ドランリープ

RHone

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1章 D Dream of Tail

-2- 『雨を降らせる龍と集い』

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 雨は、激しく川となって道を流れていく。
「ひでぇなぁ!」
 言葉とは裏腹に、大雨にはしゃぐ声に私は少し笑っていた。
 彼の明るい声に不安が、ちょっとだけ吹き飛んだんだ。
 大きな岩が出っ張って、丁度雨宿りできる様な空間に走り込みながらその青年は更に雨空に向けて喚いている。
「最悪だな!最初っからこうだとやる気も失せてくるぜ!」
 青白い閃光が青年の言葉を批判するみたいにひらめいた。遅れて届く轟音。
 先にこの岩影を見つけて雨宿りをしていた私は、その衝撃に思わず肩を震わせてしまっていた。
 雨に、慣れていない。
 私の住んでいた所は何時も大地が乾いていた。稀に雨が来る時はこうやって、偉大なる天神が使いを寄越す。
 雷は神聖なものだ、神様だと教えられて私は育った。
 そしてその神様は確実に存在する脅威とは違い『見えない』ものであるから畏怖すべきものだとも。
 乾いた大地に雨が降る時、下る神に向けて……姿を見せてはならない。
 遠い大陸の隅に追いやられ、忘れ去られた部族の古い習慣に忠実に……縛られ。
 私は、雷がちょっとだけ苦手と心得ている。

 古い因習が錯覚と呪いは解けても、幼少の頃に染みついた恐れはなかなか落ちない物なのかもしれない。
 この国は神様が『落ちすぎ』だと思う。
 雨も多い、それを古い因習にならい羨ましがるべきなのか、それともそうやって八百万神(やをよろずかみ)を奉るにあたり信仰が拡散し、自由化して混沌と化している事を卑しむべきなのか。
 もっと大きな民族的に植え付けられた感情が、心の何処かで私に、この小さな『神の多すぎる』国に向けて軽蔑するように囁いている。
 そんな、割とどうでも良い事を思う間も青年は鼻を鳴らす様に笑って、遠くで喉を鳴らす天に悪態をつくのを止めない。
 この人は……雷は怖くないんだね。
 ちなみに、彼は明らかに『この国』の人では無い、だから私とは違う、育った文化が違うと言う事。
「最高の出発式だぜ!雷龍さんよ!」
 まるで彼の声を聞き付けた様に一層雨は激しく地を叩く、その状況に、雨宿りしている私以外の人達の視線が青年に注がれている。視線を感じてか、彼はふいと後ろを振り返り見て……少し非難めいた視線と察したように苦笑いをして濡れた頭を掻いた。
 人なつっこそうな青年だ、短く刈り込んだダークブロンドに、鳶色の瞳。額に締めている群青色の帯が水を含んで重たそう。
 私は、この大雨に居合わせた一同を振り返ってみる事にする。

 私のすぐ隣にいるのは熟練のD3Sなのだろうなと思わせる屈強な体躯の男性。実は白髪交じりなのがそうとすぐには判別付かない、綺麗な、色素の薄い髪短く刈り混んでいる。暗視スコープを鼻の下に少しずらし、薄目を開けて青年を睨め付けている。
 その奥にいて濡れた髪をしきりにタオルで拭っているのは……美しいプロポーションを持つ女性。脱色した長い頭髪はやや乱暴に編み込まれていてる。美人だ、化粧も無く髪の毛の手入れも行き届いている気配はないけれど……そんな事は気にもならない、野性味を帯びていて尚光る美しさを持っていると思う。
 そして一番奥には華奢な研究者風の男性。装備が私達とはちょっと違うからそんな雰囲気を受けるんだと思う。明らかに私とは人種が違うと分る、彫りの深い繊細な顔立ちと少し暗く濁ったプラチナブロンドに青い瞳。アジア大陸人の私から見て、余りにも異なる風貌であるから無条件に綺麗な人に感じる。実際、北欧人から見ればどうなのだろう?少し分厚い、横に細長い遠視用眼鏡を鼻の上に引っ掛けていて、それについている水滴はすっかり乾いていた。

 私は……みんなから見てどのように思われているだろう?
 突然大雨に降られ、ここに私が転がり込んだのは10分程前の事。この丁度良い横穴には3人の先客が居た。
 お仲間(チーム)ですかと聞いた所、偶々居合わせたという短い会話をしたっきりだ。
 そして今、青年がやっぱり雨に濡れた体で転がり込んできた。
 それぞれ単独行動なのにこうやって鉢合わせたのは……ディックが提供した任務内容が同じだからだろう。与えられた情報や地図などが同じだからだ。
 こういう事は私達の仕事のシステムの都合、良くある事。そうだとは知っているけれど……私は実際にそうなったのは初めてだ。

 何しろ、私はこれが初めての単独で行う探索調査になるのだから。

 こうやって鉢合わせたらどうするか、ディックから指導されたマニュアルがある。だから私達はこの出会いを基本的には、驚かない。
 私を含めここに居る5人、間違いなく接点は無い。今、ここで初めて『会った』
 でもあらかじめ一つ共通している所がある。
 私も含め、みんな似たような色のジャケットにズボンを着ている事。それぞれ服の形や形状は微妙に違うけれど、襟首に同じ紋章を宿すボタンを付けている事。
 そうと分るようにデザインコンセプトが同じなんだ。紫色に警戒色の黄色を入れたデザインが……ディック公務員、D3Sである証拠。
 私達は全員D3Sだ。
 国際機関ディックによって『魔物の観察研究保護活動』を行う公務員、D3S。
 私はその……卵、かな。
 去年ようやく正式免許を取ったばかりの駆け出しだ。


「相手が雷龍だと思うなら、そんなに悪く言わない方がいいですよ」
 一番奥にいる華奢な男が明らかな嘲笑を含んだ口を開いたのに顔を上げる。
「立場の高い者にはなるだけ媚びを売っておくものです」
 青年はバカにされている事に気付いて少しムッとしている。
 何か言い返そうとしたけれど、それを止める様に強固なバトルスーツに包む女性が場を納めるように強めの口調で言う。
「少し黙っててくれないかしら?只でさえ雨音がうるさいのに」
 それから、しばらくは誰も口を開かなかった。

 雨音は、この険しい山道を登って来た疲れを浮き彫りにする。
 どういう経歴であれ、ここに居合わせている以上全員が原生林と、険しい山道を経由して来たのは違いない。
 あたしもそうだ、確かに……とても疲れている。

 雨の滴る音は、今は少し休む様にと眠りの歌を歌っている。

 雨宿りに鉢合わせた私達は、その歌に逆らう事なく軽い仮眠と取る事にした。幸い、この辺りに危険な魔物や動物とエンカウントする可能性は15%、極めて低い。
 こんな手付かずの原生林なら、その危険性が30%を切る事自体珍しいのだけれどね。
 簡易の魔除けを一番奥に居る学者風の男がこの横穴に施してくれているので、低い可能性を除いても安心して一休み出来る。

 その瞬間に垣間見る、意味のない夢の間をしばらくさ迷いそれらは遠のく雨音とともにどこかへと消えていく。

 気が付けばしっかりと30分、意識を夢に飛ばし私は眠ていたみたいだ。それを時計で確認する。
 青年を除く3人はすでに目を覚まして出発の準備を始めている。
 私は岩陰から外を伺った。
 雨はまだ降っていたが大分小降りになってきている。森の合間から見える空も明るくなっていて……見通せる限り大きな雨雲の気配はなかった。
 最後にたどり着いた青年が仮眠から醒めたのはそれから間もなくして。私も出発の準備に取り掛かる。それぞれ濡れたタオルを畳んだり、軽い軽食を取ったりしはじめる。

「しかし、奇遇ですねぇ」
 先の、一番奥に座っている華奢な男が、まとめ終えた荷物を軽くはたいて突然口を開いた。
「こういうのを運命と言うんでしょうか」
 この中では間違いなく一番の年長者だろう私の隣の男性が、静かに暗視スコープらしいグラスを掛け直しながら華奢な推定学者さんの方に振り返って答えた。
「いずれこうなっていたさ」
「そうね、ここまで来て目的が違う人なんてこの中にいるかしら?」
 女性が、微笑して一同を見回す。それと一瞬目があって私はちょっとドキドキした。
 彼女は余裕で微笑んで目を瞬いてみせる。
 それで思わず……私はちょっと高ぶって口を開いていた。
「龍が、全てを寄り合わせたんだ」
 声に4人は一斉にこちらを振り返るのが分る。
 私は、やっぱりドキドキして中途半端に開いていた口を思わず閉じてしまった。
 それでも……知りたいという興味が勝って私は尋ねている。
「龍を追って皆、ここに来たんだよね?」
 なぜか簡単には同意を得られず、4人は少し警戒した雰囲気を見せる。
 警戒する理由はなんとなく、私にも分る。
 みんなここに単独で来た。
 チームではなく、個人の都合で来たと言う事は……

 恐らく、事情は私と似たり寄ったりなのだろう。

 私は瞳を伏せて、それから雨の様子を伺う様に空を、岩棚越しに仰ぎ見る。
 そうしながら相手の警戒を解こうと務める事にした。
「私はユーステル・アルスレイ。龍を追ってる」 
 年長の男性は少し顔を上げ、特別製のグラスを外す事なく静かに、落ち着いた口調で私に応じてくれた。
「クオレ・ラスハルト、独ディック所属、個人の都合で龍探索任務を請け負った」
 華奢な学者さん風の男は微かに鼻で溜め息を付く。
「クオレ……ラスハルトですか。セカンドネームがいいですね」
 その言葉にクオレと名乗った年長の男が少し、顎を引いている。その様子に笑いかけるようにしながら華奢な男は言葉を続けた。
「私の名前はラーン・インテラール。英ディックに所属してはいますが、D3S業は副業ですね。本職は一応生物学者です」
 ああやっぱり、思わず納得して私は小さく頷いてしまう。
 すると、その視線の端でこの流れには逆らえないわ、というように女性は肩を竦めながら口を開く。
「アズサ・カトリよ。日ディック所属、フリースタイルレベル6。龍探しは今日が初めて」
 状況を遅れて把握したようだ、青年は狭い岩棚の中で立ち上がって、屈めた頭を掻きながら自己紹介する。
「俺はディザー・イグズスツイン、最近ようやくディック公務員試験に受かってさぁ、まだまだひよっこだけど…よろしく!」
「何がよろしくなの?」
 改めて良くみると女性、アズサは本当に美女って言って間違いないかもしれない。私から見ても……すごい、美人だ。その美女に一睨みされ素っ気無く返され、青年ディザーは頭を掻くのをやめて当てが外れたか?というように苦笑を洩らす。
「あれ、なに?これからみんなで一緒にいくんだろ?どうせ行く所一緒なんだし」
 そう、ディックのマニュアルにはそうするようにと推奨されている。
 私も当然そうなるかな、と思っていたんだけど……。
「……なるほど、寄り合わせられました……か」
 華奢な学者さん、ラーンも苦笑している。ふっと私に視線を移して来た。華奢で、よくこんな所まで来たなと思える風貌の彼から見つめられるのにもなんだかドキドキする。……私、ちょっと人見知りな所があるんだ。
「雷雨によってここに私達は運命的にここに集った?これを龍の因果と感じるという訳ですか?」
 私は、その問いに少し笑って答えていた。
「わからない。でも、昔から私の国では雨を降らせるのは神様……龍の神様なんです」
 地方の閉鎖的な因習だし、笑われるかな?そう思ったけれど。
 なるほどと、ラーンは一応の同意をしてくれた。少し苦笑を零していたけれど、ディザーに向けて軽蔑のそれとは違う気がする。
 彼はそのまま見たところ熟練したD3Sだろうクオレや、レベル6と自称する上級D3Sである事は間違いない美女アズサに向き直った。
「どうです、ディザー君の提案は」
「いいんじゃ無いのか?」
 カロリーの高いスティックチョコを一袋開けて、一同に差し出しながらクオレは無感情に答えている。私は遠慮無くそれを貰うことにした。続き……予想に反し、何のためらいも無くアズサも手を伸ばし、それを口に運びながら言う。
 普通のチョコじゃない。緊急時のエネルギー補給用だ。一般人がこんなものをおやつに食べていたらあっという間に太るだろう代物。なので、美しいプロモーションを持つアズサがこういうものを食べるという想像が付かなくて私はちょっと驚いてしまった。
「私も別に構わないわよ。洞窟探査は一人では危険だわ。そろそろ誰か共同作業が入れる人を見つけないといけない、と思っていた所だし。……ここで5人もそろっておいてパーティー組まない方が素人でしょ」
「じゃ、なんで素直にそう言わないんだよ」
 ディザーが口を尖らせたのにアズサは悪戯っぽく笑う。
「ちょっとからかってやったのよ、」
 この場合あたし達があんた達ひよっ子のお守りをするハメになるのよ?と、同意を引き出すようにクオレを伺っている。クオレは……無視してるかな。
 ディザーが何か言い返そうとした時、
「そうですね。私も醜い人間にはなりたくありませんし」
 ラーンは普通に微笑みながら突然口を挟んできた。その意味がよく分からずに私は彼に振り返る。
「下らない争いは最後にとっておきましょうか」
「そりゃ、どういう意味だよ」
 同じく意図を掴み損ねたのだろう、ディザーの少し苛立った声にラーンは落ち着いて、というように手で彼を制する。
 そして、少し目を伏せて顎で、岩棚の奥を示す。
 クオレが無言で小さなライトを取り出してラーンに差し出した。確かに、ここからだと暗がりがあるばかりでよく見えない。
 ラーンは素直にうなずいてライトを受け取って、闇となっている奥の穴を光で照らしてくれた。
「!」
 すると白いものがくっきりと浮かび上がる。
 ラーンは全く恐れた様子も無くそれらの一つに手を伸ばし、私達によく見える様に差し出してくれる。
 私は、一瞬驚いて岩に背を押しやり仰け反ってしまっていていた。
 でも……思っていたより恐ろしくない……かも。

 骨になってしまうと、なんだか現実味が無いのね。

 小さな頭蓋骨がラーンの手の上で、暗い眼光を放っているような気もするも……錯覚だ。
 でもそこで死んだ人がいるという事実が何だか、やけに遠く感じられてしまう。
 何人かの白骨死体が折り重なっている。
 暫くしてやっぱりいたたまれなく目を逸らしてしまった。するとその先に、ディザーは少し強がって笑っている横顔がある。
「これを哀れだと思っていただけるのなら、私はあなた方と同行する事にします」
「哀れなんてもんじゃないわね」
 ラーンの言葉に嫌悪感を抱いた様に、アズサは言葉を吐き捨てた。怒っている……のだと思う。
 クオレはグラス越しにもはっきりと分かる険しさを表情に浮かべて小さくつぶやいたのが聞える。
「哀れ……というよりも、愚かだ」

 D3S達の愚かな成れの果て……?。
 私達の共通特徴であるディックの装備もずたずたになって散らばっている。
 探索の果て、行方の知れなくなったD3Sは山の数といる。
 そういう、行方不明となった同胞を捜す事もD3Sの仕事だ。

 なぜ、この白骨死体をみんなが『愚か』だと言うのか、その理由を私は知っている。ディザーも分っているのだと思う。
 最近、ちょっと多くなったんだ。当然ご法度なのに、こうやって身内同士で争う行為が。

 こんな愚かな屍をD3Sが築くようになったのは……。
 みんな、無言でラーンが差し出す頭蓋骨を見ていた。
 ……同じ事を考えているのかもしれない。

 龍だ、『竜動』と呼ばれるものに世界が飲み込まれた時から何かが狂いだした。
 D3Sが龍を追い始めてから……こういう『愚か』な死体が増えているのは有名な事だった。
 なぜだろう、今までも無いわけではなかったのに。龍が絡むと余計な血が流れる。

 そうしてまてでも真実を手に入れたいんだよね。
 私も同じ、愚かにも大きな夢のに挑みこうやってここにいる。私だけじゃない。
 ここにいる5人全員がそうなんだ。
 だから、自分に言い聞かせるようにそんな事を言うのだと思う。

 けれど、少なくとも事実にたどり着く前にこんな終わり方をしたいとは思わない。

 彼らはここで『殺された』たのは明らかだった。
 だって、ラーンが差し出す頭蓋骨には明らかに、事故とは思えない大きな陥没骨折の後がある。後頭部、他二つある頭蓋骨も全く同じ。

 ふっと視線を移すと、クオレはグラスの中できつく目を閉じていた。それからすぐに自分が座っていた大きな石を転がし始める。意図をさとったラーンは手に取った頭蓋骨を奥へと戻した。
 クオレが岩棚の奥を岩で隠しながら言う。
「番号は控えたか」
「ええ、」
 ラーンの言う長い番号を、私達は共通して持っている特別なノートに書き記した。すごいな学者さん、こんな長い番号あっさり憶えちゃうなんて。
 これはD3Sの登録番号、これを本部へ持ち帰れば白骨死体が誰の者なのかはすぐにも分かる。私達で彼らを回収し、弔う必要はないんだ。回収業務を請け負うD3Sが彼らの調査をより丁寧に行ってくれるだろう。
 クオレとラーンはこういうの、慣れているみたいだ。
 私はそうじゃない、だってこういう探索業務事態が今回が初めてだもの。調査中に死者を出した、あるいは死者を見つけた報告書欄にD3S番号を記入したのは……初めて。
 ディザーも慣れていないようだ。
 一人、クオレ達の足を引っ張る事にはならないかもしれない、と言う事にちょっとだけ安心してしまった。
「まだ電波圏内だろ、報告だけ先に上げないのか?」
 ディザーの問いかけに私は、それもそうだと思った。と同時に……それが何を意味するのかも分かって目を伏せる。
「異常不明者がここで出た、となれば、状況は分かるだろう?ディックの調査が本格的に入るのはもちろんの事、何かあったとD3Sが殺到するぞ」
 その意味を理解したようでディザーは、一同を順繰り見廻してから言った。
「俺はそれでも構わないと思ったけど、それじゃぁ困るって事か」
「出来れば、静かに調査をしたいですねぇ。のんびりとね」
 ラーンが微笑んで言った言葉にクオレが続ける。
「競合は悪い事ではないが、その結果が奥の白骨死体という状況だぞ」
「うっ」
 そう、そういう事だ。私はここの調査を選んでしまった事を少し後悔し、同時に何かあったのだという事も察して期待も、していた。
「我々はこうならずに帰還を果たさなければならない、彼らの死を看取るためにもな」
 クオレの言葉に私達は無言で頷いていた。
 そうこうしている間に雨は、いつの間にか止んでいる。

「それでは行こうか。目的の洞窟は……もうすぐ近くだ」
 クオレの言葉に、ディザーは頷いて荷物を背負い、外に出る。私はそれに続いた。


 まだ湿った空気が淀み、景色にはは靄が掛かっている。雨はこれで終わりではなく、今少し晴れ間があるだけでもう一雨来そうな気配。
 うっそうとした森が続くけれど、気候的には山の中と同じ。天気は激しく移り変わる。
「ディザー、先頭を歩けるか」
「了解、任せてくれ」
 クオレが司令塔になる事は自然と決まっていた。
 私は明らかに初心者の部類だから、チームを組んだ以上は年長者である彼らの指示には従う必要があるだろう。
「俺は後を歩く」
「お任せしましょう、」
 アズサとラーンがクオレに従う気配を見せている、ならばそれに習うのが状況判断として正しいだろう。
 ディザーのすぐ次にはアズサが、行くと軽く手を上げた。
「私はこの子らのバックアップね。ユーステル」
 アズサから名前を呼ばれて私は顔を上げる。
「私の後に続いて」
 先ほどディザーをからかっていた割に、アズサの言葉にはバックアップを嫌がっている気配は無い。
 不思議な女性だ……文化の違いかしら、私には彼女の意図が良く分からない。
 私は無言で頷いて共通の目的地へ向け、歩き出したディザーの後に続くアズサを追いかけた。
 そして今気が付く、彼女は大きな両手剣を背負っていた。
 ……ちょっとびっくりして、彼女がこの武器で戦う様子を想像してため息を漏らしてしまった。

 振り返ると、クオレも巨大な剣を背負っている。……しかも、私の記憶違いでなければ極めて『上等』な武器だ。
 顔を前に向けて怪訝な顔でアズサの背中を眺める。

 彼女は、それに向けては何も言っていない。だけど私の記憶が正しければクオレの背負う武器は『水晶の剣』。
 フリーランクオーバーと呼ばれる一流スレイヤーに送られるものだったはず。
 ああ、だからアズサとラーンは無言でクオレに従ったという事なのかな?
 それにしても彼らは……これで、何と戦うつもりなのかしら?

 武装なんてさほどしてこなかった、というより……セーバー寄りの技能しか持たない私にはスレイヤー装備など出来ないから、更に大きなため息を漏らしてしまった。
 ここ、大した魔物は出ないって聞いたから軽装出来てしまったけれどもしかして失敗だったかな?

「どうしたの?まだ疲れてる?」
 アズサからため息を聞かれて心配されてしまったみたい。
「あ、いえ……なんでもないです」
 私は気遣いを笑って誤魔化す。
 私達は……それぞれの思惑を胸にドラゴンを目指す。

 私は……探しに来た。でも、他はどうなのだろう。
 ただ姿を拝みたい、そんな雰囲気ではないような気がして私は灰色の曇天を森の木々の隙間から仰ぎ見ていた。


 長い長い人類の歴史の中でそれは何度となく、あらゆる地域で、様々な表現によって予言されてきたと言います。
 時に王として、世界として。また時には神として、逆に悪魔として。
 過去を連綿と背負い、未来を鼓舞する。
 力を差し示し、誉れ湛える。

 今世紀『それ』は再び、予言者の言葉によって目を覚まそうとしている。
 幾度と無く繰り返されてきた事を人々は、予言によって思い出すのかもしれない。
 この時を待っていたとばかりに、長年『それ』を研究してきた者達が我が心の神を説くように熱弁を振るえば、この声に耳を傾ける者が多い事を知り、騒ぎ立てる者も出てくる。
 人々の思いは熱くうねる、そして多くの人々がその夢をともにしようとその名を呼びました。

 地域、社会、文化によって多少の言語による発音は異なる。
 けれど、そんな事は些細なこと。
 空に架かった虹を見て、それをどのように表現するか、言語で伝える限り必ずしも一致した発音にはならないのと同じかな。
 絵に描くもまた同じ。
 限りなく同じに表現されるが重ね合わせたようにぴたりとは一致しない。
 現物を写真や映像に直接捉えることが出来ていないからこそ『それ』は、多くが自由に語り、夢見る事が許されているんだと思う。

 ドラゴン。
 あるいは、リュウ。

 その名を呼べば、大凡の世界でそれが『何』であるのか通用するようになる事を人は、ある日唐突に『思い出す』のだと言う。


 世界には稀獣と呼ばれる規格外『モンスター』が跋扈している。
 そんなものは居ない、とした時代や国、文化もあるけれど、現代ではそうやって否定する事の方がマイナーになってしまった。
 ディックと呼ばれる機関が大きくなり、その存在を暴いてしまったからだ、とも言われている。
 『モンスター』と総称される規格外の多くは実在が認められているけれど、古くから存在が仄めかされている『モンスター』の中には、正確な意味で幻獣……すなわち実在が証明されてないものも少なからず居る。
 一般人には知られていない、極限られた地域でしか認識されていないモンスターというものがこれの多くを占めている。
 私の故郷の『神』として崇められていた雨降らしの龍もそういうのの一つだ。でも、属性的に存在しないと実証されないのは仕方がない事かもしれない。
 全世界で存在が予言されていながら未だに実在が認められていないモンスターが居る。

 それが『龍』……ドラゴン。

 人類の歴史を紐解ける限り、遡って行く限り必ずと言っていい程『龍』あるいはドラゴンと思われる謎の怪物の存在が予言されているそうです。
 そして、時代によっては予言されていながらなかなか実在の確証を与える事が出来ずにいる、この幻の魔物を探索した歴史も見受けられる。
 昔から、龍の探索は人類の一つの目標だったのだろう。
 ドラゴンを探す歴史は何度と無く、あらゆる地域で繰返されているそうです。
 ドラゴンは居るはずだ、そうやって私の故郷のように幻影だけのままで奉る地域も少なくない。

 『龍』と呼ばれる魔物を探索する全ては、今ディックの傘下にある権威ある研究所の定めによって『竜動』(あるいは龍動:ドラゴン・ムーブメンツ)と呼ばれている。
 研究によれば、この動きは繰り返すごとに大きくなって規模と発動重複地域が重なり、巨大化しているらしい。
 研究者達はこのリズムを解明し、21世紀の始まりと共に再び『竜動』が活発化する事を予言していたと主張している。
 初めはもちろん、実在しない魔物の『動き』などカルティックだと誰もが相手にしなかったみたい。けれど世界終末論が囁かれるようになり、21世紀が着実に近づくにつれて予言通りに『龍動』は僅かな胎動を始める事となった。
 世紀末の次に扱うネタを探していたマスメディアが『竜動』に目を付けたんだ。
 かくして、予言者の告げた終末が過ぎ去りて何事もなく、21世紀が訪れる事となった。すでに21世紀である現代にしてみれば周知の事実だね。それで、世紀末論争に明け暮れていた者達は、次に噂する共通の話題を欲しがっていたのだと、メディアは僅かな過去を振り返る。
 そこに見いだされたのが『竜動』の予言であり、偶然と新世紀に余命を終えようとしている現代の予言者『ドゥセルク』の不可解な夢見の噂だった。 

 ドゥセルクは魔物の保護研究、調整討伐まで全てを行う国際組織ディックに所属する歴としたウィザードの一人、だった。あまり表に出てこない事で有名な魔法使いの中では、その取り扱う魔法の種類の都合一番有名な魔法使いと言っても良いのかもしれない。
 『20世紀の予言者』と呼ばれた人物で、その呼び名の通り予知能力に長けた人物だったそうだ。
 20世紀末には肺癌を患いもはや予言を出来る状況ではなかった為、世紀末論争の間、彼の事を気にする者は殆ど居なかった。なぜなら、ドゥセルクは過去の予言者の殆どをすでに否定していたから。
 しかし、過去の予言書に記載された契機には何も起きないと言う事を証明したとして、静かに息を引き取ろうとしている彼に話題を差し向けた人がいた。
 彼の親族達が控えてくれと嘆願するも構わず、インタヴュアした不届きな者が現れたのだ。
 ドゥセルクは既に病床で、癌の転移が各所に見られ余命もいくばか、意識も混濁したままという状況だったそうだ。それは、残存する映像からも確実に分かる事だ。にもかかわらず、ゲリラ的にも彼の病床に押し入り、カメラを廻しマイクを向けた勇者、あるいは愚か者によって……彼の『呪い』は世界に放たれてしまったと言われている。

 『竜動』は、致命的な覚醒を始めたと言える。
 『竜動』をよく思わない者達だって居る。彼らによって、死に際にドゥセルクが残した『予言』は『竜の呪い』と呼ばれている。
 ……私も、それは『呪い』だと思った。
 直感的な事だから別に当てになる事ではないのだけれど。

 未だに映像になってどこかしこに残ってる。一旦ウェブに乗ってしまった情報を完全に消去する事は難しい。

 人々は追いかけ始めた。
もう誰も彼らが走り出すのを止める事が出来ない。
 この世界に唯一存在しない、謎の魔物種『龍』を追いかける『竜動』はまだ始まったばかり。予言が正しければこの狂乱はまだまだ続く事になりそうだ。
 経済、メディア、産業、政治、全てを巻き込み、そのうねりそのものが『龍』であるように人々の意識を一つにする。
 世界各国のテレビ局やウェブニュースもちろん、学者、宗教家、実業家、果ては政治家までもが『龍』を問い、真実を明かそうとしている。人々の関心が龍に向いているからだ。
 各国の政治家が動きだした時点で、一つの巨大な流れは、国連下にあって等しくも強い権限を持つ公務職魔物専門取締省、通称DSC(ディスクあるいはディック:デモンSコミッション)をも動かしてしまう事になった。
 ようするに魔物が絡む現象全てに関し、各国の政治経済にも強い影響力を持つディックでさえドラゴンの管理は出来なかったという事かもしれない。
 その前にまずドラゴンなんて魔物はディックで『魔物』であることすら認証していない。未確認幻想生物の管理はディックの仕事ではないのに。
 だというのに、現在ディックはドラゴンの調査にゴーサインを出してしまっている。『竜動』の凄まじさには多くの一部国の管理機関が匙を投げ、徹底的な解決でもって鎮圧を望みその圧力が掛けられた結果みたいだ。
 ディックが『ドラゴンなんて居ない』などと匙を投げるから、法に定まらない方法で民間人が龍探索だとこじつけて危険な行為や、危険な魔物の生息地に調査に出かけるなどの問題が起きていたんだと責められたみたい。
 ドラゴンの定義があやふやらだから、あれもこれもドラゴンだといい加減な商売を始める輩も後を絶たない。
 果てはD3Sが民間や企業に高額で雇われてドラゴン探査を始めているという、ディックにおいても頭の痛い問題が折り重なったという。
 お前達の機関がドラゴンをしっかり調査しないからだと言われて、ディックも否定否定は出来なかったのだろう事は分るけれど……ディックの判断は火に油を注ぐような事だったと思う。

 だって、この私にさえ火を付けたんだよ。

 ディックは、闇の中を跳梁跋扈している魔物という存在を全面的に管理する組織の事。
 昔はただ神話に語られるばかりだった魔物種も、物質飽和と環境の変化からか次第に生態をあらわにし、多く栄えては時に動物種を絶滅させる事も少なく無くなった。
 そこで、この魔物種を人間の管理下に置くべく設立されたのだそうだ。
 一般的にはそのように言われているけれど、実際には大戦前に各国にあった『魔物の兵器化』を取り扱っていた研究機関を吸収し存続させるに当たり、分厚く不透明だった壁を透明にしたものだそうだ。
 ディック自身その過去を否定せず、D3Sに理解させるべく情報を公開している。
 ディックに所属するのは世界共通機関として定められた公務員。魔物専門取締家、通称D3S(ディザー:デモンスレイヤー又はデモンセイバー)。
 D3Sは、魔物の駆逐を唯一自由に許されている。一般において『駆逐』は許可制だったり罰則が働いたりするので、魔物は毛嫌いされている事が多い。
 駆逐と同等に重要なのが魔物の研究や保護と考えられていて、多くの国家や企業が合資しディックをバックアップしているんだ。魔物から新薬や新技術開発が生まれることも良くあるみたい。
 基本的にディックから魔物退治や保護、監視、調査などの仕事をうけて公務員のD3Sは動くのだけど、中にはフリースタイルというランクの設定された個人のプロや、資格としてDSERに所属する別の専門家も存在する。 
 魔物問題に向けてあらかじめ厳しい訓練と試験を経て、取り扱い許可を得ているD3Sは、仕事においては比較的自由度が高い。その分D3S公務員試験は結構敷居も高いんだけどね。
 試験を受けるにお金はかからないけど軍隊並みの実技訓練とニホンの大学試験(受かるのが難しいという比喩だそうだ)以上の知識を必要とされ、厳しい人格適合性までもチェックされる。
 許可証を得ても数年おきに更新試験があるよ。
それらの厳しい条件をクリアし、D3Sになったからといって、ディックの許可無しに魔物に関わる事は許されていない。
 一番の問題はD3Sはディックによって規定されている『魔物』にしか強権を振るう事が出来ないと言う事。
 ようするに、本来実在していない、ディックで『魔物』と認定していない魔物『ドラゴン』をD3Sは探求してはならないという事になる。
 これは第一に守るべき大原則であるにも関わらず、これを破るD3Sが続出したというのはディックにとって、統率という意味でも重大な問題だったみたいだ。
 それで、完全に後手に回る形ではあるけれどディックは、ドラゴンを容認するよりなかったんみたい。D3S隊員に向けてドラゴン探索に向けた特例が発令されたんだ。

 どうか、ドラゴンを探し出して欲しい。
 そして、この世界を狂わす『竜動』を我々で食い止めるに尽力して欲しい……と。

 そもそも『龍』は、存在していない。
 空想を相手に規定など成立させようがない。
 幽霊でさえ『魔物』と細かい分類が定められた現代、ドラゴンはそれ以下の妄想の産物だったというのに。

 その妄想を許してしまったらどうなる?

 これを狂言といわず何と言うのだろう。
 そう言って『竜動』事態を批判する者もいるにはいるけど…彼らの声は狂乱の竜を求める声によって掻き消されている気がする。

 もちろん全てのD3Sが『竜動』に狂っている訳ではなくて、多く常識を弁える役員達は慎重な意見を戦わせたそうだ。その中には今世紀最強のフリーランスD3S、エルークの名前もあったと思う。
 でも結局の所『ドラゴン』に関する規定は成立してしまった。
 『龍』を証明するための法。

 存在しないものに、存在を許す『術式』だと一部のウィザードは警告をも発したともいう。
 しかし残念ながらそれは焼け石に水だ。ウィザード協会の警告は一足遅かった。完全に『術式』とやらが発動した事を世界に知らしめてしまっただけだったと言われている。

 ともすれば、今度こそ龍は、ドラゴンはこの世界に姿を現すのだと、龍に狂う者達は声高らかに『世界の王』の再臨を謳う。
 20世紀末。
 世界は、予言通り滅ぶ事はなかった。
 であるなら21世紀、それは新世紀と呼ばれ新しく何かが始まらねばならないと強迫観念にも似て、何者かが降臨する事を待ち望むかのように……見えざる世界の幻を世に顕そうとしている。
 『龍動』はさらなる熱を帯び、さめる事なくうねり続けるだろう。
 まさしく龍のように。

 世界は今、目覚めた龍に呑まれようとしている。
 私もまた……そうやって龍に呑まれた一人なんだ。
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