方?」
「多分」
「えー、多分?」
アインが半目になって首を引いた。
「話すつもりが無いならそもそも話しを振るなよな、」
「しかたないなぁ……でも絶対、本人には言わないでね」
「ナッツにはいいのか?」
早速ナッツには相談する気満々な俺ですが。アインが益々怪しい目でそんな俺を非難がましく見る。
あ、はい……秘密守る気無いのかって視線デスカ。
「だって、俺やお前が抱えていてもどうしようもない問題だろ?そういう所はちゃんと軍師に説明すべきだ」
「う、結構それって正論」
アインは怯んで翼で身を隠す。そして唐突に彼女は言った。
「……カオス君はね、人間じゃないわよ」
「じゃぁ魔物か?」
「あ、間違った。生物じゃないわよ」
「……」
生物じゃないって何だ。
何か?アレか?あとは……アンドロイドだとか言うんじゃあるまいな?
「具体的にはじゃぁ、何だよ」
「……領主さんは魔王討伐を『渇望』したの。カオス君はそれを叶える存在なのよ」
「……ああ、」
その言い回しでピンと来た。リコレクトする。ソイツの話はレッドから聞いていた筈だ。
カオスは、『悪魔』だって言いたいのか。
それは本来、言葉にしてはいけない事だと俺も後に『教えられた』。
アインはそれを守ってその言葉を避けたんだな。レッドあたりは堂々とその単語を言い放つが、信神深い連中はやはり言葉に出すのを躊躇う。
それが誰かといえば、天使教の連中だな。ナッツとテリーだ。悪魔の話が出たのは確か、大陸座ナーイアストと話をした時だったな。レッドが突然話し出したんだ。
一方通行の『トビラ』を潜ってくるもの、それは元来この世界において『悪魔』を意味する、とか何とか。
そんな世界であるのに、なぜ高松さん達開発者はこの世界を構築するプログラムソフトの事を『トビラ』と名づけたのであろう?とか。奴だけ拘ったっけな。
まぁ悪魔って言ってもアッチの世界では空想や比喩の産物だし、コッチみたいな仮想世界においては定義がまちまちになる訳だが。
悪魔ってのは……コッチの世界においても居ないとされる存在。言葉にしてはいけないと云うのは、認識してはいけないと云う意味に近い。何故なら、認識すると悪魔に魅入られるからだ。悪魔というのは、それを望む意志などによっておのずと近付いてくるものである、と言う風に俺はナッツから教えれた様だ。だからレッドみたいに簡単にその名前を口に出すな、と密かに注意されていたりする。
「……?いやでも、けど……なぁ?」
存在しないと言われる存在なのに、カオスが悪魔?こんなにバッチリ目の前に存在するのに悪魔って、どうやってソレだと区別するんだよお前は。
やっぱり悪魔臭いとか、匂い判断だってのか?
そんな俺の疑問を知ったようにアインは首を回す。
「……生物の匂いがしないの。ずっと彼は何だろうって密かに考えていたのよね。事情を考えるにそういう結論をあたしは出してみたわ。もし当たっているなら……多分、レッドも彼の正体には気が付いていたかもしれない」
「奴が?何で」
「魔導師は一番悪魔と縁を結びやすいのよ?知らない?ナッツが前に話していたじゃない」
むぅ?そうだっけ?リコレクトしたが俺はその辺りは上手く思い出さなかった。思い出すコマンドは万能ではない。知能レベルによっては上手く思い出せない=記憶に残せないというのは在る。
アインは炎の混じった溜め息を漏らした。
「とにかく、そう言う訳で彼は領主の願いを叶えなきゃいけない事になるんじゃない?領主の意志はどうでもいいの。彼にとって問題なのは多分、領主の望みのお陰で『こちら』に来れた、そしてその為に叶えなきゃいけない願いをさっさと成就したい。きっとそんな所よ」
悪魔ってのは、元来この世界に居るもんじゃないんだな。『トビラ』を潜ってコッチに来る。
コッチの世界に許されてる存在じゃない。立場は俺達と似て……ぶっちゃけて異世界の存在なのだ。
しかも連中は自力で『トビラ』を開けられない。必ずコッチの人間から開けてもらわないといけないんだとか。なもんであるからして、悪魔的に『トビラ』を開いた人間に対して願い事を叶えてやらなきゃいけない~的な契約を交わす事が多いらしい。
「じゃ、俺達はカオスから魔王討伐するだろうって、かなり見込まれてるって事か?ばっちり敗退したのにな」
「ナーイアストの石を持ってたのを評価してくれたんだと思うわ」
俺は思い出す。
その石を、魔王の城に挑む前にナッツに預けた事を。
てゆーかちょっと待て。その石はカオスには見せていないし、知らせていなかったはずではないのか?
「……そういや、石は?」
だが俺は、その疑問より先に大切な石の行方が気になって座り込んでいた所立ち上がった。
「あ、ヤト!」
「ナーッツ、水のクリ○タルどうしたよー?」
などと際どいセリフを吐きつつ俺は扉を開ける。するとその先はダイニングルームになっていて、すでに起きて新聞らしいものを読んでいたナッツは驚いて顔を上げた。
いつもなら軽く『朝はまず、おはようだろう?』とか説教される気がするのだが……いやまて、それはコッチのナッツと言うよりアッチのナッツだな。
それはともかく。
「……ついに来たか」
俺の第一声に対してナッツはやや苦い顔で何かを呟いた。俺にはその、言葉がよく聞き取れなかったので聞き直す。
「何?」
「いや、まず朝はおはよう、だろ」
俺はナッツの時間差攻撃にちょっとずっこける。
「ボケんなよ、わかるだろ、アレだよ。俺が預けた石。それは憶えてるだろ?」
「ああ……あれね。うん。…………ごめん、無くした」
ナッツはなぜか……しごくマジメな顔で答えたので……俺は、一瞬突っ込みを忘れて呆ける事となった。
な、無くした?無くした?
よりによって捨てるなんてとんでもない重要アイテムを……ナクシタ?
「嘘だろ?」
「いや、悪い。記憶に無くって僕も何時突っ込まれるかと冷や冷やしていたんだけど。言い訳したって仕方が無いし。素直にぶっちゃけるけど……ごめん、無くしてしまったんだ」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる