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61~70話
達するまでの時間?【上】 ※
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ドクン、ドクンと、お腹の奥で雄芯が脈打つ。
たしかにここにいるのだと主張するかのような、強い脈動が愛おしい。
不意に動きを止めたヨルグは、唇を噛みしめて俯いていた。
「……? もう動かないんですか? 私なら大丈夫ですよ」
どうして止まっているのだろう。『抽挿をくり返す』と聞いていたのに、まだ一往復しかしていない。
私の身体を気づかってくれているのだとすれば、強い痛みがなかったお陰で今日はまだ余力がある。
ようやく顔を上げたかと思えば、ヨルグはへにょりと眉を下げ、消え入りそうな声で言った。
「…………てしまった」
「え? すみません、よく聞こえなくて」
「……達してしまった」
ヨルグは今にも泣き出しそうなほどにしょげ返って見える。
こうして弱りきった表情をしていると、おぼろげな記憶しかない騎士様の面影と重なる気がするからふしぎだ。あのときの騎士様が旦那様になるなんて、考えてもみなかった。
「達した……って、私のなかに精を放ったってことですか?」
ヨルグが項垂れながら首肯すると、頭上の前髪も同意するようにピョコッと頷いた。
昨日の行為に続きがあるというから、てっきり昨日以上の痛みに耐えることになるのだと思っていた。ところがいざ挑んでみれば、挿入時には昨日のような激痛もないし、抽挿で激しく扱われることもなく、無事に精を受け止められた。
私の代役だという『手』でしていたときには、もっと時間がかかっていたはずだけれど……。やっぱり『本物』相手だとスムーズに行くものなのかもしれない。
「じゃあ、これでおしまいですか?」
ちょっとだけ『手』に勝ったような優越感を抱きつつ尋ねると、ヨルグは眉尻をさげたまま、ねだるような眼差しを私に向けた。
「もう一度、チャンスがほしい。……こんなはずではなかったんだ。こんな情けない姿を見せるつもりでは……」
「情けないなんて思ってないですよ! 何が『情けない姿』なのかわかりませんけど……、ここには私とヨルグさんしかいないので、見栄を張ったり無理したりする必要はないです。私の不安ごと受け止めて向き合ってくれる、そのままのヨルグさんが大好きですから」
「リズ……っ」
覆い被さるように抱きしめられ、耳元に熱い吐息が触れる。大人しく収まっていた雄芯も角度を変えて、グリと私の最奥を圧した。
「んっ」
「ありがとう、俺も愛している。……それでも……リズ相手だからこそ、格好をつけたかったんだ」
私に格好いいところを見せたくて?
そのままでも大好きなのに、もっともっと大好きにさせてどうするつもりだろう。積もっても積もっても果ての見えない愛情が恐ろしくて、ふっと笑みを零す。
頭上のリボンも相まって、今のヨルグがとても可愛く見えてしまっていることは、口にしないほうがよさそうだ。
「もう一度、したいんですか?」
「リズの許しが得られるのなら」
答えながらグッと腰を押し付けられる。
なんだか先ほどまでよりも、圧迫感が増しているような……。
「っ今日はまだ、余力があるので……ヨルグさんが納得いくまで付き合いますよ」
そんな余力など一瞬で消し飛ぶ羽目になることを、私はまだ知らない――。
たしかにここにいるのだと主張するかのような、強い脈動が愛おしい。
不意に動きを止めたヨルグは、唇を噛みしめて俯いていた。
「……? もう動かないんですか? 私なら大丈夫ですよ」
どうして止まっているのだろう。『抽挿をくり返す』と聞いていたのに、まだ一往復しかしていない。
私の身体を気づかってくれているのだとすれば、強い痛みがなかったお陰で今日はまだ余力がある。
ようやく顔を上げたかと思えば、ヨルグはへにょりと眉を下げ、消え入りそうな声で言った。
「…………てしまった」
「え? すみません、よく聞こえなくて」
「……達してしまった」
ヨルグは今にも泣き出しそうなほどにしょげ返って見える。
こうして弱りきった表情をしていると、おぼろげな記憶しかない騎士様の面影と重なる気がするからふしぎだ。あのときの騎士様が旦那様になるなんて、考えてもみなかった。
「達した……って、私のなかに精を放ったってことですか?」
ヨルグが項垂れながら首肯すると、頭上の前髪も同意するようにピョコッと頷いた。
昨日の行為に続きがあるというから、てっきり昨日以上の痛みに耐えることになるのだと思っていた。ところがいざ挑んでみれば、挿入時には昨日のような激痛もないし、抽挿で激しく扱われることもなく、無事に精を受け止められた。
私の代役だという『手』でしていたときには、もっと時間がかかっていたはずだけれど……。やっぱり『本物』相手だとスムーズに行くものなのかもしれない。
「じゃあ、これでおしまいですか?」
ちょっとだけ『手』に勝ったような優越感を抱きつつ尋ねると、ヨルグは眉尻をさげたまま、ねだるような眼差しを私に向けた。
「もう一度、チャンスがほしい。……こんなはずではなかったんだ。こんな情けない姿を見せるつもりでは……」
「情けないなんて思ってないですよ! 何が『情けない姿』なのかわかりませんけど……、ここには私とヨルグさんしかいないので、見栄を張ったり無理したりする必要はないです。私の不安ごと受け止めて向き合ってくれる、そのままのヨルグさんが大好きですから」
「リズ……っ」
覆い被さるように抱きしめられ、耳元に熱い吐息が触れる。大人しく収まっていた雄芯も角度を変えて、グリと私の最奥を圧した。
「んっ」
「ありがとう、俺も愛している。……それでも……リズ相手だからこそ、格好をつけたかったんだ」
私に格好いいところを見せたくて?
そのままでも大好きなのに、もっともっと大好きにさせてどうするつもりだろう。積もっても積もっても果ての見えない愛情が恐ろしくて、ふっと笑みを零す。
頭上のリボンも相まって、今のヨルグがとても可愛く見えてしまっていることは、口にしないほうがよさそうだ。
「もう一度、したいんですか?」
「リズの許しが得られるのなら」
答えながらグッと腰を押し付けられる。
なんだか先ほどまでよりも、圧迫感が増しているような……。
「っ今日はまだ、余力があるので……ヨルグさんが納得いくまで付き合いますよ」
そんな余力など一瞬で消し飛ぶ羽目になることを、私はまだ知らない――。
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