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R side 御主人様への最後の御奉仕 ep1
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御主人様。
あなたが僕の全て。
頭が痛くて目が覚めた。頭の芯がガンガンと響いて吐き気がする。昨日泣きすぎたせいだ。
今日は僕が御主人様に捨てられる日だ。
3ヶ月前から決まっていた日が来た。
あの日から何度もカレンダーを見てはこの日が来ないことを、御主人様の気が変わることを祈り続けてきたけど淡々と日は過ぎて行った。
御主人様はもう僕に好意というものを持ち合わせていない。それどころか興味自体、もう何年も前に失ってしまっている。
そんなことは、ずっと前から知っている。
だから、今日まで御主人様のそばに居られたことのほうが幸福だったんだ。
「リツ」
ドアが開いて御主人様が僕の名前を呼んだ。
もう長いこと、御主人様が僕の名前を口にすることはなかったから、嬉しくて胸の奥がぎゅっとするのが分かる。その言葉をスポンジみたいに全身で吸収する。
美しい、御主人様の声。僕の神様。
「来なさい」
御主人様の声は、ずっと前、まだ僕のことを可愛がってくれていた時のような優しい声だ。
今日で最後だけど、御主人様の昔のような声に僕は泣き笑いのような顔になる。
僕の、大好きな御主人様。
「はい」
声が震えないよう努力した。
自分の部屋から出してもらうのは久しぶりだ。首輪に鎖が繋がれて、御主人様にリードを引かれながら地下室の階段を上る。
御主人様は足が悪い。いつも杖をついている。だから階段を上るのが遅い。僕はこの時間が永遠に続けばいいのに、と思う。御主人様の背中を見上げたまま、御主人様に鎖で繋がれたまま、永遠に夢から覚めたくない、と心から思った。
「リツが私の部屋に来るのは久しぶりだね」
地下室から出た廊下を歩く途中、僕の目はまだ窓からの明るい光に慣れなくて周囲をうまく見れずに俯いていると御主人様が言った。御主人様の寝室に連れて行って貰えるんだ。もう何年も入ることを許されていなかった、僕が昔一番好きな場所だった。
「はい」
僕は嬉しくて嬉しくて、今度こそ声に涙と震えが混じった。
御主人様の笑った顔と、御主人様の匂いと、あのベッドで優しくされた記憶がいっぺんに蘇ってきて、泣かないようにすることで精一杯だった瞳から涙が溢れてしまった。
「リツ、泣かなくて良いんだよ」
御主人様は歩けなくなった僕を責めることなく言った。その声を聞いていると、僕がよそに売られる話など嘘のように思える。
あの話は、どこかでなくなってしまったんじゃないだろうか?やっぱり、御主人様は僕を手放すのが惜しくなったんじゃないだろうか?
「今日が最後だからね。覚えていたかい?」
妄想が飛躍しそうになったところで、御主人様が笑顔を崩さぬまま、刃物のような言葉を告げる。
僕の心は薄氷の上の幸福感から絶望の底へ突き落とされる。分かっているのに、言葉にされると胸にえぐられるような痛みが走ってなかなか消えてくれない。
「はい」
明らかな泣き声。
泣くのはやめないと。御主人様は僕がめそめそするのを見るのが好きじゃない。せっかく最後だけでも優しくして貰っているんだから、泣いちゃだめだ、泣いちゃだめだ。
叱られるかと思ったけど、御主人様はすごく嬉しそうに微笑んだ。
「捨てられるのが怖いんだね。可哀想に」
それでも僕はもう用無しなのは変わらないみたいで、御主人様は満面の笑みで言ったあと、僕が落ち着くのを待って寝室へ連れて行ってくれた。
何年も入っていない間に、家具や調度品の位置が変わっている。でも、一番目に付いたのはベッドサイドのライティングビューローの上の写真立ての中の御主人様と、御主人様に抱かれた可愛らしい男の子だ。
ああ。この子が、次の子なんだ。
薄々は気付いていたけど、胸が苦しくて息がしづらい。不思議と涙は出てこなかったのがせめてもの救いだ。
10年くらい前は、ここに同じように僕の写真が飾られていた。海に連れて行って貰った時の写真だった。初めて行った海に、こわくて中々水に入れなかった僕を、抱き上げて一緒に水の中で遊んでくれた。
同じ写真は、まだ僕の少ない荷物の中にある。僕の人生の中で、一番幸せだった数年間。
御主人様は幼い子供にしか興味がない。性的な興奮を覚えない。
孤児だった僕が引き取られてから、5年程はご主人様は僕に夢中だった。四六時中求められ、学校にもほとんど行かず、ご奉仕とセックスをして、ありったけの贅沢をさせて貰った。
楽しかった。幸せだった。言葉にできないぐらい御主人様が大好きだった。それは今も変わらない。でも、御主人様の気持ちは変わってしまった。今はあの子のことが好きだから、もう大人になり始めている僕はいらないんだ。
「リツ」
御主人様の声で我に返ると、御主人様は既に服を脱ぎ始めている。
御奉仕させてもらえる。もしかしたら抱いてもらえるかもしれない。僕の頭は一瞬で欲情に染まりそうになる。
僕は急いで御主人様のシャツの釦を外すのを手伝う。
久々に見た御主人様の首筋は、僕が覚えているよりも皺が深くなり、肌の緩みが見受けられた。
出来るなら、僕は御主人様がこれから年齢を重ねていく姿を見ていたい。
御主人様がこっちを向いてくれなくても、地下室に来てくれなくても、影から御主人様をそっと見ていられたら、どれだけ幸せだろう。
御主人様がしているベルトは、昔と同じものだ。慣れた手付きでそれを外すと、御主人様のスラックスが下着と一緒に脱がれて床に落ちた。首輪を引かれ、ベッドの上に乗せてもらう。
御主人様が足を広げて寛ぐようにクッションにもたれかかると、その足の間でお預けを待つ犬よろしく次の指示を待つ。御主人様が顎を僅かに動かして御奉仕の許可をしてくれた。
ここ数年間、毎晩夢に見ていた御主人様へ御奉仕。だらりと萎えた御主人様の男根とは対照的に、僕の下半身は既に熱くてどうにかなりそうだった。
「失礼します」
両手でその柔らかな性器に丁寧に手を添えて、先端にそっと口付ける。排泄器として使われた際の残尿を、ちゅっと音を立てて吸い上げた。御主人様が小さく身震いする。それだけで僕の頭と下腹部は沸騰しそうなくらいの熱を持つ。
でも、御主人様が反応してくれたのはそれが最後だった。しぼんだペニスの先端の段差を舌で刺激し、根元まで咥え何度も頭を上下させて、陰嚢の隅々まで舐めしゃぶっても御主人様は何も感じていないようだった。
僕の御奉仕はもう、御主人様にとって全く興奮に値しないという事実は、分かっていたけれどすごく辛い。
でも、これが御主人様に触れることのできる最後のチャンスだから、悲しむのは後にしないと。御主人様の感触を、匂いを、その姿を忘れないように頭の中に焼き付けておかないと。
長い性器への御奉仕の後、御主人様は大きな溜息を吐いて足を更に大きく広げた。呆れたように息を吐くのが聞こえると涙腺が緩みそうになるのが分かるが、足が広げられたのは次の御奉仕への合図だ。
僕は無言のまま顔を更に御主人様の股へうずめる形でもう一つの排泄器へと丁寧に舌を這わせる。御主人様の臀部を手で左右に開いて、たっぷりの唾液をそこへ滴らせながら、神経がたくさん通っているアナルを余すことなく舐め上げる。御主人様が自分のものを扱いて自慰している気配が伺える。
休むことなく奉仕を続け顎が疲れて体力もすり減り、口の周りが唾液塗れになった頃、御主人様は僕の顔を上げさせた。相変わらず御主人様は勃起していない。でも御主人様の体の匂いで僕のものは爆発寸前だった。触られてもいない後ろの穴が疼いて、中から潤むような気すらした。
「そろそろ欲しいだろう?」
僕の中に何か入れる、という意味だ。でも御主人のものはそんなことが出来る状況じゃない。御主人様は自分の指や舌で、汚い僕の体に触るのをすごく嫌っている。だから、これは他の第三者か道具が僕の中に入って来ることを意味している。
経験上、それは痛みと苦痛がほとんどの拷問でしかない。何度されても慣れることが出来ない。恐怖で心拍数が上がり、口の中が乾くのが分かる。
「はい。欲しいです」
僕は自分に許された言葉だけを発した。
あなたが僕の全て。
頭が痛くて目が覚めた。頭の芯がガンガンと響いて吐き気がする。昨日泣きすぎたせいだ。
今日は僕が御主人様に捨てられる日だ。
3ヶ月前から決まっていた日が来た。
あの日から何度もカレンダーを見てはこの日が来ないことを、御主人様の気が変わることを祈り続けてきたけど淡々と日は過ぎて行った。
御主人様はもう僕に好意というものを持ち合わせていない。それどころか興味自体、もう何年も前に失ってしまっている。
そんなことは、ずっと前から知っている。
だから、今日まで御主人様のそばに居られたことのほうが幸福だったんだ。
「リツ」
ドアが開いて御主人様が僕の名前を呼んだ。
もう長いこと、御主人様が僕の名前を口にすることはなかったから、嬉しくて胸の奥がぎゅっとするのが分かる。その言葉をスポンジみたいに全身で吸収する。
美しい、御主人様の声。僕の神様。
「来なさい」
御主人様の声は、ずっと前、まだ僕のことを可愛がってくれていた時のような優しい声だ。
今日で最後だけど、御主人様の昔のような声に僕は泣き笑いのような顔になる。
僕の、大好きな御主人様。
「はい」
声が震えないよう努力した。
自分の部屋から出してもらうのは久しぶりだ。首輪に鎖が繋がれて、御主人様にリードを引かれながら地下室の階段を上る。
御主人様は足が悪い。いつも杖をついている。だから階段を上るのが遅い。僕はこの時間が永遠に続けばいいのに、と思う。御主人様の背中を見上げたまま、御主人様に鎖で繋がれたまま、永遠に夢から覚めたくない、と心から思った。
「リツが私の部屋に来るのは久しぶりだね」
地下室から出た廊下を歩く途中、僕の目はまだ窓からの明るい光に慣れなくて周囲をうまく見れずに俯いていると御主人様が言った。御主人様の寝室に連れて行って貰えるんだ。もう何年も入ることを許されていなかった、僕が昔一番好きな場所だった。
「はい」
僕は嬉しくて嬉しくて、今度こそ声に涙と震えが混じった。
御主人様の笑った顔と、御主人様の匂いと、あのベッドで優しくされた記憶がいっぺんに蘇ってきて、泣かないようにすることで精一杯だった瞳から涙が溢れてしまった。
「リツ、泣かなくて良いんだよ」
御主人様は歩けなくなった僕を責めることなく言った。その声を聞いていると、僕がよそに売られる話など嘘のように思える。
あの話は、どこかでなくなってしまったんじゃないだろうか?やっぱり、御主人様は僕を手放すのが惜しくなったんじゃないだろうか?
「今日が最後だからね。覚えていたかい?」
妄想が飛躍しそうになったところで、御主人様が笑顔を崩さぬまま、刃物のような言葉を告げる。
僕の心は薄氷の上の幸福感から絶望の底へ突き落とされる。分かっているのに、言葉にされると胸にえぐられるような痛みが走ってなかなか消えてくれない。
「はい」
明らかな泣き声。
泣くのはやめないと。御主人様は僕がめそめそするのを見るのが好きじゃない。せっかく最後だけでも優しくして貰っているんだから、泣いちゃだめだ、泣いちゃだめだ。
叱られるかと思ったけど、御主人様はすごく嬉しそうに微笑んだ。
「捨てられるのが怖いんだね。可哀想に」
それでも僕はもう用無しなのは変わらないみたいで、御主人様は満面の笑みで言ったあと、僕が落ち着くのを待って寝室へ連れて行ってくれた。
何年も入っていない間に、家具や調度品の位置が変わっている。でも、一番目に付いたのはベッドサイドのライティングビューローの上の写真立ての中の御主人様と、御主人様に抱かれた可愛らしい男の子だ。
ああ。この子が、次の子なんだ。
薄々は気付いていたけど、胸が苦しくて息がしづらい。不思議と涙は出てこなかったのがせめてもの救いだ。
10年くらい前は、ここに同じように僕の写真が飾られていた。海に連れて行って貰った時の写真だった。初めて行った海に、こわくて中々水に入れなかった僕を、抱き上げて一緒に水の中で遊んでくれた。
同じ写真は、まだ僕の少ない荷物の中にある。僕の人生の中で、一番幸せだった数年間。
御主人様は幼い子供にしか興味がない。性的な興奮を覚えない。
孤児だった僕が引き取られてから、5年程はご主人様は僕に夢中だった。四六時中求められ、学校にもほとんど行かず、ご奉仕とセックスをして、ありったけの贅沢をさせて貰った。
楽しかった。幸せだった。言葉にできないぐらい御主人様が大好きだった。それは今も変わらない。でも、御主人様の気持ちは変わってしまった。今はあの子のことが好きだから、もう大人になり始めている僕はいらないんだ。
「リツ」
御主人様の声で我に返ると、御主人様は既に服を脱ぎ始めている。
御奉仕させてもらえる。もしかしたら抱いてもらえるかもしれない。僕の頭は一瞬で欲情に染まりそうになる。
僕は急いで御主人様のシャツの釦を外すのを手伝う。
久々に見た御主人様の首筋は、僕が覚えているよりも皺が深くなり、肌の緩みが見受けられた。
出来るなら、僕は御主人様がこれから年齢を重ねていく姿を見ていたい。
御主人様がこっちを向いてくれなくても、地下室に来てくれなくても、影から御主人様をそっと見ていられたら、どれだけ幸せだろう。
御主人様がしているベルトは、昔と同じものだ。慣れた手付きでそれを外すと、御主人様のスラックスが下着と一緒に脱がれて床に落ちた。首輪を引かれ、ベッドの上に乗せてもらう。
御主人様が足を広げて寛ぐようにクッションにもたれかかると、その足の間でお預けを待つ犬よろしく次の指示を待つ。御主人様が顎を僅かに動かして御奉仕の許可をしてくれた。
ここ数年間、毎晩夢に見ていた御主人様へ御奉仕。だらりと萎えた御主人様の男根とは対照的に、僕の下半身は既に熱くてどうにかなりそうだった。
「失礼します」
両手でその柔らかな性器に丁寧に手を添えて、先端にそっと口付ける。排泄器として使われた際の残尿を、ちゅっと音を立てて吸い上げた。御主人様が小さく身震いする。それだけで僕の頭と下腹部は沸騰しそうなくらいの熱を持つ。
でも、御主人様が反応してくれたのはそれが最後だった。しぼんだペニスの先端の段差を舌で刺激し、根元まで咥え何度も頭を上下させて、陰嚢の隅々まで舐めしゃぶっても御主人様は何も感じていないようだった。
僕の御奉仕はもう、御主人様にとって全く興奮に値しないという事実は、分かっていたけれどすごく辛い。
でも、これが御主人様に触れることのできる最後のチャンスだから、悲しむのは後にしないと。御主人様の感触を、匂いを、その姿を忘れないように頭の中に焼き付けておかないと。
長い性器への御奉仕の後、御主人様は大きな溜息を吐いて足を更に大きく広げた。呆れたように息を吐くのが聞こえると涙腺が緩みそうになるのが分かるが、足が広げられたのは次の御奉仕への合図だ。
僕は無言のまま顔を更に御主人様の股へうずめる形でもう一つの排泄器へと丁寧に舌を這わせる。御主人様の臀部を手で左右に開いて、たっぷりの唾液をそこへ滴らせながら、神経がたくさん通っているアナルを余すことなく舐め上げる。御主人様が自分のものを扱いて自慰している気配が伺える。
休むことなく奉仕を続け顎が疲れて体力もすり減り、口の周りが唾液塗れになった頃、御主人様は僕の顔を上げさせた。相変わらず御主人様は勃起していない。でも御主人様の体の匂いで僕のものは爆発寸前だった。触られてもいない後ろの穴が疼いて、中から潤むような気すらした。
「そろそろ欲しいだろう?」
僕の中に何か入れる、という意味だ。でも御主人のものはそんなことが出来る状況じゃない。御主人様は自分の指や舌で、汚い僕の体に触るのをすごく嫌っている。だから、これは他の第三者か道具が僕の中に入って来ることを意味している。
経験上、それは痛みと苦痛がほとんどの拷問でしかない。何度されても慣れることが出来ない。恐怖で心拍数が上がり、口の中が乾くのが分かる。
「はい。欲しいです」
僕は自分に許された言葉だけを発した。
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