上 下
131 / 200
41~50話

シャツの内側は【上】 ※

しおりを挟む
 少量の白濁がシーツに落ち、ツン、と微かな青臭さが漂ってくる。
 これが精液のにおい……?

「これは違うんだ」

「えっ?」

「違うんだ……」

 左手をシーツにつき、上体を折るように項垂れたヨルグが深刻な様子で否定する。
 『精液のにおい』ではないということだろうか?

 そしてヨルグの右手は今なお、握り潰さんばかりにギリギリとを締め上げているのが見えた。

「あの、そんなに強く握ってたら痛くないですか……?」

「いや、全くもって問題ない。――ところでリズ、その…………先ほどから、見え……っ」

「みえ?」

 僅かに顔を起こしたヨルグに釣られて自分の身体を見下ろすと、膝を立てているせいでシャツの裾がめくれ、膝頭が覗いていた。
 庭でシーツ類を踏み洗いするときにもスカートの裾をまくるので、膝くらい見えたところで別に恥ずかしくもない……けれ、ど……。
 ヨルグと、その視線が注がれているらしき自分の膝下あたりとを視線で往復しながら、ある恐ろしい可能性に思い至る。

 もしかしてヨルグのいる位置からは、バッチリと見えているのではないだろうか。
 シャツの内側の、趣味を疑われるような|下《・)が――。

「!!! これは――っ!」

 ボスッと勢いよく膝を伏せ、先ほどまで見えていたであろう『光景』をかき消すように脚の前でブンブンと両手を振る。

「ごっ、誤解しないでください! これはその、たまたま買ってポシェットに入れっぱなしになってただけでっ! 綺麗な下着がこれしかなくって! 本当に、私の趣味じゃないんです……! ヨルグさんに見られても恥ずかしくないように、おしゃれな下着を買おうと思ったら……なぜかこんなことになって……」

 あのアダルトランジェリーのお店でおおよそ下着とは思えない『紐状の物体』を勧められつづけるうち、透け透けのレース地とはいえ全体にこの下着が比較的まともに思えてきてしまったのだ。
 冷静になってから見ると、これも十分とんでもない下着だった。だってすべてが透けている。

「俺に見せるために……?」

 いやいやいや、その表現は大分語弊がある。私に、際どい下着を嬉々としてヨルグに見せつけるような趣味はない。
 これは万一を想定した対策であって、断じてに用意したわけではないのだ。
 ――その『万一』が早くも訪れてしまった点についてはさておき。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R18】利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった

春瀬湖子
恋愛
絵に描いたような美形一家の三女として生まれたリネアだったが、残念ながらちょっと地味。 本人としては何も気にしていないものの、美しすぎる姉弟が目立ちすぎていたせいで地味なリネアにも結婚の申込みが殺到……したと思いきや会えばお断りの嵐。 「もう誰でもいいから貰ってよぉ~!!」 なんてやさぐれていたある日、彼女のもとへ届いたのは幼い頃少しだけ遊んだことのあるロベルトからの結婚申込み!? 本当の私を知っているのに申込むならお飾りの政略結婚だわ! なんて思い込み初夜をすっぽかしたヒロインと、初恋をやっと実らせたつもりでいたのにすっぽかされたヒーローの溺愛がはじまって欲しいラブコメです。 【2023.11.28追記】 その後の二人のちょっとしたSSを番外編として追加しました! ※他サイトにも投稿しております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話

mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。 クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。 友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。

ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁
恋愛
 突然異世界へと転移し、状況もわからぬままに拐われ愛玩奴隷としてオークションにかけられたマヤ。  険しい顔つきをした大柄な男に落札され、訪れる未来を思って絶望しかけたものの……。  跪いて手足の枷を外してくれたかと思えば、膝に抱き上げられ、体調を気遣われ、美味しい食事をお腹いっぱい与えられて風呂に入れられる。  温かい腕に囲われ毎日ただひたすらに甘やかされて……あれ? 奴隷生活って、こういうものだっけ———?? 奴隷感なし。悲壮感なし。悲しい気持ちにはなりませんので安心してお読みいただけます☆ シリアス風な出だしですが、中身はノーシリアス?のほのぼの溺愛ものです。 ■R18シーンは ※ マーク付きです。 ■一話500文字程度でサラッと読めます。 ■第14回 アルファポリス恋愛小説大賞《17位》 ■第3回 ジュリアンパブリッシング恋愛小説大賞《最終選考》 ■小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にて30000ポイント突破

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

処理中です...