不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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51~60話

幸せの頂点【上】 ※

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「う……、っ……!」

 めりめりと、隘路あいろをこじ開けるように切っ先が入ってくる。

『指三本』は太さの目安ではなかったのだろうか、どう見ても雄芯のほうが太い。
 十分すぎるほどほぐしてもらったと思っていたのに、まだまだすんなりと雄芯を受け入れるには至らなかったようだ。

「リズ……っ、もう少し力を抜いてくれ……」

「そんな、こと、言ったって……っ!」

 額には脂汗が浮かび、ヨルグにしがみつく手にもぎりぎりと力が籠る。
 ヨルグを受け入れたいという気持ちは本当なのに、痛みに怯えてか巨大な異物の侵入を拒んでか、無意識に身体が強張ってしまう。

「息を止めずに。ゆっくりと息を吐き出すんだ」

「っ……ふぅーっ! ふっ、ふうぅぅーーー!」

 ちゃんと息を吐けているだろうか。「ふぅー」と口にしているだけな気もする。
 とにかく力を抜くことに集中しようとぎゅっと目をつむった拍子、不意に強い眠気の波が迫り、ふわ、と感覚が遠のいた。

 強張りが弛んだ隙を見逃さず、ぐぷりと切っ先が進められる。

「いっ――」

 ――たくない! 痛くない!!

 まぶたの裏が赤く明滅する。
 雄芯を支える指に触れた自らの『穴』は、ギチギチと限界まで引っ張られ、千切れる寸前のようで恐ろしいけれど。

 痛いなんて言うものか。そんなことを言えば、優しいヨルグが気に病んでしまう。
 私だって望んではじめた行為なのに、きっと一人で罪悪感を背負い込んでしまうから。

 だから――漏れそうになる泣き言の代わりに、愛を口にした。

「す、きぃっ……。すきっ……ヨルグ、さ……っ」

「リズ……! リズ、リズ、好きだ! 愛している……!」

 耳にかかる熱い吐息。余裕のない声で紡がれる愛の言葉。重なりあった全身から、ヨルグの熱が染み込んでくる。

 嬉しい……。
 いつだって私を守ってくれたヨルグが、痛みを与えると知りながらもなお、全身で私を求めてくれる。

 重く手をこまねく眠気にほんの少し意識をゆだねれば、その瞬間だけは痛みが遠のく。
 今日は目まぐるしく大変な一日だった。その分、眠気もかなり強力だ。
 再び目を閉じて、鈍る意識の底に痛みを追いやるように、少しずつヨルグを受け入れる。

「……っう、……ん……っ」

 痛みにふっと覚醒する意識を、またすぐに眠気が拐っていく。
 ずっと見ているだけだった『情熱』が、じりじりと自分のなかに入ってくる。

 熱くて、熱くて、火傷してしまいそうなほど。
 触れればすぐに伝わってくるこの『熱』だって、通りの向こうからはわからなかった。
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