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一連の報告《ヨルグ視点》【上】
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ドラゴンの巣となる火山を突き止めた、その翌日。――リズと結婚した朝。
過去に類を見ないほど意気軒昂と登城した俺は、真っ直ぐ図書室に足を運ぶと目ぼしい文献を読み漁った。
火山活動についての資料、地形学、ドラゴンの研究、魔獣の分布図、植物図鑑、各地の気象情報、少しでも使えそうなものは手当たり次第に目を通す。
通信が入ればその都度指示を出し、領主の館へも定時連絡を入れて異常がないことを確認する。
リズのおかげで早めに結界などの対策がとれたこともあり、市民の人的被害を出さずに済んだのは本当に僥倖だった。
文献に記されている前回の産卵は、五十余年前。
発見から特定に至るまでの詳細な状況は載っていないものの、本来であれば被害が報告されることでようやく魔獣の移動を把握できる――それくらい、雲を掴むような話なのだ。
第三部隊長は本日昼過ぎに帰還する見込みだという。
引き継ぎに必要な資料をまとめ上げ、書きなぐったメモを手に、王家に伝えるべき情報を整理する。
そうして昼を過ぎたころ、帰還の挨拶を終えた第三部隊長と入れ替わりに、謁見の間へと足を踏み入れた。
「こたびの一件、迅速な巣の特定によって一人の犠牲者も出さずに結界発動へと至れたと聞く。じつに大義であった」
「はっ」
謁見の間にいたのは、今や政務の大半を任されている第一王子――フェスノッド王太子殿下だった。
「して、どのように巣を特定した?」
「はっ。まずドラゴンの進行方向から火山を五峰に絞り、そこから――」
すでに結果が出ている物事に対し、それらしい理由を並べ立てるのはそう難しいことではない。
一つ、百年以上噴火のない眠れる火山では産卵に足る温度がないだろうこと。
一つ、魔獣の避けにも使われる植物が生い茂っていて、ドラゴンには効かないまでもエサとなる魔獣が少ないであろうこと。
一つ、山頂に雨水が溜まり巨大な湖と化していること。
一つ、ほとんど丘のような低山であり、警戒心が強いドラゴンでは安全だと判断しないであろうこと。
どれも憶測の域を出ない、可能性の話ばかり。実際にそれらを根拠にして場所を断定するなど、目隠しで谷に飛び込むようなものだ。
それでも今は、『特定に足る根拠』さえ示せればいい。もう結果は出ているのだから。
過去に類を見ないほど意気軒昂と登城した俺は、真っ直ぐ図書室に足を運ぶと目ぼしい文献を読み漁った。
火山活動についての資料、地形学、ドラゴンの研究、魔獣の分布図、植物図鑑、各地の気象情報、少しでも使えそうなものは手当たり次第に目を通す。
通信が入ればその都度指示を出し、領主の館へも定時連絡を入れて異常がないことを確認する。
リズのおかげで早めに結界などの対策がとれたこともあり、市民の人的被害を出さずに済んだのは本当に僥倖だった。
文献に記されている前回の産卵は、五十余年前。
発見から特定に至るまでの詳細な状況は載っていないものの、本来であれば被害が報告されることでようやく魔獣の移動を把握できる――それくらい、雲を掴むような話なのだ。
第三部隊長は本日昼過ぎに帰還する見込みだという。
引き継ぎに必要な資料をまとめ上げ、書きなぐったメモを手に、王家に伝えるべき情報を整理する。
そうして昼を過ぎたころ、帰還の挨拶を終えた第三部隊長と入れ替わりに、謁見の間へと足を踏み入れた。
「こたびの一件、迅速な巣の特定によって一人の犠牲者も出さずに結界発動へと至れたと聞く。じつに大義であった」
「はっ」
謁見の間にいたのは、今や政務の大半を任されている第一王子――フェスノッド王太子殿下だった。
「して、どのように巣を特定した?」
「はっ。まずドラゴンの進行方向から火山を五峰に絞り、そこから――」
すでに結果が出ている物事に対し、それらしい理由を並べ立てるのはそう難しいことではない。
一つ、百年以上噴火のない眠れる火山では産卵に足る温度がないだろうこと。
一つ、魔獣の避けにも使われる植物が生い茂っていて、ドラゴンには効かないまでもエサとなる魔獣が少ないであろうこと。
一つ、山頂に雨水が溜まり巨大な湖と化していること。
一つ、ほとんど丘のような低山であり、警戒心が強いドラゴンでは安全だと判断しないであろうこと。
どれも憶測の域を出ない、可能性の話ばかり。実際にそれらを根拠にして場所を断定するなど、目隠しで谷に飛び込むようなものだ。
それでも今は、『特定に足る根拠』さえ示せればいい。もう結果は出ているのだから。
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