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61~70話

一番の望み【上】

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 うちからより、教会からのほうが僅かにお城に近い。しかしヨルグはそのまま登城せず、私を家まで送り届けると言ってもと来た道を歩きだした。

「……リズ。十一年前の件と併せ、今回の一件も『リズの能力』による貢献だと報告すれば、かなりの褒賞が与えられるだろう」

「えぇっ、褒賞なんていらないですよ!? そのために手伝ったわけじゃないですし、みんな無事だったならそれだけで十分です!」

 思ってもみない言葉に、ヨルグと繋いでいないほうの手をブンブンと胸の前で振る。
 安全な場所から『見た』だけの私より、現地で恐ろしい魔獣相手に戦ってくれている騎士たちこそ労われるべきだ。

「大抵の望みが叶えられる、またとない機会だが……」

「でも、本当になんにも……。一番の望みっていったら、『おじいちゃんもヨルグさんもいるこの幸せな日々がずっと続きますように』ってことだけですし」

「そ、そうか」

 何か照れさせるようなことを言っただろうか。片手で口元を覆ったヨルグの首筋と耳の先が、微かに赤らんでいるのが見えた。

「褒賞はいらないので、えっと……私の『能力』のことも、できれば秘密にしておいてもらいたいんですけど」

 両親からは、能力のことを『内緒にしなさい』と言われていた。おじいちゃんも、おばあちゃんとの約束を守ってずっと秘密にしてきたものを私のためにと打ち明けてくれた。
 私一人の秘密ではない。
 だからこそ、たとえ国相手といえど安易に能力をバラすような真似はしたくないのだ。

 騎士であるヨルグには、きっと報告の義務があるだろう。そこをなんとかできないものだろうかと上目遣いにうかがうと、ヨルグは私の答えを予想していたのかあっさりと頷いてくれた。

「わかった、リズの秘密は必ず守ろう。しかし協力について伏せた場合、俺がリズの手柄を横取りするかたちになってしまうが……」

「全然構いません! それでお願いします!」

 私は秘密が守れて、ヨルグはお手柄。万々歳ではないか。よかったよかった!
 すべて丸く収まりそうだと胸を撫で下ろす私に、ヨルグが続けて言った。

「そうなると、今回リズを城へ同行させたことへの説明として、十一年前の『目撃情報提供者』であることは報告させてほしい。こちらも多少なり褒美が与えられるはずだ」

「そんなに昔のことなのに、今さらご褒美なんてあるんですか? 能力を使ったことはなんとなく記憶にありますけど、何を探したのかも覚えてないくらいですよ?」

「あの日リズが見つけ出してくれたのは、誘拐された第一王子殿下だ」

「おーじでんか……って、王子様!!?」
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