男運ゼロな高身長ド貧乳女の私が、過保護なスパダリイケメンに溺愛執着された理由(旧題:後輩ちゃんと同期さんの願いの話)

福重ゆら

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第三章 後輩ちゃんと同期さんの願いの話

14. 同期さんの願いの話 side. 直樹

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 俺が公園へ駆けつけた時、薄暗い並木道に後輩ちゃんは立ち尽くしていた。
 後輩ちゃんの顔は青白くて、このままだと後輩ちゃんが葵ちゃんの後を追ってしまうんじゃないかと本気で心配になった。

 後輩ちゃんから「どうして?」と問われて、考えるより前に「一緒に泣きたい」という本音が口から出た。
 後輩ちゃんは、俺と一緒に、泣いてくれた。

 その後、後輩ちゃんが、嗚咽混じりに語った出来事に息を呑んだ。

 誰も悪くない。悪くないんだ。

 でも、葵ちゃんはたぶん、悠斗と後輩ちゃんの仲を誤解したまま亡くなった可能性が高くて。
 それで、後輩ちゃんは酷く自分を責めてしまっていて。

「私が、余計なことをしなければ……っ!」

 後輩ちゃんの悲痛な叫びを聞いて、俺は必死に頭を働かせた。

 ーーー後輩ちゃんを励ますためには、どうしたらいい?

 過去を変えることなんて誰にもできない。
 だけどせめて、後輩ちゃんが感じている罪悪感を和らげたいと思った。

 なのに。

「きっと今日、悠斗は葵ちゃんと二人で、次の生に旅立ったんじゃないかと思うんだ」

 ……俺の口から出たその言葉は、後輩ちゃんを励ますための言葉ではなくて、ただの自分の願望だった。

 こんな突拍子のない話をしてしまったのは、悠斗と『生まれ変わり』の話をしたからかもしれない。
 悠斗と葵ちゃんが、一緒に生まれ変わって、また二人で幸せに生きて欲しいと思った。

 そんな俺の身勝手な願望だったのに、その瞬間、後輩ちゃんの表情が変わったのがわかった。

 後輩ちゃんは、俺と一緒に、二人の次の人生について考えてくれた。
 後輩ちゃんは、俺と一緒に、願ってくれた。

 俺の堪えきれないほどの喪失感が、埋められていくのを感じた。


 そして俺は、口にしなかった、悠斗に対する願いを心の中で祈った。

 『悠斗、お願いだ。葵ちゃんの誤解を解いてほしい。たぶん葵ちゃんは、悠斗が後輩ちゃんに送ったメッセージを勘違いしてる。葵ちゃんはそれで辛い想いをしたままだし、後輩ちゃんもそれで自分を責めて苦しんでる。だから生まれ変わって、葵ちゃんの誤解をちゃんと解いてくれ。頼む』

 悠斗は「今の僕の記憶を持っていたくない」と言っていたけれど。
 葵ちゃんの誤解を解くためにも、今世の記憶を持っていて欲しいと願った。
 ……俺のことも少しでいいから、覚えていてくれたらいいな、なんて思った。


 ◇


 その後、後輩ちゃんをなるべく1人にしたくなくて、帰りは家の近くまで送ることにした。

「ここで大丈夫です。今日はありがとうございました」

「あのさ! ……明日も会えないかな?」

 気付いたら、口にしていた。

 自分の口から出た言葉を理解した瞬間、盛大に焦った。

 ……いや、ダメだろう。
 これじゃ、傷心の女の子につけ込む悪い男じゃないか!

 後輩ちゃんも面食らったような顔をしている。

 何と言って弁解しようか考えていると、後輩ちゃんはハッとしたような顔をして、口を開いた。

「同期さん、優しいから心配してくださってるんですね! ……でも、私、もう大丈夫です! 同期さんに、そんなに迷惑かけられません」

 迷惑なんかじゃないよ!
 もちろん後輩ちゃんのことは心配だけど。
 でも、そうじゃないんだ。
 俺が、同じ想いを共有できる君と会いたいんだ。

 ……と、言いかけて、慌てて思い止まる。

 これは、『依存』じゃないか?

 悠斗を亡くした喪失感を埋めるため、後輩ちゃんを利用しようとする心理に気付いて、自分自身にドン引きした。
 今日だって、後輩ちゃんのおかげで、俺は絶望に呑まれなかったんだと思う。
 これ以上、傷心の後輩ちゃんに依存するなんて、そんなこと絶対ダメだ。

「迷惑じゃないよ。……でも、突然変なこと言ってごめん。今日だって突然、押し掛けちゃってごめんね」

「いえ、そんな……私だって、今日、1人じゃ押しつぶされてしまいそうだったので。一緒にいてもらえて、それどころか話を聞いてもらった上に、励ましてもらえて、本当に感謝です」

 そして、後輩ちゃんは、目を伏せて微笑んで言った。

「同期さんと、一緒に願えて、よかったです」

 その言葉と微笑みに背中を押されて、俺はもう一度、勇気を出した。

「あのさ、来月の月命日に、もう一度、一緒に願わない?」

 「月命日……」

 後輩ちゃんはそう言って、少し考える素振りを見せた後、口を開いた。

「……願いたい、です」

 後輩ちゃんは、泣きそうな笑顔で微笑んだ。

 ……多分、この気持ちは『依存』なんだと思う。

 だけど、この約束があれば、次に後輩ちゃんに会える日まで、俺は大丈夫だと思えた。
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