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一連の報告《ヨルグ視点》【下】

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 質問にたらりと冷や汗が流れる。
 一体この方は、何をどこまで把握しているのだろう。……おそらく確信はない、鎌をかけられているだけのはずだ。

「彼女は……私の妻です」

「妻!? デファーロット、おまえ結婚していたのか!? 承認の判を捺した覚えはない気がするが……」

 フェスノッド殿下は顎に手をかけ、うーん、と記憶を辿っている。
 記憶にないのも当然だ、王家に証書を提出したわけではないのだから。

「教会で誓いを立てました」

 結婚には二つの方法がある。
 一つは教会で誓う方法、もう一つは国王に書類を提出して承認を貰う方法だ。
 教会で誓うのは庶民や、公的には認められないような結婚を目論む一部の貴族のみ。一般的な貴族はみな、王の承認を貰う方法をとる。

「教会だと? なんでまた……まさか、駆け落――」

「違います。彼女は貴族ではありませんので」

「なるほどな、デファーロットの細君だというのであれば身元としては十分だ。……ではなぜ、あの場にいた?」

 射抜くような視線を、真っ向から受け止める。

「十一年前の……殿下の誘拐未遂事件で、殿下保護に至る有力な目撃情報をくれた少女の存在は覚えていますか?」

「ああ、あの一件では父上に手酷く叱られたからな……。デファーロットが熱心に目撃者の少女を探していたのもよく覚えている」

「その少女が見つかりまして」

「なに? 今になって見つかったのか?」

「はい。つい最近発覚したもので、あの日はちょうど事実確認のために、城で話を聞く予定だったのです」

「城で話を……。いやしかし、あの日同伴したのは細君だと……」

 頭に蓄積した情報が整理されていくにつれ、フェスノッド殿下の青い瞳が大きく見開かれていく。

「デファーロット……まさかおまえ、十一年前からずっと彼女に執心して……」

 大袈裟に声を震わせて脅えてみせるような反応は心外極まりないけれど、隠す気もないので素直に頷く。
 そうして、伝えるべき要求を告げた。

「ですので、保留になっていた『褒美』を頂戴したく」
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