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12. 俺が「愛しい女を溺愛する部屋」から一歩も外に出たくない理由(※)

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 ーーー今日こそ、僕は、彼女にプロポーズをする。

 彼女にプロポーズをすると決意してから、なんと一年半。
 夜景、レストラン、遊園地、旅行など、プロポーズの人気スポットに行っては、彼女に何も言えずに帰る……という失敗を繰り返している僕。
 だというのに、新居候補の新築マンションだけは一人で見に行ったという、あまりのヘタレかつ拗らせ具合に、同期の親友には笑われた。

 ーーーでも、今日こそ言うんだ。

 今日は動物園デート。
 数々の失敗から、『いつもの場所で、何気なく言うのが僕に合っているはず』と思って、意気込んで来たのに。

 ……動物園でも、僕は結局、何も言い出せないでいる。

 僕は彼女の方を見た。
 彼女は微笑ましそうに2匹で駆け回るオオカミ達を見ている。
 展示パネルを見て、彼女が言う。

「悠くん、この二匹、つがいなんだって!」

「ふぅん、仲良さそうだもんね」

 彼女が、更に説明を読み進める。

「オオカミって唯一の番と生涯連れ添うんだ。……いいなぁ」

 僕に言った、というよりも、思わず口をついて出た、と言う口振りだった。
 だというのに、僕の口からはするりと言葉が出た。

「僕達みたいだね」

 言った途端、僕は焦った。

 僕は彼女が初恋で、恋愛に関するあらゆる経験は彼女が初めてで、彼女が全てだった。彼女と結婚したいと思っているし、生涯連れ添いたいと思っている。だから『唯一のつがいと生涯連れ添う』は、僕にも当てはまると思った。

 でも、彼女は?彼女の初体験は僕だったけれど、キスや他の経験は違ったのかもしれない。それに、未来も僕と一生連れ添う気持ちがあるかなんてわからない。

『重い男だ』って、引かれてしまったらどうしよう?

 内心かなり焦っていた僕。
 だけど。

 彼女は蕩けるような笑みを浮かべて言った。

「そうだね」

 ーーーああ、そうか。彼女も僕と同じ気持ちでいてくれてるんだ。

 そう思った瞬間、突如固まる僕の決意。

 ーーー今だ。

 僕の心臓はバクバク鳴る。

 言え、プロポーズするなら今だ。「僕と結婚してください」って言うんだ、僕。

 だけど、僕の口から出た言葉は。

「僕、葵の親に挨拶したいと思ってる」という、結婚の『け』の字も入っていない、なんとも曖昧で情けない言葉だった。

 だけど、そんな僕の一言にも、彼女は「嬉しい」と言って、僕の大好きな満面の笑みをくれた。

 僕は幸せを噛み締めた。

 ……でも、きっと、同期の親友にこの顛末を話したら、やっぱり笑われるんだろうな。


 ***


 俺の意識はゆっくりと浮上する。
 俺は、またソファで居眠りをしていたらしい。

 本日2回目である。
 ……疲れているのか、俺?

 いや、外での生活は一日中飛び続けることもあるのだから、疲れているなんてことは無いだろう。
 変わったことといえば、今世初の性行為を昨日から5回ほど。
 でも、それももっとハイペースでも大丈夫そうだ。アイデシアの体が大丈夫なら、もっとたくさんしたい。

 しかし、そうだ。
 今日はアイデシアに告白して、今後の展望と共に『俺の番になってください』と伝えるんだったな。
 ……前世のプロポーズみたいだ。

 問題は、どのタイミングで言うか、だな。

 前世の知識によると『男の言葉が信用できるタイミング』は吐精後らしい。
 男は射精したい気持ちを恋心と勘違いする生き物だから、行為前や吐精前に告白するのは良くないようだ。
 ということは……理想は、吐精後のイチャイチャのんびりタイム、か。

 ……しかし。

 うーむ、と俺は考える。

 俺は常にしたい訳だから、常に行為前か吐精前のタイミングになってしまわないか?
 いつ、イチャイチャのんびりタイムが作れるのか疑問だ。

 それに今日は、風呂上がりにメインイベントも待っている。その後は大いにベッドでも盛り上がりたい!
 ……よし!メインイベントが終わって、ベッドで盛り上がり終わった後の、イチャイチャのんびりタイムに伝えよう!

 寝起きの頭でプロポーズ計画を立てたところで、俺はアイデシアがいないことに気付く。

 そうだ。アイデシアとは研究室に行く前に分かれたのだった。
 周りを見渡すと、アイデシアはまだ帰っていないようだ。

 ……落ち着かない。

 少し離れただけなのに、心に小さな穴が空いたように感じる。
 やっぱり俺はアイデシアと絶対に離れてはいけない。
 改めて痛感する。

 そろそろ戻る頃だろうか?

 俺は気持ちを紛らわせるため、キッチンへ向かい、紅茶の準備をしながらアイデシアを待つことにした。


 ◇


 食器棚からポットとティーカップを取り出す。
 ポットに茶葉を入れ、魔道具のケトルをセットしたところで、玄関のドアがガチャリと開く音がした。

「ユークリッド様、ただいま戻りました」

「アイデシア、おかえり」

 思わず顔が綻んでしまう。
 アイデシアの不在による心の穴が、幸福感によって塞がれていくのを感じた。

 アイデシアは、俺が紅茶を準備する様子を見て、焦ったようにやって来た。

「ユークリッド様、すみません!私が淹れますよ」

「いいや。俺が淹れるから、ゆっくりしてろ」

「……すみません。ありがとうございます」

 ポットにお湯を注ぐ俺に、アイデシアは眉を下げながら礼を言う。
 お湯を注ぎ終えた俺は、アイデシアの腰を抱いて引き寄せた。
 すると、何故かアイデシアが眉間にシワを寄せていた。
 ドライヤーの時にも見せた、何やら複雑そうな顔だ。
 俺はその眉間にキスをして、言った。

「どうした?複雑そうな顔をしているが」

「ユークリッド様は、……紅茶を淹れるのも慣れてらっしゃるんですね」

「ああ……昔、よく淹れていたような覚えがある」

 これも前世の知識なのだろう。
 あまり一人の時は淹れようと思わないが、今みたいに二人の時間を楽しみたい時には良いものだな、と思う。

「アイデシアは、よく紅茶を淹れるのか?」

「ええ。昨日まで住んでいた部屋で、よく淹れておりました」

 程よい加減になった紅茶を、カップに注いでいく。

「昨日までは一人で住んでいたのか?」

「ええ。この部屋と同じく人間用の居住スペースに、ワンルームのお部屋を用意していただいておりました。ですが、月に一度の観覧解放日だけは、研究所の生物飼育スペースにあるドラゴン用の居室で、ドラゴン型で過ごしております」

「へぇ。ドラゴン用の居室まであるのか。お前は美しい銀髪だから、……鱗は銀色か?」

「……ええ。ユークリッド様の鱗は赤色でしょうか?」

「ああ、そうだ。ここでドラゴン型になる訳にはいかないと思うが、そのうち、ドラゴン型のお前も見てみたいものだな」

 俺がそう言うと、アイデシアが、ふふっと可愛らしい笑みをこぼして言った。

「……ここで巨大なドラゴン型になると、お部屋……というか建物を破壊してしまいますもんね。ドラゴン用の居室に行けば、お見せできますよ。ティータイムの後、一緒に行きますか?」

 うーむ、と俺は考える。
 ドラゴン型のアイデシアを愛でたい気持ちもあるのだが。

「……いや、今日はいい。
 ティータイムが終わったら、さっきまで離れていた分、アイデシアを堪能したいからな」

「!!!」

 アイデシアが真っ赤になる。
 ティーカップをリビングテーブルに置いた俺は、真っ赤になったままのアイデシアを抱き上げ、ソファに座る。
 アイデシアを横抱きするような体勢で膝に乗せた。

 紅茶を一口飲んだあと、俺はひと口大に切ったパンケーキに生クリームをたっぷり付けて、アイデシアの口元に運ぶ。

 アイデシアは少し照れたように、「いただきます」と言って口を開けた。

 パンケーキを頬張るアイデシアも愛らしい。
 アイデシアは食事のたび、あまりにも幸せそうに食うので、見ている俺まで幸せな気持ちになる。

「美味しいです……!」

 そう言うアイデシアが心底愛しくなった俺は、アイデシアの口元に付いた生クリームを、ペロリと舐めた。

「ああ、美味いな」

「ユークリッド様……!」

 アイデシアは真っ赤になって狼狽えた。

 うーん、可愛い。
 ……アイデシアは俺の悪戯心を煽る天才だ。

 次に、俺はチョコクリームをたっぷりとパンケーキに付ける。
 そして今度は、わざとアイデシアの唇にクリームをべとりと塗りつけてから、パンケーキを口元に運んだ。

「ユークリッドさ……むぅ?!」

 驚き声を上げるアイデシアにパンケーキを頬張らせ、その唇を俺の唇で塞いだ。
 そして、アイデシアの唇に付いたチョコクリームを舌で舐め取っていく。

「ん……ふぅ」

 合わさる唇の隙間から、アイデシアの艶めかしい吐息が漏れる。
 ああ、このまま押し倒したい。

 唇を離すと、アイデシアに睨まれた。

「……ユークリッド様!」

「すまんすまん、あまりにお前が美味くてな」

「何を言ってるんですか!……もう!」

 まずい、このままではアイデシアをまた怒らせてしまう!
 唇への悪戯は、そのまま押し倒したくなってしまうからやめておこう。

 フルーツソースをたっぷり付けたパンケーキを、今度はアイデシアの頬に付けてから口元に運ぶ。

 そして、アイデシアのぷっくりした頬に付いたフルーツソースをペロリと舐める。

「ユークリッド様?!まさかわざと……?!」

 俺は答える代わりにニッコリ微笑み、また、アイデシアの口元にパンケーキを運ぶ。

 次は鼻に付けようかなと思い、そちらにパンケーキを運ぶと、……たっぷりと付けた蜂蜜がトロリとアイデシアの胸元に落ちた。

「ユークリッド様?!」

「すまんすまん、今のはワザとじゃないんだ。すぐに拭うから」

「……え?!」

 落ちてしまったのだから、しょうがないよな。
 俺はアイデシアのシャツワンピースのボタンを2つほど外し、胸元に落ちた蜂蜜をペロリと舐めた。

「……んっ」

 甘く可愛らしい声を漏らした後、真っ赤になったアイデシアが涙目で俺を睨む。

「先ほど、『ティータイムが終わったら』と仰っていたのに……っ!」

「ああ、もちろん。まだティータイムだ」

 そう言って俺は、パンケーキを一切れフォークに刺す。

 蜂蜜はなかなか良い働きをするようだ。
 ……次も蜂蜜にしよう。

 俺はパンケーキに蜂蜜をたっぷり付けて、アイデシアの口元に運ぶ。蜂蜜はトロリとアイデシアの胸元に落ちる。既に露わになっている谷間を伝い、ブラジャーに付着しそうになる。

 真っ赤になったアイデシアが涙目で言う。

「ユークリッド様、悪戯はもうおやめください!衣類が汚れてしまいます」

「そうだな。このままだと汚れてしまうな」

 俺はアイデシアのシャツワンピースのボタンを腹まで外し、腕を引き抜く。

「えっ……何を?!」

「こちらも汚れてしまうな」

 ブラジャーのホックを外し、脱がせてしまう。

「アイデシア、これで汚れないぞ」

「ゆ、ユークリッド様……!!!」

 アイデシアは更に頬を紅潮させ、涙目で俺を見る。
 その顔が俺を煽るというのに。

 俺はアイデシアの双丘の谷間の蜜を舐め上げた。


 パンケーキをアイデシアの口元に運び、俺は何度も何度も蜜を落とす。

 アイデシアの白い首筋に。美しい鎖骨に。むっちりした双丘に。ふわふわの二の腕に。

 落とした蜜と、アイデシアの体を堪能する。

「……ぁんっ……」

 アイデシアが可愛い声を漏らす。

「……アイデシアは本当に美味いな」

 俺がそう言うと、アイデシアは真っ赤になって、涙を滲ませ上目遣いで俺を睨んだ。
 そして、か細い声で言った。

「……ユークリッド様の意地悪」

 か、可愛い!可愛いすぎるぞ!!アイデシア!!!
 アイデシアを脱がせてしまったのはいいが、この状態で我慢するのはかなりキツい。
 今度こそ、このまま押し倒したい気持ちになり、俺はパンケーキの最後の一切れをアイデシアの口元に運ぶ。

 最後は蜜を落とさず、アイデシアが咀嚼する間にシャツワンピースのボタンを全て外して、剥ぎ取った。

「アイデシア、食べ終えたな。では……」

 よーし、押し倒すぞ!
 アイデシアを横たえようとしたら、……アイデシアがニッコリ微笑んで言った。

「ユークリッド様、まだ、ティータイムですよ?」

 その妖艶な笑みは、アイデシアが今まで見せたことのない類のものだった。

「え?」

「ユークリッド様はまだ、パンケーキを召し上がっていません」

「え、もういいよ。俺はアイデシアを食べたい」

「ダメです。はい、あーん」

 えーーー!!!
 ショーツ姿のアイデシアを前に、押し倒せないとか、どんな拷問だ!

 ……と思ったら、アイデシアは俺の唇にわざとクリームを付けた。

「アイデシ……んっ」

 アイデシアが俺の唇のクリームを舐める。

 俺の唇を覆うぽってりとした唇。俺の唇を拭う小さな舌。俺の胸にむぎゅっと押し当てられる剥き出しの双丘。

 ーーーまずい!これは非常にまずい!!!

 唇が離れた瞬間、俺はアイデシアに訴えた。

「アイデシア!一刻も早く押し倒したい……!」

「ユークリッド様、ダメですよ?まだティータイムです」

 うわあああ仕返しされている!!!
 なんて拷問だ!!幸せすぎるけど!!!

 アイデシアは俺の胸元にワザと蜂蜜をこぼす。
 蜜は、俺の平らな胸をどんどん下へ伝っていった。

 すると、アイデシアは俺のシャツのボタンを外していく。
 そしてアイデシアは、俺の胸元に伝った蜂蜜を舌でつぅっと舐めとった。

「ーーーっっうぁ」

 ゾクゾクする刺激に思わず声が漏れてしまった。

「ユークリッド様……」

 アイデシアを見ると、なんとも嬉しそうな妖艶な微笑みを浮かべていた。

 おいおいおい!アイデシアは根っからのM属性だと思ってたんだが?!
 でも、この一連の仕返しと、この微笑み。
 ……ま、まさか、アイデシアはS属性も持ってるのか?!
 最高だろ!!!!!おい!!!!!

 アイデシアは俺のシャツのボタンを全て外し終え、脱がせてしまう。
 そして、俺の口元にパンケーキを運ぶ度にわざと蜜を落としては、俺の胸や腹筋を舐める。

 アイデシアのぽってりした唇が、小さな可愛い舌が、俺の肌を這う感触が、とんでもない快感を生み出す。

 押し倒したい!!!もーほんと無理!!!
 幸せだけど、耐えられない!!!

 必死な思いで皿を見ると、パンケーキはあと二切れだった。

 ーーーあと二切れ。

 あと二切れで、この甘美な拷問が終わり、アイデシアをいただける。

 アイデシアが、俺の口元にパンケーキを運ぶ。

 すると、蜂蜜が、なんと俺の胸の蕾に……落ちた。

「……」

 いや、待て。待つんだ。アイデシア。
 そこは、俺も流石に、自重したんだぞ?

 そんな思いで、アイデシアを見ると。

「ユークリッド様……」

 紫水晶の瞳がギラリと光る。アイデシアは今はヒト型なのに。
 ーーーその瞳の獰猛さは、ドラゴンのそれだった。

 ああ、ダメだ。完全にS属性の顔だ。

 アイデシアはうっとりとした表情で、俺の蕾に付いた蜂蜜をつうっと舐め上げた。

「ーーーーーっっっ」

 うわぁああああああああああ!!!!!

 アイデシアはそのまま俺の蕾全体を唇に含み、尖りを舌で転がす。

「ーーーっ、ーーーっっ、ーーーっっっ」

 ちょっと待て!上手い!!上手すぎるだろ!!!
 このままじゃ、出る。出る!無理!!無理!!!

 俺はアイデシアの両肩を掴んで引き剥がした。
 俺、ちょっと涙目になってるかもしれない。

「おい!アイデシア!!!どこで、そんなの、覚えた?!」

 アイデシアは妖艶な顔を少しキョトンとさせ、首を傾げて言った。

「……ユークリッド様の真似、ですよ?」

 うわーーー!!!おい!!!最高かよ!!!!!
 しかもこの顔!!!この角度!!!!可愛いすぎるだろ!!!!!

 いや、もうほんと無理!!!1秒たりとも我慢できない!!!!!
 俺はパンケーキの最後の一切れをわし掴み、頬張り、紅茶で流し込んだ。

「……アイデシア」

 俺はアイデシアを見て、ニッコリ微笑む。

「今度こそ、ティータイムは、終わったぞ?」

「」

 アイデシアが口を開く前に、俺はその唇に貪り付いた。

「んんっ……んぅっ……」

 そのままアイデシアをソファに横たえ、ショーツを脱がせ、俺はアイデシアに跨る。

 ーーー形勢逆転だ。

 俺は唇を離し、蜂蜜の皿を手に取った。

「覚悟は出来ているだろうな?アイデシア」

「……っ」

 その瞬間、アイデシアの表情が完全なM属性に戻った。
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